倫としましょう

koyumi

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第2話

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 こんな紙、どうしていいかなんてわからない。
 本当は捨ててしまいたいけど、万が一見つかったら厄介だし、本人はまだ近くにいて私をチラチラ見ているし。

 非常に不本意だが、私はそれを、制服のポケットに突っ込むことにした。
 その私の動作を見て、吉澤は満足したのかニコっと笑ってこちらを見、サロンを出ていった。

(あり得ないわ。吉澤さんって確か結婚してるわよね?つまりこれは、不倫のお誘いなわけよね?その第一歩的な。まさか、私がそんなことするわけないのに。)

 誘えば女は誰でも堕ちると思っているのだろうか?
 でも見た目、そんなイケメンじゃないし、背だって中肉中背って感じ。
 それなのに、あの自信満々な様子は、きっと他にも手を出してる女がいるからだ。

(騙されるもんか。私は絶対にそんな道踏まないもの。連絡なんて、ありえない。)

 今すぐビリビリにしてやりたい思いを胸に、鳴り渡る閉店の音楽に反応し、サロンの入り口に立って居もしないお客様に向かって「ありがとうございました」と腰を折った。


 本日の後処理を終え、更衣室に向かう前に事務所に施錠のチェックファイルを持っていかなくてはならない。
 この時間、たくさんの営業が事務所にはいるから、正直行きづらい。
 先輩で割と仲の良い原岡さんに交代を打診してみよう。

「原岡さん、今日代わってくれません?ちょっと事情があって。」

「あぁ、吉澤さんでしょ?さっき見たから知ってるわ。」

「えっ?見てたんですか?」

「見てたわよ。主任も知ってるわ。ね?」

 原岡さんは主任にも話をふる。主任も

「あれはわざとよ。わざとみんなに見られてもいいように、雛実ちゃんに仕掛けたのよ。」
と、吉澤さんの行動を分析している。
「私にバレないようにってどの口が言うのかしらね。」なんて言っている。

「いい?吉澤さんは、婦人服の野上さんとも大変仲が良いらしいから、絶対に惹かれちゃだめよ。」

「既婚者ですよね?良いか悪いかより、しちゃだめですよね?妻以外の女性を誘うなんて。」

「そうそう。でも、ここはなんていうか、その辺は日常茶飯事というか。」

 日常茶飯事って、毎日みたいなってこと?

「まあいいわ。ファイルは私が持って行くから、今日は早く寝るのよ。帰ったらその紙、すぐに捨てるのよ?わかった?」

 原岡さんは、私に気を遣い、ファイルを持っていってくれた。

 だが、この原岡さん、実は営業の真中さんといい仲だという噂は本当だろうか?
 聞いてみたいが、聞いたら自分も深みにはまりそうでゾクッとした。
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