エーデルワイス〜戦後記憶を失った少女が自分とは何者か探しに行く物語〜

さかな

文字の大きさ
4 / 6

ヴァルミッチという国(4話)

しおりを挟む

ー1週間後ー

船を出すには素晴らしい天候だった。さほど強くない日差しに心地の良い海風に眠たくなるような気温。

「父さんも着いてくるのですか。」

「あぁ。私も行かなくちゃいけないんだ。」

「なんでですか?」

「いつか言う。そして一つ助言がある。君は私から離れて上陸しなさい。」

「どうしてですか?」

「危ないからだ。」

「どうして危ないんですか?教えてください。私は父さんのおかげで出生地もわかったんです。父さんのお役に立てるのであればお役に立ちたいのです。」

「だからこそ離れてくれ。」

「そこまで言うのならわかりました。」


形容し難いこの空気感。和解したばかりなのにすこし寂しくも思ったが父さんがそこまで言うのであれば仕方がない。そう言い聞かせてダーバルデットに早く着かないかとおもっていた。そうしているうちに私は心地の良い陽と風を浴びながら眠りに落ちた。


「何を眠っている!おい!」

「す、すみません!もう着きましたか?」

「は?何を言ってるんだお前は。」

「え?」

「訓練の時間だろ!化け物て油断などするな!」

「化け物?誰がですか?」

「お前だよ!おい化け物!」

「私が?化け物?」



「おい!おい!大丈夫か?」

「父さん!」

「大丈夫か?かなりうなされていたから心配したよ。」

「妙な夢を見ました。」

「本の読みすぎじゃないか?」

「だといいのですが。」


起きるとかなり暗くなっていた。


「え?まだ着かないんですか?」

「そうだな。」

「父さんは寝てないのですか?」

「さっきまで寝てたよ。」

「あとどれくらいで着きますか?」

「後3日くらいかな」

「後3日くらいですか?」

「後3日くらいだね。」

「後3日くらいですか。」

「まぁゆっくりするといいよ。」

「3日は長いですね」

「まだ言うかね。」

「あと一つ聞きたいことがあります。」

「なんだい?」

「どうしてこんかヴァルミッチから離れたバナフィットに住んでいたんですか?今ヴァルミッチはどうなっているのですか。」

「2つじゃないか。」

「申し訳ありません。」

「いいんだいいんだ。」

父さんは頬を緩めた。本当に娘のように思ってくれているのだと。父さんは父さんの顔をしていた。そして、話してくれた。父さんは娘の夢だった穏やかな生活をするために終戦したすぐ私を連れてバナフィットに移住。バナフィットは中立の島。当時は負傷者も運ばれてたりしてたらしい。私もそのうちの1人。それも理由のうちの一つだったそうだ。そして、ヴァルミッチは復興中。2年経った今でも戦争の酷い跡形は残っているそうだ。戦前ヴァルミッチは綺麗な街だったそうだ。石畳とレンガで整備されて山も多く豊かな国だった。多くの人が自国を愛してたそうだ。当然父さんもヴァルミッチという国が大好きだったそうだ。



そして、その国を崩壊させた憎き王国。ダーバルデットに到着した。

「いいか、君は私が降りてしばらくした後に降りなさい。」

理由が知りたい。が、聞けない。その葛藤の間はまさにそれを物語っていた。そして、父さんは口を開けた。



「私はダーバルデットの人間だ。そして、この国の裏切り者だ。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...