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170 我慢しないヴァレリア 後編
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「ヴァ、ヴァレ、重くない…?」
「いいえ、大丈夫ですよ。」
「そ、そう…?…あの、疲れない…?」
「ふふ、全く。愛しい妻とのスキンシップで疲れる事なんてありませんよ。」
「な、ならいいんだけど…。」
朝露に濡れる花と草木。
澄んだ空気、漂う風が少しだけ冷たい、清々しい朝の時間。
美しく整えられた庭を、今日も今日とて夫のヴァレに抱えられ散歩する私。
何故ヴァレに抱えられながら庭を散歩しているのか…それは一言で言うと、私の体が動かないからだ。
結婚してからというもの、夜は必ず夫婦の営みがあって…ヴァレだけではなくて皆そうなんだけど…私の夫と婚約者は総じて体力が化け物級なのである。
早めにベッドに横になった日もちょっと遅くなってしまった日も関係ない。
気付けば真っ暗だったはずの外が薄らと明るくなっている事も少なくはなく、長時間夫たちに愛され続けた私の体は毎回虫の息。
しかも新婚とは恐ろしいもので営みに朝も昼も夜も関係ないときた。専ら多いのは夜だけど。
毎晩…いや、毎日毎日夫がハッスルするもんだから…私の体力は回復する間がない。
しかしヴァレはこの要介護状態の私の世話をするのが嬉しいらしく、いちゃいちゃも出来て一石二鳥だと言う。
「部屋に戻ったらマッサージをして差し上げますね。」
「…えと…そんなことまでしなくていいんだよ…?」
「いいえ、いけません。
私が原因なのですから、私の手で愛しい貴女を癒して差し上げたいのです。
…結婚してからずっと無理をさせてしまってすみません。
けれど、どうか許して下さい。貴女を愛する、愛したいという気持ちを止められないのです。」
「は、はひ…。」
ちゅ、ちゅと顔中に落ちてくるヴァレの唇。
庭師や使用人たちが顔を赤らめながら私たちを見ているのが目の端に映る。
これもヴァレと結婚してからよく見る光景の一部になっていたりする。
「ふふ…顔が真っ赤ですよ。
毎日続けているのにまだ慣れませんか?」
「…そうみたい…」
「早く慣れましょうね。
…これからも一緒に過ごす間は毎日続くんですから。」
「が、がんばります…。」
にっこりといい笑顔のヴァレ。
以前と変わらない穏やかな笑顔に少しだけ黒さが交じって見えるのはきっと気のせいじゃないと思う。
私はずっとヴァレの事を努力家で紳士的、穏やかで優しいけど…時々意地悪にもなる…と認識していたのだけどどうやら腹黒い所もあったようだ。
こういう所!みたいな大きな部分はないのだけど、結婚後の様子、その一部で片鱗が何度も見えてきたと言うか…腹黒いとは違うのかも知れないけれど何というか…結構いい性格してるんじゃ…?と思う事が何度かあったしおまけに私が思っていた以上に独占欲も凄かった。
同性の使用人たちと少し長くおしゃべりしていると不機嫌になったり、異性の使用人と話すといつの間にか隣に立っていて彼らの目の前で見せつけるようにキスをしたり。
困った人、と思うけれどこれはヴァレの“我が儘”なのだ。
私を独り占めしていたい。ヴァレが私に触れたい時に触れる、口付ける、愛を囁くと言った言葉通りの毎日を今、私たちは過ごしている。
「はあ…、落ち着く…。」
「毎日お仕事お疲れ様、ヴァレ。
今日は休みだからゆっくり過ごしてリフレッシュしてね。」
「ありがとう。
仕事が辛いとは思っていませんが…不満があるとすれば新婚なのに仕事に行かなければならない事ですかね。
でもサイカにお疲れ様と言ってもらえるだけで疲れなんて吹き飛びます。
仕事から帰って来て、貴女の姿を見るだけでとても安堵した気持ちになる。」
「ふふ、それは良かった。」
「今度の休みはデートしましょうか。
こうして屋敷の中ゆっくり過ごすのも好きだけどデートもしたい。…夫婦らしく。」
「デート!いいですね!」
「前日の夜はちゃんと、手加減しますから心配しないで下さいね。」
「…す、するのはするんだ…。」
「当然ではないですか。
いつだってサイカを抱きたい。叶う事なら一日中素肌の貴女を抱いていたい。
私はサイカとのセックスに快楽だけを求めている訳ではありません。
確かに貴女とのセックスは病み付きになるきらい気持ちがいいですけど。」
「ヴァレ!」
「ふふ。…私が貴女を抱くのは、貴女を愛しているから。愛したくて、愛されたくて。
体温や汗、匂い、声に表情。サイカの全部にほっと癒される、愛されていると強く感じる。
私も、愛しい愛しいと気持ちが溢れるんです。」
「う、うん。」
「貴女を抱く時間はとても幸せで…このまま死んでもいいと思えるくらい、幸せな一時。
勿論、一緒に過ごす時間は全て幸せなんですけど。
その中でも愛し合っている時が一番。
世界で一番幸せな私になる。
サイカとのセックスはそういう時間ですよ。」
結婚後のヴァレは私に向ける自分の気持ちや態度、嫉妬や独占欲を隠そうとしたり抑えたりする我慢をしなくなった。
使用人の前だろうと、お姉さんたちの前だろうと、誰の前だろうと。
“誰の前だろうと”にはマティアスやリュカ、カイルも、それからお義父様も含まれている。
私はヴァレだけの妻ではなくて、マティアスの、リュカの妻で、近い内にカイルの妻にもなる。
身分的な事を持ち出すとヴァレは夫の中で序列三位、彼の前にはリュカが、そして一番上にマティアスがいる訳だけど、この前お義父様以外の皆が訪ねて来た時のヴァレは凄かった。
私がヴァレって結構いい性格してるんじゃ…と思ったのはこの日である。
この日も早朝まで続いた夫婦の営みに朝から虫の息状態だった私。
もうこの頃には日課となりつつあったヴァレに抱えられての朝散歩(屋敷の敷地内)。
朝日が目に染みるな~と遠い目で景色を見ていた時にマティアスとリュカ、カイルがやって来た。
その瞬間、信じられない事にヴァレの口から舌打ちが聞こえたのだ。それも結構大きめの舌打ちが。
“え?今舌打ちしたの誰?もしかしてヴァレ?いやまさか。いやいや、そんなまさか。ヴァレが舌打ちなんかするわけない。”と、この時はちょっと…何が起こったか分からなかった。
恐る恐る向けた視線の先にはいつもと変わらない穏やかな笑みを浮かべたヴァレ。
なんだ、気のせいだったんだ。そうだよね。と安心したのも束の間。
『本当、空気の読めない方たちですね。
折角の新婚なのに邪魔をしに来られるなんて。』
そんな呟きを私は聞き逃さなかった…いや、聞き逃さなかったんじゃなく割りとって言うかハッキリと言ってたから。
二度目の信じられない気持ち。
幻滅したとかではなく、“あのヴァレが!?”という驚きの方だ。
『私とサイカの家へようこそ。陛下、リュカ殿にカイル殿も。
突然来られずとも先に伝えて下されば色々ともてなしをしましたのに。
不手際などあれば大変申し訳ありませんがその際はどうかご容赦下さい。』
『いや、いつも通りで構わない。不手際があったとしても咎めたりはせんから気にするな。』
『ありがとうございます。
陛下の寛大なお心に感謝します。』
このヴァレとマティアスのやり取りに何となく…ヴァレの心の声のようなものが聞こえた気がした。どんな、と聞くなかれ。
あとヴァレの表情がいつも通り穏やかな笑顔のままなのも何かちょっと恐かった。
お客さんが来た時用の少し大きな部屋に行き、各々がゆったりとソファーに座るが私はずっとヴァレの膝の上で体を支えてもらっていたけれど、皆の前でもヴァレは独占欲を抑える事はしなかった。
『…ヴァレリア…俺も、サイカ抱っこしたい…。』
『コホン。そうだな。そろそろ代わってもいいんじゃないか?
ヴァレリアもずっとサイカを支えたままだと疲れるだろうし。』
『すみませんカイル殿、ですがまだ譲る気はありませんのでお許し下さい。
リュカ殿、ご心配には及びません。
私も男ですのでサイカを支えるくらいは平気ですよ。』
『ヴァレリア、そなた隠す気が無くなったな。』
『…ええ。丁度良いと思いまして。
そういうわけで大変申し訳ありません。
この屋敷で私の妻として過ごす間は陛下にもリュカ殿にもカイル殿にも妻を譲りたくないのです。』
『その独占欲は分かる。俺も持っているしリュカもカイルも当然持っていよう。
しかしそれをこの場で出すのは些か短慮と言えるな。』
『そうかも知れませんが…私は陛下がこの様な事で小さな嫌がらせをするとは思っておりませんので。思いきって我が儘を言わせて頂きました。
サイカにも、ここにいる間は一番に私を優先して欲しいとお願いしています。』
『…ほう?』
この時は部屋の温度が二、三度くらい下がったんじゃないかって寒さを感じてぞわぞわしたけど、『言うようになったな』とマティアスが笑ってくれたお陰で最悪な雰囲気にはならずに済んだ。
皆に自分の意思を伝えて満足したのか、その後のヴァレは私を膝の上に乗せたまま頬を擦り寄せたり髪を撫でたり、数時間独占した後、最終的には皆にも私との時間を譲っていた。
マティアスたちが帰った後、何だかんだと言っても皆の気持ちをちゃんと汲むヴァレはやっぱり優しいね、と私がヴァレに伝えるとヴァレはにっこり笑って首を横に振った。
『いえ、本当はずっと独占していたかったんですけど…時間が経つにつれ皆さんの目がどんどん険しいものに変わっていったので。
今後の事も考えると皆さんの…特に陛下の機嫌を損ねて嫌われてはいけませんから仕方なく。まあ、我が儘を聞いて下さいましたしね。』
『…わあ…。』
ヴァレって結構いい(腹黒い)性格してたんだ~、とこの時に初めて知った。
付き合っていた頃には知らなかった事を知る。
結婚する前まではヴァレはこういう人と思っていた部分に新しい事実が加えられていく。
まだ知らない事があったんだ。でもこれからその知らない事を知ってもいけるんだ。
ヴァレだけじゃない。マティアスもリュカも、付き合う前、付き合ってから、結婚してから実はこういう所もあったんだと知った事がある。
そして今はまだ婚約者のカイルにも、きっと結婚してから知る事が沢山あるのだろう。
皆のどんな顔を今後見れるのだろうか。
どんな知らない部分を見る事ができ、知る事が出来るのだろうか。
そう思うと何とも嬉しい、楽しい気持ちになる。
…まあ、戸惑いも結構大きいけれど。
「んん、美味しい…!」
「ふふ。私の妻は何て愛らしいのでしょう。
美味しいものを食べるとふにゃんと目尻が下がって…幸せそうで可愛い。」
結婚して初めてになる約束のデートの日。
帝都に来たヴァレと私は婚約者だった時に訪れた思い出の店、マグノリアに来ている。
着ているドレスは初めてのデートの時に最高級の生地で作ってもらったオーダーメイドドレスだ。
ドライト王国から取り寄せたという生地は最高級と言うだけあってシルクのようにサラサラでとても着心地がいい。というか着ていて凄く気持ちいい。
流石大金貨一枚の最高級ドレス…汚したらどうしよう…という私の不安はヴァレの嬉しそうな笑顔を見て心の奥にしまい込んだ。
前回、マグノリアは貸切りだった。
今回も貸切りにと言うヴァレ。私も勿論、自分の立場、身分を理解しているから何も言わなかった。
マグノリアは待たされるのが嫌いな貴族でも行列を作って待つ程人気で、毎日繁盛しているお店だ。
私が行けば、私がいる時間他のお客さんは店に入れない。
確かにあのお店の料理はスイーツだけではなくどの料理も何度でも通って食べたくなる美味しさ。
私もまたいつ行けるかなと楽しみにしていたけれど、心苦しいものは心苦しい。
ヴァレにはそんな私の思っている事が分かっていたのだろう。
デートを翌日に控えた夜、ヴァレは私に“今回は貸切りは止めました”と言った。
『え!?で、でも、』
『大丈夫。陛下にも相談して了承を得ましたからね。』
大丈夫とヴァレは言うけれど、きっと色んな手間が発生したに違いない。
何だかとても申し訳なくて、何とも言えない気持ちになった。
ヴァレは困ったように笑いながら私の両頬を摘まむ。
『“私のせいで申し訳ない”って思ってませんか?』
『……ん』
『もう。それは違いますよ。
私がサイカを喜ばせたかったから陛下にお願いしたんです。
前回、貸切りにしたマグノリアでサイカは素晴らしい心配りを見せた。
私はとても誇らしくて、ますます貴女が好きになった。』
『……?』
『貴女は人を幸せにする。小さな心配り一つで周りの人々を喜ばせる事が出来る。
だけど私は、周りよりも貴女を喜ばせたい。
貴女が心から楽しんでくれる、私にとってはその事が一番大事なのです。
その為の手間は惜しみません。それが、貴女の夫たる私の、私たちの総意。これは私の我が儘ですよ、サイカ。
貴女の事では一切妥協しない。それが私の愛です。』
『…ヒャレ…』
凄くいい雰囲気なのに頬をむにむにされてて台無しだったけど、嬉しくて堪らなかった。
私はもの凄くヴァレに愛されている。
マティアスにも、リュカにもカイルにも、沢山の人に愛され、本当に良くしてもらって、幸せをもらっていると改めて感じた。
貸切りではないマグノリアは運よく予約が取れたらしく着いてすぐ、待たずに入店する事が出来た。
周りにいたお客さんたちは私たちに驚いたみたいで席に着いてもずっと視線を感じてしまう。…それはもう、もの凄い視線だ。
「美味しいですね、サイカ。」
「う、うん。」
とても美味しいけどそれ以上に感じる視線が凄い。
店内にいる人たちだけじゃなく窓からも覗き込むように私たちを見ているので気分はまるで動物園の動物。
たまに目があった人に日本人の特技である愛想笑いを披露するとあちこちからナイフやらフォークやらを落とす音が聞こえ…私がこの世界では絶世の美女な事実を久々に思い出した。
「サイカ、あーん。」
「…あー……え!?」
「どうしました?結婚してからいつもしているでしょう?」
「あ、え、あ、でも、あの、」
「ほら、あーん。」
「あう、でも、ここ、お店…」
「…ダメ、ですか…?」
「うぐ……その顔はちょっと…ずるいです…」
しょぼんと眉を下げるヴァレの可愛さにやられ、あーんと手ずから食べる。
恥ずかしい。とても恥ずかしい。何この羞恥プレイ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「まだ沢山ありますからね。はい、あーん。」
「…あー…」
「ああ、もう。リスみたいに頬が膨らんで可愛い。小動物に餌付けしている気持ちになります。
可愛い可愛い…。私の奥さんがとっても可愛い。
サイカ、口の端にソースが付いていますよ。私が取って差し上げましょうね。」
席を立ち隣に来ると周りに見せつけるように私の口の端についたソースを自身の唇で拭うヴァレ。
大勢いる前での甘い公開処刑に恥ずかしい気持ちが限界突破しそうになった。
「…サイカ、目を潤ませてそんな可愛い顔をしないで。」
「だ、だってヴァレが、」
「ごめんなさい。サイカが余りにも可愛くて…つい。貴女を辱しめるつもりはなかったんです。
次から気を付けますから…許して。」
許してと言いながら目尻にキスしないで欲しい。もうどうにかなりそうだった。
「美味しかったです。御馳走様でした!」
「御馳走様でした。また、妻と一緒に来ますね。」
『ありがとうございました!またのご来店を心よりお待ち申し上げております!!』
恥ずかしかったけど料理は変わらず文句なしに美味しかったマグノリアを出て、私たちはドレスを作ったお店へ向かう。
その間も街のあちこちから視線を感じるけれど、この視線はこの先だって誰と一緒にいても付きまとうものだから一々気にしていてもキリがないというのは学習済み。
腕を組んで一緒に歩くヴァレは堂々としていて格好いい。
デートという状況もあって私はドキドキしぱなしだった。
「王妃殿下にウォルト伯爵様…!ようこそお越し下さりました!!
それに…まあ…!当店で作らせて頂いたドレスを…!やはりとても良くお似合いです…!着心地は如何ですか!?」
「こんにちは。
ドレスはとても着心地が良いです。素敵なものを作ってくれて…ありがとう。感謝しています。」
「ああ…!なんと勿体ないお言葉でしょう…!
あれからお店の売り上げもとても伸びて、わたくし共の方が感謝しなくてはならないと言うのに!」
「ふふ。良かったですね、サイカ。」
「?」
「貴女は女性たちの憧れなんですよ。」
「え!?」
「ええ!サイカ王妃殿下の類い稀な美しさにあやかりたい女性は沢山いらっしゃいますから!
妃殿下がドレスを注文して下さったので貴族のご夫人、ご令嬢たちからの問い合わせがもう凄いんです!」
「ええぇ…!?」
「どんなドレスを注文したかどんな装飾を選ばれたか、それはもう…!
同じドレスを作って欲しいと注文が殺到して、今現在は新規での注文が受け付けられない程忙しくさせて頂いていますわ…!!」
「そ、それは良かった…のかな…?」
「はい!それはもう嬉しい悲鳴です!!
新規の注文は受け付けていないと申しましたが妃殿下は別ですよ!ご安心下さいませ!!」
「あ、あはは…。ありがとう。」
そうだった。私はこの世界で絶世の美女(本日二回目)を思い出した。
店内を見回すと前に来た時にはなかった私サイズのドレスが数着置かれてあるのに気付く。
「妃殿下サイズのドレスをお買い求めになるご令嬢もいらっしゃるんです!」
「…それは…着れないのに何故でしょう?
何か理由があるのですか?」
「勿論御座います!先程ウォルト伯爵様が申された通り、妃殿下は女性の憧れであり目標!!
妃殿下のように美しくありたい、妃殿下に少しでも近付きたいと思うご令嬢は多くいらっしゃいますから、手元に持っておきたいのでしょうね!」
「なる程。とても良く分かりました。
ふふ。サイカ、女性たちは皆貴女と同じものを買って、少しでも貴女のようになりたい、その美貌に近付きたいと努力しているそうです。素晴らしいですね。」
「美の結晶たる妃殿下は美しくありたいと願う女性たちにとっての最終目標!流行、その最先端でもありますからね!!
身に付けているもの、着ているもの、持っているものを欲しがるのは当然と言えましょう!!」
「あわわ」
美の最終目標とか流行の最先端とか止めて欲しい。
何度も言うが日本での私の容姿は普通だし、自慢じゃないけど私のファッションセンスだって可もなく不可もなく、だ。本当にどこにでもいる、誰でもするレベルのもの。
普段着は主にカジュアル。友人たちと遊ぶ時も薄めの化粧をして服も周りから変に思われない無難なものばかりで大してお洒落なぞしなかった人間。
なのに絶世の美女だとか人気のファッションモデルみたいに言われるのは本当に居たたまれない…。何この気持ち。ぐざぐさくる。
「では今回もサイカに相応しい物を贈らなければなりませんね。
美しいサイカを更に美しく見せる、サイカを引き立てるそんなドレスを。」
「まあまあまあ…!それはいいお考えですウォルト伯爵様!!
腕によりをかけて!従業員、そして携わる者一同、全身全霊を持って承ります!!」
「ええ。私の大切な妻への贈り物です。どうぞ宜しくお願いしますね。
サイカ、型紙はもうありますから今日は時間を掛けて生地や細工、装飾を選びましょうか。」
「あ、はい。」
「ウォルト伯爵様、店長!見本をお持ち致しました!!」
「では見せて下さい。
…妻には私の瞳の色が良く似合いますので、今着ているドライト王国から取り寄せた最高級の生地で、紫色はありませんか?」
「うふふ!ウォルト伯爵様は本当に運が宜しいようです!!
本来こちらの生地は余りにも繊細な為に染色が難しい生地なのです。染色によって生地の質が落ちてしまうのですが腕のいい職人を集めて試行錯誤を重ね、漸く生地の質を落とさずの染色に成功しました!」
「それは素晴らしい!金額はどれほどかかっても構いませんから、是非ともお願いします。あ、レースも見せて頂けますか?」
「喜んで!!」
ヴァレと店長さん、店員さんとでどんどん話が進んでいく…。
このドレスは大金貨一枚……今回は一体、いくらになるんだろうか…恐ろしい。
「ふむ…。こちらと…あとこの柄のレースが良さそうですね。
ウエスト部分ではなく胸下あたりで絞った方がより美しく見えるでしょう。それから…」
ぽつんと取り残された感。
だけどヴァレが凄く生き生きとしてて嬉しそうなのは見ていて楽しい。
じっくりと時間をかけて生地や細工、装飾を選び、半年後の出来上がりを楽しみにお店を出た。
「サイカ、疲れていませんか?」
「ううん!お店でずっと椅子に座ってたから疲れてないよ。」
「良かった。でしたらこれからの時間はゆっくりと歩きながらお店を見回りましょうか。」
「賛成です!」
再び腕を組んでヴァレと貴族街を歩く。
ぴったりと寄り添うように並んで歩いて、時々ヴァレが私にちょっかいを出す。
目が合うと口付けてきたり、突然旋毛に口付けてきたり。
貴族街を歩いているはほぼ全員が貴族。
通り過ぎる貴族たちは私たちのやり取りを見てはぎょっとしたり顔を赤らめたりしているけれど、ヴァレは全く気にしていないようだ。
「何だかすごく楽しそう見える。」
「私ですか?…ええ、とても楽しいです。
私って実は結構嫌な人間なんですよ。
貴女に私が触れて、貴女が私を、可愛い顔で見る。私の事が大好きと分かりやすい顔で、恥ずかしがっているけれど決して嫌ではないと、そんな顔を向ける。
その時の周りの人たちの顔、とても愉快だなって。」
「…わあ…」
「女神と評される貴女に私が触れる。
貴女は嫌がる素振りもせず、可愛い表情で私を受け入れる。
周りの信じられないような視線、妬み嫉みが含まれた感情が私に向けられている優越感は大きくて、実にいい気分です。すみません、幻滅しました?」
「ううん。そういう感情は誰にだって、私にだって当然あるもの。
ただ、ヴァレってやっぱりいい性格してたんだなぁって。結婚して初めて知った事もあって、それが嬉しかったりね。」
「ありがとうございます。
ああでも、誤解しないで下さいね。
周りの反応を楽しんでいますし貴女は私の妻、その事実を周りに知らしめたい、自慢したいとも思っていますけど。
夫婦として、堂々と人前で歩けるのが嬉しいんです。
そして一番は…私の隣に貴女がいる。それが何より嬉しいし楽しい。」
「うん、私も。…私も、ヴァレが私の旦那さんとして隣にいる、それが毎日嬉しいし、今日だって楽しいよ。その、さっきヴァレが言ってた通り…人前でのいちゃいちゃも、恥ずかしいって思うけど、…い、嫌じゃないから!」
私だって、私の旦那さんはこんなに素敵な人なんだって周りに自慢したいと思ってるよ、という気持ちを込めて私から背伸びをしてヴァレに口付ける。
「サ、サイカ…」
「わ、私もヴァレにキスしたくなったからしちゃった。
私からキスして、周りの人たち…きっともっと驚いたよね……んうぅぅ!?」
ぶっちゅう、と、触れるだけのキスじゃなくて激しめのキスから、ヴァレが喜んでいるのが分かった。
昼間には似つかわしくない水音に混じって、大きなどよめきの声が聞こえてくるけれど、この時は全く気にならなかった。
「はあ、…はぁ、…サイカ、もう、帰りましょう…!貴女を抱きたい。今すぐ帰って、貴女を抱かせて下さい…。
口付けだけでは足りません…貴女の服を脱がせて、全身に触れて愛したい…!」
ぼうっと惚けながらこくりと小さく頷くとヴァレは素早く私を横抱きに抱え顔中にキスを落としながら早足で馬車に向かう。
屋敷に着くまで我慢出来なかったヴァレに馬車の中で愛され、屋敷に戻ってからも沢山愛され、翌日には身支度を手伝ってくれる侍女たちに“旦那様と奥様は本当に仲睦まじいですね”と言われ、大勢の人の前でディープなキスをぶちかまし馬車の中であんあん喘ぎ、使用人たちが出迎える中あられもない乱れたドレス姿でヴァレに抱えられ寝室へ向かった出来事を思い出しては一人悶々と羞恥に耐えた私。
ご機嫌な様子で帰宅した夫に“もうデートしない”と八つ当たりのような言葉を投げかければ…。
「残念ですが…ええ、それもいいですね。
サイカの愛らしさを見せつけたいと思っていたけれど、あんな可愛い貴女を見るのは私だけでいい。あれは誤算でした。
休みの日は何処にも出掛けず、一日中愛し合いましょうね。今からとても楽しみです!」
そんな、にっこりといい笑顔の中にやっぱり黒い何かが見える。
我慢をしなくなった夫にこの日の夜もへとへとになるまで愛され…ヴァレとの新婚生活は過ぎて行くのだった。
「いいえ、大丈夫ですよ。」
「そ、そう…?…あの、疲れない…?」
「ふふ、全く。愛しい妻とのスキンシップで疲れる事なんてありませんよ。」
「な、ならいいんだけど…。」
朝露に濡れる花と草木。
澄んだ空気、漂う風が少しだけ冷たい、清々しい朝の時間。
美しく整えられた庭を、今日も今日とて夫のヴァレに抱えられ散歩する私。
何故ヴァレに抱えられながら庭を散歩しているのか…それは一言で言うと、私の体が動かないからだ。
結婚してからというもの、夜は必ず夫婦の営みがあって…ヴァレだけではなくて皆そうなんだけど…私の夫と婚約者は総じて体力が化け物級なのである。
早めにベッドに横になった日もちょっと遅くなってしまった日も関係ない。
気付けば真っ暗だったはずの外が薄らと明るくなっている事も少なくはなく、長時間夫たちに愛され続けた私の体は毎回虫の息。
しかも新婚とは恐ろしいもので営みに朝も昼も夜も関係ないときた。専ら多いのは夜だけど。
毎晩…いや、毎日毎日夫がハッスルするもんだから…私の体力は回復する間がない。
しかしヴァレはこの要介護状態の私の世話をするのが嬉しいらしく、いちゃいちゃも出来て一石二鳥だと言う。
「部屋に戻ったらマッサージをして差し上げますね。」
「…えと…そんなことまでしなくていいんだよ…?」
「いいえ、いけません。
私が原因なのですから、私の手で愛しい貴女を癒して差し上げたいのです。
…結婚してからずっと無理をさせてしまってすみません。
けれど、どうか許して下さい。貴女を愛する、愛したいという気持ちを止められないのです。」
「は、はひ…。」
ちゅ、ちゅと顔中に落ちてくるヴァレの唇。
庭師や使用人たちが顔を赤らめながら私たちを見ているのが目の端に映る。
これもヴァレと結婚してからよく見る光景の一部になっていたりする。
「ふふ…顔が真っ赤ですよ。
毎日続けているのにまだ慣れませんか?」
「…そうみたい…」
「早く慣れましょうね。
…これからも一緒に過ごす間は毎日続くんですから。」
「が、がんばります…。」
にっこりといい笑顔のヴァレ。
以前と変わらない穏やかな笑顔に少しだけ黒さが交じって見えるのはきっと気のせいじゃないと思う。
私はずっとヴァレの事を努力家で紳士的、穏やかで優しいけど…時々意地悪にもなる…と認識していたのだけどどうやら腹黒い所もあったようだ。
こういう所!みたいな大きな部分はないのだけど、結婚後の様子、その一部で片鱗が何度も見えてきたと言うか…腹黒いとは違うのかも知れないけれど何というか…結構いい性格してるんじゃ…?と思う事が何度かあったしおまけに私が思っていた以上に独占欲も凄かった。
同性の使用人たちと少し長くおしゃべりしていると不機嫌になったり、異性の使用人と話すといつの間にか隣に立っていて彼らの目の前で見せつけるようにキスをしたり。
困った人、と思うけれどこれはヴァレの“我が儘”なのだ。
私を独り占めしていたい。ヴァレが私に触れたい時に触れる、口付ける、愛を囁くと言った言葉通りの毎日を今、私たちは過ごしている。
「はあ…、落ち着く…。」
「毎日お仕事お疲れ様、ヴァレ。
今日は休みだからゆっくり過ごしてリフレッシュしてね。」
「ありがとう。
仕事が辛いとは思っていませんが…不満があるとすれば新婚なのに仕事に行かなければならない事ですかね。
でもサイカにお疲れ様と言ってもらえるだけで疲れなんて吹き飛びます。
仕事から帰って来て、貴女の姿を見るだけでとても安堵した気持ちになる。」
「ふふ、それは良かった。」
「今度の休みはデートしましょうか。
こうして屋敷の中ゆっくり過ごすのも好きだけどデートもしたい。…夫婦らしく。」
「デート!いいですね!」
「前日の夜はちゃんと、手加減しますから心配しないで下さいね。」
「…す、するのはするんだ…。」
「当然ではないですか。
いつだってサイカを抱きたい。叶う事なら一日中素肌の貴女を抱いていたい。
私はサイカとのセックスに快楽だけを求めている訳ではありません。
確かに貴女とのセックスは病み付きになるきらい気持ちがいいですけど。」
「ヴァレ!」
「ふふ。…私が貴女を抱くのは、貴女を愛しているから。愛したくて、愛されたくて。
体温や汗、匂い、声に表情。サイカの全部にほっと癒される、愛されていると強く感じる。
私も、愛しい愛しいと気持ちが溢れるんです。」
「う、うん。」
「貴女を抱く時間はとても幸せで…このまま死んでもいいと思えるくらい、幸せな一時。
勿論、一緒に過ごす時間は全て幸せなんですけど。
その中でも愛し合っている時が一番。
世界で一番幸せな私になる。
サイカとのセックスはそういう時間ですよ。」
結婚後のヴァレは私に向ける自分の気持ちや態度、嫉妬や独占欲を隠そうとしたり抑えたりする我慢をしなくなった。
使用人の前だろうと、お姉さんたちの前だろうと、誰の前だろうと。
“誰の前だろうと”にはマティアスやリュカ、カイルも、それからお義父様も含まれている。
私はヴァレだけの妻ではなくて、マティアスの、リュカの妻で、近い内にカイルの妻にもなる。
身分的な事を持ち出すとヴァレは夫の中で序列三位、彼の前にはリュカが、そして一番上にマティアスがいる訳だけど、この前お義父様以外の皆が訪ねて来た時のヴァレは凄かった。
私がヴァレって結構いい性格してるんじゃ…と思ったのはこの日である。
この日も早朝まで続いた夫婦の営みに朝から虫の息状態だった私。
もうこの頃には日課となりつつあったヴァレに抱えられての朝散歩(屋敷の敷地内)。
朝日が目に染みるな~と遠い目で景色を見ていた時にマティアスとリュカ、カイルがやって来た。
その瞬間、信じられない事にヴァレの口から舌打ちが聞こえたのだ。それも結構大きめの舌打ちが。
“え?今舌打ちしたの誰?もしかしてヴァレ?いやまさか。いやいや、そんなまさか。ヴァレが舌打ちなんかするわけない。”と、この時はちょっと…何が起こったか分からなかった。
恐る恐る向けた視線の先にはいつもと変わらない穏やかな笑みを浮かべたヴァレ。
なんだ、気のせいだったんだ。そうだよね。と安心したのも束の間。
『本当、空気の読めない方たちですね。
折角の新婚なのに邪魔をしに来られるなんて。』
そんな呟きを私は聞き逃さなかった…いや、聞き逃さなかったんじゃなく割りとって言うかハッキリと言ってたから。
二度目の信じられない気持ち。
幻滅したとかではなく、“あのヴァレが!?”という驚きの方だ。
『私とサイカの家へようこそ。陛下、リュカ殿にカイル殿も。
突然来られずとも先に伝えて下されば色々ともてなしをしましたのに。
不手際などあれば大変申し訳ありませんがその際はどうかご容赦下さい。』
『いや、いつも通りで構わない。不手際があったとしても咎めたりはせんから気にするな。』
『ありがとうございます。
陛下の寛大なお心に感謝します。』
このヴァレとマティアスのやり取りに何となく…ヴァレの心の声のようなものが聞こえた気がした。どんな、と聞くなかれ。
あとヴァレの表情がいつも通り穏やかな笑顔のままなのも何かちょっと恐かった。
お客さんが来た時用の少し大きな部屋に行き、各々がゆったりとソファーに座るが私はずっとヴァレの膝の上で体を支えてもらっていたけれど、皆の前でもヴァレは独占欲を抑える事はしなかった。
『…ヴァレリア…俺も、サイカ抱っこしたい…。』
『コホン。そうだな。そろそろ代わってもいいんじゃないか?
ヴァレリアもずっとサイカを支えたままだと疲れるだろうし。』
『すみませんカイル殿、ですがまだ譲る気はありませんのでお許し下さい。
リュカ殿、ご心配には及びません。
私も男ですのでサイカを支えるくらいは平気ですよ。』
『ヴァレリア、そなた隠す気が無くなったな。』
『…ええ。丁度良いと思いまして。
そういうわけで大変申し訳ありません。
この屋敷で私の妻として過ごす間は陛下にもリュカ殿にもカイル殿にも妻を譲りたくないのです。』
『その独占欲は分かる。俺も持っているしリュカもカイルも当然持っていよう。
しかしそれをこの場で出すのは些か短慮と言えるな。』
『そうかも知れませんが…私は陛下がこの様な事で小さな嫌がらせをするとは思っておりませんので。思いきって我が儘を言わせて頂きました。
サイカにも、ここにいる間は一番に私を優先して欲しいとお願いしています。』
『…ほう?』
この時は部屋の温度が二、三度くらい下がったんじゃないかって寒さを感じてぞわぞわしたけど、『言うようになったな』とマティアスが笑ってくれたお陰で最悪な雰囲気にはならずに済んだ。
皆に自分の意思を伝えて満足したのか、その後のヴァレは私を膝の上に乗せたまま頬を擦り寄せたり髪を撫でたり、数時間独占した後、最終的には皆にも私との時間を譲っていた。
マティアスたちが帰った後、何だかんだと言っても皆の気持ちをちゃんと汲むヴァレはやっぱり優しいね、と私がヴァレに伝えるとヴァレはにっこり笑って首を横に振った。
『いえ、本当はずっと独占していたかったんですけど…時間が経つにつれ皆さんの目がどんどん険しいものに変わっていったので。
今後の事も考えると皆さんの…特に陛下の機嫌を損ねて嫌われてはいけませんから仕方なく。まあ、我が儘を聞いて下さいましたしね。』
『…わあ…。』
ヴァレって結構いい(腹黒い)性格してたんだ~、とこの時に初めて知った。
付き合っていた頃には知らなかった事を知る。
結婚する前まではヴァレはこういう人と思っていた部分に新しい事実が加えられていく。
まだ知らない事があったんだ。でもこれからその知らない事を知ってもいけるんだ。
ヴァレだけじゃない。マティアスもリュカも、付き合う前、付き合ってから、結婚してから実はこういう所もあったんだと知った事がある。
そして今はまだ婚約者のカイルにも、きっと結婚してから知る事が沢山あるのだろう。
皆のどんな顔を今後見れるのだろうか。
どんな知らない部分を見る事ができ、知る事が出来るのだろうか。
そう思うと何とも嬉しい、楽しい気持ちになる。
…まあ、戸惑いも結構大きいけれど。
「んん、美味しい…!」
「ふふ。私の妻は何て愛らしいのでしょう。
美味しいものを食べるとふにゃんと目尻が下がって…幸せそうで可愛い。」
結婚して初めてになる約束のデートの日。
帝都に来たヴァレと私は婚約者だった時に訪れた思い出の店、マグノリアに来ている。
着ているドレスは初めてのデートの時に最高級の生地で作ってもらったオーダーメイドドレスだ。
ドライト王国から取り寄せたという生地は最高級と言うだけあってシルクのようにサラサラでとても着心地がいい。というか着ていて凄く気持ちいい。
流石大金貨一枚の最高級ドレス…汚したらどうしよう…という私の不安はヴァレの嬉しそうな笑顔を見て心の奥にしまい込んだ。
前回、マグノリアは貸切りだった。
今回も貸切りにと言うヴァレ。私も勿論、自分の立場、身分を理解しているから何も言わなかった。
マグノリアは待たされるのが嫌いな貴族でも行列を作って待つ程人気で、毎日繁盛しているお店だ。
私が行けば、私がいる時間他のお客さんは店に入れない。
確かにあのお店の料理はスイーツだけではなくどの料理も何度でも通って食べたくなる美味しさ。
私もまたいつ行けるかなと楽しみにしていたけれど、心苦しいものは心苦しい。
ヴァレにはそんな私の思っている事が分かっていたのだろう。
デートを翌日に控えた夜、ヴァレは私に“今回は貸切りは止めました”と言った。
『え!?で、でも、』
『大丈夫。陛下にも相談して了承を得ましたからね。』
大丈夫とヴァレは言うけれど、きっと色んな手間が発生したに違いない。
何だかとても申し訳なくて、何とも言えない気持ちになった。
ヴァレは困ったように笑いながら私の両頬を摘まむ。
『“私のせいで申し訳ない”って思ってませんか?』
『……ん』
『もう。それは違いますよ。
私がサイカを喜ばせたかったから陛下にお願いしたんです。
前回、貸切りにしたマグノリアでサイカは素晴らしい心配りを見せた。
私はとても誇らしくて、ますます貴女が好きになった。』
『……?』
『貴女は人を幸せにする。小さな心配り一つで周りの人々を喜ばせる事が出来る。
だけど私は、周りよりも貴女を喜ばせたい。
貴女が心から楽しんでくれる、私にとってはその事が一番大事なのです。
その為の手間は惜しみません。それが、貴女の夫たる私の、私たちの総意。これは私の我が儘ですよ、サイカ。
貴女の事では一切妥協しない。それが私の愛です。』
『…ヒャレ…』
凄くいい雰囲気なのに頬をむにむにされてて台無しだったけど、嬉しくて堪らなかった。
私はもの凄くヴァレに愛されている。
マティアスにも、リュカにもカイルにも、沢山の人に愛され、本当に良くしてもらって、幸せをもらっていると改めて感じた。
貸切りではないマグノリアは運よく予約が取れたらしく着いてすぐ、待たずに入店する事が出来た。
周りにいたお客さんたちは私たちに驚いたみたいで席に着いてもずっと視線を感じてしまう。…それはもう、もの凄い視線だ。
「美味しいですね、サイカ。」
「う、うん。」
とても美味しいけどそれ以上に感じる視線が凄い。
店内にいる人たちだけじゃなく窓からも覗き込むように私たちを見ているので気分はまるで動物園の動物。
たまに目があった人に日本人の特技である愛想笑いを披露するとあちこちからナイフやらフォークやらを落とす音が聞こえ…私がこの世界では絶世の美女な事実を久々に思い出した。
「サイカ、あーん。」
「…あー……え!?」
「どうしました?結婚してからいつもしているでしょう?」
「あ、え、あ、でも、あの、」
「ほら、あーん。」
「あう、でも、ここ、お店…」
「…ダメ、ですか…?」
「うぐ……その顔はちょっと…ずるいです…」
しょぼんと眉を下げるヴァレの可愛さにやられ、あーんと手ずから食べる。
恥ずかしい。とても恥ずかしい。何この羞恥プレイ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「まだ沢山ありますからね。はい、あーん。」
「…あー…」
「ああ、もう。リスみたいに頬が膨らんで可愛い。小動物に餌付けしている気持ちになります。
可愛い可愛い…。私の奥さんがとっても可愛い。
サイカ、口の端にソースが付いていますよ。私が取って差し上げましょうね。」
席を立ち隣に来ると周りに見せつけるように私の口の端についたソースを自身の唇で拭うヴァレ。
大勢いる前での甘い公開処刑に恥ずかしい気持ちが限界突破しそうになった。
「…サイカ、目を潤ませてそんな可愛い顔をしないで。」
「だ、だってヴァレが、」
「ごめんなさい。サイカが余りにも可愛くて…つい。貴女を辱しめるつもりはなかったんです。
次から気を付けますから…許して。」
許してと言いながら目尻にキスしないで欲しい。もうどうにかなりそうだった。
「美味しかったです。御馳走様でした!」
「御馳走様でした。また、妻と一緒に来ますね。」
『ありがとうございました!またのご来店を心よりお待ち申し上げております!!』
恥ずかしかったけど料理は変わらず文句なしに美味しかったマグノリアを出て、私たちはドレスを作ったお店へ向かう。
その間も街のあちこちから視線を感じるけれど、この視線はこの先だって誰と一緒にいても付きまとうものだから一々気にしていてもキリがないというのは学習済み。
腕を組んで一緒に歩くヴァレは堂々としていて格好いい。
デートという状況もあって私はドキドキしぱなしだった。
「王妃殿下にウォルト伯爵様…!ようこそお越し下さりました!!
それに…まあ…!当店で作らせて頂いたドレスを…!やはりとても良くお似合いです…!着心地は如何ですか!?」
「こんにちは。
ドレスはとても着心地が良いです。素敵なものを作ってくれて…ありがとう。感謝しています。」
「ああ…!なんと勿体ないお言葉でしょう…!
あれからお店の売り上げもとても伸びて、わたくし共の方が感謝しなくてはならないと言うのに!」
「ふふ。良かったですね、サイカ。」
「?」
「貴女は女性たちの憧れなんですよ。」
「え!?」
「ええ!サイカ王妃殿下の類い稀な美しさにあやかりたい女性は沢山いらっしゃいますから!
妃殿下がドレスを注文して下さったので貴族のご夫人、ご令嬢たちからの問い合わせがもう凄いんです!」
「ええぇ…!?」
「どんなドレスを注文したかどんな装飾を選ばれたか、それはもう…!
同じドレスを作って欲しいと注文が殺到して、今現在は新規での注文が受け付けられない程忙しくさせて頂いていますわ…!!」
「そ、それは良かった…のかな…?」
「はい!それはもう嬉しい悲鳴です!!
新規の注文は受け付けていないと申しましたが妃殿下は別ですよ!ご安心下さいませ!!」
「あ、あはは…。ありがとう。」
そうだった。私はこの世界で絶世の美女(本日二回目)を思い出した。
店内を見回すと前に来た時にはなかった私サイズのドレスが数着置かれてあるのに気付く。
「妃殿下サイズのドレスをお買い求めになるご令嬢もいらっしゃるんです!」
「…それは…着れないのに何故でしょう?
何か理由があるのですか?」
「勿論御座います!先程ウォルト伯爵様が申された通り、妃殿下は女性の憧れであり目標!!
妃殿下のように美しくありたい、妃殿下に少しでも近付きたいと思うご令嬢は多くいらっしゃいますから、手元に持っておきたいのでしょうね!」
「なる程。とても良く分かりました。
ふふ。サイカ、女性たちは皆貴女と同じものを買って、少しでも貴女のようになりたい、その美貌に近付きたいと努力しているそうです。素晴らしいですね。」
「美の結晶たる妃殿下は美しくありたいと願う女性たちにとっての最終目標!流行、その最先端でもありますからね!!
身に付けているもの、着ているもの、持っているものを欲しがるのは当然と言えましょう!!」
「あわわ」
美の最終目標とか流行の最先端とか止めて欲しい。
何度も言うが日本での私の容姿は普通だし、自慢じゃないけど私のファッションセンスだって可もなく不可もなく、だ。本当にどこにでもいる、誰でもするレベルのもの。
普段着は主にカジュアル。友人たちと遊ぶ時も薄めの化粧をして服も周りから変に思われない無難なものばかりで大してお洒落なぞしなかった人間。
なのに絶世の美女だとか人気のファッションモデルみたいに言われるのは本当に居たたまれない…。何この気持ち。ぐざぐさくる。
「では今回もサイカに相応しい物を贈らなければなりませんね。
美しいサイカを更に美しく見せる、サイカを引き立てるそんなドレスを。」
「まあまあまあ…!それはいいお考えですウォルト伯爵様!!
腕によりをかけて!従業員、そして携わる者一同、全身全霊を持って承ります!!」
「ええ。私の大切な妻への贈り物です。どうぞ宜しくお願いしますね。
サイカ、型紙はもうありますから今日は時間を掛けて生地や細工、装飾を選びましょうか。」
「あ、はい。」
「ウォルト伯爵様、店長!見本をお持ち致しました!!」
「では見せて下さい。
…妻には私の瞳の色が良く似合いますので、今着ているドライト王国から取り寄せた最高級の生地で、紫色はありませんか?」
「うふふ!ウォルト伯爵様は本当に運が宜しいようです!!
本来こちらの生地は余りにも繊細な為に染色が難しい生地なのです。染色によって生地の質が落ちてしまうのですが腕のいい職人を集めて試行錯誤を重ね、漸く生地の質を落とさずの染色に成功しました!」
「それは素晴らしい!金額はどれほどかかっても構いませんから、是非ともお願いします。あ、レースも見せて頂けますか?」
「喜んで!!」
ヴァレと店長さん、店員さんとでどんどん話が進んでいく…。
このドレスは大金貨一枚……今回は一体、いくらになるんだろうか…恐ろしい。
「ふむ…。こちらと…あとこの柄のレースが良さそうですね。
ウエスト部分ではなく胸下あたりで絞った方がより美しく見えるでしょう。それから…」
ぽつんと取り残された感。
だけどヴァレが凄く生き生きとしてて嬉しそうなのは見ていて楽しい。
じっくりと時間をかけて生地や細工、装飾を選び、半年後の出来上がりを楽しみにお店を出た。
「サイカ、疲れていませんか?」
「ううん!お店でずっと椅子に座ってたから疲れてないよ。」
「良かった。でしたらこれからの時間はゆっくりと歩きながらお店を見回りましょうか。」
「賛成です!」
再び腕を組んでヴァレと貴族街を歩く。
ぴったりと寄り添うように並んで歩いて、時々ヴァレが私にちょっかいを出す。
目が合うと口付けてきたり、突然旋毛に口付けてきたり。
貴族街を歩いているはほぼ全員が貴族。
通り過ぎる貴族たちは私たちのやり取りを見てはぎょっとしたり顔を赤らめたりしているけれど、ヴァレは全く気にしていないようだ。
「何だかすごく楽しそう見える。」
「私ですか?…ええ、とても楽しいです。
私って実は結構嫌な人間なんですよ。
貴女に私が触れて、貴女が私を、可愛い顔で見る。私の事が大好きと分かりやすい顔で、恥ずかしがっているけれど決して嫌ではないと、そんな顔を向ける。
その時の周りの人たちの顔、とても愉快だなって。」
「…わあ…」
「女神と評される貴女に私が触れる。
貴女は嫌がる素振りもせず、可愛い表情で私を受け入れる。
周りの信じられないような視線、妬み嫉みが含まれた感情が私に向けられている優越感は大きくて、実にいい気分です。すみません、幻滅しました?」
「ううん。そういう感情は誰にだって、私にだって当然あるもの。
ただ、ヴァレってやっぱりいい性格してたんだなぁって。結婚して初めて知った事もあって、それが嬉しかったりね。」
「ありがとうございます。
ああでも、誤解しないで下さいね。
周りの反応を楽しんでいますし貴女は私の妻、その事実を周りに知らしめたい、自慢したいとも思っていますけど。
夫婦として、堂々と人前で歩けるのが嬉しいんです。
そして一番は…私の隣に貴女がいる。それが何より嬉しいし楽しい。」
「うん、私も。…私も、ヴァレが私の旦那さんとして隣にいる、それが毎日嬉しいし、今日だって楽しいよ。その、さっきヴァレが言ってた通り…人前でのいちゃいちゃも、恥ずかしいって思うけど、…い、嫌じゃないから!」
私だって、私の旦那さんはこんなに素敵な人なんだって周りに自慢したいと思ってるよ、という気持ちを込めて私から背伸びをしてヴァレに口付ける。
「サ、サイカ…」
「わ、私もヴァレにキスしたくなったからしちゃった。
私からキスして、周りの人たち…きっともっと驚いたよね……んうぅぅ!?」
ぶっちゅう、と、触れるだけのキスじゃなくて激しめのキスから、ヴァレが喜んでいるのが分かった。
昼間には似つかわしくない水音に混じって、大きなどよめきの声が聞こえてくるけれど、この時は全く気にならなかった。
「はあ、…はぁ、…サイカ、もう、帰りましょう…!貴女を抱きたい。今すぐ帰って、貴女を抱かせて下さい…。
口付けだけでは足りません…貴女の服を脱がせて、全身に触れて愛したい…!」
ぼうっと惚けながらこくりと小さく頷くとヴァレは素早く私を横抱きに抱え顔中にキスを落としながら早足で馬車に向かう。
屋敷に着くまで我慢出来なかったヴァレに馬車の中で愛され、屋敷に戻ってからも沢山愛され、翌日には身支度を手伝ってくれる侍女たちに“旦那様と奥様は本当に仲睦まじいですね”と言われ、大勢の人の前でディープなキスをぶちかまし馬車の中であんあん喘ぎ、使用人たちが出迎える中あられもない乱れたドレス姿でヴァレに抱えられ寝室へ向かった出来事を思い出しては一人悶々と羞恥に耐えた私。
ご機嫌な様子で帰宅した夫に“もうデートしない”と八つ当たりのような言葉を投げかければ…。
「残念ですが…ええ、それもいいですね。
サイカの愛らしさを見せつけたいと思っていたけれど、あんな可愛い貴女を見るのは私だけでいい。あれは誤算でした。
休みの日は何処にも出掛けず、一日中愛し合いましょうね。今からとても楽しみです!」
そんな、にっこりといい笑顔の中にやっぱり黒い何かが見える。
我慢をしなくなった夫にこの日の夜もへとへとになるまで愛され…ヴァレとの新婚生活は過ぎて行くのだった。
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