幸せは、歩いて来ない。ならば、迎えに行きましょう。

緋田鞠

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 小高い丘の上にある王宮は、物見を兼ねた城壁に囲われ、東西南北四つの城門から中に入る事が出来る。
 王宮を通過する辻馬車の停留所は、城門の外。
 王宮勤務の使用人が利用する通勤馬車の停留所は、城門を入って直ぐにある円形広場。
 自家用馬車を利用する貴族は、各自の勤務先の棟の馬車寄せまで、進む事が出来る。
 王城は王宮の中心部に建てられており、警備の関係で、特別な許可のある馬車しか近づく事は出来ない。
 仕官している貴族の出入りも毎回確認されており、馬車は一度足を止めて、身分証明書を提示する必要がある。
 だが。
「…流石、ノーレイン家の馬車…」
 王城の出入り口を守る衛兵は、馬車の紋章を見ただけで進入を許可した。
 誰が乗っているのかの確認もせずに。
「え、いいの?警備、甘過ぎない?」
「ノーレイン家の馬車を強奪出来るヤツはいない、と言う前提だな」
 …そうなんだろうけれども、いいのだろうか。
 普段、通用口からしか王城に入った事のない私は、正面玄関の馬車寄せで停車されて、戸惑う。
 おかしいでしょう?
 使用人が、正面玄関から堂々と出勤する、って。
「あのな、お前は、王城の使用人ではない俺が、通用口を通ってもいいと思うのか?」
「それは、ダメ」
「だろう?」
「あの、じゃあ、一緒に降りるけど、私は通用口に回るから。送ってくれて有難う」
「バカを言うな。何の為に一台で来たと思ってるんだ」
 別々に動く必要があるなら、二台用意する。
 そう付け加えられて、何のつもりか判らずにダリウス様を見ると、彼は車外に出て行った所だった。
「ミカエラ」
 手を差し出されて、反射的にその手に手を重ねる。
 強引な位の強さで引かれ、私は足置きを踏む事なく、ダリウス様の腕の中に着地した。
 勢い余って、頬が厚い胸板にぶつかる。
「~~~~~!」
「ん、相変わらず、しっかりした体幹だな」
 それは、褒めていると思っていいのだろうか…。
 余り、淑女への誉め言葉には聞こえないのだけれど。
 と言うか、この行動自体が、子供にするものではないだろうか。
 複雑な思いで目を逸らすと、王城の前に客人を迎えに出た使用人達が、唖然とした顔をしているのが見えた。
 傍目からは、ダリウス様が私を抱き寄せたように見える筈だ。
 実際には、腕を引っ張られただけの事なのだけれど。
 …これは、マズいのでは。
 私は特殊な業務内容の関係で王城の使用人の一部としか交流がないから、ダリウス様と登城した令嬢が王城の特任侍女だと直ぐに気づく人は少ないかもしれない。
 けれど、今後もアルフォンス様のお傍に控えるのだから、「もしや、あの時の」と思われる可能性は大だ。
 いや、そうか、ダリウス様はそれを狙っているのか。
 アルフォンス様の特任侍女には、ノーレイン公爵家の、ダリウス様の後見がついている、と知らしめたいと話されていた。
 …でも、寧ろ、風当たりが強くなりそうなんですけど…?
 ダリウス様本人に、照れた様子も揶揄う様子もない辺り、『男女の仲』を暗に示したいわけではないのは判るのだけれど、傍からどう見えるかは別の話だ。
「陛下のお召しにより、参上した」
「ようこそおいでくださいました、ダリウス・ノーレイン公爵閣下」
 大勢の使用人の中で、王城の家令が一歩前に進んで頭を下げる。
 王城の家令を務めるドルフ・キャンビル卿は、ダリウス様とユリシーズ様の母方の叔父で、キャンビル辺境伯家の五男だ。
 ユリシーズ様の即位が決定した後に、採用されたらしい。
 王城には、先王陛下ご夫妻に仕えていた使用人達が大勢いるけれど、一年経ってもどの人物に信が置けるのか見極めが終わらず、その為、重用出来る人材が不足しているのだ、と、アラベラ様との初回の面会時に伺っている。
 どうやら、その辺りにもアラベラ様とエメライン先王妃殿下の確執があるようだ。
「お連れ様は、ミカエラ・ウェインズ男爵令嬢ですね」
 パウズ様を通じて一度紹介されただけなのに、覚えているとは、流石、家令。
 そのパウズ様も、キャンビル辺境伯家からパウズ伯爵家に婿養子に行った四男のご子息だと言うから、人材不足は深刻な問題だ。
「そうだ。共に面会するから、そのように取り計らって欲しい」
「畏まりました」
 どう言うつもりなのか、と、ダリウス様に目で問うと、
「お前も報告があるのだろう?俺の業務にも関わって来るから、同席させて貰えるように頼んである」
との返事が返って来る。
 そうか。
 近衛に異動となるなら、今後、アルフォンス様の周囲に感じる不穏な気配は、ダリウス様にお任せ出来ると言う事か。
 本来ならば、縁故での採用よりも実力を重視する筈のユリシーズ様が、血縁者を家令に置き、絶対に逆らえない立場(色んな意味で)の私をご子息の教育係に据えたと言う事は、私が聞き齧った以上に、王城を取り巻く環境は複雑なのかもしれない。



 通されたのは、アラベラ様と初めて面会した時と同じ応接間だった。
「このような姿で両陛下にお目通りするなど、ご不快にさせてしまわないか心配でございます」
 『言っておいてくれれば、もう少しましな格好したんだけど?』。
 じと、と横目でダリウス様を見ると、あぁ、と彼は気づいたような声を上げた。
「それで不機嫌なのか」
「まさか、恐れ多くもノーレイン公爵閣下とご同席出来るとは、考えてもおりませんでしたので」
 『説明不足どころじゃないでしょう?』。
 壁際にメイドが控えているから、淑女擬態中の私に、ダリウス様は面白そうに口の端を上げる。
「騎士は時間の無駄を嫌う。人を挟んで其方の説明を聞くよりも、正確な状況を把握したかった」
 残念ながら、王城内の誰が味方で誰が敵なのか、判らない。
 王城勤めを始めた当初、陛下のお膝元ならば身元の確かな人間しかいない、と安心していた。
 確かに、確かだ。
 だが、彼等の主義主張については、頭の中を覗けない以上、確実ではない。
「待たせたか?」
 先触れと共に、ユリシーズ・ノーレイン・マスカネル国王陛下と、妃であるアラベラ・ノーレイン・マスカネル王妃殿下が、応接間を訪れる。
 ユリシーズ様は、ダリウス様によく似た栗色の髪とコバルトブルーの瞳だけれど、背はダリウス様よりも十センチ程低い。
 騎士であるダリウス様のように厚みのある体ではないものの、今も運動を欠かさないのか、引き締まっているのがよく判る。
 立ち上がって挨拶しようとした私とダリウス様を、ユリシーズ様は鷹揚に手で押し留めた。
「あぁ、よい。此処は私的な場だ。楽にしてくれ」
 過去に面識があるとは言え、木っ端男爵令嬢が、国で最もやんごとないご夫妻と筆頭公爵と、一つの卓を囲う事になるとは…。
 人生とは、予想外の連続だ。
 メイドが茶器を用意すると、ユリシーズ様はすかさず人払いをした。
 応接間から、使用人が消えた途端。
「ミカエラちゃん、久し振り!」
 にぱ、と擬音のつきそうな満面の笑顔で掛けられた思い掛けない言葉に、思わず、ポカンとしてしまう。
「いやぁ、あんっなに小さかったミカエラちゃんが、いつの間にやら綺麗なお嬢さんに…年は取りたくないもんだねぇ」
 小さかった、の辺りで、ご自分の膝の辺りに手を翳す。
 いや、幾ら何でも、そこまで小さくはなかった筈。
「ユリシーズ、何、それはわたくしへの当てつけ?わたくしが年を取ったって言いたいの?」
「まさか!私の美しい妻はいつだって美しいよ?だって、ミカエラちゃんと会うのは何年振りかな?十年振り位?もっとかな?十代からの十年は変化が大きいからねぇ、驚くのも無理はないだろう?」
 先程まで、国王陛下らしい威風堂々たる威厳を見せていらした方が。
 二十五にもなった女を掴まえて「ミカエラちゃん」って。
 私は、どんな顔をするのが、正解なんだろう。
「心配するな、兄上の通常仕様だ。お前よりもよっぽど、擬態の技術が優れているぞ。盗めるものがあれば、盗んでおくといい」
「何だい、ダリウス。擬態ではなく、天性の演技者と呼んでくれるか?千の仮面を持つ男だよ、私は」
 …あぁ、思い出した。
 ユリシーズ様は、少しお調子者だった。
 誰とでも直ぐに打ち解け、女性に対して気安い所があるけれど、一線は守っているから、トラブルに巻き込まれた事はないと聞いた。
 ご婚約者が、王女殿下であるアラベラ様だった事もあって、普通の貴族令嬢には到底太刀打ち出来なかったのもある。
「ご無沙汰しております、陛下。本日は、お目に掛かれて光栄にございます」
「うわ」
「うわ?」
 思わず、ユリシーズ様の言葉をそっくり返してしまった。
「どう言う事?ダリウス!ミカエラちゃんが!ミカエラちゃんが、普通のお嬢さんみたいになってる!」
 …お嬢さんと呼ばれるには薹が立っていますけれども。
 『普通』になって驚かれるとは、ユリシーズ様の中の私は、どれだけ非常識だったのか。
「似合わないだろう?」
「話には聞いてたけど、ミカエラちゃん、って思うと、何だか複雑だねぇ」
「その…幼い頃は、大変失礼致しました…」
 父に連れられてノーレイン公爵邸を出入りしていた頃、私には身分の差など、欠片も理解出来なかった。
 そもそも、身分と言うものを認識していなかった。
 私の世界は家庭内で完結していたから、家の中と全く同じように振る舞っていたのだ。
 …思い返すと、顔から火が出る。
 サディアス様ご夫妻も、ユリシーズ様達ごきょうだいも、何と寛容だった事か。
「いやいや、責めてるわけじゃないよ。あの当時の私達に、ミカエラちゃんの朗らかさは救いだったからね」
 しみじみとユリシーズ様が言うと、アラベラ様も頷く。
「ミカエラさんには、前にもお話したわね。わたくし達は立場の関係で、親しい友人を作る事が出来なかったの。大人ばかりに囲まれて、急き立てられるように成長して…でも、実際は子供だから、心身のバランスが取れていなかったのよね。そこに現れたのがミカエラさんよ。天真爛漫な貴方と、振り回されながらも子供らしくなっていくダリウスの姿に、わたくし達がどれ程、救われた事か」
 アラベラ様は、何処か遠くを見てから、私の顔を見て微笑まれた。
「…アルフォンスは、この一ヶ月で随分と変わったわ。有難う。貴方にお願いして、本当に良かった」
「お言葉、有難く頂戴致します」
「ミカエラちゃん…。頼むから、それ、止めて…。何だか、背中がムズムズして来た。ね?ほら、私を見て?今の私は、国王としてじゃなくて、ただのユリシーズとして君と話してるんだ。ミカエラちゃんにも、フツーにして欲しいんだよ」
 物凄く真面目な顔でユリシーズ様にダメ出しされて、何だか自信を失ってしまう。
 …それなりに、淑女に擬態出来てる自信があったんだけど…。
 やはり、幼少期を知られていると言うのは、大きい。
「切り替えさえ出来れば、それでいい。率直な言葉こそ、今、最も必要なものだ」
 横からダリウス様にも付け加えられて、仕方なく頷く。
「まずはダリウス。ミカエラちゃんと一緒に来たと言う事は、近衛を引き受けると言う事でいいんだな?」
 ユリシーズ様が、ダリウス様の顔を見て、真剣な顔で尋ねた。
「あぁ。ボーディアンが心配ではあるが、北方軍には信頼出来る者が多数いる。ならば、今は近衛に注力すべきだ」
 その言葉に違和感を覚えてダリウス様の顔を見ると、ダリウス様は、少し困ったように首を傾げる。
 近衛騎士団団長の退職に伴う異動、ではなかったのだろうか。
「実はね、ミカエラちゃん。近衛の団長は…実力は申し分ない人なんだけど、ちょっと困った事を仕出かしてくれてね。表沙汰には出来ないけど、所謂降格人事なんだよ。本人が、降格する位なら潔く辞める!って言うから、引き留めなかったんだけどね」
 近衛騎士団まで、人材不足なのか…。
 体制が整うまで、ダリウス様もお忙しそうだ。
 出来るだけ、私の事で手を煩わせないようにしないと。
「近衛騎士団はダリウスに任せるとして、次に、ミカエラさんの報告を聞きましょう」
 アラベラ様のお言葉に、姿勢を正した。
「ご報告は三点です。一点目、アルフォンス様が、ご友人との面会を希望されています」
「…友人?あの子に友人がいたかしら?」
「ノーレイン公爵邸の執事のご子息で、クレイグ様と」
「クレイグ…」
 ダリウス様が、首を傾げる。
「俺はまだ、仕えている者の家族の名まで把握出来ていない。執事の多くは兄上達から引き継いでいる筈だが、兄上は知っているか?」
「クレイグ…クレイグねぇ…アルフォンスが友達になる年齢の子で、クレイグと言う名はいたかな…」
 何と。
 軽い話題の筈が、何だか深刻な雰囲気になってしまった。
「二点目は?」
「はい。アルフォンス様の家庭教師のうち、アラベラ様のお考えを直ぐに察した様子なのは、古代言語学のカシウス教授。それ以外の方は、相変わらず、設定された授業時間以上の確保をしようとしていらっしゃいます。中でも、私を懐柔もしくは排除しようと熱心なのは、歴史学のスロース教授と政治学のカンティーナ教授です」
「排除はともかく、懐柔?」
「えぇ。あの手この手で」
「あの手この手…」
 そう呟いたのは、ダリウス様だった。
「金か?」
「それもあります」
「それ以外には?」
「縁談です」
「縁、談…」
 何故か固まってしまったダリウス様を横目に、ちら、と、ユリシーズ様とアラベラ様が視線を交わす。
「因みに、どのような?」
 アラベラ様の張り付けたような笑みに、特に気負わずに返す。
 別に、隠すような事ではない。
「そうですね、複数ご紹介頂きましたが、全て、後妻です」
「…今にも死にそうな方の?」
「恐らくは。後継者がいらっしゃる方ばかりですから、看取り要員ですね。『遺産は渡さないけど、看取れ。若さも富も美貌もない男爵令嬢に嫁ぎ先を用意してやるのだから、感謝しろ』だそうで」
「…誰だ、そんなふざけた事を言うヤツは」
 ダリウス様の声が、絶対零度まで冷え切っている。
「ご心配なく、全てお断りしてますので。今更、結婚する気はないから、嫁ぎ先の心配はしてません、と話したら、変なモノ見る目で見られましたけど」
 ユリシーズ様が、面白そうな顔で首を傾げた。
「ミカエラちゃん、再婚する気、ないんだ?」
「ないですね。私は、結婚に向いてない事がよく判りましたから」
「残念だけど、我が国では、死別以外の独身貴族女性への風当たりは強い。今はまだ、ランドンの庇護下にあるけれど、その先を考えると、独身は得策ではないように思うよ?何なら、私が紹介しようか。死に損ないのじいさんじゃなくて、若いピチピチ初婚の男だよ。因みに、名前は、」
 その瞬間、私は両耳を手で抑え込んだ。
 渾身の力を込めたせいで、ユリシーズ様の口がぱくぱく動いているのは見えるけれど、耳鳴りがして音は聞き取れない。
「…何やってるんだ、お前は」
 暫くすると、隣に座っていたダリウス様が、私の両手を引き剥がす。
「ユリシーズ様のご紹介じゃ、恐れ多くてお断り出来ないでしょう?うっかりでも、聞いたらまずいもの」
「流石、ミカエラちゃん、面白いなぁ。一切の忖度をせずに、力業で封じに掛かったね?淑女が耳を塞いで聞かない振り、って初めて見たよ」
「私も、初めてやりました」
 素っ気なく答えると、ユリシーズ様が吹き出した。
「うん、実に私好みだ。紹介じゃなければ、結婚する気はある?」
「…まず、そんな事態は起きないとは思いますけれど。一度失敗してますから、簡単には踏み切れません」
 ダリウス様以上に好きになれる人と出会ったら、もしかして。
 …うん、無理だ。
「そっかぁ。ま、でも、何が何でもしない、って決めつけてないんなら、いいと思うよ。それで?スロース教授とカンティーナ教授の事で、他に何か気になった事はある?」
 問われて、ここ一ヶ月を振り返る。
「授業内容が、若干偏っている気がします。専門ではないので、はっきりと『そうだ』とは言い切れませんが」
「そうか。じゃあ、その点も確認してみよう」
 ユリシーズ様が頷くと、続いて、アラベラ様が口を開く。
「三点目は?…恐らくだけれど、それが一番、ミカエラさんが伝えたかった事よね?」
「はい」
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