愛しい人は誰のもの?

koyumi

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第2話

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 第2研修室に入ると、大方の人数がすでに着席していて、中には川嶋さんの姿もあった。
(わっ、男ばっか……。)
 ほとんどが野郎ばかりで、女性は川嶋さん以外に3人くらいか。
 すでに川嶋さんの周りは固められている。

 営業の竹下、加藤。
 企画の飯田。
 広報の南。

 南?あいつ、この研修入ってなかっただろ?あいつが行かないって地団駄踏むから俺に白羽の矢が立ったってのに。

 まさかっ!

「川嶋ちゃん、わからないことあったら聞いてねー。なんなら仕事終わりに相談いつでも乗るから。」

 やっぱり!!

 南の野郎、完全に川嶋さん狙いで来てやがる。運良く隣に座れた上、これでもかと熱い視線で川嶋さんを誘ってやがるっ。なんてやつ、なんてやつ!
 断れっ!川嶋さん、君は南なんかと仲良くなるような人じゃない。あいつは何股もするような薄っぺらい奴なんだ!

 俺は一番後ろの席から前から三列目の軍団にアンテナを張り、祈るように両手を合わせていた。

「何やってんの?町島。調子悪いとか?」
「はい?」
 馬鹿みたいに眉間にしわ寄せ念じていたら、いつの間にか隣に同期の逢沢が座っていた。
 逢沢夏希とは大学も一緒でバイトも一緒。いい年齢になってからの腐れ縁とでもいうだろうか。そして、唯一の女友達だ。
「いや、集中してただけ……。」
「何カッコつけてんのよ。川嶋さんでしょ?どうやら周りの野獣達がよだれ垂らしてるわね。なんなのあれ、あの雰囲気やばくない?」
 だよな、騙せるわけないよな……。逢沢って、俺以上に俺を知ってるし。
 川嶋さんを好きなこともすぐにバレてたし。
「よりによって南の隣って……。あ、こっち向くよ、ほらっ。」 
 逢沢はヒソヒソと話していたが、聞こえてしまったのだろうか?不意に川嶋さんは俺達の方に振り向いた。が、すぐに南に話しかけられてしまい、その瞬間はわずが1秒しかなかった。
 ただ、その1秒、俺の中で時は止まった。

 合った。確かに目が合った。川嶋さんは、逢沢ではなく俺を見てた。

「おい、町島ニヤケすぎ。キモいよ。」
「キモいって言うな。仕方ない、生理現象だ。」
「ったく、なんだってまた……。」
「なんだってどういう意味だよ?」
「……いや、なんでも……あっ、来た来た。講師がお目見えだよ。シャキッとしなよ。」
「はいはい。努力します。」

 開始時間3分前、今回の研修の講師、中川さんが入場した。俺達より一回り上の世代だと聞いていた。だから、所謂中年のオッサンをイメージしていたのだが、中川講師はメチャイケメンだった。なんなら俺達と同世代と言ってもおかしくない程肌もツヤツヤしている。
 少数派の女性社員が色めき立つのは想像通りだった。

「町島、協力してよ。私、めちゃくちゃ頑張るわ、この研修。」

 隣ね逢沢も例の他ならず。どうやら中川講師に一目惚れしたようだ。

「川嶋さんは大丈夫かしらね?ほら、さっきから頭が動いてないわ。」

 はっとして、川嶋さんを見ると、中川講師の方をじっと見ているのが後ろからでもよくわかった。いや、予想だが。

「まさか、講師を見るのは当たり前だ。お世話になるんだし。」

「そ?だといいけどね。」

 逢沢、お前の勘はよく当たるんだ。
 だから、それ以上言わないでくれっ!
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