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それから一週間、シャーロットはベッドで過ごした。
シャーロット本人としては、もう体調は万全だと思っていたのだが、薬師であるマチルダが、許可しなかったのだ。
最終的には、獣人族と人族の基礎体力の差、と言う事で納得したらしい。
「全くもう、何だって人族の娘っこは、こんなに小さくって弱いのかね。こんなじゃ、ハラハラして仕方ないよ」
口調は乱暴ながらもシャーロットの体を案じる言葉に、シャーロットは微笑んだ。
「私が人族の女性の代表と思われると、他の方に申し訳ないです。私は、人よりも体が小さいですし、体力も筋力もありませんから」
「…やっぱり、そうなんだね?人族の娘が皆、あんたみたいなわけじゃないんだね?」
「はい」
シャーロットが頷くと、マチルダは安心したような、もどかし気な、複雑な表情を見せる。
「て言う事は…う~ん…」
「マチルダさん?」
「あぁ、いや、何でもないよ。体調がいいんなら、薬草を摘む手伝いをしてみるかい?」
「はい、是非!」
シャーロットは、持っていたワンピースに着替え、下ろしたままだった髪を丁寧に梳いて後ろで一つの三つ編みに編んだ。
柔らかな革の短靴を履いて、マチルダのエプロンを借りると――マチルダには腰回りを覆う長さしかないが、シャーロットには膝まで覆う長さになった――勇んで、外に出る。
シャーロットがマチルダの家に運ばれて、実に十二日。
初めての外だった。
「わぁ…!」
きらきらとした日の光が、重なった木々の葉を透かして柔らかく地面に落ちている。
マチルダの家は、平屋建ての一軒家だった。
以前、話していた通り、シャーロットの目に捉えられる距離に、他の家の姿はない。
森の中、ぽっかりとそこだけ円状に木々の生えていない空間に、マチルダの住居兼薬舗は、ひっそりと建っている。
家の周囲は、木の板で作られた柵で囲まれており、柵の外には、多種多様な形状を持った草が生えていた。
「これは、あたしの薬草畑だよ。薬草の中には、自然に生えているのを見つけるしかないものと、栽培可能なものがある。ここにあるのは、栽培可能なものだが、これだけでも、随分と多くの種類の薬が出来るんだ」
マチルダはそう言うと、棘々とした形状が特徴的な葉を一枚、摘んだ。
「これは、熱冷ましに使うギーグの葉。一言で薬草って言っても、使い方は色々さ。生のまま揉んで使うもの、生葉から煮出して使うもの、乾燥させて擂り潰して使うもの、燻して煎じて使うもの…。今日は初めてだからね、一番判りやすいこのギーグの葉を摘んどくれ。これは、乾燥させて擂り潰して粉薬にするんだ。保存が利くから、まとめて作っちまうからね」
「はい!」
マチルダは、行き倒れたシャーロットの面倒を見た謝礼代わりに、手伝いをしてくれればいい、と言ってくれた。
現金の持ち合わせも、他に価値のあるものも、何も持たないシャーロットにとっては、有難い話で、シャーロットは張り切ってギーグの葉を摘み始める。
マチルダ自身も手早く摘み取りながら、シャーロットに説明を続けた。
「ギーグの葉は、大きすぎても小さすぎてもいけない。サイズは…そうだね、あんたの手なら、丁度中指位の長さが目安だ。尖ってるから、葉の中程を摘まんで、肌を傷つけないようにね」
「判りました」
シャーロットは、最初のうちは自分の中指と長さを比べながら作業をしていたが、次第に慣れて、目だけで大きさを測る事が出来るようになった。
三十分程の作業で、渡された籠一杯になった所で、摘み取り終了となる。
「そろそろいいだろう」
マチルダに促され、しゃがみ込んでいた地面から立ち上がり、ぐっと背筋を伸ばした。
「あら…?」
少しクラクラと眩暈がして、倒れそうになった所を、
「あっぶね」
後ろから支えられる。
「ウィルさん…」
「急に立ち上がんなよ、ぶっ倒れるぞ」
言葉遣いは乱暴ながらも、ウィルヘルムの眼差しはシャーロットを心配していて、シャーロットは思わず微笑んだ。
「有難うございます、気を付けます」
「…何かもうさぁ…ほんと、危なっかしいよな、あんた」
フイ、と逸らされた頬が赤い気がする。
「あぁ、ウィル、いい所に来た。ギーグを天日干しするのを手伝っとくれ」
「判った。ばぁちゃん、蜥蜴族のミエルばあさんが来てる。腰痛の薬だってさ」
「あれ、いつもよりも早いね。…あぁ、ちょっと湿った日が多かったから、痛みが強いのかね」
薬師であるマチルダは、薬草畑や薬草採取の関係で、集落から離れて住んでいた。
獣人族達は、体の不調を感じたり怪我をすると、薬を求めて彼女を訪ねてくるのだ。
人族から医療の知識も提供されており、獣人族の医師も少ないながらもいるが、氏族ごとに体質の違いもあり、伝統的な薬師の薬を求める者は多い。
「じゃあ、あたしはミエルに薬を用意してくるから、ウィル、あんたが教えてやっとくれ」
「ん」
ウィルヘルムが頷くと、マチルダはエプロンで手を拭いながら、家の中に入っていった。
ウィルヘルムは、シャーロットに向き直って説明を始める。
「ギーグは、天日干しにしてから粉状に擂り潰す。一言で天日干しって言っても、薬草の種類によって乾燥具合は変えないといけないんだ。ギーグは、パリパリになるまで乾燥して大丈夫」
言いながら、細く割いた木の皮で編んだ、目の細かい笊を用意すると、木で作られた台に乗せた。
「葉が重ならないように並べてみて」
「はい」
シャーロットは丁寧に、一枚一枚、葉を並べていく。
ウィルヘルムも、新しい笊を出して、マチルダが摘んだ葉を手早く並べていった。
「ウィルさんは、薬草にお詳しいのですね」
「まぁ、ばぁちゃんと暮らしてるしな。…なぁ、その、丁寧語?って言うの?止めねぇ?」
「え?」
「だってさ、あんた、俺とそう年も変わんねぇだろ?何か…こう…距離を感じるって言うかさ。さん付けされるのって、何かムズムズすんだよ。俺も、シャーロットって呼び捨てにするからさ」
ウィルヘルムは、通っている学校が夏季休暇に入った為、居候先から自宅に戻っていると聞いた。
二カ月程の休暇の間、マチルダの薬草作りを手伝うらしい。
夏は様々な薬草が、最も勢い良く萌える季節の為、一年分の薬を作って保存しておくのに忙しく、人手は少しでも多い方がいい、と、マチルダは笑っていた。
しかし、シャーロットが休養を取っていた一週間、ウィルヘルムと顔を合わせる事はなかった。
獣人族は気にしないのかと思っていたが、ベッドに寝ている若い女性と二人きりにした事を、まずかった、とマチルダが後悔したらしい。
自分が子供にしか見えなかったから、二人きりにする事の問題等、思いつきもしなかったのだろう、とシャーロットは考えている。
「ばぁちゃんさ、反省してんだ、あれでも。あんた…シャーロットは、その、婚約者がいるんだもんな。婚約者が知ったらきっと、いい気持ちはしないだろうから、って」
「お気遣い、」
「丁寧語止めろって」
「…えぇと、気を遣ってくれて、有難う」
「どういたしまして」
乱暴な言葉と態度ながら、薬草を並べる手は丁寧で優しい。
「ウィルさん」
途端にギロッと睨まれて、シャーロットは言い換える。
「ウィルは、学校でどんな事を勉強しているの?」
「どんな…そんなに人族と変わんねぇと思うぞ?学校ってのは、人族から伝わったもんだし。それまでは、氏族内で長老から知識を教わるだけで、何処かに集まって勉強する習慣はなかったんだってさ」
「あの、私、学校に行った事がないの」
「へぇ?人族ってのは、平民でも学校行くんじゃないのか?」
「私は…ちょっと、事情があって」
ウィルヘルムは、頭一つ半小さいシャーロットのつむじを見下ろして、あぁ、と頷いた。
恐らく、体が弱いせいだと理解したのだろうな、と思いながらも、シャーロットは敢えて訂正しない。
「チビのうちは、読み書き計算だな。どんな仕事をするにしたって、共通語の読み書きが出来ないと困るし、計算出来ないのも困るから。俺が今行ってる高等科は、人族の事とか、マハトの事とかも習う」
「人族の事…?」
「高等科まで行くヤツは、少ねぇんだ。だから、高等科出たヤツは、ノーハンを出る機会がある職業に就く事が多い。領兵とかな」
シャーロットは、ヴィンセントの部下を思い出して、あぁ、と頷いた。
確かに彼らは、身分制度に基づいた人族の社会について、理解しているようだった。
獣人族にとって、人族の生活は未知のものだろう。
王族の特権で、多くの書物を読む事が出来たシャーロットだって、ノーハンに来るまで、獣人族の生活について全く知らなかったのだから。
「高等科に進学する人が少ないと言う事は、学校も少ないの?」
「あぁ、ノーハンの中で一つだけだ」
「一つ?!」
ノーハンは、人口の少なさに反して面積の広い領だ。
だからこそ、各氏族がそれぞれに集落を作って暮らせるのだから。
「初等科は、各氏族に一つずつあるんだけどな。初等科の勉強さえ出来れば、ノーハンの中で生活する分には何の問題もない。殆どの獣人族は、ノーハンから一歩も出ずに一生を終えるからな。高等科は、領兵目指したり、人族と商用で会ったり…中には、王都で医学を学びたい、なんてヤツもいるけど、そういうヤツが来るんだ」
「ウィルは、領兵になりたいから、高等科に行っているのね」
「……ん、まぁ、そんなとこ。誰でも行きたきゃ行けるわけじゃねぇし、大人になってから入るヤツもいる」
少し間があったが、シャーロットは気づかない。
「ウィルって、頭がいいのね」
「見えねぇ、って言うんだろ。判ってるよ。だけど…まぁ、何て言うか…将来の為には仕方ねぇ、って言うか…」
言葉を濁すウィルヘルムを、シャーロットは感心の眼差しで見つめた。
「凄いわ。将来の事を、ちゃんと考えてて」
「…シャーロットだって、考えてるだろ。結婚する、って」
「そう、ね…」
シャーロットの声が僅かに沈んだ事に気づいたのか、ウィルヘルムは気遣わし気な目を向ける。
「何だよ、本当は結婚したくないのか?」
「うぅん…そうじゃなくて。婚約者様の事は、お慕いしてるわ。でも…」
「でも?」
「婚約者様のご家族に、人族の私が婚約者なんておかしい、って言われて…人族と獣人族の違いを初めて知って、悩んだの」
「何を?」
「あの…ね、人族には、番がいないの」
「…あぁ、聞いた事あるな」
「でも、獣人族にとっては、番、って大切なんでしょう?もしも、結婚した後に、婚約者様に番が現れたら?私は、どうするのかしら、って」
シャーロットは、何処か遠くを見つめて言葉を続けた。
「王都に私の居場所はないの。ノーハンは素敵な場所だから、このまま、ここで暮らしたいけれど…結婚出来なかったら、離縁されたら、どうやって暮らしていけばいいのかしら…」
途方に暮れたように俯くシャーロットの頬に、ウィルヘルムは思わず手を伸ばし掛けて、触れる直前で慌てたように手を引っ込める。
「そ…れはさ、その時になってから考えるんじゃダメなのか?」
シャーロットは瞬いて、ウィルヘルムの顔を見上げた。
「だってさ、婚約者はまだ、カーシャにいるわけだろ?家族がどう言い訳するか判んねぇけど、帰って来て、シャーロットがいなかったら、当然探すだろ?って言うか、探してくれるって信じてるんだろ?」
こくり、と頷くシャーロットを見て、ウィルヘルムは続ける。
「じゃあさ、まずは、迎えを待ってみろよ。迎えが来たら今度は、結婚の話がどうなるか、待てばいい。予想と違ったら、そこで初めて考えりゃいいんだ」
「でも…それでいいのかしら。ウィルは、自分で自分の将来を考えてるのに、私は、待ってるだけでいいの?」
「俺の将来は、一人で決められる事だからな。結婚は、別だろ。一人じゃ出来ねぇんだし、シャーロットの気持ちが、婚約者と結婚する、って決まってるんなら、相手がどうするのか、待つしかねぇじゃん」
「そう、ね…」
ウィルヘルムの言う事は、最もだ。
ヴィンセントの気持ちは、ヴィンセントにしか判らない。
シャーロットがここで一人で悩んでも、何も決める事など出来ないし、彼の気持ちを勝手に決めつけるなんて出来ないのだ。
「多分…不安、なんだわ。番が現れた時に、どうするか決めておけば、きっと、その通りに動けるだろう、って考えてるだけなのだと思う」
「その気持ちは、判らなくもねぇけど」
ウィルヘルムは、空っぽになった籠に、シャーロットの持つ籠からごそっと葉を移した。
そのまま、流れるように笊に広げる作業を続ける。
「…実際の所さ。どれだけ事前に決めてたって、その場になってみなきゃ判んねぇ事って、たくさんあるだろ」
実感の籠った言葉に、シャーロットは少し考えてから頷く。
確かに、そうだ。
頭では、ヴィンセントの気持ちに添うように、とどれだけ考えていた所で、その通りに動ける自信なんて、本当は欠片もない。
最後にヴィンセントの顔を見てから、既に一ヶ月以上。
それなのに、彼の顔も声も、シャーロットの中で鮮明になっていくばかりだ。
カーシャへと向ける祈りに力が籠っているのを、自分自身でも感じている。
「そう、ね…」
ぽつりと呟いて、シャーロットはウィルヘルムを見上げた。
「ウィル、有難う」
ふわり。
シャーロットが微笑むと、周囲の空気がキラキラと光を反射したように見えて、ウィルヘルムは目を擦る。
「え、や、大した事じゃねぇし」
心細そうにしていたのに、シャーロットが浮かべた微笑みは柔らかく甘く、ウィルヘルムは口の中でボソボソと言いながら、俯いた。
「何だよ…もう、相手がいるんだからさ…」
小さな呟きは、精霊も運ぶ気はなかったようで、シャーロットは聞き取れずに首を傾げる。
「ウィル?」
「い、いや、何でもない!」
慌てたように手を振ったウィルヘルムは、ギーグの葉をすっかり並べ終えた事に気がついて、気持ちを切り替えるように咳払いをする。
「全部、並べ終わったみたいだな。これから、乾燥させるんだけど、その前に、これを掛けるんだ」
ウィルヘルムは、目の粗いガーゼの布を取り出して広げた。
「これを、こう、広げて、」
シャーロットも、ウィルヘルムを手伝いながら、ガーゼで笊を覆っていく。
「風で飛ばないように、重しを乗せる」
台の上に広げたガーゼに、何か所か重しを乗せると、作業は終了。
後は、天気を見ながら、乾燥させる。
「ありがとな。俺一人だったら、もっと時間掛かってた」
「初めて、お手伝いをきちんと出来た気がするわ。私こそ、有難う!」
真っ白なガーゼの隙間から、整然と並ぶギーグの尖った葉が見えて、シャーロットは満足そうに笑った。
領主館で、使用人達を手伝おうとしたが、何一つきちんと最後まで全う出来なかった事を思うと、最初から最後まで、自分の力で成し遂げられた事が嬉しい。
喜びのまま、ウィルヘルムを見上げると、彼は、頬を赤らめて顔を背ける。
「…ウィル?」
「いや、うん、助かったよ」
不思議そうに首を傾げるシャーロットと、慌てるウィルヘルムの姿を、窓越しにマチルダが見ていた。
シャーロット本人としては、もう体調は万全だと思っていたのだが、薬師であるマチルダが、許可しなかったのだ。
最終的には、獣人族と人族の基礎体力の差、と言う事で納得したらしい。
「全くもう、何だって人族の娘っこは、こんなに小さくって弱いのかね。こんなじゃ、ハラハラして仕方ないよ」
口調は乱暴ながらもシャーロットの体を案じる言葉に、シャーロットは微笑んだ。
「私が人族の女性の代表と思われると、他の方に申し訳ないです。私は、人よりも体が小さいですし、体力も筋力もありませんから」
「…やっぱり、そうなんだね?人族の娘が皆、あんたみたいなわけじゃないんだね?」
「はい」
シャーロットが頷くと、マチルダは安心したような、もどかし気な、複雑な表情を見せる。
「て言う事は…う~ん…」
「マチルダさん?」
「あぁ、いや、何でもないよ。体調がいいんなら、薬草を摘む手伝いをしてみるかい?」
「はい、是非!」
シャーロットは、持っていたワンピースに着替え、下ろしたままだった髪を丁寧に梳いて後ろで一つの三つ編みに編んだ。
柔らかな革の短靴を履いて、マチルダのエプロンを借りると――マチルダには腰回りを覆う長さしかないが、シャーロットには膝まで覆う長さになった――勇んで、外に出る。
シャーロットがマチルダの家に運ばれて、実に十二日。
初めての外だった。
「わぁ…!」
きらきらとした日の光が、重なった木々の葉を透かして柔らかく地面に落ちている。
マチルダの家は、平屋建ての一軒家だった。
以前、話していた通り、シャーロットの目に捉えられる距離に、他の家の姿はない。
森の中、ぽっかりとそこだけ円状に木々の生えていない空間に、マチルダの住居兼薬舗は、ひっそりと建っている。
家の周囲は、木の板で作られた柵で囲まれており、柵の外には、多種多様な形状を持った草が生えていた。
「これは、あたしの薬草畑だよ。薬草の中には、自然に生えているのを見つけるしかないものと、栽培可能なものがある。ここにあるのは、栽培可能なものだが、これだけでも、随分と多くの種類の薬が出来るんだ」
マチルダはそう言うと、棘々とした形状が特徴的な葉を一枚、摘んだ。
「これは、熱冷ましに使うギーグの葉。一言で薬草って言っても、使い方は色々さ。生のまま揉んで使うもの、生葉から煮出して使うもの、乾燥させて擂り潰して使うもの、燻して煎じて使うもの…。今日は初めてだからね、一番判りやすいこのギーグの葉を摘んどくれ。これは、乾燥させて擂り潰して粉薬にするんだ。保存が利くから、まとめて作っちまうからね」
「はい!」
マチルダは、行き倒れたシャーロットの面倒を見た謝礼代わりに、手伝いをしてくれればいい、と言ってくれた。
現金の持ち合わせも、他に価値のあるものも、何も持たないシャーロットにとっては、有難い話で、シャーロットは張り切ってギーグの葉を摘み始める。
マチルダ自身も手早く摘み取りながら、シャーロットに説明を続けた。
「ギーグの葉は、大きすぎても小さすぎてもいけない。サイズは…そうだね、あんたの手なら、丁度中指位の長さが目安だ。尖ってるから、葉の中程を摘まんで、肌を傷つけないようにね」
「判りました」
シャーロットは、最初のうちは自分の中指と長さを比べながら作業をしていたが、次第に慣れて、目だけで大きさを測る事が出来るようになった。
三十分程の作業で、渡された籠一杯になった所で、摘み取り終了となる。
「そろそろいいだろう」
マチルダに促され、しゃがみ込んでいた地面から立ち上がり、ぐっと背筋を伸ばした。
「あら…?」
少しクラクラと眩暈がして、倒れそうになった所を、
「あっぶね」
後ろから支えられる。
「ウィルさん…」
「急に立ち上がんなよ、ぶっ倒れるぞ」
言葉遣いは乱暴ながらも、ウィルヘルムの眼差しはシャーロットを心配していて、シャーロットは思わず微笑んだ。
「有難うございます、気を付けます」
「…何かもうさぁ…ほんと、危なっかしいよな、あんた」
フイ、と逸らされた頬が赤い気がする。
「あぁ、ウィル、いい所に来た。ギーグを天日干しするのを手伝っとくれ」
「判った。ばぁちゃん、蜥蜴族のミエルばあさんが来てる。腰痛の薬だってさ」
「あれ、いつもよりも早いね。…あぁ、ちょっと湿った日が多かったから、痛みが強いのかね」
薬師であるマチルダは、薬草畑や薬草採取の関係で、集落から離れて住んでいた。
獣人族達は、体の不調を感じたり怪我をすると、薬を求めて彼女を訪ねてくるのだ。
人族から医療の知識も提供されており、獣人族の医師も少ないながらもいるが、氏族ごとに体質の違いもあり、伝統的な薬師の薬を求める者は多い。
「じゃあ、あたしはミエルに薬を用意してくるから、ウィル、あんたが教えてやっとくれ」
「ん」
ウィルヘルムが頷くと、マチルダはエプロンで手を拭いながら、家の中に入っていった。
ウィルヘルムは、シャーロットに向き直って説明を始める。
「ギーグは、天日干しにしてから粉状に擂り潰す。一言で天日干しって言っても、薬草の種類によって乾燥具合は変えないといけないんだ。ギーグは、パリパリになるまで乾燥して大丈夫」
言いながら、細く割いた木の皮で編んだ、目の細かい笊を用意すると、木で作られた台に乗せた。
「葉が重ならないように並べてみて」
「はい」
シャーロットは丁寧に、一枚一枚、葉を並べていく。
ウィルヘルムも、新しい笊を出して、マチルダが摘んだ葉を手早く並べていった。
「ウィルさんは、薬草にお詳しいのですね」
「まぁ、ばぁちゃんと暮らしてるしな。…なぁ、その、丁寧語?って言うの?止めねぇ?」
「え?」
「だってさ、あんた、俺とそう年も変わんねぇだろ?何か…こう…距離を感じるって言うかさ。さん付けされるのって、何かムズムズすんだよ。俺も、シャーロットって呼び捨てにするからさ」
ウィルヘルムは、通っている学校が夏季休暇に入った為、居候先から自宅に戻っていると聞いた。
二カ月程の休暇の間、マチルダの薬草作りを手伝うらしい。
夏は様々な薬草が、最も勢い良く萌える季節の為、一年分の薬を作って保存しておくのに忙しく、人手は少しでも多い方がいい、と、マチルダは笑っていた。
しかし、シャーロットが休養を取っていた一週間、ウィルヘルムと顔を合わせる事はなかった。
獣人族は気にしないのかと思っていたが、ベッドに寝ている若い女性と二人きりにした事を、まずかった、とマチルダが後悔したらしい。
自分が子供にしか見えなかったから、二人きりにする事の問題等、思いつきもしなかったのだろう、とシャーロットは考えている。
「ばぁちゃんさ、反省してんだ、あれでも。あんた…シャーロットは、その、婚約者がいるんだもんな。婚約者が知ったらきっと、いい気持ちはしないだろうから、って」
「お気遣い、」
「丁寧語止めろって」
「…えぇと、気を遣ってくれて、有難う」
「どういたしまして」
乱暴な言葉と態度ながら、薬草を並べる手は丁寧で優しい。
「ウィルさん」
途端にギロッと睨まれて、シャーロットは言い換える。
「ウィルは、学校でどんな事を勉強しているの?」
「どんな…そんなに人族と変わんねぇと思うぞ?学校ってのは、人族から伝わったもんだし。それまでは、氏族内で長老から知識を教わるだけで、何処かに集まって勉強する習慣はなかったんだってさ」
「あの、私、学校に行った事がないの」
「へぇ?人族ってのは、平民でも学校行くんじゃないのか?」
「私は…ちょっと、事情があって」
ウィルヘルムは、頭一つ半小さいシャーロットのつむじを見下ろして、あぁ、と頷いた。
恐らく、体が弱いせいだと理解したのだろうな、と思いながらも、シャーロットは敢えて訂正しない。
「チビのうちは、読み書き計算だな。どんな仕事をするにしたって、共通語の読み書きが出来ないと困るし、計算出来ないのも困るから。俺が今行ってる高等科は、人族の事とか、マハトの事とかも習う」
「人族の事…?」
「高等科まで行くヤツは、少ねぇんだ。だから、高等科出たヤツは、ノーハンを出る機会がある職業に就く事が多い。領兵とかな」
シャーロットは、ヴィンセントの部下を思い出して、あぁ、と頷いた。
確かに彼らは、身分制度に基づいた人族の社会について、理解しているようだった。
獣人族にとって、人族の生活は未知のものだろう。
王族の特権で、多くの書物を読む事が出来たシャーロットだって、ノーハンに来るまで、獣人族の生活について全く知らなかったのだから。
「高等科に進学する人が少ないと言う事は、学校も少ないの?」
「あぁ、ノーハンの中で一つだけだ」
「一つ?!」
ノーハンは、人口の少なさに反して面積の広い領だ。
だからこそ、各氏族がそれぞれに集落を作って暮らせるのだから。
「初等科は、各氏族に一つずつあるんだけどな。初等科の勉強さえ出来れば、ノーハンの中で生活する分には何の問題もない。殆どの獣人族は、ノーハンから一歩も出ずに一生を終えるからな。高等科は、領兵目指したり、人族と商用で会ったり…中には、王都で医学を学びたい、なんてヤツもいるけど、そういうヤツが来るんだ」
「ウィルは、領兵になりたいから、高等科に行っているのね」
「……ん、まぁ、そんなとこ。誰でも行きたきゃ行けるわけじゃねぇし、大人になってから入るヤツもいる」
少し間があったが、シャーロットは気づかない。
「ウィルって、頭がいいのね」
「見えねぇ、って言うんだろ。判ってるよ。だけど…まぁ、何て言うか…将来の為には仕方ねぇ、って言うか…」
言葉を濁すウィルヘルムを、シャーロットは感心の眼差しで見つめた。
「凄いわ。将来の事を、ちゃんと考えてて」
「…シャーロットだって、考えてるだろ。結婚する、って」
「そう、ね…」
シャーロットの声が僅かに沈んだ事に気づいたのか、ウィルヘルムは気遣わし気な目を向ける。
「何だよ、本当は結婚したくないのか?」
「うぅん…そうじゃなくて。婚約者様の事は、お慕いしてるわ。でも…」
「でも?」
「婚約者様のご家族に、人族の私が婚約者なんておかしい、って言われて…人族と獣人族の違いを初めて知って、悩んだの」
「何を?」
「あの…ね、人族には、番がいないの」
「…あぁ、聞いた事あるな」
「でも、獣人族にとっては、番、って大切なんでしょう?もしも、結婚した後に、婚約者様に番が現れたら?私は、どうするのかしら、って」
シャーロットは、何処か遠くを見つめて言葉を続けた。
「王都に私の居場所はないの。ノーハンは素敵な場所だから、このまま、ここで暮らしたいけれど…結婚出来なかったら、離縁されたら、どうやって暮らしていけばいいのかしら…」
途方に暮れたように俯くシャーロットの頬に、ウィルヘルムは思わず手を伸ばし掛けて、触れる直前で慌てたように手を引っ込める。
「そ…れはさ、その時になってから考えるんじゃダメなのか?」
シャーロットは瞬いて、ウィルヘルムの顔を見上げた。
「だってさ、婚約者はまだ、カーシャにいるわけだろ?家族がどう言い訳するか判んねぇけど、帰って来て、シャーロットがいなかったら、当然探すだろ?って言うか、探してくれるって信じてるんだろ?」
こくり、と頷くシャーロットを見て、ウィルヘルムは続ける。
「じゃあさ、まずは、迎えを待ってみろよ。迎えが来たら今度は、結婚の話がどうなるか、待てばいい。予想と違ったら、そこで初めて考えりゃいいんだ」
「でも…それでいいのかしら。ウィルは、自分で自分の将来を考えてるのに、私は、待ってるだけでいいの?」
「俺の将来は、一人で決められる事だからな。結婚は、別だろ。一人じゃ出来ねぇんだし、シャーロットの気持ちが、婚約者と結婚する、って決まってるんなら、相手がどうするのか、待つしかねぇじゃん」
「そう、ね…」
ウィルヘルムの言う事は、最もだ。
ヴィンセントの気持ちは、ヴィンセントにしか判らない。
シャーロットがここで一人で悩んでも、何も決める事など出来ないし、彼の気持ちを勝手に決めつけるなんて出来ないのだ。
「多分…不安、なんだわ。番が現れた時に、どうするか決めておけば、きっと、その通りに動けるだろう、って考えてるだけなのだと思う」
「その気持ちは、判らなくもねぇけど」
ウィルヘルムは、空っぽになった籠に、シャーロットの持つ籠からごそっと葉を移した。
そのまま、流れるように笊に広げる作業を続ける。
「…実際の所さ。どれだけ事前に決めてたって、その場になってみなきゃ判んねぇ事って、たくさんあるだろ」
実感の籠った言葉に、シャーロットは少し考えてから頷く。
確かに、そうだ。
頭では、ヴィンセントの気持ちに添うように、とどれだけ考えていた所で、その通りに動ける自信なんて、本当は欠片もない。
最後にヴィンセントの顔を見てから、既に一ヶ月以上。
それなのに、彼の顔も声も、シャーロットの中で鮮明になっていくばかりだ。
カーシャへと向ける祈りに力が籠っているのを、自分自身でも感じている。
「そう、ね…」
ぽつりと呟いて、シャーロットはウィルヘルムを見上げた。
「ウィル、有難う」
ふわり。
シャーロットが微笑むと、周囲の空気がキラキラと光を反射したように見えて、ウィルヘルムは目を擦る。
「え、や、大した事じゃねぇし」
心細そうにしていたのに、シャーロットが浮かべた微笑みは柔らかく甘く、ウィルヘルムは口の中でボソボソと言いながら、俯いた。
「何だよ…もう、相手がいるんだからさ…」
小さな呟きは、精霊も運ぶ気はなかったようで、シャーロットは聞き取れずに首を傾げる。
「ウィル?」
「い、いや、何でもない!」
慌てたように手を振ったウィルヘルムは、ギーグの葉をすっかり並べ終えた事に気がついて、気持ちを切り替えるように咳払いをする。
「全部、並べ終わったみたいだな。これから、乾燥させるんだけど、その前に、これを掛けるんだ」
ウィルヘルムは、目の粗いガーゼの布を取り出して広げた。
「これを、こう、広げて、」
シャーロットも、ウィルヘルムを手伝いながら、ガーゼで笊を覆っていく。
「風で飛ばないように、重しを乗せる」
台の上に広げたガーゼに、何か所か重しを乗せると、作業は終了。
後は、天気を見ながら、乾燥させる。
「ありがとな。俺一人だったら、もっと時間掛かってた」
「初めて、お手伝いをきちんと出来た気がするわ。私こそ、有難う!」
真っ白なガーゼの隙間から、整然と並ぶギーグの尖った葉が見えて、シャーロットは満足そうに笑った。
領主館で、使用人達を手伝おうとしたが、何一つきちんと最後まで全う出来なかった事を思うと、最初から最後まで、自分の力で成し遂げられた事が嬉しい。
喜びのまま、ウィルヘルムを見上げると、彼は、頬を赤らめて顔を背ける。
「…ウィル?」
「いや、うん、助かったよ」
不思議そうに首を傾げるシャーロットと、慌てるウィルヘルムの姿を、窓越しにマチルダが見ていた。
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