光と音を失った貴公子が望んだのは、醜いと厭われた私の声でした。

緋田鞠

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   ***

 レースの日除けを透かして馬車の窓から見える景色から、人家が少しずつまばらになっていく。
 代わりに、色とりどりの花畑が広がっていた。
 街道沿いに、夏の日差しに負けない濃い色の花々が咲き誇っている。
 遠くに目を遣ると、水面がきらきらと光を反射しているのが見て取れる。
 テベ川だ。
 三角州の始まりの地、マイルス。
 その先端へと向かっている事が、景色で判る。
「素敵…」
 思わず、うっとりと声を上げると、ランドールが反応した。
「何が見える?」
「鮮やかな花々と、宝石のように輝くテベの姿です」
「確かに、この時期の街道は美しい」
「ランドール様は、離宮へはよくいらっしゃるのですか?」
 アマリアの疑問に、ランドールは少し考える。
「子供の頃はよく来ていたが…そう言えば、ここ数年は、足を運ぶ暇がなかったな」
 在位記念式典の準備は以前から始めていたし、婚約者なり配偶者なりがいれば、共に過ごす時間を作る為に休暇を取ったかもしれないが、これまでのランドールはただの仕事人間だ。
「アレクシスが痺れを切らすわけだ」
 苦笑すると、アマリアの穏やかな声が慰めてくれる。
「ランドール様はお忙しいですもの。漠然と、王族の皆様のご公務は大変なのだろうと想像はしておりましたが、実際は想像を遥かに越えておりました。これだけの仕事量をこなされている事に、感服致します」
「そうか」
 子供の頃から、それが当たり前だと思っていたが、アマリアに褒められると何だか心の奥底がこそばゆくなる。
「ですが、補佐官の皆様のお体同様、ランドール様ご自身のお体の事も心配です。今は、大きな行事が続きますから難しいのは判りますが…通常のご公務に戻った後は、どうぞ、お休みを取る事を後回しになさらないで下さい」
「そう、だな。判った」
 アレクシスに言われても、全くその気にならないのに、アマリアに同じ事を言われると頷いてしまうのは何故だろう。
 馬車の速度が落ちて、目的地が近い事を伺わせる。
 やがて、ゆっくりと停まり、小窓からジェイクが声を掛けた。
「アマリア様。こちらからですと、離宮全体の外観が一目で判ります。ご覧になりませんか?」
「まぁ、有難うございます」
 弾んだ声で返すアマリアを微笑ましく思いながら、ランドールは扉を示す。
「私は姿を見られるわけにいかないから出ないが、好きなだけ、見てくるといい」
「はい!」
 ジェイクに手を借り、地面に降り立つ。
 さぁ…っと、川面を渡る涼やかな風が、アマリアの頬に触れた。
 風に煽られて舞い上がった長い髪を押さえ、アマリアは前方に目を遣る。
「わぁ…っ」
 ジェイクの示す手の先に、離宮があった。
 水面から聳え立つように、灰白色の城壁が見える。
 ランドールは、濠、と言っていたが、アマリアが想像していたよりもずっと幅が広い。
 これだけの土を削るには、多くの人手と歳月を要したのではないだろうか。
 アマリアの位置からは、離宮の南側しか見えていないが、大きな跳ね橋以外は、隙間なく石で組まれた壁が続いていた。
 高さは、人の背丈の三倍はあるのではないだろうか。
 石組の下を、ゆるゆると川面が撫で、午後の日差しが乱反射する。
 まるで、離宮自体が一つの島のようだ。
 武骨なまでに直線で囲われた姿は、こちらまで、背筋をぴんと伸ばしたくなる厳かさすら感じる。
 城壁の四隅には、高い物見の塔が建っており、望遠鏡でも覗いているのか、ちかり、と、日を反射するものがあった。
「大雨の後は増水しますが、潮の満ち干がなく、これ以下の水位になる事はありませんので、跳ね橋以外の方法で離宮に渡る事は叶いません。水の流れが複雑なので、小舟で近づく事は困難です」
 ジェイクが説明してくれる。
 戦時は斥候の為に築かれた城塞だったそうだが、攻めよりも守りに特化した場所なのは、一目で判った。
 王宮程ではないものの、敷地は広い。
 いざと言う時には、中で畑を耕し、家畜を飼いながら、籠城する事も想定されているのだろう。
 アマリアは、改めて、離宮までの道を眺めた。
 濠まで続く街道沿いには、色鮮やかな花々が揺れているが、濠を挟んだ離宮は、灰色一色の寒々しい景色だ。
 濠を境に、世界が一変している。
 だが、ランドールは中と外では印象が異なる、と話していた。
「中は、どんな様子なのかしら…」
 独り言のつもりだったが、それを聞き留めたジェイクが、にこりと笑う。
「きっと、驚かれると思いますよ」
 言い終わった後、物見の塔に向けて、大きく手を振る。
 それを受けて、跳ね橋が降り始めるのに気が付いた。
 音はよく聞こえないが、遠くから見ているだけでも軋む音が伝わってくる気がする。
「あの跳ね橋は重いので、上げ下ろしに時間が掛かるのです。毎回、訪れるとこの位置から合図を送るのですよ」
 なるほどと頷いて、アマリアは馬車に戻る。
 このまま、離宮に向かえば、跳ね橋が降りた頃に丁度、馬車が差し掛かるのだろう。
「どうだった?」
 ランドールに声を掛けられて、アマリアは浮き立つ心のまま、返事をする。
「素晴らしかったです。水面にすくりと立つ様は、百戦の老将のようでした」
 百戦の老将に、お会いした事はありませんが。
 付け加えられた言葉に、ランドールは声を出して笑う。
「貴女は、面白い人だな」
「面白い…そうでしょうか?初めて言われました。侍女の皆様には、『退屈な人』と言われているので…」
 ランドールの言葉に、アマリアは首を傾げた。
 侍女控室で、休憩中の侍女達の話題と言えば、専ら、王族の噂か貴族の噂だ。
 アマリアは噂を知らないし、そもそも噂話に興味がないので、耳を澄ませる事も会話に加わる事もせずにいたら、退屈な人、と遠巻きに見られるようになったのだ。
「私にとっては、とても興味深い。休暇がますます楽しみになった」
「それは、よろしゅうございました」
 よく判らないなりに、ランドールが楽しそうにしているのは嬉しい。
 アマリアには、目と耳が思うように使えない不自由さは想像するしかないが、人よりも優秀なランドールだからこそ、自分の体が思い通りにならない事に苛立つ事はあると思う。
「休暇は、どのように過ごされるご予定なのですか?」
「予定は未定、だな。ここから何処かへ出掛けるわけではないから、ただただ離宮でのんびりするだけだ。ゆっくり過ごす以外は、エルフェイスに許されていない」
「では、私はどのようにすればよろしいでしょうか?」
「私の傍にいてくれ」
 一瞬、どきり、と心臓が止まった気がした。
 それ位、甘い声に…聞こえた。
 気のせいだと、思うけれど。
「食事も湯浴みも着替えも、全てはジェイクがしてくれるが、話し相手だけは出来ない。日中は、私の傍にいて欲しい」
 アマリアの沈黙をどう受け取ったのか、ランドールは返事を聞く前に言葉を続ける。
「部屋は勿論別だが、出来れば、夜間に何かあった際に、直ぐに駆け付けられる場所が望ましい」
 貴人の従者ともなれば、主人の部屋の隣に待機しているのは当たり前だ。
 そういう事か、と思って頷こうとしたが、ランドールの言葉に驚いて顔を上げる。
「離宮の警備は万全だが、絶対に何も起きない保証は何処にもない。もしも、曲者が忍び込みでもした時に、直ぐに私が貴女の元へ行けるように」
「ランドール様…」
「見えずとも、貴女よりは強い自信がある」
 まるで、守りたい相手なのだ、と言われているようで。
 胸がざわめいて、アマリアは頬を染める。
「畏れ多い、事です」
「私が、そうしたいのだ」
 力強いランドールの言葉に、アマリアの心拍数が上がる。
「アマリア嬢?」
「あの…」
 自分でも驚く程、か細く震える声。
 勘違いしてはいけない。
 彼は、紳士なだけで、自分が特別なわけではないのだから。
 それでも。
「…嬉しい、です…」
 小さな声を聞き取って、ランドールが柔らかく笑う。
 その笑みに、アマリアは惚けたように見惚れた。



 跳ね橋を渡った馬車が、車寄せに停まる。
 円を描くように緩やかな曲線で導かれる前庭には、優美な線で描かれた乙女が水瓶を抱える噴水が、据えられていた。
 橙に染まる夕陽を反射して、瓶から零れる水はさながら神の甘露のように見える。
 噴水の周囲を飾るのは、色とりどりの薔薇の花だ。
「綺麗…」
 背景が灰色一色だからこそ、映える鮮やかな花々。
 思わず息を飲むアマリアに、ランドールが話し掛ける。
「気に入ったか?」
「はい…とても、美しいです」
「中庭もまた、今の時期は花盛りだ。明日、案内しよう」
 王城では常に凍り付いていたようなランドールの声が、安らいで聞こえる。
 執務を忘れ、休暇を取る為に相応しい場所をアレクシスは選んだのだと、アマリアは実感した。
「楽しみにしております」
 声が弾んでいるのが、自分でもよく判る。
「アマリア嬢は、花が好きなのか?」
「そうですね、好きな方だと思います。コバルは田舎ですから、屋敷も広さだけはあるのです。敷地の外に出られない分、庭を散策するのが楽しみでしたので」
 答えてから、これでは同情を得たい為に話すようだ、と慌てた。
「そうか」
 だが、返って来たランドールの声には、同情も、労りも、憐みも、ましてや鬱陶しさも含まれていない。
 ただ受け止めるだけの言葉に、アマリアはホッとする。
 彼はきっと、自分のどんな言葉も、あるがままに受け止めてくれるのだろう。
(こんな方…初めてだわ…)
 他人をただ受け止めるのは、簡単なようで難しい、とアマリアは思う。
 どうしてもそこには、何らかの自分の感情が含まれてしまうからだ。
(本当は判ってる。王宮にちゃんと馴染めないのは、私の中に、他の侍女達への引け目や劣等感が先立ってしまってるからだって)
 ランドールのように、先入観なく、相手の言葉を受け止める事が出来るようになれば、自分も少しは変われるだろうか。
 変わりたい。
 そう願いながら、目の前の屋敷を見上げる。
 大きな玄関を中央に、左右対称に建てられた建物は二階建て。
 灰色がかった小振りの煉瓦が、しっかりと積み上げられている。
 上げ下げ窓の外には、錬鉄が優美な曲線を描く格子が取り付けられている。
 無骨さと優雅さが調和した建物だった。
「此度の滞在では、事情が事情だけに、最低限の使用人しか置いておりません。厨房から出ない料理人、物見の見張り番、それ以外は私だけです。離宮の外に護衛の為の騎士隊が常駐しておりますので、警備の面は問題ありません。私も、ある程度の剣は使えますから、ご安心を。まずは、ランドール殿下をお部屋にご案内致します。アマリア様は、その後のご案内となります」
 両手に二人分の旅行鞄を提げたジェイクが、てきぱきと説明してくれる。
「承知致しました」
「申し訳ないのですが、私は荷物で手が空いておりません。殿下の誘導をお願い出来ますか?」
「はい」
 昼食を取った時と同じように、ランドールの腕にそっと寄り添うと、ランドールもまた、アマリアの腕を深く組み直す。
 その様子をジェイクは表情を変えぬまま見ていたが、最後に、フッと頬を緩めた。
「では、参りましょう」
 表玄関を開けると大理石張りのホールが広がり、両翼から弧を描いて降りる木製の階段には、赤い絨毯が敷かれている。
 ジェイクは、二階へと昇ると、迷いのない足取りで屋敷の右奥へと向かっていく。
 幾つもの扉を過ぎた後、ジェイクは漸く足を止めた。
「こちらが、殿下のお部屋です」
 ランドールが、幼少期から滞在時に利用していた部屋なのだと言う。
 扉を開けた先は、居間だろう。王城の応接間位の広さがあり、長椅子が二脚と小さな卓が置かれている。
 内扉の先が、寝室なのだと思われた。
 アマリアがランドールを長椅子に誘導して座らせると、ジェイクはランドールの鞄を置いて、アマリアの鞄のみを持ち上げる。
「アマリア様のお部屋にご案内致します」
「お願い致します。ランドール様、私もお部屋にご案内して頂きます。この後は、どうなさいますか?」
「そうだな、長旅で疲れただろう。晩餐までは、ゆっくり休んで欲しい」
「承知致しました」
 ランドールに頭を下げて部屋を辞すと、ジェイクに案内を促した。
 そのまま、ジェイクがランドールの部屋の向かい側の扉を開けた事に、アマリアは驚く。
「アマリア様は、こちらをお使い下さい」
「……確かに、ランドール殿下の元に直ぐ駆け付けられるお部屋ですけれど…よろしいのですか?右翼はご家族のお部屋なのでは」
 内装が、明らかに豪華だ。
 使用人が泊まっていい部屋には見えない。
「左様ですね。ですが、殿下のご希望を最優先した結果ですから」
 何でもない事のように答えるジェイクに、アマリアは戸惑うばかりだ。
「幾ら人払いがなされているとは言え、殿下に不名誉な噂が立つのは望ましくありません。別の階とまでは申しませんが、左翼のお部屋ではいけませんか」
「全て織り込み済みですので、ご安心下さい」
「織り込み済み、ですか?」
 首を傾げるアマリアに、ジェイクが頷く。
「若い女性とお二人で離宮に滞在する事。お部屋を右翼にご用意する事。介添えの為とは言え、御身に触れる事。それらが、人からどう見えるか、殿下は十分に承知なさっております」
 改めて羅列されて、自分の存在が如何にランドールにとって危険なものかを自覚して、アマリアの頬が青褪める。
「…幾ら疚しい事がないとは言え…警備を過信し過ぎなのでは…」
「誤解なさらないで下さい。それら全てを、織り込み済みなのです」
「よく…意味が…」
「殿下は既に、覚悟をお決めになっているのですよ」
 何の覚悟なのか。
 判らずに、答えを求めて縋るようにジェイクを見つめるが、ランドールの忠実な侍従は、それ以上、語る気はないようだった。
「晩餐は、殿下の居間にお持ちします。お時間に呼びに伺います。そうですね、あと二刻程でしょうか。…先程の答えは、この先、アマリア様ご自身に見つけて頂ければ、と。あぁ、殿下本人に問い質すのは規則違反ですからね」
 沈黙して考え込むアマリアに一つ礼をして、ジェイクは部屋を辞した。
 アマリアは暫く、絨毯敷きの床の一点を見つめていたが、夕陽の橙が夜の藍色に変わって来た事に気づいて、ハッと顔を上げた。
「灯りをつけなくちゃ…」
 部屋の四隅の壁に置かれた魔法石の灯具をつけると、不自由がない程度に部屋が照らされる。
「ランドール様は、何を覚悟なさってると言うの…?」
 ジェイクの言葉を順当に考えれば、未婚のアマリアを伴って離宮に来た事だろう。
 若い男女が二人きり、近い部屋で寝起きし、余程親しい仲でなければ許されない距離で肩を並べる。
 相手がランドールでなければ、アマリアだってもっと、警戒していた。
 実際の関係がどうだろうが、部屋が別だろうが、若い男女が二人で宿泊する、と言う時点で、貴族社会では婚約したものと見做される事位、世間知らずのアマリアでも知っている。
 だが、相手は王族だ。
 これがもっと高位の貴族令嬢であれば、お互いに注意を要するだろうけれど、よくよく落ち着いて考えてみれば、 地方の伯爵令嬢でしかないアマリアが、そのような目を向けられるとは思えない。
 だからこそ父も、仕事とは言え、付き添いを許可したのだろう。
 それに、ロイスワルズで美人とされる基準と真反対の容姿の自分だ。もしも噂が流れても、信じる者等、いる筈がない。
 それを、ランドールもジェイクも、判っていないとは思えない。
「そうよね…そのような誤解が起きる筈はないわ…では、全然関係のない事かしら…?」
 こんな時は、自分の世界が狭い弊害を感じる。
 様々な立場を想像して考える経験が、圧倒的に不足しているのが判る。
「でも…そうね、気づく事が出来たのだから、此処から始めればいいのだわ」
 ずっと閉じ込められていた領地の屋敷を飛び出して、王宮に来る事が出来たのだから。
 念願の広い世界に触れられているのだ。
 これから学んでいけばいい。
 そう思えば、苦痛でしかなかった侍女達との関わりも、一つの貴重な経験となる。
 きっと、この不思議な縁で与えられた役割もまた、自分の受け止め方でもっと貴重な経験になる筈だ。
「…ランドール様は、とても素敵な方だわ…」
 傍にいるのは、本当は怖い。
 氷血の貴公子、などと字名されている彼は、もっと冷徹で人を寄せ付けない人だと思っていたのに。
 職務に誠実に向き合う姿も、豊富な知識も、決断力も、全てが尊敬すべきものだった。
 ただでさえ尊敬している人の私的な姿を、たった半日と言えど目の当たりにして、目が見えずとも豊かな表情に、飾り気はなくとも思いやりのある言葉に、優しい声音に、腕に触れた熱に、どんどん心惹かれていく。
 これ以上、魅了されるのは、恐ろしい。
 想っても仕方のない人なのは、初めから判っているのだから。
 他の侍女達と同様、遠くから憧れているだけにしなくてはいけないのに。
 偶然の巡り合わせで、仕事として傍にいられるだけなのに。
 いつかは、彼の隣に見合う女性の姿を、羨望と共に見る事になるのに。
「…それも、経験なのかしら」
 婚約破棄された時に感じなかった痛みを経験する事もまた、人生には必要なのかもしれない。
 応えて貰いたいとの願いが、分不相応なのは十分に理解している。
 だから、想いを告げるなど、考える事もない。
 けれど、全ての出来事を経験として受け止めるのならば、心の奥底から湧いてくるこの思いを認めて、受け止めていい筈だ。
 見返りなど求めず、ただ誰かを想う事こそが、貴重な経験なのだろう。
 成就せずとも、誰かを愛しく思う気持ちは大切。
 自分自身が、アレクシスに述べた言葉だ。
 苦しみもまた、経験。
 そう思いきる事で、アマリアは前を向く。
 ランドールに出会った事を、後悔したくはない。
 糧にして…前を向く。
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