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第5話
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「えーと、これからグループに分かれてディスカッションしてもらう。分け方は公平にあみだクジにした。一番前の列から順番に名前を書いていってくれ。」
中川講師の声はよく響く。
講義内容自体は魅力的とは言えないが、講師の話し方は人を惹きつける何かがある。その為、誰もが真剣な目で研修を受けていた。
(逢沢とだけは同じグループになりたくない…、あ、あと、南とも。川嶋さん、一緒がいいなぁ。声聞きたいし。)
不埒な考えを浮かべながら、俺は名前を記入した。先に川嶋さんが記入していたので、その隣に書いてみた。
「えーと、A班は山岡、根岸、緑川……で、B班は南、逢沢、川嶋、町島か、そしてC班は………」
(っなんと!なんとなんとっ!川嶋さんが一緒だ!!ーーが、よりによって南も逢沢もいるとは……どんなくじ運だよ、俺は……)
見事に名前を浮かべた人と同じグループになってしまった。いや、川嶋さんはいいんだ、全然ウェルカムだ。
問題はあとの2人。
しかもディスカッションは俺より南の方が得意だし、逢沢は嘘だろうが噂だろうが本当のことのように話すのが上手い。
それに引き換え、俺は単純で流されやすい。
(ぜってぇかっこ悪く思われるわ、これなら川嶋さん別の方がよかった……。)
激しく脳内で毒づきながら、ディスカッションするための席作りをして議題が出された。
俺はちゃっかり川嶋さんの隣に座ったが、正面に逢沢がいてやりにくさ満点だ。
「まずはグループ内で誰から発表するかジャンケンでもして順番を決めてくれ。それから順次、自分の考えを1人3分以内で述べる。全員が話し終えたら、フリートークだ。そこで、お互い息がつまるほど突っ込みあえ。最終的にグループとしての主張をまとめて代表者が発表すること。では、開始!」
議題は『家を新築するなら街中か郊外か』という至って身近に感じられるものだった。俺たちの仕事は様々なジャンルの人と取引を行う。だから、研修内容は主にディスカッション形式になることが多い。最近では、時事ネタは当然のことながら、一歩踏み入ったファミリー層ネタで取引先と論じ合うことも増えた。
通勤時間短縮のためにこの辺のマンションを買いたいが嫁に反対された……という話を、実際にA商事の広報課長と談話で話したこともある。俺はまだ独身だし、想像すらできなくてちょっとやりづらさはあった。
(そっか……こういう話なら……。)
既婚子供2人のA商事の広報課長を思い浮かべながら、自分だったらどうだろうかと頭を捻る。
早速、逢沢は準備できたらしく、
「そろそろ始めますか?」
と、一番手らしく声をあげた。
ちなみに、ジャンケンで負けた俺は3番手。逢沢、南、俺、川嶋さんの順で意見を述べる。
「私は、街中に家を持ちたいと思います。」
やっぱりな……。逢沢はそうだと思っていた。理由は明快。結婚しても仕事を続けたいからだ。夫婦でフルで働きゃ街中でも建てられないことはない。
「理由は、やはり仕事を続けやすいからです。資産として残すとしても、様々な開発が目まぐるしいこの辺りなら、新築として建てた何十年後か建物の価値が下がる頃も土地の価格は上昇している可能性があるからです。」
逢沢らしい意見が続き、この場の雰囲気を都会よりに変えていた。
というのも、南は郊外派だったらしいが、逢沢の話を聞いているうちに街中の長所を見出し、中立的な意見になっていたからだ。それでも説得力はある。
郊外の魅力について、俺の考えとは違うものもあったから、さすがだなと感心させられた。
俺は、逢沢と反して郊外派だ。
「子育てをしていく中で、安全、自然、地域のコミュニティというものは大切になってきます。街中で形成されないとは言いませんが、伸び代はやはり郊外の方があります。
時間に追われ、隣を見ないで颯爽と歩くビジネス街の大人を見ながら子供が感じることは何でしょうか?すでに確立された街に囲まれて暮らすより、自然と生きることを日常的に身につけていける郊外は、可能性豊かです。
僕が家を新築するなら、迷わず郊外を選びます。もちろん資金面でも街中に比べて土地が安いため建物に対してお金をかけられます。それも地震が頻発する日本では重要な部分です。」
3分ギリギリで発言した内容。
言い終わるや否や、隣の席から拍手が聞こえた。
川嶋さんだ。
「次は私の番ですが、主たる部分は町島さんの主張と重なります。私も郊外を選びます。」
川嶋さんが俺を見つめてそう言った。
見てるだけ?目を見て話す的な?
いや、このキラキラした感じは、見つめてるってやつだろう?
中川講師の声はよく響く。
講義内容自体は魅力的とは言えないが、講師の話し方は人を惹きつける何かがある。その為、誰もが真剣な目で研修を受けていた。
(逢沢とだけは同じグループになりたくない…、あ、あと、南とも。川嶋さん、一緒がいいなぁ。声聞きたいし。)
不埒な考えを浮かべながら、俺は名前を記入した。先に川嶋さんが記入していたので、その隣に書いてみた。
「えーと、A班は山岡、根岸、緑川……で、B班は南、逢沢、川嶋、町島か、そしてC班は………」
(っなんと!なんとなんとっ!川嶋さんが一緒だ!!ーーが、よりによって南も逢沢もいるとは……どんなくじ運だよ、俺は……)
見事に名前を浮かべた人と同じグループになってしまった。いや、川嶋さんはいいんだ、全然ウェルカムだ。
問題はあとの2人。
しかもディスカッションは俺より南の方が得意だし、逢沢は嘘だろうが噂だろうが本当のことのように話すのが上手い。
それに引き換え、俺は単純で流されやすい。
(ぜってぇかっこ悪く思われるわ、これなら川嶋さん別の方がよかった……。)
激しく脳内で毒づきながら、ディスカッションするための席作りをして議題が出された。
俺はちゃっかり川嶋さんの隣に座ったが、正面に逢沢がいてやりにくさ満点だ。
「まずはグループ内で誰から発表するかジャンケンでもして順番を決めてくれ。それから順次、自分の考えを1人3分以内で述べる。全員が話し終えたら、フリートークだ。そこで、お互い息がつまるほど突っ込みあえ。最終的にグループとしての主張をまとめて代表者が発表すること。では、開始!」
議題は『家を新築するなら街中か郊外か』という至って身近に感じられるものだった。俺たちの仕事は様々なジャンルの人と取引を行う。だから、研修内容は主にディスカッション形式になることが多い。最近では、時事ネタは当然のことながら、一歩踏み入ったファミリー層ネタで取引先と論じ合うことも増えた。
通勤時間短縮のためにこの辺のマンションを買いたいが嫁に反対された……という話を、実際にA商事の広報課長と談話で話したこともある。俺はまだ独身だし、想像すらできなくてちょっとやりづらさはあった。
(そっか……こういう話なら……。)
既婚子供2人のA商事の広報課長を思い浮かべながら、自分だったらどうだろうかと頭を捻る。
早速、逢沢は準備できたらしく、
「そろそろ始めますか?」
と、一番手らしく声をあげた。
ちなみに、ジャンケンで負けた俺は3番手。逢沢、南、俺、川嶋さんの順で意見を述べる。
「私は、街中に家を持ちたいと思います。」
やっぱりな……。逢沢はそうだと思っていた。理由は明快。結婚しても仕事を続けたいからだ。夫婦でフルで働きゃ街中でも建てられないことはない。
「理由は、やはり仕事を続けやすいからです。資産として残すとしても、様々な開発が目まぐるしいこの辺りなら、新築として建てた何十年後か建物の価値が下がる頃も土地の価格は上昇している可能性があるからです。」
逢沢らしい意見が続き、この場の雰囲気を都会よりに変えていた。
というのも、南は郊外派だったらしいが、逢沢の話を聞いているうちに街中の長所を見出し、中立的な意見になっていたからだ。それでも説得力はある。
郊外の魅力について、俺の考えとは違うものもあったから、さすがだなと感心させられた。
俺は、逢沢と反して郊外派だ。
「子育てをしていく中で、安全、自然、地域のコミュニティというものは大切になってきます。街中で形成されないとは言いませんが、伸び代はやはり郊外の方があります。
時間に追われ、隣を見ないで颯爽と歩くビジネス街の大人を見ながら子供が感じることは何でしょうか?すでに確立された街に囲まれて暮らすより、自然と生きることを日常的に身につけていける郊外は、可能性豊かです。
僕が家を新築するなら、迷わず郊外を選びます。もちろん資金面でも街中に比べて土地が安いため建物に対してお金をかけられます。それも地震が頻発する日本では重要な部分です。」
3分ギリギリで発言した内容。
言い終わるや否や、隣の席から拍手が聞こえた。
川嶋さんだ。
「次は私の番ですが、主たる部分は町島さんの主張と重なります。私も郊外を選びます。」
川嶋さんが俺を見つめてそう言った。
見てるだけ?目を見て話す的な?
いや、このキラキラした感じは、見つめてるってやつだろう?
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