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第六章 魔物なんて狩れません!

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 一瞬、頭が真っ白になる。ややあって、真純は叫んでいた。

「――どうしてです!? 次期国王なら、お妃をお迎えにならないと……。前に、ジュダさんにもそう仰っていたではないですか」

 ルチアーノは、やや決まり悪そうな顔をした。

「あの時のジュダは、私情に駆られて暴走していたからな……。私への想いを断ち切らせるためには、ああ言うしかなかったのだ。実を言うと、もとより、妃を迎えるつもりは無かった。なぜかわかるか?」

 ルチアーノは、微笑を浮かべた。

「生涯に一人の、愛する相手と出会ってしまったからだ。その者以外は娶らないと、私は心に決めた」

 ルチアーノが、真純の手の甲にキスをする。真純は、まだ混乱していた。

「ですが、お妃を迎えられないとなると、色々まずいのでは? その、跡継ぎ問題、とか」
「私の子に王位を継がせなけば、ということは無い。要は、現国王のお血を引いていればいいのだ。最適な方がおられるであろう?」

 あっと、真純は気が付いた。

「ファビオ殿下、ですか?」
「さよう。そもそもの話、ファビオ殿下こそがミケーレ二世陛下の跡を継ぐのが、本来のあり方だったのだ。そしてその後は、彼の子、孫、と続くのが正道。たまたま殿下がお小さかったゆえ、私が間に挟まっただけだ」

 ルチアーノの語りはよどみなく、黙って聞いていると、全て受け入れてしまいそうになる。冷静にならねば、と真純は自分を戒めた。

「しかしですね、でも、ええと……」

 口をパクパクさせていると、ルチアーノはおかしそうに笑った。

「大胆な告白をした割には、些細なことでうろたえるのだな」

 全く些細ではないが、と真純は内心突っ込んだ。ルチアーノが立ち上がり、真純の肩に手を置く。じっと真純の瞳を見つめながら、ルチアーノは真摯に語りかけた。

「では、こう言えば納得するか? そなたは元の世界を捨て、この国に留まるという重大な選択をしたのだ。ならば私も、それに見合う決断をすべきであろう?」
「殿下……」

 胸がいっぱいになって、返す言葉が見つからない。ひたすらルチアーノを見つめ返していると、彼は優しく尋ねた。
 
「返事は? 私の伴侶になってくれるか?」

 こくりと、真純は頷いた。

「僕でよろしければ、喜んで。ふつつか者ですが、その……」

 言葉の途中で、真純はルチアーノに抱きしめられた。激しい口づけが襲う。 
 
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