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174 私の可愛い旦那様

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自国の高位貴族や他国の王族、貴族が多く参列してくれたマティアスやリュカ、ヴァレリアとの結婚式とは違い、カイルとの結婚式は殆ど身内だけの式でとても大らかでのびのびとしたものだった。
結婚という大きな舞台ではあるから当然緊張はしたけれど、顔見知りばかりの式は余計な気を張らずに済み、他の三人の時よりも周りを見る余裕さえあった。

「カイル、サイカ。おめでとう。
良い式だった。」

「…まあ、一部こいつの暴走がなければいい式だったな。
…カイル。お前はもう少し自重した方がいいと思うぞ…。」

「ふふ。けれど気持ちはとても良く分かります。
私の時もそう…何とも言えない…感極まってしまうと言いますか。ええ、カイル殿のお気持ちはよく分かりますとも。」

「ははは!いや全く、カイル殿はこういう時も自由だな。
これからもうちの可愛い娘を宜しく頼む。くれぐれも!悲しませないようにな。」

「とうとうカイル殿もサイカと結婚しちゃったかぁ…いいなあ…!
ま、俺はサイカの幸せそうな顔が見れるだけで幸せだからいいけど。
本当にすごく綺麗だよ。ね、義姉上。」

「ええ。何度見てもやはりお美しいと溜息が漏れてしまいます。」

カイルにも私にも繋がりがある人ばかりが集まった式は周りを気にする必要もなく、肩を張らずのびのびと皆が楽しそうにしているのが見て分かる。
“今日は無礼講だ”と事前にマティアスが伝えていた事もあって騎士の皆もマティアスたちが側にいようと沢山話しかけてくれた。

「カイル団長~~!皇后陛下の夫になれるなんて羨ましい…!同じ騎士なのにカイル団長だけずるいですよ~~!!」

「どんだけ善行を重ねれば夫とか羨ましい立場になれるんだ…!!」

「カイル団長が新婚そうそう帝都を長期で離れる任務につけばいいのにっ…!!」

「その間皇后陛下の側でいてお慰めしたい…!」

「おい止めろ…!社会的に死ぬぞ…!!」

「物理的にも死ぬぞ…!!」

あちこちで大きな笑い声が聞こえてくる、そんな雰囲気だからかカイルも笑顔が多くて私も嬉しい。

「カイル、おめでとさん。
まさかお前の結婚式に参加出来るとは思ってなかったんだが……参加出来て良かったわ。
まああれだ。しっかり守って幸せにしてやれよ。それからお前も幸せになれ。」

「…団長、…うん。
サイカの事は、絶対守るし、幸せに、する。
それから、俺、サイカと出会ってから、ずっと幸せだから、大丈夫。ありがと。」

「さっそく惚気かよ。」

「兄さん!義姉さん!本当におめでとう!!
義姉さんはとても美しいし、何より兄さんが幸せそうで僕は本当に嬉しいよ…!ほら父さんも!」

「あ、ああ。……カイル、おめでとう。
その、お前が幸せそうで良かった。
…皇后陛下、色々と…ありがとうございます。
そして…カイルの事、どうか末永く宜しくお願いします。」

「…父さん…アレクも、ありがと。」

「お二人共、カイルの事…大切にしますから任せて下さい。
それから家族として…こちらこそ末永く宜しくお願いします。」

久しぶりに会ったカイルのお父さんと弟。
三人の空気、雰囲気はとても良くなっていて初めて挨拶したあの日から隨分と仲も深まっているように思う。
反対に義母と義妹にお礼の挨拶をすれば何とも気まずそうな態度。
カイルの態度を見てもこの二人とは相変わらずなのだなと思ったけれど、私はカイルに二人と歩み寄れとは言わない。
人間、誰もが分かりあえるとは思っていないし、仲良くなれるとも思っていないから。
マティアスと皇太后の関係が決して母子に戻らないのは二人の強い意志があるからで、カイルもまた、義母と義妹の二人はカイルにとって本当の意味で家族ではないのだ。
形だけ家族であって、カイルにとって二人はどうでもいい存在。これからも仲良くしていくつもりはなく、かといって別に敵対するつもりもない…本当にどうでもいい存在なんだなと感じる。
義母と義妹に関してはカイルの意志に迷いがないのだからそれでいいと思う。

「今日は、俺とサイカの結婚式に参列して頂いて、ありがとうございました。
俺は、こういう…人前で何かを話す事は、得意じゃない…けど、でも、来てくれて、祝ってくれて、嬉しい、から…感謝の気持ち、伝えたいから…。
サイカと結婚出来て、本当に嬉しい、幸せ、…でも、同じくらい、皆から祝福されてるのも、嬉しいって、思ってる。…本当に、ありがとうございます。」

「カイル…」

拙くとも嬉しいと感謝の言葉を伝えたカイルを見る皆の目はとても温かい。
特にカイルのお父さんや弟、ダミアン団長がカイルに向ける視線はとびきり優しい愛情に溢れたものだった。

「カイル愛されてるなあ。
ふふ、カイルを泣かせたら私の方が怒られそう。」

「?」

「嬉しいね、カイル。」

「…ん、…嬉しい。」

目尻と耳を赤くさせふにゃりと子供みたいに笑うカイル。
そんなカイルを可愛いなあ、と思ったのはきっと私だけじゃないはずだ。
それからもカイルはずっと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
カイルも笑顔、皆も笑顔、私も笑顔。
それだけで今日の結婚式はとてもいい、最高の式だったと言える。
何より、カイルが愛されていると実感出来たのが私は一番嬉しかった。



「サイカ、お疲れ様。」

「カイルもお疲れ様でした。
今日はすごく楽しかったね。」

「ん、…楽しかった。…し、嬉しかった。」

「うん!すごく伝わってたよ。」

「…全部、サイカのお陰。
俺が、父さんとアレクと今みたいな関係になれた、のも。団長たちとの事も、全部、サイカのお陰。」

「…ダミアン様たち…?」

「ん。」

結婚式後のパーティーも終わりすっかり暗くなった頃、一日の汗を流してカイルと私の新居、二人の夫婦の部屋に行くとソファーに座っていたカイルが立ち上がり、両手を広げて私を迎え抱きかかえる。
そのままベッドの端まで行くと腰を下ろし、私はカイルの膝の上へ。
そしてカイルは嬉しそうにじっと私を見つめ、私と出会う前までの事を語った。
騎士見習いの頃からの付き合いであるダミアン団長はカイルがこの世界で醜い容姿であっても差別せず周りと同じ扱いをしてくれた。
信頼や信用、尊敬はしていたけれどずっと上司と部下の関係だった。
私に出会うまで、そう思っていたのだとカイルは言った。

「本当は、それだけじゃないって…きっと心の奥では分かってた、と思う。
でも、認めるの、怖かった…から。だから、気付かない、振り…してたんだと、思う。
誰かに、受け入れられる…そんな事、なかったから。」

本音を聞くまで、父親は自分に無関心だと思っていたカイル。
実の母親に殺されかけた事もある。
新しい義母ともうまくいかず、生まれた弟は屋敷の誰もに愛される存在なのに、自分は誰からも愛されない、疎まれる存在。
当時のカイルが出来た事は誰とも話さず自分の存在を小さくする事だった。
そんな環境で育てば誰かからの好意や思いを素直に受け入れられるはずもない。
疑って当然だと私も思う。私がカイルの立場だったなら、同じく人の好意を簡単には信じられないだろうから。

「サイカは、言葉と態度で、正面から俺に好意を伝えてくれた。優しいも、偽物じゃないってすぐ分かるくらい、分かりやすかった。
サイカを信じたいって、思って、サイカと過ごす内に、俺も、変わっていった。
敵、だけじゃない。俺を、認めてくれている、人だって、いる。そう思って、周り…見た。
団長、俺を、認めてた。ずっと前から、そうだったのに…。」

「…うん。」

「気付いたら、見えてきた事、沢山あった。
団長、だけじゃなかった。…一緒に仕事してきた、部下たちだって、…それから、父さんや、アレクもそうだった。
気付けたの、サイカがいたからだ…サイカと出会ったから、俺、人の心、思い…素直に見ようって、思えた…。」

「そっか。…カイルがダミアン様たちの思いに気付くきっかけになれてたなら…それはすごく嬉しい。」

「うん。…父さんやアレクの事も、サイカがきっかけを作ってくれた…。
俺は、諦めてたのに、サイカが、俺の代わりに、頑張ってくれた…。俺、それが嬉しくて、…もう一回だけ、頑張ってみようって、思えた。
結果がどうなってもいい。…俺の大好きな人が、俺の為に、立ち向かってくれてる、頑張ってくれてる、なら、俺も、もう一回だけ、頑張ってみようって…。」

じっと見つめていたカイルの目にじわりと涙の膜が張り、つう…と頬に落ちていく。

「頑張ったら、最高の結果になった。
父さんと、アレクと、本当の家族になれた。
結婚式の前に父さんと話して…母さんの事も、少し分かった。
もう、どうにもならないけど、…それで良かったんだ。
これまでがあるから、今の幸せに繋がったって、今はそう、心から思えるよ。」

「…そっか。」

「父さん、アレクは、俺の家族。
団長は上司で、師匠で、友で、血は繋がってないけど…俺にとって、兄さん、みたいな人。
気付いて、自分の中で認めたら…あっという間だった。
全部サイカと出会えたから。…俺、サイカが好きだよ。大好きだ。…いるだけで…こんなにも、俺を幸せにしてくれる、大好きな人。俺の、奥さん。」

潤んだまま赤くなった目尻を下げてふにゃふにゃと嬉しそうに笑うカイルの何と可愛い事だろう。
子供みたいな人。純粋で優しい、素直な人。
この人がずっと笑顔でいられるように守ってあげたくなる。
可愛い可愛い、私の旦那様。

「カイルも凄く頑張った。それから、カイルを愛してる人たちも頑張った。だから今の関係があるんだよ。」

「…うん、…分かる…今は、よく、分かるよ…。」

カイルの涙を拭おうとすると、カイルは素直に目を瞑る。

「今日のカイルは泣き虫さんだ。」

「ん、幸せ…だから。泣きたくなるくらい、すごく、幸せだから…」

「ふふ、じゃあ仕方ないね。」

「…サイカ。」

「ん?」

「…俺と出会ってくれて、ありがとう。
俺を、一人の人間として扱ってくれて、ありがとう。
俺を好きになってくれて、ありがとう。
俺の奥さんになってくれて、…本当にありがとう。
俺、…サイカの旦那さんになれて…すごく嬉しい…幸せだ…。」

きゅうううん、と。盛大に胸が鳴った。
もうもう!なんてなんて可愛い人だろう!
母性やら色んな感情ものが込み上がって、私はカイルを力いっぱい抱き締める。
この可愛い旦那様が好きだ。大好きだ。とてつもなく愛おしい。
そんな気持ちのままに抱き締め、顔中にキスを繰り返す。

「カイル、好き。大好き…!
カイルも、カイルも私と出会ってくれてありがとう、あの時、勇気を出して月光館に会いに来てくれて、ありがとう…!
私を好きになってくれてありがとう、私の旦那様になってくれて、ありがとう…!私も嬉しい、すごく、嬉しくて幸せ…!」

溢れる気持ちのままカイルに思いの丈を伝えた。
私の想い全部が伝わるとは思っていないけれど、それでも伝えたくて堪らなかった。

「私、カイルとずっと一緒にいたい。お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、カイルと夫婦で、家族でいたい。
カイルの事が大好き。こんなにも、こんなにも愛してる。すごく、すごく大好きで、すごく愛しい。
カイル、愛してる。愛してるよ…!」

「…!」

自分からキスをして唇を離せば顔を盛大に赤らめたカイルがいた。
大きく開いた目は潤んでいて戸惑ってい様子だったけれど、でも直ぐに感極まったものへ変わり、カイルは大きな両の手のひらで自分の顔を覆った。

「~~~…!!」

ふるふると小さく震えながら、隠れていない耳は真っ赤。
可愛い可愛い。可愛いカイル。
私の可愛い旦那様。
子供じゃなくて大人なのは十分理解しているけれど年上とは思えないカイルの可愛さに萌は止まらなくて、私はカイルのふわふわな髪を撫でる。

「…え。」

だけど、可愛いのはここまで。
どうやら私はやりすぎてしまったらしく、掴まれた両手から覗くカイルの顔は……

「ダメだよ、サイカ。
あんまり可愛いことすると、手加減出来ないから。
…それももう、遅いけど。」

さっきまでとは全然違う、強烈な色気を放つ大人の男の顔になって私を組み敷いた。

「…あ…!」

「俺、今日の初夜…凄く楽しみにしてた。
今日も、陛下の時も、皆との結婚式の時も思ったけど…花嫁姿のサイカ、いつも以上に、凄く綺麗だから…あんまりにも綺麗で、人間離れしてるから…俺ので汚したくて、堪らなかった。
多分、陛下たちも同じ事を思ったんじゃないかな…。」

「…んっ!…カイル、」

初夜の為に用意された寝間着はネグリジェの上にガウンを羽織るという心許ないもので、あっという間に脱がされてしまう。

「…やっと、俺の番で、綺麗なサイカを汚せるって…見て、…すごく大きくなってる…。
…サイカのいたニホンでは、これ…おちんちんって、言うんだっけ。ほら、触ってみて。」

「え、え…、ちょ、ちょっとまっ…!」

カイルは私の手を取り、自分の下半身に触れさせる。
ズボンの上からでも分かる、パンパンになっているカイルのそれはとても窮屈そう。
ふー、ふぅー、と荒い息でカイルがズボンを下げると、ぶるんっ!と顕になる凶悪な男根。
可愛い顔に似合わない長く雄々しいそれはびくびくと脈打ち、先端から雫が垂れようとしていた。

「…サイカ。…覚悟、してね。」

「…な、なんの…覚悟…?」

「…まずは新婚休暇の一週間……俺、サイカ…離すつもり…ない、から。
休暇が終わっても、サイカがここで、俺の奥さんとして…一緒に暮らしている間…サイカの事、毎日、抱くつもり。」

にこりと笑ったカイルの瞳が怪しく光って、背筋がぞわりとした。



「あ、あっ、ああ、やだ、やだぁ…!」

「…すごい……サイカ、ずっとイってる…。
イくたびにきゅ、きゅって、俺の指締め付けてくるよ…?」

「だめ、また、またぁ…!」

「…ふふ…うん、またイった…可愛い。可愛い、サイカ…。」

「カイっ、カイル、も、もう、いいから、もう、いいから、」

「…ごめんね、俺も、すぐにでもサイカの中…入りたい、…けど、でも…すごくキツくなってたから…沢山、ほぐしておかないと…心配。」

「んんんぅ~~…!!」

始まったのは執拗なくらいの長い前戯でカイルは何度も達している私の反応を見て楽しんでいる。
長くてごつごつした指で胸を弄られたり、膣内の浅い所を引っ掻いたり、奥まで入れて掻き混ぜたり、舌で舐めたり、吸ったり、啜ったり。

「…すごい…べちゃべちゃ……サイカの匂い、やらしい…美味しい…、…すき。」

私の中から引き抜いた指を舐め、見せつけるように食む。
ああ、漸くこの過ぎる快楽が一段落するんだ…と安堵してカイルを見れば…うっとりと。
恍惚に歪むその顔はとんでもない色気で、きゅん、とお腹の奥が疼いた瞬間、指よりもずっと太くて長いモノが私の中に入った。

「ーーーーーーー!!」

「……あ~~…、っ、…久しぶりの、サイカのなか、…熱くて、…はぁ…気持ちいい…、」

「ーーーーー、」

「…は……サイカ、イっちゃった…?まだ、先っぽが入っただけ、だよ…?
ほら、…味わって。俺も、味わう…からっ…!」

ぬぅ、とゆっくり入ってくる異物が肉を掻き分けて入ってくる感覚。
過ぎる快楽で敏感になった私の膣は意識せずともカイルの形を分かってしまう。
長い陰茎は芯があるように硬くて、脈打って、重たい。

「あ、あ、あ、ぁあ、」

これは何。生きてる。生き物が、私の胎内にいる。
ずりずりと這うように私の胎内、奥へと進んでいるみたい。恐い。気持ちいい。恐い。

「あ、ああ、ま…って、…ま、…ぁっ…」

ぎゅうと、カイルの逞しい胸板と腕に包まれた。
ぎちぎちと苦しいくらい隙間なく抱き締められ、耳元でカイルの吐息が聞こえてくる。

「サイカ……愛してる。…愛させて。」

何かに耐えるように“愛させて”と言うカイル。
ずっと、愛は優しいものだと思ってた。
時々厳しかったけれど、いつだって私を愛してくれた両親のように優しいものだと思っていた。
カイルやマティアス、リュカ、ヴァレリアに出会うまで。
逃さないように私をすっぽりと覆っている逞しい体。
身動き出来ないよう私を抱き締める腕の強さ。
逃げられるわけもない。
カイルの愛も皆の愛も優しいだけじゃない。
今だってそうだ。女の私には敵わない男の力、逞しい体で身動き取れないようにまでして私の胎内を好き勝手に犯す。
ごつごつと最奥を小突いて、こねくり回しては逃げ場のない子宮に欲をぶつけてくる。
理性も何も等に崩れ、どろどろのぐしゃぐしゃになったみっともない姿を晒し何度も絶頂を迎える私を見て悦に浸って、まるで此方の事なんておかまいなしで休む暇なく犯す。
最早人の言葉ではなく、獣のような汚い喘ぎ声しか出なくなろうとも、涙や鼻水、涎で私の顔が汚れようと意識が飛ぼうとも、カイルは、彼らは私を自分勝手に愛す。
愛は優しいだけじゃない。狂気を含んでいるのだと、私は彼らに抱かれるたび思い知る。
自分勝手で独り善がりとも呼べる重たい、決して優しくはない愛を、カイルも彼らも必死に私へとぶつけてくる。

「サイカ、サイカ、サイカっ…!サイカ、ぁ、サイカ、はっ、サイカ…!」

だけど、そんなカイルを、彼らを、私は可愛いと、愛しいと思う。
普段よりずっと熱い体、快楽を堪える息遣い、熱に浮かされたように私の名前を呼ぶ声は少し掠れて、どれだけ一方的に蹂躙じみた事をされようとも、どれだけ女としての自分が無力であるかを分からせられようとも、ただ一心不乱に私の名だけを呼び、私を犯す様を見せつけられれば…カイルがどれだけ私を求めているか分かってしまうから。
愛したい、愛したい。愛してる。どうしていいか分からないくらい愛してる。狂おしい程愛してる。だから同じくらい、愛してほしい。どうしていいか分からなくなる程、狂おしい程求めて、愛して欲しい。
どうすれば自分の愛が私に伝わるのか。
どうすればこの、言葉では到底伝わらない愛が私に伝わるのか。
独り善がりで自分勝手な伝え方だけど、まさにこの瞬間に一番伝わっているのだから間違ってはいないのだ。
カイルの、彼らの、決して優しくない愛が。

「サイカっ…ぁあ、サイカ……っ、サイカ、…っ…!」

好き勝手に犯されているのは私なのに、カイルの泣きそうな声。

「は、…くぅ……サイカ、…サイカ…」

私を好き勝手に犯しながら、寂しそうに、苦しそうに顔を歪めるカイル。

「ぉっ、あぐ、あ、あっ、あーー、あーーー…!」

「…サイカ、…サイカっ……んっ、んっ、ふぅ、んっ…!」

好き勝手に犯して、キスと舌で唇を塞いで、狂いそうな快楽を与え愛してるの言葉も言えなくさせているのはカイルなのに、愛してると言ってと私の言葉を求めている。
ああもう、なんて自分勝手で、なんて可愛いひとなんだろう。
何も心配する事なんてない。
子供のような貴方も、大人の男の貴方も、自分勝手で優しくない愛をぶつけてくる貴方も、私は等しく愛してるのに。
全部カイルだから、愛してるのに。
等に蕩け狂っている思考で精一杯、掠れた声でカイルと名を呼べば。

「…ぁ、……しあ、わせだ……俺も、俺も、…サイカを愛してるっ…」

私の可愛い夫が、ぽろぽろと子供のような涙を流して笑った。
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