さよなら。大好きなひと【完結】

春の小径

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『ソウレ伯爵家のボウレイ様』は隠語である。
同性愛の相手をそういうのだ。
マルセル様がソウレ伯爵家のボウレイ様と共に行かれたとは、『同性愛相手と駆け落ちした』ということ。
私、同性愛のお相手からマルセル様を取り返して結婚を強行することはできません。
存在で負けてますから。

そして王子が知らずに通った道。
その名を『ソウレ通り』。
同性愛者であるが家のために結ばれた望まぬ結婚を嫌い、「家に帰りたくない私の一生を誰かください」という人たちの一種の駆け込み通り、縁切り通りなのだ。
もちろん同性愛専門のため、王子の相手は男性である。
ボウレイ様の愛人に囲われた、というのは……調教されて同性愛専門の娼館に身を落としたことをさす。
王子は望んで通った訳ではないため、抵抗したと思われる。
抵抗すれば薬を使って調教される。
……調教を受ければ、行き先は娼館一択だ。
使われる薬が多ければ精神を壊す。
王子である以上、簡単に薬が効かなかっただろう。
薬が効いたときには、抗った反動で精神が完全に壊れていてもおかしくはない。


「この国って、平民の同性愛は認められているのにね」
「それは後継者問題があるからでしょう?」
「でもさ、貴族から外れるんだから、婚約させる必要はあるの?」
「そりゃあ、少しでも稼ぎのいい相手を不出来な子供にあてがいたいんでしょ」
「マルセル様のご両親は、私の稼ぎをたかる気マンマンだったけどね」

それに気付いていたマルセル様は、私との婚約を白紙に戻して恋人と国を出ました。
そうすれば、再婚約ができないからでしょう。

「別に市井に下ってから離縁しても良かったんだけど。そうしたら貴族法を破って接触してきそうだったから」
「今回のこと、王家はなんていってるの?」
「二度の貴族法を破ったことで毒杯を賜ったことになったわ」
「じゃあ、存在が消されたのね」
「仕方がないわ、自ら『ソウレ通り』に入ったんだもの」

あの道は、石畳が赤と黒でモザイクが作られていて、ほかの通りよりカラフルになっている。
そこに入るということは、同性愛の世界から二度と戻れないということ。
抵抗してもとして認識される。

「足を踏み入れてはいけない世界がある。だから幾何学模様でわかるように作られているのに」


これが私の婚約破棄に伴う一連の騒動である。
マルセル様と思われる手紙が珍しい薬草や植物の種と共に届きました。

『ありがとう。幸せのおすそ分けだ』

マルセル様は今、最愛の方と幸せになったようだ。
差出人のない小包みは年に二回届く。
その植物の種を私の研究室で育て、今は新薬の開発に役に立っている。


王子のその後はわからない。
公式には毒杯を賜って亡くなったため……救いの手が伸ばされることはない。
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