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ep.5
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一度ならず二度までも、エントランスに入る桂木さんを追う私の背中に、聞き覚えのある声が届いた。
「あれ?安田ちゃんですよね?」
「え?あれ?岡本さん?」
その姿、その声は、紛れなく、配達員の岡本さんだ。
「よかったー、ちょっと時間早かったんで不在かと思ったんですよー。よかったよかった……あれ?あなたも、あの学校の人ですよね?」
「いつもお世話になります。桂木です。」
「こちらこそ、いつもお世話になります。っていうか、あなたが桂木さん?あ、その花束、さっきの……ということは……。」
「今持ってきていただいた荷物も、僕が彼女に宛てたものですよ。ちょっと早かったですね。」
「は?」
今何と?まさか、花束以外にも何かあるとでも?
「安田ちゃん、鍵をお願いしますね。トラックから下ろしてきますから。」
岡本さんはそう言い、トラックに戻っていった。職場以外で安田ちゃんと言われると、自分じゃないような気がしてしまう。
「貴和子ちゃん、鍵開けとかないと。」
「あ、そうですね。」
私は急いで鍵を出し、オートロックマンションの集合玄関を開けた。そして、岡本さんがトラックから荷物を持ってきた。とても重たそうだ。
エレベーターのボタンを押し、先に私が入って5階の数字と『開』を押す。すると、岡本さんではなく、桂木さんが入ってきて、その後岡本さんが入ってきた。「ん?」と違和感を感じながらも、エレベーターは5階につき、私はいそいそと自宅ドアの鍵を開けた。
「お邪魔しまーす。」と、先に部屋に入る桂木さん。「あれ?」と思いながらも、余程重いのか汗だくの岡本さんを留めるわけにはいかず、忽ち荷物は玄関に置いてもらい、受取書にサインした。
「ありがとうございましたー、では、また。」
と言って岡本さんが戻っていくと、とんでもない事が起きてることに気づく。気づくの、遅っ!!
「桂木さん!!勝手に上がらないでくださいよっ!」
怒っている私に、何が悪いの?的な顔をして届け物の箱を開けようとする桂木さん。
「貴和子ちゃんの気持ちを考えてみた結果……、僕からはこれをプレゼントしようと思ってね、どうかな?」
ガバッとダンボール箱を開けると、中には大量のDVDと本があり、ご丁寧にタイトルがこちらを向いている。それは、英子が入手困難とあきらめたレアものばかりで、本に至っては、私が文庫本で読んでる小説の単行本だ。
「どこでこれを……。」
「びっくりした?君の気持ちを僕なりに考えた結果、これなら喜ぶかなって。結構時間かかったんだー。」
「いやいや、どこでわかったんですか?私がこの俳優さんを好きなことっ。事務室では口にしたことなかったのに……!」
「え?俳優?僕は貴和子ちゃんが、このドラマ見てみたいって言ってるのをたまたま聞いただけだよ。どこでって言われても、うーん、これ聞いたら、貴和子ちゃん泣いちゃうかもしれないからなぁ。」
ドラマ?このタイトルの話題だって、最近話したのは英子だけだし、私はプライベートは職場に持ち込まない主義だし。でも、泣いちゃうかもって、どういう意味だろ?
桂木さんは心なしか顔が赤らんでいて、落ち着いていない。
なに?本当に気になる。
「どうして知ってるんですか?泣いちゃうって、何で私が泣くんですか?」
ちょっと強く出てみよう。理由を言わなきゃ帰さないんだからっ。
「う……そんな顔もいいな。」
そんなこと言っとる場合かっ。
少しの間の後、
「ふぅ~」っと息を吐いて、ボソッと「本当に覚えていないんだな……」と言った桂木さんは、続けざまに私が泣く理由を話した。
「う、そーーー!!!」
「貴和子ちゃん、泣かないでよ。泣いてもいいけど、悲しそうに泣かれたら僕も辛いから。」
驚愕する私にオロオロしながらも、ちゃっかり私の手を握っている桂木さん。それを振りほどけない私。
だってまさか、桂木さんが!?
「でも僕は嬉しかったんだ、言ったでしょ?やっと見つけたって。僕の初めては貴和子ちゃんだし、貴和子ちゃんの初めても僕なんだよ。」
「あれ?安田ちゃんですよね?」
「え?あれ?岡本さん?」
その姿、その声は、紛れなく、配達員の岡本さんだ。
「よかったー、ちょっと時間早かったんで不在かと思ったんですよー。よかったよかった……あれ?あなたも、あの学校の人ですよね?」
「いつもお世話になります。桂木です。」
「こちらこそ、いつもお世話になります。っていうか、あなたが桂木さん?あ、その花束、さっきの……ということは……。」
「今持ってきていただいた荷物も、僕が彼女に宛てたものですよ。ちょっと早かったですね。」
「は?」
今何と?まさか、花束以外にも何かあるとでも?
「安田ちゃん、鍵をお願いしますね。トラックから下ろしてきますから。」
岡本さんはそう言い、トラックに戻っていった。職場以外で安田ちゃんと言われると、自分じゃないような気がしてしまう。
「貴和子ちゃん、鍵開けとかないと。」
「あ、そうですね。」
私は急いで鍵を出し、オートロックマンションの集合玄関を開けた。そして、岡本さんがトラックから荷物を持ってきた。とても重たそうだ。
エレベーターのボタンを押し、先に私が入って5階の数字と『開』を押す。すると、岡本さんではなく、桂木さんが入ってきて、その後岡本さんが入ってきた。「ん?」と違和感を感じながらも、エレベーターは5階につき、私はいそいそと自宅ドアの鍵を開けた。
「お邪魔しまーす。」と、先に部屋に入る桂木さん。「あれ?」と思いながらも、余程重いのか汗だくの岡本さんを留めるわけにはいかず、忽ち荷物は玄関に置いてもらい、受取書にサインした。
「ありがとうございましたー、では、また。」
と言って岡本さんが戻っていくと、とんでもない事が起きてることに気づく。気づくの、遅っ!!
「桂木さん!!勝手に上がらないでくださいよっ!」
怒っている私に、何が悪いの?的な顔をして届け物の箱を開けようとする桂木さん。
「貴和子ちゃんの気持ちを考えてみた結果……、僕からはこれをプレゼントしようと思ってね、どうかな?」
ガバッとダンボール箱を開けると、中には大量のDVDと本があり、ご丁寧にタイトルがこちらを向いている。それは、英子が入手困難とあきらめたレアものばかりで、本に至っては、私が文庫本で読んでる小説の単行本だ。
「どこでこれを……。」
「びっくりした?君の気持ちを僕なりに考えた結果、これなら喜ぶかなって。結構時間かかったんだー。」
「いやいや、どこでわかったんですか?私がこの俳優さんを好きなことっ。事務室では口にしたことなかったのに……!」
「え?俳優?僕は貴和子ちゃんが、このドラマ見てみたいって言ってるのをたまたま聞いただけだよ。どこでって言われても、うーん、これ聞いたら、貴和子ちゃん泣いちゃうかもしれないからなぁ。」
ドラマ?このタイトルの話題だって、最近話したのは英子だけだし、私はプライベートは職場に持ち込まない主義だし。でも、泣いちゃうかもって、どういう意味だろ?
桂木さんは心なしか顔が赤らんでいて、落ち着いていない。
なに?本当に気になる。
「どうして知ってるんですか?泣いちゃうって、何で私が泣くんですか?」
ちょっと強く出てみよう。理由を言わなきゃ帰さないんだからっ。
「う……そんな顔もいいな。」
そんなこと言っとる場合かっ。
少しの間の後、
「ふぅ~」っと息を吐いて、ボソッと「本当に覚えていないんだな……」と言った桂木さんは、続けざまに私が泣く理由を話した。
「う、そーーー!!!」
「貴和子ちゃん、泣かないでよ。泣いてもいいけど、悲しそうに泣かれたら僕も辛いから。」
驚愕する私にオロオロしながらも、ちゃっかり私の手を握っている桂木さん。それを振りほどけない私。
だってまさか、桂木さんが!?
「でも僕は嬉しかったんだ、言ったでしょ?やっと見つけたって。僕の初めては貴和子ちゃんだし、貴和子ちゃんの初めても僕なんだよ。」
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