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レモンシャーベット
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冷房のきいた自室。もしゃもしゃとローテーブルでシャーベットのカップアイスを食べる。ライトグリーンとイエローの、レモンの絵が描かれた可愛らしいカップのパッケージが、褪せた部屋の僅かな彩りになっている。
レモン味の甘酸っぱさと冷たいシャーベットの感触が口いっぱいに広がる。レモンイエローが並々乗ったスプーンを口元に近づけると、鼻腔をレモンの香料がくすぐる。それを口に含んで、歯でごりごり黄色いそのつぶつぶを潰す。
小さい窓の先には青空とうざったい夏の太陽が広がって、私の哀愁と虚しさを煽る。
手元を見ると、汚いケロイド状の傷がTシャツから伸びた腕の手首にびっしり。まあ、これは自分でつけたものだし、外ではアームカバー必須なんだから余計馬鹿らしくなって、どろどろべたべたした油汚れみたいな気持ちが心中で渦を巻くだけだ。
ちょっと品出しのバイトをするだけの生活力しか持ち合わせてないメンヘラ。それが世間様から見た私。
今朝洗面所の鏡台を見たら、そこにはイエローブラウンのグラデーションカラーの入ったパサついた髪が靡いた、すっぴんの汚らしいブスがいた。毎度吐き気がする。死にたくなる。二重整形だけではやはりダメなのか。明日はカラコンとメイクするからまだ気持ちはマシになりそうだけど。
お母さんとお父さんが死ぬ前に死んだ方がいいんだろうか。真面目で真っ当な社会人のお姉ちゃんに迷惑かけられないし。
あーでも、バイト先の不良っぽいし口も悪いけど何か優しい女の先輩、あの人根はお人好しっぽいから今日死んだらあの人は悲しんでくれるかな。しどろもどろなニート出身の新入りだった社会不適合者に、よくわかんないけどお菓子とかくれたり、話したりラインしたりしてくれる人。暗めの茶髪がサラサラで、綺麗で羨ましい。
なんて、自己否定の塊のくせにこんな構われたがりな事考えてる私って、やっぱり馬鹿だ。迷惑な女。悲しい。
あの人にアイスばっかり食べるなって言われたばかりなのに、今日は気力も食欲も無くて、薬と水、このシャーベットしか口にしてない。
だからガリガリなままなんだよ、心配だって、また言われちゃうかな。ガリガリでいるくらいしか見た目に取り柄ないし、私はそれでいいんだけど。
あの人の雑誌のグラビアアイドルみたいな体型も羨ましくはあるけど…もう成長は見込めないや。
出不精のメンヘラだから、顔色悪いし、私。そりゃ心配されるよね。こんなダメ人間のくせに優しくされてもこんな暗く生きててごめんなさい。
あの人の肌は私よりずっと綺麗で、吹き出物もできにくいらしいし、ちょっとだけ日に焼けてて、それでいてなんか、大人っぽくて、足がスラッと太ももは…キモイな私。
毎日のことながら、頭ごちゃごちゃで手首が切りたくなってきたし本当に死にたいくらい自分が嫌なままの最低な気分でシャーベットを貪る。冷たい甘酸っぱさが、なんだか余計切なくて寂しい気持ちを煽る。
けど、明日バイトだし、あの人からも明日会って明後日出かけようってラインも貰っちゃったし、まだ死んじゃダメかな、なんて。馬鹿みたい。私、どうしようもない女。
「…冷た。」
そんなブルーな気持ちごと胃に流し込みたくて、運んだアイスの小さいスプーンが唇に触れた。ひんやり冷たかった。
ピコンと、スマホが鳴って、震えた。私はスプーンを置いて、液晶に指を滑らせた。
『生きてる?飯食べた?』
何気ないメッセージが、少しだけ、重苦しい部屋と私の気持ちを軽くした。私って馬鹿で盲目だ、やっぱり。
レモン味の甘酸っぱさと冷たいシャーベットの感触が口いっぱいに広がる。レモンイエローが並々乗ったスプーンを口元に近づけると、鼻腔をレモンの香料がくすぐる。それを口に含んで、歯でごりごり黄色いそのつぶつぶを潰す。
小さい窓の先には青空とうざったい夏の太陽が広がって、私の哀愁と虚しさを煽る。
手元を見ると、汚いケロイド状の傷がTシャツから伸びた腕の手首にびっしり。まあ、これは自分でつけたものだし、外ではアームカバー必須なんだから余計馬鹿らしくなって、どろどろべたべたした油汚れみたいな気持ちが心中で渦を巻くだけだ。
ちょっと品出しのバイトをするだけの生活力しか持ち合わせてないメンヘラ。それが世間様から見た私。
今朝洗面所の鏡台を見たら、そこにはイエローブラウンのグラデーションカラーの入ったパサついた髪が靡いた、すっぴんの汚らしいブスがいた。毎度吐き気がする。死にたくなる。二重整形だけではやはりダメなのか。明日はカラコンとメイクするからまだ気持ちはマシになりそうだけど。
お母さんとお父さんが死ぬ前に死んだ方がいいんだろうか。真面目で真っ当な社会人のお姉ちゃんに迷惑かけられないし。
あーでも、バイト先の不良っぽいし口も悪いけど何か優しい女の先輩、あの人根はお人好しっぽいから今日死んだらあの人は悲しんでくれるかな。しどろもどろなニート出身の新入りだった社会不適合者に、よくわかんないけどお菓子とかくれたり、話したりラインしたりしてくれる人。暗めの茶髪がサラサラで、綺麗で羨ましい。
なんて、自己否定の塊のくせにこんな構われたがりな事考えてる私って、やっぱり馬鹿だ。迷惑な女。悲しい。
あの人にアイスばっかり食べるなって言われたばかりなのに、今日は気力も食欲も無くて、薬と水、このシャーベットしか口にしてない。
だからガリガリなままなんだよ、心配だって、また言われちゃうかな。ガリガリでいるくらいしか見た目に取り柄ないし、私はそれでいいんだけど。
あの人の雑誌のグラビアアイドルみたいな体型も羨ましくはあるけど…もう成長は見込めないや。
出不精のメンヘラだから、顔色悪いし、私。そりゃ心配されるよね。こんなダメ人間のくせに優しくされてもこんな暗く生きててごめんなさい。
あの人の肌は私よりずっと綺麗で、吹き出物もできにくいらしいし、ちょっとだけ日に焼けてて、それでいてなんか、大人っぽくて、足がスラッと太ももは…キモイな私。
毎日のことながら、頭ごちゃごちゃで手首が切りたくなってきたし本当に死にたいくらい自分が嫌なままの最低な気分でシャーベットを貪る。冷たい甘酸っぱさが、なんだか余計切なくて寂しい気持ちを煽る。
けど、明日バイトだし、あの人からも明日会って明後日出かけようってラインも貰っちゃったし、まだ死んじゃダメかな、なんて。馬鹿みたい。私、どうしようもない女。
「…冷た。」
そんなブルーな気持ちごと胃に流し込みたくて、運んだアイスの小さいスプーンが唇に触れた。ひんやり冷たかった。
ピコンと、スマホが鳴って、震えた。私はスプーンを置いて、液晶に指を滑らせた。
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