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第四章 時に愛は、表現を間違えがち
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「そもそも、なぜコッサートをジュダに見張らせたか、というとだな」
仰向けに横たわった真純の隣に座り直すと、ルチアーノは真剣な声音で語り始めた。真純は、仕方なく耳を傾けた。
「マスミを襲った、チロ・ペサレージという男……。あの男とコッサートは、同じ指輪をしておったのだ」
「ええ!?」
さすがに、真純も意識がしゃっきりした。ルチアーノの顔を見れば、彼は大真面目な顔で頷いた。
「元々、近衛騎士団に属する者が装身具を着けること自体珍しいが、コッサートがはめていたのはエメラルドの指輪だったゆえ、印象に残っておった。近衛騎士団の制服は、黒と紫色で統一されている。なぜかと言うと、エリザベッタ王妃陛下の髪と目のお色だからだ。国王陛下が、彼女に敬意を表してデザインさせた。そのカラーにエメラルドは、配色として不釣り合いだ」
ルチアーノの観察眼に、真純は改めて感心した。
「ペサレージという人も、エメラルドの指輪を?」
そういえば彼を捕らえた時、ルチアーノは指輪に関心を寄せていた、と真純はおぼろげながら思い出した。
「さよう。そしてその指輪は、ペサレージを雇った者が褒美として与えたもの。つまり、二人の雇い主は同一人物だ」
ルチアーノは、軽く口の端を上げると、扇の先端で真純の乳首をちょいと突いた。妙な声が出そうになるのを必死に抑えて、真純は尋ねた。
「つまり……、パッソーニ?」
「いや」
ルチアーノは、即座に否定した。
「ペサレージはパッソーニに雇われたと証言していたが、あれは嘘であろう。あるいは、命じた者にパッソーニの使いだと言われ、そう信じ込んでいる可能性がある。考えてもみよ。パッソーニが、コッサート、ペサレージの両名を雇っていたのであれば、なぜ二段階に分ける必要が? 旅の初日に、コッサートにマスミを襲わせれば済むことだ。わざと期間を空けたあたり、別人物の指示と見せかける偽装であろう」
「じゃあ……、一体誰が……」
「これから動き出す人物が犯人だ」
ルチアーノは、短く答えた。
「ジュダによれば、コッサートは、我々の様子を細かく報告しているとのこと。それゆえ、私は一つ罠を仕掛けた。それに乗って行動を起こす者がいれば、その者こそ黒幕ということだ。今は、これしか言えぬ」
そう言うとルチアーノは、真純の下半身に視線を走らせた。
「そろそろ、ほぐれたであろう。続きをするとするか」
そう言われて、真純ははたと気付いた。ルチアーノの話に気を取られていたが、自分がとてつもなく恥ずかしい体勢であることに。
「で……、ルチアーノ。あの……」
「そのまま、持っていよ」
有無を言わせぬ口調で命じると、ルチアーノは真純に覆いかぶさった。真純自ら開いた脚の間に躰を割り込ませ、素早く衣服を脱ぎ捨てる。やがて、火のように熱い塊が押し付けられた。
「ル……、ああっ……」
一気に突き入れられて、真純は目を剥いた。十分に慣らされたせいで、そこはあっさりとルチアーノのものを呑み込んでいく。二度、三度と突かれただけで、真純は早くも昇りつめそうになった。
「あ、も、ダメ……」
だが、身を震わせて達しそうになったその時。ルチアーノは、不意にそこに手を伸ばした。縛めるように、根元を押さえる。
「あっ……、何で……」
「共にいこう」
そう囁くルチアーノの笑顔は、まさに極上で、真純はそれ以上何も言えなくなった。とはいえ、堰き止められた快感は、行き場が無い。髪を振り乱し、身をよじって真純は悶えた。
「あああっ……、あンッ……、あっ……、も、う……」
対するルチアーノは、余裕の表情で、ゆるゆると腰を動かしている。絶妙に良い所を擦り立てられて、真純はのけぞった。口からは、後から後から嬌声が飛び出して、止まらない。そんな時、ルチアーノが呟いた。
「この宿は、壁が薄そうだ」
「――!」
とたんに真純は、青ざめた。そういえば、以前の宿とは違うのだ。わざと安い所を選んだため、設備はかなり悪い。そして、隣の部屋にはフィリッポが泊まっているではないか。
真純は、反射的に脚から手を離していた。だが、口を塞ごうとしたその手は、ルチアーノによって封じられた。強引に、脚へと戻される。
「なんっ……」
少なくとも、ルチアーノの片手はもう空いているというのに。抗議を込めてにらみつければ、ルチアーノはにやりと笑った。
「自ら脚を開くそなたの格好が、そそるのでな」
そう言うとルチアーノは、真純の胸へ顔を伏せた。ぱくりと乳首を咥えられ、真純はまたもや悲鳴を上げた。
「あっ……、や、です、もう……」
「ここは、嫌とは言っていないようだが? 中も、うねるように絡みついてくる」
ルチアーノは、真純のものを扱き上げると、力強く腰を突き入れた。三カ所への責めに、真純は気が遠くなってきた。せめて声を我慢したいのに、手を使うことは禁じられている。キスも、今日に限って一度もしてくれない。
(まさか、キスしてくれないのって、唇を塞がないため……?)
ルチアーノの雄が、中でひときわ膨らんだのがわかった。同時に、性器を縛めていた指が外れる。真純は、絶叫していた。
「――ああああっ……!」
二人の熱が、同時に爆ぜる。真純は、思わず涙を流していた。快感のためか、悔しさのためか、もう自分でもわからない。すると、ルチアーノの唇が、そっと目尻に落とされた。涙を拭い取り、続いて唇に口づける。今夜初めての、そして最後のキスだった。
仰向けに横たわった真純の隣に座り直すと、ルチアーノは真剣な声音で語り始めた。真純は、仕方なく耳を傾けた。
「マスミを襲った、チロ・ペサレージという男……。あの男とコッサートは、同じ指輪をしておったのだ」
「ええ!?」
さすがに、真純も意識がしゃっきりした。ルチアーノの顔を見れば、彼は大真面目な顔で頷いた。
「元々、近衛騎士団に属する者が装身具を着けること自体珍しいが、コッサートがはめていたのはエメラルドの指輪だったゆえ、印象に残っておった。近衛騎士団の制服は、黒と紫色で統一されている。なぜかと言うと、エリザベッタ王妃陛下の髪と目のお色だからだ。国王陛下が、彼女に敬意を表してデザインさせた。そのカラーにエメラルドは、配色として不釣り合いだ」
ルチアーノの観察眼に、真純は改めて感心した。
「ペサレージという人も、エメラルドの指輪を?」
そういえば彼を捕らえた時、ルチアーノは指輪に関心を寄せていた、と真純はおぼろげながら思い出した。
「さよう。そしてその指輪は、ペサレージを雇った者が褒美として与えたもの。つまり、二人の雇い主は同一人物だ」
ルチアーノは、軽く口の端を上げると、扇の先端で真純の乳首をちょいと突いた。妙な声が出そうになるのを必死に抑えて、真純は尋ねた。
「つまり……、パッソーニ?」
「いや」
ルチアーノは、即座に否定した。
「ペサレージはパッソーニに雇われたと証言していたが、あれは嘘であろう。あるいは、命じた者にパッソーニの使いだと言われ、そう信じ込んでいる可能性がある。考えてもみよ。パッソーニが、コッサート、ペサレージの両名を雇っていたのであれば、なぜ二段階に分ける必要が? 旅の初日に、コッサートにマスミを襲わせれば済むことだ。わざと期間を空けたあたり、別人物の指示と見せかける偽装であろう」
「じゃあ……、一体誰が……」
「これから動き出す人物が犯人だ」
ルチアーノは、短く答えた。
「ジュダによれば、コッサートは、我々の様子を細かく報告しているとのこと。それゆえ、私は一つ罠を仕掛けた。それに乗って行動を起こす者がいれば、その者こそ黒幕ということだ。今は、これしか言えぬ」
そう言うとルチアーノは、真純の下半身に視線を走らせた。
「そろそろ、ほぐれたであろう。続きをするとするか」
そう言われて、真純ははたと気付いた。ルチアーノの話に気を取られていたが、自分がとてつもなく恥ずかしい体勢であることに。
「で……、ルチアーノ。あの……」
「そのまま、持っていよ」
有無を言わせぬ口調で命じると、ルチアーノは真純に覆いかぶさった。真純自ら開いた脚の間に躰を割り込ませ、素早く衣服を脱ぎ捨てる。やがて、火のように熱い塊が押し付けられた。
「ル……、ああっ……」
一気に突き入れられて、真純は目を剥いた。十分に慣らされたせいで、そこはあっさりとルチアーノのものを呑み込んでいく。二度、三度と突かれただけで、真純は早くも昇りつめそうになった。
「あ、も、ダメ……」
だが、身を震わせて達しそうになったその時。ルチアーノは、不意にそこに手を伸ばした。縛めるように、根元を押さえる。
「あっ……、何で……」
「共にいこう」
そう囁くルチアーノの笑顔は、まさに極上で、真純はそれ以上何も言えなくなった。とはいえ、堰き止められた快感は、行き場が無い。髪を振り乱し、身をよじって真純は悶えた。
「あああっ……、あンッ……、あっ……、も、う……」
対するルチアーノは、余裕の表情で、ゆるゆると腰を動かしている。絶妙に良い所を擦り立てられて、真純はのけぞった。口からは、後から後から嬌声が飛び出して、止まらない。そんな時、ルチアーノが呟いた。
「この宿は、壁が薄そうだ」
「――!」
とたんに真純は、青ざめた。そういえば、以前の宿とは違うのだ。わざと安い所を選んだため、設備はかなり悪い。そして、隣の部屋にはフィリッポが泊まっているではないか。
真純は、反射的に脚から手を離していた。だが、口を塞ごうとしたその手は、ルチアーノによって封じられた。強引に、脚へと戻される。
「なんっ……」
少なくとも、ルチアーノの片手はもう空いているというのに。抗議を込めてにらみつければ、ルチアーノはにやりと笑った。
「自ら脚を開くそなたの格好が、そそるのでな」
そう言うとルチアーノは、真純の胸へ顔を伏せた。ぱくりと乳首を咥えられ、真純はまたもや悲鳴を上げた。
「あっ……、や、です、もう……」
「ここは、嫌とは言っていないようだが? 中も、うねるように絡みついてくる」
ルチアーノは、真純のものを扱き上げると、力強く腰を突き入れた。三カ所への責めに、真純は気が遠くなってきた。せめて声を我慢したいのに、手を使うことは禁じられている。キスも、今日に限って一度もしてくれない。
(まさか、キスしてくれないのって、唇を塞がないため……?)
ルチアーノの雄が、中でひときわ膨らんだのがわかった。同時に、性器を縛めていた指が外れる。真純は、絶叫していた。
「――ああああっ……!」
二人の熱が、同時に爆ぜる。真純は、思わず涙を流していた。快感のためか、悔しさのためか、もう自分でもわからない。すると、ルチアーノの唇が、そっと目尻に落とされた。涙を拭い取り、続いて唇に口づける。今夜初めての、そして最後のキスだった。
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