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第十一章 最強魔法対決!

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(そういえば……)

 真純は、思い出していた。パッソーニは、宮廷で実権を握った際、ライバルになりそうな魔術師を全員国外追放したそうだ。それが、今目の前にいる彼らだというのか。

「こちらこそ、お目にかかれて嬉しい。ご協力、感謝申し上げる」

 ルチアーノは、魔術師たちに向かって微笑んだ後、セバスティアーノをじろりと見た。

「お粗末な魔術師ぞろいで、失礼した。たった今、新たな魔術師たちも到着したが、彼らと対決なさるか?」

 さすがに、セバスティアーノも青ざめた。

「い、いや……。これは、対等な戦いとは言えぬ。私はこれまで散々魔法を駆使してきたが、この者たちは今到着したばかりでは無いか。同じ条件で戦わせるなど、卑怯であるぞ!」

「卑怯は、どちら……」

 ジュダが口を挟みかけたが、ルチアーノは押し止めた。

「セバスティアーノ陛下の言い分も、もっともだ。では、どうすると?」
「一時、休戦を願いたい」

 セバスティアーノは、かすれた声で答えた。ルチアーノは少し思案すると、こう告げた。

「承知した。では三日後、同時刻にここで」
 
 セバスティアーノは黙って頷くと、ホーセンランド兵らに向かって、退却の合図をしたのだった。


 その後、アルマンティリア一行と魔術師たちは、トッティ兄弟の案内で領主城に入った。疲れ切った騎士らは、湯浴みもせずに与えられた部屋に引っ込み、爆睡し始めた。一方、真純とフィリッポ、ジュダの三人は、ルチアーノの部屋に集合した。

「なぜ、休戦に応じられたのです? それも、三日も猶予を与えるなんて」

 顔を合わせるなり、ジュダはそう言いだした。不満げに、頬を膨らませている。

「せっかく、魔術師たちが助っ人に来てくれたというのに!  あの状況なら、確実に勝てていましたよ」
「魔法で勝つのは本意ではないと、言ったであろう」

 ルチアーノは、厳しい声音で答えた。

「私が目指すのは、あくまで剣での勝利。その点、セバスティアーノ国王の申し出は、都合が良かった。国王の魔法に頼り切って楽をしていたホーセンランド兵たちよりも、アルマンティリアの騎士たちの方が、遥かに疲労していたからな。三日あれば、彼らも体力を回復できるだろう」

 騎士たちの様子を思い出したのか、ジュダは渋々といった様子で頷いた。

「それは、確かに」
「そして……、期間を取ったのには、他の理由もある。今は言えぬが」

 ルチアーノは意味ありげな笑みを浮かべると、三人の顔を順繰りに見つめた。

「とはいえ。皆の魔法には、本当に助けられた。私一人では、風しか操れぬからな。特に、フィリッポ殿は大活躍だった。心から、礼を言う」

 ルチアーノは、自分の剣を大切そうに撫でると、微笑んだ。フィリッポのおかげで、それは完全に元の形に戻っている。他の者たちの剣も、同様だ。

「いえ、とんでもない。もう少し速く修復できればよかったのですが。まだまだ修行が必要です」

 フィリッポは、悔しそうな表情を浮かべている。真純も恐縮した。

「僕も、水を出すくらいしかできなくて。もっと頑張りますね」
「あんたら、嫌味か?」

 うなるような声でそう言ったのは、ジュダだ。口をへの字に曲げて、真純とフィリッポを見つめている。

「二人とも、十分役に立っただろうが! 俺なんて、あんな小さい火しか出せなかったんだぞ? くそっ。セバスティアーノ国王にせせら笑われて!」

 ルチアーノは、そんなジュダを励ますように語りかけた。

「初回なのだから、仕方なかろう。それにそなたは、剣術で十分活躍してくれたではないか。両方こなせる者など、そうそうおらぬぞ?」
「そうですよ。さっき呪文を覚えたばかりなんですから」

 真純も、フォローした。一方フィリッポは、微妙な顔をしている。

「しかし、さすがにあの小ささは……。もしや、短縮詠唱を? 時間が足りないからと?」
「いや? 教わった呪文を、そのまんま詠唱したんだけど。大体、短縮のやり方なんて知るわけない」

 ジュダが、即座に答える。フィリッポは、頭を抱えてしまった。

「短縮ではないと!? 正規の呪文で、あの小ささ……。火の発生は、基本中の基本だというのに。『一番易しい魔術書』では難しかったでしょうか。『よいこのまほうずかん』を持って来るべきでしたかね」
「てめ……、馬鹿にしてんのか!」

 ジュダが、憤然と立ち上がる。真純は、慌ててフィリッポに話しかけた。

「追い打ちをかけるのは止めてください! せっかく三日あるんだから、ジュダさんだってその間に練習できますよ。他の魔術師さんたちだって、助けてくださるわけですし」

 折しも真純がそう言った時、ノックの音がした。先ほどの魔術師たちが、顔をのぞかせる。

「改めまして、ご挨拶をと思いまして」
「こちらこそ、礼を言いたいと思っていた。どうぞ、入られよ」

 ルチアーノは、機嫌良く答えた。
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