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幼馴染の恋人
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「おはよう」
「・・・・」
「お兄ちゃん!朝の挨拶ぐらいしたら!」
「ああ・・・」
「お母さん、聞いてよ。お兄ちゃんたらおはようも言えないんだよ。」
リビングで腰に手を当て、今度中学1年になった楓は、俺を見上げるようにして喚いている。
俺は、そんな妹の髪をくしゃくしゃとかき回し、そそくさとリビングを出て玄関に向かった。
リビングからは妹の悲鳴とその声にかぶさるように母の「ご飯は食べないの?」が
聞こえてくる。俺は、返事もせず外に出た。
家族と仲が悪いと言うわけでもない。
ただ、仲良く食卓を囲むというのが、照れくさくなってきたと思うだけだ。
俺は、草薙弘樹、この春から中学3年になる。
見た目は中学生には見えない。まだ、伸び続けてる身長は、今は180を越えた。
強面の父親にそっくりの顔に人付き合いの苦手で無愛想な俺に話しかけて来る強者は少ない。
幼馴染の神崎龍也と部活関係者ぐらいだろう、俺に笑顔を向けるのは。
小学4年の時、刑事ドラマで次々と悪者達を倒していく男がカッコよく見えた俺は、近くの空手道場に頼み込んで通わせてもらった。年齢の割に体格が良く、強くなっていく感覚が自信に繋がったのか、空手にハマっていった。
中学生になっても、道場だけでなく、部活でも空手を選んだ。先輩後輩との関係が良かった事もあり、3年生になって部長を任される程自分にとって、居心地の良い場所になっている。
今日も部活を終え、部室で着替えていた俺に、幼馴染の龍也が机に軽く腰を預け話しかけてきた。
「ヒロ、この週末、時間空いてないか?」
「どうした?」
振り向いた俺に、照れくさそうに視線を外し、
「俺さ~今、好きな子いてさ~、お前には、紹介しておきたいと思ってさ。」
そんな龍也の仕草に、俺は口元が緩み
「ふ~ん、お前の彼女にでも会わしてくれるのか?」
「まあな、彼女って訳でもないんだが・・・。会ってくれるか?」
なんだか煮え切らない言葉を不審に思いながらも
「いいぜ、彼女のいない俺は暇だ。」
「サンキュ!時間と場所は明日な。じゃ、俺、先に帰るわ。」
龍也はなんだか慌てた様子で、俺の返事も聞かず、部室から出て行った。
取り残された俺は、不思議に思いながらも帰り支度をし、部室を後にした。
あれから、学校でも中々ゆっくりと龍也と話す時間もなく、金曜日の夜にやっと、
”明日1時に喫茶店「ランプ」で!”とメールが届いた。
俺は、”了解!”と返信し、龍也に彼女か~とどんな感じかな~と思いを巡らした。
翌朝、待ち合わせの時間にランプの店のドアを開けた俺に、店の奥の席から龍也が手を振って呼ぶのが見えた。
手を上げ、龍也のもとに歩いていた俺には、龍也の隣に俯き加減で座っている恋人らしき人が男性に見えるのだが。
「すまんな、休みの日に呼び出して。」
龍也は、不思議そうに見ている俺に、
「紹介するな、彼は、新川一海君 。一つ下になる。」
紹介された彼は、俺に向かって
「はじめまして新川一海といいます。宜しくお願いします。」
と、軽く頭を下げた。俺も、慌てて頭を下げ、
「草薙弘樹、宜しく。」
と、かなり戸惑いながらも自己紹介をした。そんな俺たちを眺め、龍也は真剣な顔で
「ヒロ、俺の恋人だ。見ての通り、男だが俺も一海も真剣なんだ。俺はヒロには嘘はつきたくない。馬鹿正直に言って、ヒロに避けられるのではと不安だったけど、俺の勝手な思いなんだけど、ヒロなら笑って応援してくれる気がした。すまん。」
俺を見つめる二人の真剣で不安な視線を受け、俺は龍也の指摘通り笑ってしまった。
「はぁ~、龍也の思惑通り笑うつもりじゃなかったんだが、なんだか二人してこの世の終わりみたいな顔してるからさ。いんじゃないの、男とか女とか関係ないぜ、好きなら好きで。でも、龍也がこんな可愛い子が好みだとは知らなかったな~」
俺に可愛いと言われた一海は真っ赤な顔を伏せ、龍也は金魚のように口をパクパク言わせ慌てていた。
俺は、そんな二人を羨ましく、そして、申し訳なく思っていた。
龍也にも誰にも知られまいと隠していること、ここで俺も恋人にするなら男なんだと言える勇気が俺にはまだないことを心の中で龍也に謝った。
俺や龍也が通っている学院は中高一貫だけど、高校では人数の規制はあるが、外部からの入学もできるようになっている。
一海は俺たちの学園に外部入学の試験を受けるつもりらしい。
そんな話や二人の出会いの話などを1時間ほど話していただろうか、店を出る頃には、一海とも龍也同様ずっと友達だったような感じに思えるほど、気楽に話せるようになっていた。
店を出てすぐの交差点で、俺は本屋に寄るからと二人と別れた。
楓にゴールデンウィークに家族で旅行に行くから、道路地図を買ってくるように言われていたのを思い出したからだ。
俺は、部活があるからと嘘を言い、行くつもりがないことを言ってある。親もしぶしぶだが了承してくれた。
楓は疑いの目で見ていたが、口に出しては何も言わなかった。
「・・・・」
「お兄ちゃん!朝の挨拶ぐらいしたら!」
「ああ・・・」
「お母さん、聞いてよ。お兄ちゃんたらおはようも言えないんだよ。」
リビングで腰に手を当て、今度中学1年になった楓は、俺を見上げるようにして喚いている。
俺は、そんな妹の髪をくしゃくしゃとかき回し、そそくさとリビングを出て玄関に向かった。
リビングからは妹の悲鳴とその声にかぶさるように母の「ご飯は食べないの?」が
聞こえてくる。俺は、返事もせず外に出た。
家族と仲が悪いと言うわけでもない。
ただ、仲良く食卓を囲むというのが、照れくさくなってきたと思うだけだ。
俺は、草薙弘樹、この春から中学3年になる。
見た目は中学生には見えない。まだ、伸び続けてる身長は、今は180を越えた。
強面の父親にそっくりの顔に人付き合いの苦手で無愛想な俺に話しかけて来る強者は少ない。
幼馴染の神崎龍也と部活関係者ぐらいだろう、俺に笑顔を向けるのは。
小学4年の時、刑事ドラマで次々と悪者達を倒していく男がカッコよく見えた俺は、近くの空手道場に頼み込んで通わせてもらった。年齢の割に体格が良く、強くなっていく感覚が自信に繋がったのか、空手にハマっていった。
中学生になっても、道場だけでなく、部活でも空手を選んだ。先輩後輩との関係が良かった事もあり、3年生になって部長を任される程自分にとって、居心地の良い場所になっている。
今日も部活を終え、部室で着替えていた俺に、幼馴染の龍也が机に軽く腰を預け話しかけてきた。
「ヒロ、この週末、時間空いてないか?」
「どうした?」
振り向いた俺に、照れくさそうに視線を外し、
「俺さ~今、好きな子いてさ~、お前には、紹介しておきたいと思ってさ。」
そんな龍也の仕草に、俺は口元が緩み
「ふ~ん、お前の彼女にでも会わしてくれるのか?」
「まあな、彼女って訳でもないんだが・・・。会ってくれるか?」
なんだか煮え切らない言葉を不審に思いながらも
「いいぜ、彼女のいない俺は暇だ。」
「サンキュ!時間と場所は明日な。じゃ、俺、先に帰るわ。」
龍也はなんだか慌てた様子で、俺の返事も聞かず、部室から出て行った。
取り残された俺は、不思議に思いながらも帰り支度をし、部室を後にした。
あれから、学校でも中々ゆっくりと龍也と話す時間もなく、金曜日の夜にやっと、
”明日1時に喫茶店「ランプ」で!”とメールが届いた。
俺は、”了解!”と返信し、龍也に彼女か~とどんな感じかな~と思いを巡らした。
翌朝、待ち合わせの時間にランプの店のドアを開けた俺に、店の奥の席から龍也が手を振って呼ぶのが見えた。
手を上げ、龍也のもとに歩いていた俺には、龍也の隣に俯き加減で座っている恋人らしき人が男性に見えるのだが。
「すまんな、休みの日に呼び出して。」
龍也は、不思議そうに見ている俺に、
「紹介するな、彼は、新川一海君 。一つ下になる。」
紹介された彼は、俺に向かって
「はじめまして新川一海といいます。宜しくお願いします。」
と、軽く頭を下げた。俺も、慌てて頭を下げ、
「草薙弘樹、宜しく。」
と、かなり戸惑いながらも自己紹介をした。そんな俺たちを眺め、龍也は真剣な顔で
「ヒロ、俺の恋人だ。見ての通り、男だが俺も一海も真剣なんだ。俺はヒロには嘘はつきたくない。馬鹿正直に言って、ヒロに避けられるのではと不安だったけど、俺の勝手な思いなんだけど、ヒロなら笑って応援してくれる気がした。すまん。」
俺を見つめる二人の真剣で不安な視線を受け、俺は龍也の指摘通り笑ってしまった。
「はぁ~、龍也の思惑通り笑うつもりじゃなかったんだが、なんだか二人してこの世の終わりみたいな顔してるからさ。いんじゃないの、男とか女とか関係ないぜ、好きなら好きで。でも、龍也がこんな可愛い子が好みだとは知らなかったな~」
俺に可愛いと言われた一海は真っ赤な顔を伏せ、龍也は金魚のように口をパクパク言わせ慌てていた。
俺は、そんな二人を羨ましく、そして、申し訳なく思っていた。
龍也にも誰にも知られまいと隠していること、ここで俺も恋人にするなら男なんだと言える勇気が俺にはまだないことを心の中で龍也に謝った。
俺や龍也が通っている学院は中高一貫だけど、高校では人数の規制はあるが、外部からの入学もできるようになっている。
一海は俺たちの学園に外部入学の試験を受けるつもりらしい。
そんな話や二人の出会いの話などを1時間ほど話していただろうか、店を出る頃には、一海とも龍也同様ずっと友達だったような感じに思えるほど、気楽に話せるようになっていた。
店を出てすぐの交差点で、俺は本屋に寄るからと二人と別れた。
楓にゴールデンウィークに家族で旅行に行くから、道路地図を買ってくるように言われていたのを思い出したからだ。
俺は、部活があるからと嘘を言い、行くつもりがないことを言ってある。親もしぶしぶだが了承してくれた。
楓は疑いの目で見ていたが、口に出しては何も言わなかった。
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