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3王立学園に入学//少年期1
3-4 決闘
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翌日、リックと共に、姉上と僕が足を踏み入れたのは、学校の集会室。シンプルな部屋だけれどビビアン主催のお茶会はここが会場だと言う。壁際に軽食や飲物のテーブルが並び、中央が広く開いている。
そしてそこに17-8人ほどの生徒が五列縦隊でピシっと並んでいる、中には戸惑っている者もいるようだ。
「ありゃ 誰が仕切ったのかな?俺らはこっちで…」
リックにつれられて小集団から離れた壁際の方へ行くけど、なんとなく視線を感じて落ち着かない。
「皆さん 御機嫌様。 急に呼び立ててすまないね」
言いながら入ってきたビビアンがリックに軽く頷き、集団の前に立つ。
新入生代表の挨拶の時や教室にいる時の令嬢風とは違うキリリとした雰囲気に僕は戸惑うけれど、小集団は戸惑う様子もなくピシリと姿勢を正した。
「今日の集まりは王立学園に入学した武の一族の者の顔合わせである。王都以外からの新入生も参加しているから、短い時間ではあるが親睦を深めて欲しい。入学式の挨拶でも述べたように学園内では平等であるから我のこともビビアンもしくはビビアと呼んでもらいたい。」
ビビアが一同を見回して一度微笑みそして厳しい表情になる。
「さて、最近騎士への評価が低下していることは皆も感じていると思う。特に平民の住む地区では、あれは騎士ではなく単なる乱暴者だと囁かれていることを耳にしている者もいるだろう」
小集団が小さくどよめいた。
「国を守り、同時に弱きを助けるのが騎士の役割だと我は考えている。力が正義、勝つのが正義という考えは我の前では捨ててもらいたい。そして共に学生生活を過ごす中で、今騎士の地位、名誉向上の為に必要なものは何なのかを考えて欲しい」
ビビア嬢が頭を下げ、小集団が大きくどよめいた。
「昨日、我が一族の者が他家の者に手を出しているのを見かけた。力に任せての正義を振り回す者は今後このビビアンを相手にするものと思え。だが、昨日についてはこの限りではない。アーサー、ヒビキ殿をお呼びしてある、昨日の事を謝罪するように」
僕の所からは分からないけれどビビアはアーサーを見ているのだろう。しばらくして小集団の間に道が開け、アーサーが僕たちの方に歩いて来る。これじゃあ、見せしめだよ。謝る気持ちがあったって謝れないし謝る気持ちがない謝罪なんて意味ない。
隣のリックからため息が聞こえるのは、僕と同じ気持ちなんだろう。リックは片手で額を押さえて下を向いてしまっている
そして、やっぱり、と言おうか、アーサーは「謝罪するかしないかは、勝負で決めたい」と言いだした。僕は剣が出来ない旨を話してもん「拳でいいから」と、引き下がらない。
だから、それはダメって話まさに今、ビビアが話したでしょ?聞いてました?リックが口を挟もうとするけれどアーサーは上手い事あしらって話を続けてしまう。
「オレは弱い者いじめはしない。オレが強いと判れば今後ヒビキ殿に手出しはしない。むしろ弱きを守る騎士の務めを果たしヒビキ殿をお守りしよう。もしもオレが負けるようなコトがあれば昨日の失礼を謝るし卒業までヒビキ殿に従う者となる。勝っても負けてもヒビキ殿に利がある勝負です。何故、勝負しないのですか?」
やっぱり「力が正義」「勝つのが正義」から直ぐに考えを変えるなんてことは出来っこない。小集団は今や僕達を丸く囲って期待に満ちた目を向けている。武の一族にとっては、この勝敗が『運で伯爵令息になった』僕がホンモノなのかニセモノなのかを決める事になるのだろう。
「もうこうなったらダメだな。ビイ、怪我をさせるな、俺が止めたら直ぐにやめろよ」
リックが早口の小声で僕の方を見ないで言った。僕が小さく頷くとアーサーと周りの生徒はそれを勝負する事を僕が了解したものと受け取ったらしく歓声が上がる。
リックは顔をしかめたままで首を大きく縦に振った。
「では俺たち全員が立ち会う。時間は2分、ただし、怪我をしそうだと俺かビビア嬢が判断したら途中でもやめること。いいな?勝敗がすぐにつかない場合は俺たちの挙手で決める。」
アーサーはやる気満々で、僕は不承不承だが頷いて了解する。僕が試合を受けた時点でこの一族はある程度僕を認めているようだから、あとはお祭り気分なのかもしれない。
生徒たちが僕達を丸く取り囲む。その円から一歩前にビビアが出る。剣の試合の様に僕とアーサーは向き合いその間にリックが立つ。
リックが手をあげる
「レディ ゴオ」
はい 右手を受けて、背中に回ってひねる。
「ストップ」
「まだ 途中だった!」
秒で背中をとられたアーサーがクレームをつけ再び向かってくる。今度は両手でかかってきたから一度手首を掴ませて、払いながら片手をとり、ひねる、片膝をついた相手をひねって抑えつける。もう絶対に僕の勝ちなのに「卑怯者」だとか「まだ途中だ」とか抑えられているアーサーの声がする。
あああ嫌だなあ、僕、あなたに何かしましたか?このままこの方向で力入れたら折れるのかな?まだ下からなにか言ってるけど、いっそ折っちゃう?そしたら、僕が正義なんでしょ?
「ストップ!ストップ!」
「ビイ?!」
遠くで声が聞こえて
「おしまい!ビイ、ビイ、」
背中から優しく抱きかかえられる。力が抜ぬけて引かれるままにアーサーから離れて、姉上に寄りかかりそうになるのをなんとか踏みとどまる。やっちゃった、ケガさせちゃったかもしれない……
「勝者!ヒビキ・ネイビー」
遠くにビビアの声が聞こえ、歓声が上がるのが聞こえた。遠くから聞こえるのはリックの声
「なあビビア、どうだ?ヒビキを養子にしないか?公爵家の力をもってすれば伯爵家など黙らせられるだろう?」
「ん?なるほどそれはいいな。だが、我は妹か弟がほしいと以前から思っていたのだが?」
リックに合わせるかのように響くビビアの声
「ああ、それならミケーラ、イロハそれからエリナお前たち妹がいたな?この機会にビビア嬢に願い出てはどうだ?」
「ほう妹とな、うん何人でもよいぞ。子供に贅沢をさせる位の余裕、公爵家にはある。我が立派な女性騎士に育て上げよう」
響くビビアの声に モゴモゴと答える声がする。
「いえ 妹はまだ7歳で幼いので家族と離れるのは無理かと…」
「わが家の妹は 武の一族としては少し身体が小さく…」
「わが家も 残念ですが父が可愛がっておりますので」
そんな声を笑い飛ばすような ビビアの声が響く
「なあに大丈夫だ、心配するな。ヒビキ殿が養子に入ったのは5歳だと聞いている。7歳なら十分であろう?身体が小さい?わが家で鍛えれば 身体は大きくなるぞ?我を見よ!イチイ男爵の反対?養子を迎えるのに本人や格下の家の意思など尊重されると思うか?クレナイ家のご当主の希望となればそのような理由は通りはしない。そのくらいは分かるであろう?お前たち子爵、男爵家の娘が公爵家の娘になるのだぞ これ以上の幸運が有るか?」
言い訳を片端から笑い飛ばすビビアに続けてリックの声もする
「ほかに妹や弟を売り込みたい者はいないか?後悔するな!機を逃すな!」
会場が静かになり、離れたところに居る僕にもビビアとリックの声がよく聞こえてくる
「なぜ 誰もおらぬのだ?ああアーサーお前にも弟がいるな?幾つになった?」
「居りますがご存知のように病弱で……」
「遠慮することは無いぞ公爵家の養子になるのだぞ。伯爵家の養子になったことを単なるツキだと、幸運だと妬んだのだろう?そのツキを分けて欲しいと言っていたではないか?喜べ、伯爵家どころか公爵家だぞ?」
それでもアーサーは黙ったままだし、他に名乗りを上げる声も聞こえてこない。静かになった会場にまるでビビアを慰めるようなリックの声が聞こえる
「ビビア、爵位が上の家の子供になる事がその子供にとって必ずしも幸運ではない。という事もあるよなあ」
「うむ、我も家族と離されるとなれば、たとえ王族でも辛く思うかもしれぬ。しかしアーサーは、いやアーサー以外にも、ヒビキ殿がただ転がって来た幸運をつかんだだけと羨み、陰口を言っていた者がいるのだろう?彼らは幸運だと考えているという事ではないのか?」
僕の所からはビビアとリックが芝居がかったやり取りをぼんやりを見ていると、ビビアの視線の先の幾人かは項垂れている。
「リック お前から見てヒビキ殿はその幸運の上に胡坐をかいているように見えるか?」
「いいや。俺が知る限りは武の家だからと所作を疎かにしていた俺よりも、よほど貴族らしい所作を身に着けている」
「ふふん、お前の所作は侯爵家にはよほど足りぬな。我も人のコトは言えぬか?」
パチンとビビアが手を打った。
「まあよい。余興は終わりだ。残りの時間親睦を深めあおうぞ。」
わあっと歓声があがり、その声で、僕は現実に引き戻された。
「姉上ありがとうございます。危なくアーサー殿に怪我をさせるところでした。」
「そうねビイ、わたくしが居るのも忘れたようだったわよ。失礼ね」
「申し訳ありません」
姉上がわざとらしく怒って見せ、僕は頭を下げる。
「悪かったな、ビビアは謝らせるだけだって言ったんだけどさ」
目の前にグラスが二つ差し出された。
「どこからがお芝居だったのかしら?リックが考えたの?」
「ごめん、考えてない。アイディアはフィルと双子。ビイが勝ったから、だけじゃなくて苦労して今があるって分かって、認めてくれているといいんだけどなあ」
僕は苦労してないって言ってるのに、頑固だなあリックは
「ビイに対しての悪意のある噂(うわさ)の出どころを俺なりに探っていたんだけど、よくわからなかったんだ。まあな、噂なんてそんなものなんだろうけどさ。」
そしてそこに17-8人ほどの生徒が五列縦隊でピシっと並んでいる、中には戸惑っている者もいるようだ。
「ありゃ 誰が仕切ったのかな?俺らはこっちで…」
リックにつれられて小集団から離れた壁際の方へ行くけど、なんとなく視線を感じて落ち着かない。
「皆さん 御機嫌様。 急に呼び立ててすまないね」
言いながら入ってきたビビアンがリックに軽く頷き、集団の前に立つ。
新入生代表の挨拶の時や教室にいる時の令嬢風とは違うキリリとした雰囲気に僕は戸惑うけれど、小集団は戸惑う様子もなくピシリと姿勢を正した。
「今日の集まりは王立学園に入学した武の一族の者の顔合わせである。王都以外からの新入生も参加しているから、短い時間ではあるが親睦を深めて欲しい。入学式の挨拶でも述べたように学園内では平等であるから我のこともビビアンもしくはビビアと呼んでもらいたい。」
ビビアが一同を見回して一度微笑みそして厳しい表情になる。
「さて、最近騎士への評価が低下していることは皆も感じていると思う。特に平民の住む地区では、あれは騎士ではなく単なる乱暴者だと囁かれていることを耳にしている者もいるだろう」
小集団が小さくどよめいた。
「国を守り、同時に弱きを助けるのが騎士の役割だと我は考えている。力が正義、勝つのが正義という考えは我の前では捨ててもらいたい。そして共に学生生活を過ごす中で、今騎士の地位、名誉向上の為に必要なものは何なのかを考えて欲しい」
ビビア嬢が頭を下げ、小集団が大きくどよめいた。
「昨日、我が一族の者が他家の者に手を出しているのを見かけた。力に任せての正義を振り回す者は今後このビビアンを相手にするものと思え。だが、昨日についてはこの限りではない。アーサー、ヒビキ殿をお呼びしてある、昨日の事を謝罪するように」
僕の所からは分からないけれどビビアはアーサーを見ているのだろう。しばらくして小集団の間に道が開け、アーサーが僕たちの方に歩いて来る。これじゃあ、見せしめだよ。謝る気持ちがあったって謝れないし謝る気持ちがない謝罪なんて意味ない。
隣のリックからため息が聞こえるのは、僕と同じ気持ちなんだろう。リックは片手で額を押さえて下を向いてしまっている
そして、やっぱり、と言おうか、アーサーは「謝罪するかしないかは、勝負で決めたい」と言いだした。僕は剣が出来ない旨を話してもん「拳でいいから」と、引き下がらない。
だから、それはダメって話まさに今、ビビアが話したでしょ?聞いてました?リックが口を挟もうとするけれどアーサーは上手い事あしらって話を続けてしまう。
「オレは弱い者いじめはしない。オレが強いと判れば今後ヒビキ殿に手出しはしない。むしろ弱きを守る騎士の務めを果たしヒビキ殿をお守りしよう。もしもオレが負けるようなコトがあれば昨日の失礼を謝るし卒業までヒビキ殿に従う者となる。勝っても負けてもヒビキ殿に利がある勝負です。何故、勝負しないのですか?」
やっぱり「力が正義」「勝つのが正義」から直ぐに考えを変えるなんてことは出来っこない。小集団は今や僕達を丸く囲って期待に満ちた目を向けている。武の一族にとっては、この勝敗が『運で伯爵令息になった』僕がホンモノなのかニセモノなのかを決める事になるのだろう。
「もうこうなったらダメだな。ビイ、怪我をさせるな、俺が止めたら直ぐにやめろよ」
リックが早口の小声で僕の方を見ないで言った。僕が小さく頷くとアーサーと周りの生徒はそれを勝負する事を僕が了解したものと受け取ったらしく歓声が上がる。
リックは顔をしかめたままで首を大きく縦に振った。
「では俺たち全員が立ち会う。時間は2分、ただし、怪我をしそうだと俺かビビア嬢が判断したら途中でもやめること。いいな?勝敗がすぐにつかない場合は俺たちの挙手で決める。」
アーサーはやる気満々で、僕は不承不承だが頷いて了解する。僕が試合を受けた時点でこの一族はある程度僕を認めているようだから、あとはお祭り気分なのかもしれない。
生徒たちが僕達を丸く取り囲む。その円から一歩前にビビアが出る。剣の試合の様に僕とアーサーは向き合いその間にリックが立つ。
リックが手をあげる
「レディ ゴオ」
はい 右手を受けて、背中に回ってひねる。
「ストップ」
「まだ 途中だった!」
秒で背中をとられたアーサーがクレームをつけ再び向かってくる。今度は両手でかかってきたから一度手首を掴ませて、払いながら片手をとり、ひねる、片膝をついた相手をひねって抑えつける。もう絶対に僕の勝ちなのに「卑怯者」だとか「まだ途中だ」とか抑えられているアーサーの声がする。
あああ嫌だなあ、僕、あなたに何かしましたか?このままこの方向で力入れたら折れるのかな?まだ下からなにか言ってるけど、いっそ折っちゃう?そしたら、僕が正義なんでしょ?
「ストップ!ストップ!」
「ビイ?!」
遠くで声が聞こえて
「おしまい!ビイ、ビイ、」
背中から優しく抱きかかえられる。力が抜ぬけて引かれるままにアーサーから離れて、姉上に寄りかかりそうになるのをなんとか踏みとどまる。やっちゃった、ケガさせちゃったかもしれない……
「勝者!ヒビキ・ネイビー」
遠くにビビアの声が聞こえ、歓声が上がるのが聞こえた。遠くから聞こえるのはリックの声
「なあビビア、どうだ?ヒビキを養子にしないか?公爵家の力をもってすれば伯爵家など黙らせられるだろう?」
「ん?なるほどそれはいいな。だが、我は妹か弟がほしいと以前から思っていたのだが?」
リックに合わせるかのように響くビビアの声
「ああ、それならミケーラ、イロハそれからエリナお前たち妹がいたな?この機会にビビア嬢に願い出てはどうだ?」
「ほう妹とな、うん何人でもよいぞ。子供に贅沢をさせる位の余裕、公爵家にはある。我が立派な女性騎士に育て上げよう」
響くビビアの声に モゴモゴと答える声がする。
「いえ 妹はまだ7歳で幼いので家族と離れるのは無理かと…」
「わが家の妹は 武の一族としては少し身体が小さく…」
「わが家も 残念ですが父が可愛がっておりますので」
そんな声を笑い飛ばすような ビビアの声が響く
「なあに大丈夫だ、心配するな。ヒビキ殿が養子に入ったのは5歳だと聞いている。7歳なら十分であろう?身体が小さい?わが家で鍛えれば 身体は大きくなるぞ?我を見よ!イチイ男爵の反対?養子を迎えるのに本人や格下の家の意思など尊重されると思うか?クレナイ家のご当主の希望となればそのような理由は通りはしない。そのくらいは分かるであろう?お前たち子爵、男爵家の娘が公爵家の娘になるのだぞ これ以上の幸運が有るか?」
言い訳を片端から笑い飛ばすビビアに続けてリックの声もする
「ほかに妹や弟を売り込みたい者はいないか?後悔するな!機を逃すな!」
会場が静かになり、離れたところに居る僕にもビビアとリックの声がよく聞こえてくる
「なぜ 誰もおらぬのだ?ああアーサーお前にも弟がいるな?幾つになった?」
「居りますがご存知のように病弱で……」
「遠慮することは無いぞ公爵家の養子になるのだぞ。伯爵家の養子になったことを単なるツキだと、幸運だと妬んだのだろう?そのツキを分けて欲しいと言っていたではないか?喜べ、伯爵家どころか公爵家だぞ?」
それでもアーサーは黙ったままだし、他に名乗りを上げる声も聞こえてこない。静かになった会場にまるでビビアを慰めるようなリックの声が聞こえる
「ビビア、爵位が上の家の子供になる事がその子供にとって必ずしも幸運ではない。という事もあるよなあ」
「うむ、我も家族と離されるとなれば、たとえ王族でも辛く思うかもしれぬ。しかしアーサーは、いやアーサー以外にも、ヒビキ殿がただ転がって来た幸運をつかんだだけと羨み、陰口を言っていた者がいるのだろう?彼らは幸運だと考えているという事ではないのか?」
僕の所からはビビアとリックが芝居がかったやり取りをぼんやりを見ていると、ビビアの視線の先の幾人かは項垂れている。
「リック お前から見てヒビキ殿はその幸運の上に胡坐をかいているように見えるか?」
「いいや。俺が知る限りは武の家だからと所作を疎かにしていた俺よりも、よほど貴族らしい所作を身に着けている」
「ふふん、お前の所作は侯爵家にはよほど足りぬな。我も人のコトは言えぬか?」
パチンとビビアが手を打った。
「まあよい。余興は終わりだ。残りの時間親睦を深めあおうぞ。」
わあっと歓声があがり、その声で、僕は現実に引き戻された。
「姉上ありがとうございます。危なくアーサー殿に怪我をさせるところでした。」
「そうねビイ、わたくしが居るのも忘れたようだったわよ。失礼ね」
「申し訳ありません」
姉上がわざとらしく怒って見せ、僕は頭を下げる。
「悪かったな、ビビアは謝らせるだけだって言ったんだけどさ」
目の前にグラスが二つ差し出された。
「どこからがお芝居だったのかしら?リックが考えたの?」
「ごめん、考えてない。アイディアはフィルと双子。ビイが勝ったから、だけじゃなくて苦労して今があるって分かって、認めてくれているといいんだけどなあ」
僕は苦労してないって言ってるのに、頑固だなあリックは
「ビイに対しての悪意のある噂(うわさ)の出どころを俺なりに探っていたんだけど、よくわからなかったんだ。まあな、噂なんてそんなものなんだろうけどさ。」
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