推定聖女は、恋をしない。

緋田鞠

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<プロローグ>

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「結婚ってさ、勢いとタイミングだよ」
 念願だった人気職に就いたにも関わらず、交際中の男性の海外転勤についていく為に二年で退職した大学時代の友人は、送別会でこう言った。

「私だって、順番とか予定とか考えてたけどね?でもまぁ、これもご縁なのかな、って」
 付き合っていた男性との子供を想定外に授かった為に、大学を中退して結婚、出産した小学校時代の友人は、成人式でこう言った。

「結婚とか、婚姻届紙切れ一枚で私達の関係を決めないでよ、って思ってたけど…まぁ、まだまだ必要だったわ」
 縛られたくないから入籍しない、と決めていたものの、病気で入院した時に家族と認められなくて医師の説明を受けられず、方針転換した同棲十年目の友人は、保証人欄を書いてくれ、とこう言った。



 結婚に、夢を見た事はない。
 両親は、ニーナが三歳の時に離婚した。
 二人ともその後、すぐに再婚して、ニーナには血が半分だけ繋がっている弟妹が四人いる。
 けれど、ニーナは彼等と暮らした事はないし、きょうだいだと言う意識も希薄だ。
 ニーナにとっての両親とは、時々来て、育ての親である祖母に申し訳程度の養育費を渡す人。
 振込の方が楽なのに、と文句を言っていたと言う事は、現金手渡しは、祖母の希望だったのだろう。
 ニーナの様子を見に来い、と言う意味だ。
 だが、祖母の期待に反して、両親は入学式も運動会も親子遠足も、一度も来てくれた事はない。
 理由は確か、「子供の予定があるから」。
 私も貴方達の子供なんだけどね…と、寂しさよりも呆れてしまったのは、確か、小学校の卒業式だ。
 世の中には、仲のいいステップファミリーだってたくさんある。
 けれど、ニーナのように、再婚相手との関係を考えて置いていかれる子供だって、決して少なくはない。
 両親には両親の人生がある事も、大人になった今では判っている。
 だが、それとこれとは別の話だ。
 反抗期の子供ではないけれど、ニーナが、生んでくれと頼み込んだわけではないのだから。
「結婚、かぁ…」
 勢いとタイミング。
 ご縁。
 まだまだ必要。
 なるほど、では、それは、今なのかもしれない。
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