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砂浜の造形大会
しおりを挟む「以上!夏休み、くれぐれも怪我や事故の内容に!」
一学期最後のホームルームが終わり、教室内は一気に騒がしくなる。
明日から夏休み。今からカラオケ行こうぜ!とか、海行くよな?とか、花火大会どうする?とか、周りからはそんな声が聞こえてくる。
無論、全て俺には関係のないことだ。夏休みにやることと言えば、徹夜で映画を観るくらいで、こんなに暑いのにわざわざ外出するなんて俺には考えられない。
しかし、そんなことを思っている俺でも、今年の夏休みは外出しなければいけない。
文化祭までに短編映画を完成させるため、夏休み中にある程度の映像を取っておかなければならないのだ。そのため、夏休みの予定をあらかじめ全員で話し合っておいた。
早速、今週末は皆で海に行くこととなっている。ただ、海に行くとは言っても海水浴ではない。高校の文化祭で使う映像に、女子三人の水着姿を移すのは良くないという意見が上がったからだ。なので、直接海に入ることはせず、砂浜で遊ぶ姿をメインに撮影しようと考えている。
クラスメイトが騒いでいる中、木下が俺に話しかけてきた。
(まあ、俺に話しかける奴なんて、木下しかいねーよな……)
「金城君。夏休みの部活のことなのだけれど、海に行くのはいつだったかしら」
「ああ、今週の日曜日、駅前に集合だ。二時集合だから、遅れるなよ」
「金城君じゃないのだし、遅れないわよ」
「俺も遅れねえよ!」
「そう。くれぐれも時間には気を付けることね」
「……何で俺が注意されてんだよ」
それじゃあと言い帰る木下を見届けて、俺は廊下で待っている健斗の所へ向かった。
「おっ、和樹!デートの約束は終わったか?」
「何言ってんだ。普通に部活のことだよ。何でデートの話になるんだ」
「なんだー、部活のことかよー。いや、お前らまたあの噂が立ち始めてるぜ?」
どうやら、中学の時と同じような噂がまた立っているらしい。初日にあんなインパクトを残した木下が俺と普通に話しているのを見て、クラスメイトが勘違いしてしまったのだろう。
「またかよ。ほんっと、そんなわけないのにな」
「俺はお似合いだと思うけどなー。あ、でもお前には竹森が居るもんなー。羨ましい奴め!」
「いや、竹森さんも違うから!変なこと言うなよ!竹森さんが可哀そうだろ!」
「お前マジで言ってんの?うわー、これは竹森も大変だわー!」
「え?何言ってんの?」
健斗はこいつマジかという顔をして、両手を頭の後ろで組んだ。
俺にはその時、健斗が何を言っているのかさっぱり分からなかった。
「海だー!」
俺たちは予定通り海に来ていた。天気は快晴で絶好の海日和……らしいが、いつも部屋に籠っている陰キャの俺にはこの日差しは厳しい。ちなみに、最初に叫んだのはもちろん竹森さんである。
海水浴場には、夏休みということもあって多くの人が訪れていた。俺たちは場所を確保し、日差しを凌ぐためのパラソルを設置する。俺は日影がないと死んでしまうので、率先してパラソルの設置を行った。
ここに来た時から思っていたのだが、周囲からの視線が痛い。俺たちの横を通り過ぎる人、全員が必ずこちらを振り返っている。
それも仕方ない。こんな美少女が三人も揃っているのだ。特に、木下と竹森さんには多くの視線が集まっている。俺たちがいなかったら、何人もの男から声を掛けられていただろう。
周囲の視線を見て俺は、
(ふっ、神田さんを見抜くことが出来ないとは。ここには見る目のない奴ばっかだな……)
などと、馬鹿なことを思っていたりした。
「このカメラ、これであっているのか―?」
健斗は先生が貸してくれたビデオカメラを持って、準備に手間取っている。俺は日光が苦手なため、今日は健斗が撮影係を引き受けてくれた。
「よしっ!楓!いこっ!」
「え?ちょっと、竹森さん?」
荷物を整理した竹森さんが木下を引っ張る。木下はそのまま連れて行かれてしまった。健斗は撮影のために二人の後をついて行ったので、パラソルには俺と神田さんだけが残った。
「神田さんは行かなくて良いの?」
「私、太陽苦手だから……」
(分かる!それ凄い分かる!)
自分と同じ同士を見つけて、俺は少しテンションが上がった。
しばらくの間、俺は三人の姿を眺めていた。
(木下と竹森さん、ほんとに仲良くなたよなー)
そんなことを考えていた俺は、何かの気配を感じふと隣を見た。するとそこには、驚くほどレベルの高いお城が建てられていた。
「え!すごっ!これ神田さんが作ったの!?」
「こういうの得意」
フンっと神田さんは両手を腰に当てた。普段はすることのない仕草に俺はドキッとしてしまった。最近、こんなにドキドキしまくっている俺は何かの病気なのだろうか……
「すごっ!お城すごっ!」
「……これは、中々ね」
休憩のために戻ってきた二人は、砂浜に建てられたお城を見るなり感嘆の声を上げていた。
そして、二人も砂で何かを作り始めた。楽しそうなことをやってるなと健斗も砂をいじり始め、映画部造形大会が始まった。審査員はどうやら俺らしい。
まず、竹森さんの作品が完成したようだ。
「出来た!どう!?」
「……」
ドーム状に積み重ねられた砂。上に行けば行くほど固められている。それが何個か並んで、これは何処かで見たことある風景……
「…………山?」
「そう!山!凄くない!?めっちゃ上手にできたの!!」
「お、おう……」
(確かに上手だとは思うけど。山って……造形大会で一番やっちゃダメなやつなのでは)
竹森さんの作品を見て戸惑っていると、どうやら木下も完成したようだ。
「結構自信はあるのだけど」
「……」
(これは!?子供のようなシルエットに、あの特徴的な眼鏡と蝶ネクタイ。まさか……)
「……ジナン、か?」
「ええ」
(こいつ、まさかジナンファンか?木下がそんな一面を隠し持っていたとは……っていうか、完成度高すぎるだろ!ほぼ本物じゃねえか!!)
そして俺は、この中から一つ作品を選ばなければいけないことを思い出した。三人の美少女がジッと俺のことを見つめてくる。
(この中から一つ……まず山はないとして。完成度で言ったらジナンか?でも、お城も捨てがたいしな、でも竹森さんの視線が…………こんなの選べるかー!!)
俺が自暴自棄になりそうになった時、救世主が現れた。
「見てくれ和樹!これ凄くないか!?」
健斗のことを完全に忘れていた。俺たちの視線は自然と健斗の方へ集まる。
(すげえ!あれは船か!?プロ顔負けのレベルだ!!)
「一番は健斗!」
「むうー、あれには勝てない」
「仕方ないわね」
「次は負けない」
造形大会の優勝者は満場一致で健斗となった。他の三人は思いのほか悔しがっており、来年こそはと闘志を燃やしていた。
(いや、来年もやるのかよ……)
帰りの電車、健斗は俺に今日撮った映像を見せた。
そこには、砂浜で楽しそうに物を作る三人が映っている。自分も参加しながらカメラを回していたなんてさすが健斗だ。
「いい画が撮れただろ?」
「サイコーだ」
俺と健斗は拳を合わせた。
最後に俺は健斗からカメラを渡してもらい、目の前で熟睡している美少女三人に向けたのだった。
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