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📘 三題噺のお題(第14弾)
雨上がりの交差点
割れた写真立て
動き出した銅像
解釈のヒント(自由に無視OK)
雨上がりの交差点
水たまりに映る空、傘を閉じる人々、濡れたアスファルトの匂いなどを情景描写に活かせます。
雨上がりを「事件の後」「感情の変化」などの比喩としても使えます。
割れた写真立て
過去の出来事、失われた人、壊れた関係の象徴。
中の写真が誰かによって入れ替えられている、という展開にも。
動き出した銅像
ファンタジー・ホラー・SFなどジャンル問わず使えるインパクト要素。
実際に動くか、主人公の幻覚か…など解釈の余地も広いです。
―――――――――――――――――――――――
【本文】
渋谷のスクランブル交差点。かつては凄い数の人で賑わっていた。信号が青に変わるのに合わせ、人が一斉に動き出す光景は、外国人観光客には物珍しいものだったようだ。写真を撮っている外国人がたくさんいた。
それも今は昔の話。僕は一人交差点の真ん中に佇んでいた。
さっきまで雨が降っていたが、ありがたいことに止んでくれた。水分は作戦の邪魔だ。僕はレインコートを脱ぎ捨てた。
リュックから写真立てを取り出した。割れてしまっているが、新しいものは手に入らない。僕と両親と妹の4人で撮った、旅行先での家族写真。親切な若い男女が撮ってくれた。恋人だったのだろうか? それとも、夫婦だったのだろうか? あの人たちも生きているかは疑問だ。僕のせいで。
写真の中では両親と妹が笑っていて、僕は興味なさそうな顔をしている。かっこつけていた。自意識過剰だった。僕も笑えば良かった。悔いても、もう時間は戻らない。
もう会えない家族を思い、少しの間写真を見てから、僕は写真立てをリュックにしまった。
高2の修学旅行であそこに行かなければ、ゆで卵なんか食べなければ、こんなことにはならなかった。僕は何度も繰り返した後悔をまた繰り返す。
僕たちの班は、自由行動で奈良の大仏を見に行った。あの日の朝、僕は寝坊してしまい、朝食の時間が短かった。ゆで卵があった。これなら持ち運べると思い、自分のと、食べなかった人のゆで卵を持って出た。
大仏を見にいく途中のコンビニで、僕は塩を買った。ゆで卵には塩をかける派だから。
あの日は何かの儀式の日だったようで、大仏の前にはたくさんのお坊さんがいて、念仏を唱えていた。
僕は大仏を見ながら、ゆで卵を食べるという暴挙に出た。だって、お腹が減ってたんだもん。
ゆで卵を食べることに集中していると、班のメンバーに「次、行くぞ」と急かされた。僕は慌てて追いかけたが、脚がもつれて転んでしまった。そして、塩の瓶が大仏に向かって飛んでいき、当たって割れた。
「何さらすんじゃ、小僧! 青銅は塩で腐食するのを、知らんのかいぃ?」
凄い声が上から降ってきた。あの声は、今でも耳に残っている。
上を見ると、大仏が怒りの表情で僕を睨んでいた。そして、大仏は立ち上がった。
それから、地獄のような日々が始まった。
街は大仏に蹂躙されていった。
暴れる大仏に対処しようと警察が、自衛隊が立ち向かった。だけど、ヤツの訳のわからない法力バリアーとレーザーの前に次々とやられていった。
アメリカなども参戦したが、ヤツには勝てなかった。
日本は、見捨てられた。
ヤツは海を渡れない。
本州と四国、九州を結ぶ橋は壊され、青函トンネルは爆破された。
今、日本人は北海道、四国、九州で細々と暮らしている。僕のせいで。
あれから3年。本州で生き残っている人はどれくらいいるのだろうか?
僕は、抵抗組織に入り、自分を鍛えてきた。
今日、僕はヤツとの決着をつける!
渋谷のど真ん中、ビルの影からヤツが、奈良の大仏が姿を現した。
僕は、ヤツへと向かい、走り出した。
―――――――――――――――――――――――
【感想】
「動き出した銅像」が難しく、それを他の2つとどう絡めるかで悩みました。
その結果できたのがこんな話。
三題噺らしい、短く勢いのある話にはなったと思います。
雨上がりの交差点
割れた写真立て
動き出した銅像
解釈のヒント(自由に無視OK)
雨上がりの交差点
水たまりに映る空、傘を閉じる人々、濡れたアスファルトの匂いなどを情景描写に活かせます。
雨上がりを「事件の後」「感情の変化」などの比喩としても使えます。
割れた写真立て
過去の出来事、失われた人、壊れた関係の象徴。
中の写真が誰かによって入れ替えられている、という展開にも。
動き出した銅像
ファンタジー・ホラー・SFなどジャンル問わず使えるインパクト要素。
実際に動くか、主人公の幻覚か…など解釈の余地も広いです。
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【本文】
渋谷のスクランブル交差点。かつては凄い数の人で賑わっていた。信号が青に変わるのに合わせ、人が一斉に動き出す光景は、外国人観光客には物珍しいものだったようだ。写真を撮っている外国人がたくさんいた。
それも今は昔の話。僕は一人交差点の真ん中に佇んでいた。
さっきまで雨が降っていたが、ありがたいことに止んでくれた。水分は作戦の邪魔だ。僕はレインコートを脱ぎ捨てた。
リュックから写真立てを取り出した。割れてしまっているが、新しいものは手に入らない。僕と両親と妹の4人で撮った、旅行先での家族写真。親切な若い男女が撮ってくれた。恋人だったのだろうか? それとも、夫婦だったのだろうか? あの人たちも生きているかは疑問だ。僕のせいで。
写真の中では両親と妹が笑っていて、僕は興味なさそうな顔をしている。かっこつけていた。自意識過剰だった。僕も笑えば良かった。悔いても、もう時間は戻らない。
もう会えない家族を思い、少しの間写真を見てから、僕は写真立てをリュックにしまった。
高2の修学旅行であそこに行かなければ、ゆで卵なんか食べなければ、こんなことにはならなかった。僕は何度も繰り返した後悔をまた繰り返す。
僕たちの班は、自由行動で奈良の大仏を見に行った。あの日の朝、僕は寝坊してしまい、朝食の時間が短かった。ゆで卵があった。これなら持ち運べると思い、自分のと、食べなかった人のゆで卵を持って出た。
大仏を見にいく途中のコンビニで、僕は塩を買った。ゆで卵には塩をかける派だから。
あの日は何かの儀式の日だったようで、大仏の前にはたくさんのお坊さんがいて、念仏を唱えていた。
僕は大仏を見ながら、ゆで卵を食べるという暴挙に出た。だって、お腹が減ってたんだもん。
ゆで卵を食べることに集中していると、班のメンバーに「次、行くぞ」と急かされた。僕は慌てて追いかけたが、脚がもつれて転んでしまった。そして、塩の瓶が大仏に向かって飛んでいき、当たって割れた。
「何さらすんじゃ、小僧! 青銅は塩で腐食するのを、知らんのかいぃ?」
凄い声が上から降ってきた。あの声は、今でも耳に残っている。
上を見ると、大仏が怒りの表情で僕を睨んでいた。そして、大仏は立ち上がった。
それから、地獄のような日々が始まった。
街は大仏に蹂躙されていった。
暴れる大仏に対処しようと警察が、自衛隊が立ち向かった。だけど、ヤツの訳のわからない法力バリアーとレーザーの前に次々とやられていった。
アメリカなども参戦したが、ヤツには勝てなかった。
日本は、見捨てられた。
ヤツは海を渡れない。
本州と四国、九州を結ぶ橋は壊され、青函トンネルは爆破された。
今、日本人は北海道、四国、九州で細々と暮らしている。僕のせいで。
あれから3年。本州で生き残っている人はどれくらいいるのだろうか?
僕は、抵抗組織に入り、自分を鍛えてきた。
今日、僕はヤツとの決着をつける!
渋谷のど真ん中、ビルの影からヤツが、奈良の大仏が姿を現した。
僕は、ヤツへと向かい、走り出した。
―――――――――――――――――――――――
【感想】
「動き出した銅像」が難しく、それを他の2つとどう絡めるかで悩みました。
その結果できたのがこんな話。
三題噺らしい、短く勢いのある話にはなったと思います。
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