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第四章
植物が持つ再生力の賜物だ
しおりを挟む「国を返上し諸国に身を委ねるのも責任ではないか」
王太子にとって、このまま自国で甘い考えを持ち続ける腐った貴族と共に滅びの日を待つより、自らの手で終焉を迎える方が国民を守られるのではないか、と世界会議に参加した際に訴えた。
そして今は隣国のドゥヴェール帝国と交渉しているそうだ。
『春までに話は決まると有識者は考えているようです』
その情報はそう締められた。
春までに解決したとしても、その後のドゥヴェール帝国が危険であることに変わりはない。
「これだと、グレイモス皇国が黙っていない。皇国はドゥヴェール帝国より国土が広かったから大人しくしてた。でも今年のアノール国の吸収に続いてユーゲリア国が吸収されれば……」
皇国より上だったユーゲリア国の武力が、けっして弱くはないドゥヴェール帝国の武力に加算される。
そしてアノールほど狭くないユーゲリア国の国土を取り込めばグレイモス皇国を上回る。
─── それはグレイモス皇国にとって脅威でしかならない。
「あら、グレイモス皇国はすでに勝ち目はないと宣言しているわよ」
情報を確認しに商業ギルドに向かったら、客は私一人だけだった。
それでカウンターで確認しようとしたらベンチでお喋りという形になった。
「え? どうしてですか?」
「ドゥヴェール帝国には同盟があるもの。同盟国同士の絆は固いのよ。それも皇国は同盟国に囲まれたようなものなの」
「それでは、今まで起きていたユーゲリアとの小競り合いは?」
「ただのケンカよ。そうね、手の届かない場所まで引き離された酔っ払い同士の口げんか」
今までは間にアノール国という障壁があったから、直接対決はなかった。
そしてアノール国からドゥヴェール帝国に障壁名が変わっても、口げんかは変わらなかった。
「グレイモス皇国にしてみたら、長年戯れ合うように仲良く口げんかしてた相手が急にいなくなったからねえ。落ち込んで大人しくなるか、代わりに遊んでくれる国を見つけるか」
「別にこの大陸の中央にある大森林を超えた向こうにも国はあるからねえ」
「向こうに行くには竜騎で大森林を越えるか海路を船で進まないといけません」
「そうね。あそこは街道が作られたけど、四年前の集団暴走で壊れてから修復していないから」
以前その話を聞いたときに『なんでも吸い取る小箱』で倒木などを回収して魔物の間引きはできないか、という話が父さんの元に届いたことがある。
父さんは断った。
「魔導具は大森林の木々を素材と認識する。半径百五十メートル、直径で三百メートル。それを繰り返して街道にするのか? それとも国を作るのか?」
父さんの言葉に誰も反論しなかった。
そんな広い街道は必要ない。
どんな魔物が棲んでいるかわからない大森林の横に新たな国を作る気もない。
大森林を全部伐採して集団暴走が起きたら、大小の国に被害が起きる。
共存は難しいかもしれないが、今は大きな問題は起きていない。
四年前の集団暴走も、きっかけは北の山で小規模な噴火が起きたのが原因だ。
そのときの通常とは違う揺れに驚いた魔物が逃げ惑った。
大森林は、北の山が噴火したときの名残りだそうだ。
「大森林は植物が持つ再生力の賜物だ」
そのため、私たち人間が手を出すことは許されない、というのが父さんの考えだった。
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