倫としましょう

koyumi

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第1話

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 川内雛実(かわちひなみ)
 24歳。

 某デパートの販売員。

 担当は外商部に属するVIPサロン。
 この4月に配属されたばかり。
 初めての接客に戸惑いながら、雛実は背筋を伸ばし、少し高めのヒールを履き、きれいな所作を学べる環境に充実感がいっぱいだった。

 アフター7を除いて。

 

 地方のデパートの閉店時間は午後7時。
 しかも、地下の食料品売場と1階の化粧品売場を除いた2階から8階は、午後6時を過ぎると慌ただしさもなく、販売員の姿ばかりが目立っていた。
 雛実の担当するVIPサロンは6階で、宝飾、美術品、呉服、時計といかにも高級な商品が陳列されたフロアの一角にあった。
 大体がフリーだったが、週末や夕方などは、外商部の営業が伴ってサロンにいらっしゃるお客様もいた。

 その日も午後6時前、VIPサロンにひと組の外商を伴ったお客様が入ってきた。
 飲み物を伺い、コーヒーメーカーをセットする。営業の他に、時計売場の男性社員も入ってきた。どうやらこのお客様は、進学祝いに甥っ子にあげる時計を探していたようだ。
 なんだかんだと30分ほどサロンに滞在し、大体の選定が終わると、一行は退室した。

 そして午後7時前、先程お客様と一緒に来た営業がまたサロンに来た。

「これ、渡しとくね。」

 白い小さく折りたたんだ紙を渡された。その場で開けようとしたが、
「主任に見られないようにして。」と、小声で言われ、後ろに誰もいないことを確認して開いた。

【連絡先を教えてください。
 ◯◯◯@ーー.##.j◯   吉澤】

「え?これは?」

 思わず呟いた声に、吉澤という営業は、こちらを見てばつが悪そうににっこり笑う。

(な、何?どうしてわざわざこんなことを?連絡先なんて、総務に聞けばわかるし、内線があるからどうとでもなるのに。)
 
 最初こそそう思ったが、すぐに私はある言葉を思い出した。

『外商部の営業に、手を出されないように気をつけてね。ここ、結構あるから。』
と。

 ここ、結構不倫してる人いるからって。
 
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