ぷるぷる。俺は、悪いスライムだ!

そば太郎

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ぷるぷる。魔王様……??

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……すごい。ここまで邪気が漂ってくる。

俺的に魔界のような空間のために平気だけど、人間にはつらいだろう。母を見ると、全然平気そうだった。……あれ? 母、人間?

本体がモンスターな父も平気。こっちは、分かる。けど、母は、本当に人間?

勇者たちは苦しそうだぞ? 魔王と反対の光の力を持つのに……

すぐさま、聖女が一帯を浄化。視界を遮っていた霧が晴れ、見通しが良くなるけど、圧がすごい……

その時、勇者の聖剣が光り、それに呼応するように黒水晶が光を放つ。

カッと閃光が辺りを照らし、黒水晶に亀裂が入り、パリンッと割れた。

キラキラと細かい欠片が周囲に舞い散る。

その中から、現れるのは、一人の背の高い男。背が高く、すらりとした体型。魔水晶の欠片に反射して輝く銀髪の髪は、美しく絹のように滑らかだ。

そして、血のように真紅に染まる瞳は、光の反射でキラキラ光り、思わず魅入られてしまう。

見た目こそ人間だが、纏う空気が魔王だと分かる。それに、角があった。小さいながら、耳の上に並ぶ2本の角。

母より少し低いが、胸元を大きく開けた目に毒なシックな出で立ち。白く滑らかな肌、血管すら見えそうなほどの透明感。そして大きく開いた胸元から見える膨らみ。

筋肉質ではないために、ふくよかな膨らみはないものの、なだらかな丘を築き、触りたくなるほどのエロスを感じる。

僅かに開かれた瞼から覗く瞳。

静寂が空間を支配する。誰も一言も発しない。魔王の空気に呑まれてしまう。(スラとクラウドは呑まれておりません!)

これが、魔王……?

え? 魔王様?!

全然違うのではないか?!俺が仕えていた魔王様は、メタボ体型だったぞ?!(かつては、偉大なる魔王様と思っており、美しいと感じていたが、フィルターを外すと、ブタだった。)

なんだ、なんだ、なんで?!

俺は、メダパ〇(混乱の効果)を受けたのか?!
なんで。魔王様じゃなくて、……こ、こんな、美しい男が、で、出てくるのだ?

ドキドキする……!
目の前の男から目が離せない。さっきから心臓が激しく脈打つ。爆発しそうだ……!

そうして灯る願い。

俺を……見て。
俺を、見てほしい。

俺は魅入られた。

そうして、どのくらい経ったのだろう。感覚的に何時間ぐらいに感じるが、実際は数秒も経っていないと思う……

瞳が開かれる。

ドキン

こちらを見た。

ドキン!

しかし、美しい男は、俺を見ていなかった。

男が見たのは、勇者だった。聖剣を構えた勇者。

な、なんで……?
なんで、俺を見てくれない?

ぐるぐると悲しさが心の中で廻る。

目の前で、勇者と美しい男が戦う。激しい攻防戦。そして鳴り止まない爆発音。カインの大剣が空を斬り、聖女の浄化魔法が彼を襲う。魔法使いの強力な魔法が炸裂し、大地を抉る。

それを、男はたったひとりでかわし、無力化していく。それは、圧倒的なまでの力の差。

カンストしていない勇者一行。

聖剣の力を持ってしても、傷一つ付けれない。かつての勇者たちが、倒すことが敵わず、封印することしか出来なかった魔王……が、彼?

この美しい男が、……魔王?

美しい銀髪が空を舞う。
細く長い指が、魔法を形作り、赤く色付いた唇が詠唱を唱える。

そのどれもが芸術品のように美しい。

おかしい……おかしい……俺は、おかしい。

壊れた?
俺は、壊れてしまったのか?

……いや、違う。壊れてなんかない。

彼は、俺の……?

魅入られた。心を奪われた……俺は、彼が欲しい。

初めての感情に混乱しかない。けれど、彼から、男から、目が離せない。

どうしたのだ……俺は?



突如響き渡る悲鳴に我に返る。
「ぐわぁああ~~~~~~!」
カインが、倒された。それに気を取られた勇者に隙が生まれ、魔法が当たり、崩れ落ちる。

聖女が慌てて回復魔法を放とうとするけと、間に合わず、攻撃を受けた。そうして、魔法使いは繊細でいて強力な魔法を連発したことで魔力切れ。

勇者たちは、全員、地に伏せてしまった。

「お前たち……弱い。弱すぎる……」
初めて放たれる声は、俺の心を揺さぶった。鈴がなるような声色。失望が混じる声色なのに、俺にとっては、天使の鐘がなるぐらい美しいと感じる。

まさに、天上の調べ。

ドキドキが止まらない……熱い……体が熱い……!



ねぇ、お願い、俺を見て?

お願い。その美しい真紅の瞳で俺を見て。艶やかな唇で俺の名前を呼んで。俺の名前なんて知らないだろうに、なぜか切なくなってしまう。

俺は囚われる。この美しい男に……囚われた。

『お願い、俺を見て……』
俺の口から、願いがこぼれおちる。

男が、すいと目を動かし、俺を……みた。

濡れた瞳。煌めく瞳。薄く細められた瞳が、確かに俺を捉える。


嬉しい……!嬉しい……!うれしい……!男が俺を見てくれた!


その時、感じたのは歓喜だった。細胞ひとつひとつ、俺を構成する全てのものが、歓喜に打ちひしがれる。

俺は、この男が、欲しい……!

誰かを欲しいだなんて、初めてだ。魔王様直属の配下だった時にも思ったことがない。

その瞬間、俺は、光の濁流に呑み込まれた。


そうして、俺は白い空間で出会う。この世界の神に……


時が止まる空間の中、俺は手に入れた。

力を……!

俺だけの力。遂に俺は、カンストを果たす。念願だった、レベルアップ!

パァアアアアアア!眩しいまでの閃光。

俺は、成体となる。ベビィダークスライムではなく、ダークスライムに生まれ変わる。

力が湧いてきて、どんどん細胞が、体が、作り替えられていく。これまでの自分ではなく、新しい自分。一気に変わる。それは、生まれ変わるようなそんな感覚を与えてきた。


俺は、ダークスライム『クロノス』。

父と母の間に生まれた俺は、念願の、成体となった!



【クロノス】
遂にこの度カンストし、同時に成体となる。実は、これまでカンストしなかったのは、赤ちゃんだったから。この日、生後5ヶ月目をむかえ、成体となる。同時にカンスト。しかも、たくさん蓄えられていた経験値が、更なる効果をうみだす。

ようやく、魔王様が、魔王様でないことに気がつく。遅すぎる……!

【スラ】
まずは、様子見。勇者とその仲間たちを導いてきたが、圧倒的な力不足。想像していたけどね。気配を消し、戦いを見守っている。クロノスの変化に気が付き、にっこり微笑んでいたりして。

遂にカンストした我が子を見守り、これまでカンストするためにやったことが、まさかの成体になっていなかったからとか。もしかしたらと思っていた。が、当たると内心複雑。(このことは、番外編で語られる予定)

【クラウド】
クロノスの気配が変わったことにいち早く気がつく。ハラハラドキドキ。なんかスラに雰囲気が似ている気がして、ちょっと冷や汗をかきはじめる。
……うん? そうして、成体と同時にカンストした我が子に、嬉しさと親離れしてしまうのかと寂しさを感じる。本当なら、自分たちで魔王を倒せるが、スラから見守ろうと言われ我慢。

【勇者セシル】
聖剣の力を使いこなしているものの、カインが倒れ、一瞬気がそれる。そこを狙われ、ダウン。本来なら勇者に覚醒して年数を経てその力を完全に我がものにしてから挑む魔王討伐。しかし、スラによってさくさくすすみ、未熟なまま、現在に至る。しかし、しっかり準備万端してから行くと、魔王が復活して甚大なる被害が出る予定。もちろん、自国は滅び、死者も数え切れないほど。

カイン……!

【騎士カイン】
戦闘能力はピカイチだけど、魔法攻撃に若干耐性が弱い。数々の魔法を打ち込まれ、地面が凸凹になった時に狙われた。

くっ、つ、強い!

【聖女ローザ】
魔法耐性が強く、細胞を暴走させるのとは叶わず。詠唱に少しだけ時間を要したのが敗因。

リディア……逃げて……

【魔法使いリディア】
繊細な魔法を巧みに操り、魔王に放つが全て軽々と避けられてしまう。仲間の攻撃に合わせて放ち続け、ガス欠。倒れるローザをみて、心が張り裂けそう。

ローザさま、すみません……

【封印されていた魔王】
戦闘開始前から、クロノスの視線には気がついていた。勇者たちとは違い敵意ではなく、じっと見つめられ内心、気になってしょうがない。レベル100でもちろん、カンスト。魔族種の魔王。元々暇で暇でしょうがなく、試しに封印されてみたものの、特に面白くなかった。そうして、今回勇者たちと戦い、残念に思う。


弱い……弱すぎる。こんなものなのか……
未来なら、我を楽しませる人間がいるかと思ったが、期待ハズレか。


戦闘を終わらせ視線の主を見たその時、時が止まる。


 【神様(創造神)】
元々スラをこの世界に転生させた神。なおかつ、クロノスを転生させた張本人。

…………あはっ。頑張ってね。クロちゃん♪




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