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第7話
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ところが、細川にとって計算外の事態が起こってしまった。2軒目に向かおうとしていた矢先、出会いたくない団体に出会ってしまったのだ。
「ーーっ、あれ?細川さんじゃないですか?珍しいですね、こんな所で……えぇ?雛実ちゃんまで……!」
外商部のメンバー3人、大本さん、坪内さん、薮田さんは、外商さんの中でも楽しい会話をしてくれる、いわゆる癒しキャラトリオで、雛実は結構好きだった。好きといっても、社会人として好きというだけだが。
「あっれぇー、まさか、2人きりで飲んでたんですかぁ?ヤバくないヤバくない?雛実ちゃん大丈夫?」
細川さんと一緒にいるというだけで、雛実は随分心配されていた。
だが、実際何も起きてないし、2人きりで飲んでいたと言われても、ほぼ1人飲みで出来上がってしまってたので、「大丈夫ですよぉ、問題ないです!」と酔っ払い語で雛実は敬礼した。
「いやいや、雛実ちゃん、相当飲んでるね。こりゃ今からいただきますの時間だったのかな?ねぇ、細川さん?」
細川さんの大学の後輩でもある坪内さんは、ニヤニヤしながら下賎な話題をしかける。
「ありえねえよ。第一俺はそんな目で雛実ちゃんのこと誘ってません。あくまで仕事の話をしてただけだから、ねぇ、雛実ちゃん。」
坪内に指摘されてビンゴな細川は、嘘八百並べ、雛実に警戒されないようににこやかに答えた。
「そぉですよ、私なんか女として何の味わいもない人間ですから。仕事の話で誘われただけですよぉ。あ、でももう時間も遅いですし、これ以上私に時間使わせては申し訳ないので今日は帰りますね~。ありがとうございました、細川さん。」
雛実は、坪内の背景にある街の電光掲示板の時計が目に入り、咄嗟に時間を理由に帰宅する旨を伝えた。
正直、まだ頭はフラフラしているが、夜風に当たったことで少し冷静さを取り戻してきていた。
(これ以上細川さんの大事な時間を奪うことなどできない。)
雛実にとって、細川はあくまで尊敬するビジネスマンである。そんな彼の貴重な時間を自分との飲みに使うなど申し訳なさすぎる。なんなら、自分とよりも、この癒しキャラトリオと飲む方が確実に楽しいのではないか?意味があるのではないか?と、雛実は気づいたのだ。
もちろん細川にしてみれば、要らないお世話なわけで。だが、ここでしつこく雛実を誘うのも男としても上司としてもカッコ悪いわけで。
「あぁ、そうだな。明日も仕事だし、気をつけて帰れよ。」
と、タクシー代を雛実の手に握らせたのである。
「いいですいいです!歩いて帰れますし、なんなら父親に迎えにきてもらいますから。」
と、雛実は手のひらにある2千円を細川に返そうとした。だがその瞬間、細川の目がキラっと力を強め、
「俺にかっこ悪いキャラさせないで。上司から貰ったものは有難く受け取るべきだよ。どうしても返したいなら、今度コーヒーでも差し入れに来て。」
と、言われてしまった。
『ズキュン』
ダメだとわかっているのに、こんな平凡な落とし文句、誰にでも言ってるとわかっているのに、雛実の胸の内は、恋に落ちた鼓動を立て始めてしまったのである。
「ーーっ、あれ?細川さんじゃないですか?珍しいですね、こんな所で……えぇ?雛実ちゃんまで……!」
外商部のメンバー3人、大本さん、坪内さん、薮田さんは、外商さんの中でも楽しい会話をしてくれる、いわゆる癒しキャラトリオで、雛実は結構好きだった。好きといっても、社会人として好きというだけだが。
「あっれぇー、まさか、2人きりで飲んでたんですかぁ?ヤバくないヤバくない?雛実ちゃん大丈夫?」
細川さんと一緒にいるというだけで、雛実は随分心配されていた。
だが、実際何も起きてないし、2人きりで飲んでいたと言われても、ほぼ1人飲みで出来上がってしまってたので、「大丈夫ですよぉ、問題ないです!」と酔っ払い語で雛実は敬礼した。
「いやいや、雛実ちゃん、相当飲んでるね。こりゃ今からいただきますの時間だったのかな?ねぇ、細川さん?」
細川さんの大学の後輩でもある坪内さんは、ニヤニヤしながら下賎な話題をしかける。
「ありえねえよ。第一俺はそんな目で雛実ちゃんのこと誘ってません。あくまで仕事の話をしてただけだから、ねぇ、雛実ちゃん。」
坪内に指摘されてビンゴな細川は、嘘八百並べ、雛実に警戒されないようににこやかに答えた。
「そぉですよ、私なんか女として何の味わいもない人間ですから。仕事の話で誘われただけですよぉ。あ、でももう時間も遅いですし、これ以上私に時間使わせては申し訳ないので今日は帰りますね~。ありがとうございました、細川さん。」
雛実は、坪内の背景にある街の電光掲示板の時計が目に入り、咄嗟に時間を理由に帰宅する旨を伝えた。
正直、まだ頭はフラフラしているが、夜風に当たったことで少し冷静さを取り戻してきていた。
(これ以上細川さんの大事な時間を奪うことなどできない。)
雛実にとって、細川はあくまで尊敬するビジネスマンである。そんな彼の貴重な時間を自分との飲みに使うなど申し訳なさすぎる。なんなら、自分とよりも、この癒しキャラトリオと飲む方が確実に楽しいのではないか?意味があるのではないか?と、雛実は気づいたのだ。
もちろん細川にしてみれば、要らないお世話なわけで。だが、ここでしつこく雛実を誘うのも男としても上司としてもカッコ悪いわけで。
「あぁ、そうだな。明日も仕事だし、気をつけて帰れよ。」
と、タクシー代を雛実の手に握らせたのである。
「いいですいいです!歩いて帰れますし、なんなら父親に迎えにきてもらいますから。」
と、雛実は手のひらにある2千円を細川に返そうとした。だがその瞬間、細川の目がキラっと力を強め、
「俺にかっこ悪いキャラさせないで。上司から貰ったものは有難く受け取るべきだよ。どうしても返したいなら、今度コーヒーでも差し入れに来て。」
と、言われてしまった。
『ズキュン』
ダメだとわかっているのに、こんな平凡な落とし文句、誰にでも言ってるとわかっているのに、雛実の胸の内は、恋に落ちた鼓動を立て始めてしまったのである。
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