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第五章 祝福
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「真凜、走っちゃダメだ」
そういう藤堂も、はやる気持ちを抑えられないようだ。彼は、早足で庭園に入ると、一本の木の下にたどり着いた。真凜に向かって、手を広げる。
「おいで」
真凜は、彼の腕の中に飛び込んだ。
(類人……、ルイ……)
腹に負担をかけないように、だがしっかりと、藤堂は真凜を抱きしめる。ぎゅっと彼の首にすがりつきながら、真凜は呟いた。
「ここでいつも、会っていたね……」
「そうだよ。二人で過ごした場所だ。最後の日に、薔薇をプレゼントしたのも……」
藤堂も、感慨深げな声を上げる。しばらくの間、二人はじっと抱き合っていた。心地良い風が、吹き抜けていく。永遠に、こうしていたいくらいだった。
「もっといたいけど……。そろそろ行こうか。身体を冷やすとよくない」
うん、と藤堂の顔を見上げて、真凜はドキリとした。一瞬、彼の髪が金色に見えたのだ。
「何?」
藤堂が、きょとんとする。瞬きしてもう一度見れば、彼はいつもの見慣れた黒髪に戻っていた。
(……錯覚か)
「あ……、ううん。じゃあ、タクシーを呼ぼうか」
「うん。でもその前に、少しだけ歩ける?」
藤堂は、先に立って歩き始めた。怪訝に思いながらも、真凜は後に従った。やがて二人は、小さな教会に到着した。石造りで、かなり古そうだ。人の気配もない。
「ここで、二人だけの式を挙げない?」
藤堂がにっこりする。
「真凜が、大がかりな結婚式が苦手なのはわかってる。でも、二人きりならいいだろう? ……それに、マリーとルイは、きっとそうしたかったと思うから」
「そうだね」
真凜も、つられて微笑んだ。
「この教会、最初から知ってたの?」
いや、と藤堂は言った。
「どこかの教会で、とは思っていたけど。ここにあるのは知らなかった。今は、勝手に足が動いたみたいだったよ……」
きっとルイたちが導いたのだろう、と真凜は思った。だとしたら、彼らの願いを叶えてあげなければ……。
そういう藤堂も、はやる気持ちを抑えられないようだ。彼は、早足で庭園に入ると、一本の木の下にたどり着いた。真凜に向かって、手を広げる。
「おいで」
真凜は、彼の腕の中に飛び込んだ。
(類人……、ルイ……)
腹に負担をかけないように、だがしっかりと、藤堂は真凜を抱きしめる。ぎゅっと彼の首にすがりつきながら、真凜は呟いた。
「ここでいつも、会っていたね……」
「そうだよ。二人で過ごした場所だ。最後の日に、薔薇をプレゼントしたのも……」
藤堂も、感慨深げな声を上げる。しばらくの間、二人はじっと抱き合っていた。心地良い風が、吹き抜けていく。永遠に、こうしていたいくらいだった。
「もっといたいけど……。そろそろ行こうか。身体を冷やすとよくない」
うん、と藤堂の顔を見上げて、真凜はドキリとした。一瞬、彼の髪が金色に見えたのだ。
「何?」
藤堂が、きょとんとする。瞬きしてもう一度見れば、彼はいつもの見慣れた黒髪に戻っていた。
(……錯覚か)
「あ……、ううん。じゃあ、タクシーを呼ぼうか」
「うん。でもその前に、少しだけ歩ける?」
藤堂は、先に立って歩き始めた。怪訝に思いながらも、真凜は後に従った。やがて二人は、小さな教会に到着した。石造りで、かなり古そうだ。人の気配もない。
「ここで、二人だけの式を挙げない?」
藤堂がにっこりする。
「真凜が、大がかりな結婚式が苦手なのはわかってる。でも、二人きりならいいだろう? ……それに、マリーとルイは、きっとそうしたかったと思うから」
「そうだね」
真凜も、つられて微笑んだ。
「この教会、最初から知ってたの?」
いや、と藤堂は言った。
「どこかの教会で、とは思っていたけど。ここにあるのは知らなかった。今は、勝手に足が動いたみたいだったよ……」
きっとルイたちが導いたのだろう、と真凜は思った。だとしたら、彼らの願いを叶えてあげなければ……。
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