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ヴァルミッチという国(4話)
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船を出すには素晴らしい天候だった。さほど強くない日差しに心地の良い海風に眠たくなるような気温。
「父さんも着いてくるのですか。」
「あぁ。私も行かなくちゃいけないんだ。」
「なんでですか?」
「いつか言う。そして一つ助言がある。君は私から離れて上陸しなさい。」
「どうしてですか?」
「危ないからだ。」
「どうして危ないんですか?教えてください。私は父さんのおかげで出生地もわかったんです。父さんのお役に立てるのであればお役に立ちたいのです。」
「だからこそ離れてくれ。」
「そこまで言うのならわかりました。」
形容し難いこの空気感。和解したばかりなのにすこし寂しくも思ったが父さんがそこまで言うのであれば仕方がない。そう言い聞かせてダーバルデットに早く着かないかとおもっていた。そうしているうちに私は心地の良い陽と風を浴びながら眠りに落ちた。
「何を眠っている!おい!」
「す、すみません!もう着きましたか?」
「は?何を言ってるんだお前は。」
「え?」
「訓練の時間だろ!化け物て油断などするな!」
「化け物?誰がですか?」
「お前だよ!おい化け物!」
「私が?化け物?」
「おい!おい!大丈夫か?」
「父さん!」
「大丈夫か?かなりうなされていたから心配したよ。」
「妙な夢を見ました。」
「本の読みすぎじゃないか?」
「だといいのですが。」
起きるとかなり暗くなっていた。
「え?まだ着かないんですか?」
「そうだな。」
「父さんは寝てないのですか?」
「さっきまで寝てたよ。」
「あとどれくらいで着きますか?」
「後3日くらいかな」
「後3日くらいですか?」
「後3日くらいだね。」
「後3日くらいですか。」
「まぁゆっくりするといいよ。」
「3日は長いですね」
「まだ言うかね。」
「あと一つ聞きたいことがあります。」
「なんだい?」
「どうしてこんかヴァルミッチから離れたバナフィットに住んでいたんですか?今ヴァルミッチはどうなっているのですか。」
「2つじゃないか。」
「申し訳ありません。」
「いいんだいいんだ。」
父さんは頬を緩めた。本当に娘のように思ってくれているのだと。父さんは父さんの顔をしていた。そして、話してくれた。父さんは娘の夢だった穏やかな生活をするために終戦したすぐ私を連れてバナフィットに移住。バナフィットは中立の島。当時は負傷者も運ばれてたりしてたらしい。私もそのうちの1人。それも理由のうちの一つだったそうだ。そして、ヴァルミッチは復興中。2年経った今でも戦争の酷い跡形は残っているそうだ。戦前ヴァルミッチは綺麗な街だったそうだ。石畳とレンガで整備されて山も多く豊かな国だった。多くの人が自国を愛してたそうだ。当然父さんもヴァルミッチという国が大好きだったそうだ。
そして、その国を崩壊させた憎き王国。ダーバルデットに到着した。
「いいか、君は私が降りてしばらくした後に降りなさい。」
理由が知りたい。が、聞けない。その葛藤の間はまさにそれを物語っていた。そして、父さんは口を開けた。
「私はダーバルデットの人間だ。そして、この国の裏切り者だ。」
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