倫としましょう

koyumi

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第14話

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 異色メンバーで繰り広げられる宴。
 このテーブルは、大きな笑い声や、真剣な話声が聞こえてくるわけじゃないのに、やたらと杯数が多い。
 
 既に呂律が回らなくなっている雛実は、今にも睡魔に負けそうだ。
 一方高垣、こんな時、酔って隣の細川に寄りかかれたら……と思いながらも、一向に正気を失えないことに日頃のひとり酒で酒に強くなった体を恨む。 

「木浦はどこに住んでるんだっけ?」
 先を見越した質問をする細川。
「ええーと、一駅先に部屋を借りてます。この辺りは家賃が高くて。」
「お前一人暮らしだったのか?」
「はい。実は2週間前に引っ越したんです。最初は実家から通ってたんですが、通勤に2時間かかるんで、貯金してどうにか。」
「へえー、じゃあ今は自炊してるの?」
 高垣も話に食い込んできて、一人暮らしの生活の知恵なんかを話し出した。高垣は一人暮らし歴10年以上のベテランだ。
 雛実も一人暮らしをしていたが、良くも悪くも会社の人間には言っていない。
 前回細川と飲んだ時に、バレなかったことでその身を救えたなど、わかっちゃいないが、万が一の時の為に『実家暮らし』を主張していた。
 それなのに、

「でも、たまに実家に帰った時に冷蔵庫開けたらいろんなおかずが入っていて、それを見たら感動するのよねー。」

という高垣のコメントに、

「ぅわぁ!高垣さんも!?ほんっとそれって嬉しいですよねぇー。1人でご飯食べるのも寂しいですしぃ~。」

と、うっかり”自分は一人暮らしです”コメントを返してしまったのである。
 しかも、酔っ払い過ぎて自身が気付いていない。

「ーーえ?雛実ちゃん、まさか一人暮らし?」
「雛実ちゃん、実家暮らしなんじゃないの?」

 そこに食いついたのは男2人。
 その2人の頭にあるのは『送り狼』になるにはどうすればいいか?である。

 2人の男性から質問攻めにあい、雛実は脳内こんがらがってどうでもよくなってきていた。そして、

「ひぇ?ええーと……私、何言いましたぁ?もうフラッフラで、すみませんっ。おひや、おひや、下さ~いっ!!」

と、店員を呼んだ。

 そのタイミングで高垣は、
「すみません、おあいそお願いしますわ。」
と、ここでお開きにしましょうとこの場を締めた。

 細川は逸る気持ちを抑えながら、(雛実ちゃんは一人暮らしだ。絶対に。だとしたら……。)と、この後のプランを練った。
 まずはどうにかして、木浦と高垣と別行動をしなくてはならない。
 高垣が酔っ払っていれば介抱を木浦に任せてその隙に……ということもできるが、(玲香さん、強いもんな……。)と、ピンと背筋を伸ばして歩く高垣をチラ見する。
 
「次、どうします?どこ行きます?」

 高垣の頭の中は、既に2軒目にあるようだ。
 だが、

「すみません、僕は明日もありますし、今日はこれで。あの、川内さん送って帰りますから、細川さんと高垣さんはどうぞ2軒目に行ってください。では、お疲れ様でした。」

と、木浦は雛実の肩を支えながら理路整然とした有様で行ってしまった。

 雛実を連れて、行ってしまった。
 雛実を連れて……。

 これには流石に参った。
 細川は一歩出し、木浦につめ寄ろうとした。
 だが、その腕をガッシリ高垣に掴まれ、身動きがとれなくなった。
 肘が高垣の膨らみに当たっているのがわかる。

「……細川さん、うちで飲みます?」

 高垣は勇気を持って誘った。
 昔、一度は断った細川との情事を、まさか今夜このタイミングで自分から持ちかけることになるとは思ってもみなかった。

 今夜は雛実とヤル気マンマンだった細川だが、お酒の力も手伝ってか、高垣の誘いを断る気にはならなかった。
 寧ろ、木浦に負けた悔しさを挽回するには、男としての自信が欲しかった。

 細川はもう、妻と5年以上セックスをしていない。
 子供と一緒に寝ている妻を起こしてまでしようと思わなかったこともあるが、いつの頃からか、妻の裸を見ても勃たなくなっていた。
 妻だけではない。
 手を出した何人かの女に対しても同様で、勃ったとしても最後まで成せないこともあった。
 だが、雛実のことを思うだけで風呂場で1人、ヌクことはできていた。だから雛実と実戦したくて仕方なかったのである。
 その昔、高垣の裸体もオカズにしていた。勝手な想像だが、すらりと伸びた足はきっとスベスベの肌触りで、その先にある場所はしっとりと潤っていて……などと思い描いていた。
 
(……玲香さんと、実戦してみるか。)

 そう決めると、俄然勢いをつけた細川は、高垣の手を取り、綺麗に整頓された部屋へと急ぐのであった。


 一方雛実と木浦は、まさかの事態に息巻いていた。

 飲屋街の通り沿いにあるパーキングで、吉澤と野上のもつれを目の当たりにしてしまったからだ。

 確かにここはあまり人が通る場所ではない。
 だが、公衆の面前である。
 我慢できなかったのか、野上の腰に手をやり、後ろから攻める吉澤をまんまと見てしまった2人。

 木浦はつい雛実の目を両手で覆ったが、酔った体ながらも焼きついた光景はなかなか脳裏から離れない。
 野上は下を向いていて2人に気付いていないだろうが、吉澤はどうだろう?
 目が合いそうになり、サッと通り過ぎたが……。

 あんな光景を見てしまった後では、雰囲気も何もあったもんじゃない。
 だって彼らは『不倫中』なのだから。

 肩を支えていた木浦の手は、いつの間にか下がり、雛実と手を繋ぐ格好になっていた。
 だが、肌寒い夜の街を歩く中、だんだんと意識が正気になってきた雛実は、いつもの如く父親に電話し、駅まで迎えにきてもらうことにした。
 一駅先に住む木浦も『それなら安心できるよ』と言い、改札を通った。

 ただ、木浦の中で雛実に対する恋心が芽生えていたのは確かだった。
 
 
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