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ep.6
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時は遡り大学生の頃、私は友人と様々なアルバイトをしていた。イベントスタッフ、試験官補助、試食販売、いわゆる、登録制のバイトを繰り返し、お小遣いを稼いでいた。
その中でも異色の、テレビ番組でのエキストラ役は、憧れの芸能人と会える絶好のチャンス。しかも、その時出演していた方は、たまたま私の好きな俳優さんが主演していたドラマの母親役の方だった。もちろん、たかが1日バイトのエキストラである私が、お近づきになることなど考えられないのだが、気持ちはハイテンションで、通常では行かない誘いに乗って失態を晒してしまったのだ。
番組収録が終わり、一緒にバイトに参加していた人達は、一種の連帯感が生まれ、たまたまその時就職の内定電話を受けた人がいたこともあり、今夜は打ち上げでもしようという雰囲気になった。
私と一緒に参加していた英子も盛り上がり、ワイワイ飲み会を楽しんでいた。
そして、その就職内定を受けた人が、英子と話し込んでしまい、私は1人でポツンと飲んでいたら、その時に隣にいた人とエスケープしたらしい。私の記憶としては、彼はロン毛だったため、始めは女性かと思っていて、気にもとめていなかったが、実は男だったという場面で途切れている。
英子いわく、私は既に始めの乾杯後から酔い始め、呂律が回っていなかったから彼を男か女か判別つけられなかったんだろうとのことだった。というのも、彼はロン毛であっても男だとわかる顔立ちで、気づいていないのは私だけだったらしい。
そして、あろうことか、翌朝目覚めると、私は見知らぬベッドの上、オールヌードで彼の腕に抱かれていたのだ。初めてだったのに記憶にないし、下半身も辛いしで、涙が溢れてしまい、怖くなってしまったのだ。そして、彼を起こさないようにそっとホテルを抜け出したのだ。
だが、時は経ち、今、この目の前にいる男性が、私の初めての相手だと告白した。しかも、男性側も初めてだったというではないか。
「泣くかもしれないよ」と言われた理由はそういうこと。
「やっと見つけた」の意味は、初めて出会ったというのではなく、初めての相手をやっと見つけ出したということ。
「貴和子ちゃん、目が覚めたらいなかったから、僕、下手くそだったのかなってかなり凹んでたんだ。でも、僕としては君をどうにか探し出して、交際を申し込みたかったんだけど、なんせ短期バイトだし、個人情報は教えてもらえないしで参ったよ。」
「交際を?……わ、私とお付き合いしたかったってこと?」
「うん、もちろん。」
「そんな、じゃ、この先もあったってこと?」
「ん?先?もちろん。あのバイトで君を初めて見て、僕は君から目が離せなくなった。……ひと目ぼれだよ。それなのに、貴和子ちゃんは、名前すら偽ってたみたいだし。」
「名前?」
「安子ですって僕には言ってたよ。」
は、恥ずかしい……!安子って、安田貴和子を略したみたいな?まさか、その後の他の男性との通りすがりの情事の時も、“安子”を名乗っていたのだろうか?全く赤面ものだ。まぁ、本名を知らない人からしたら、そんなツッコミ入れたりしないだろうけども。
結果、桂木さんにとって、私は“安子”として姿を現し、しかも初体験という貴重な行為まで共にしたのに、行方をくらませた謎の愛しい女性として君臨していたらしい。
「で、その時に、あの女優さん絡みで、このドラマを見たいって言ってたのを聞いたんだ。」
そうか、そうだったのか……なんて素直に納得したいけど、あまりにも衝撃的な事実に開いた口が塞がらない。
苦笑しながら「まさか、こっちが目当てだったなんてね。」とDVDのパッケージを見ている桂木さん。
もはや彼がこの部屋にいる理由など、どうでもよくなるくらいだ。
その中でも異色の、テレビ番組でのエキストラ役は、憧れの芸能人と会える絶好のチャンス。しかも、その時出演していた方は、たまたま私の好きな俳優さんが主演していたドラマの母親役の方だった。もちろん、たかが1日バイトのエキストラである私が、お近づきになることなど考えられないのだが、気持ちはハイテンションで、通常では行かない誘いに乗って失態を晒してしまったのだ。
番組収録が終わり、一緒にバイトに参加していた人達は、一種の連帯感が生まれ、たまたまその時就職の内定電話を受けた人がいたこともあり、今夜は打ち上げでもしようという雰囲気になった。
私と一緒に参加していた英子も盛り上がり、ワイワイ飲み会を楽しんでいた。
そして、その就職内定を受けた人が、英子と話し込んでしまい、私は1人でポツンと飲んでいたら、その時に隣にいた人とエスケープしたらしい。私の記憶としては、彼はロン毛だったため、始めは女性かと思っていて、気にもとめていなかったが、実は男だったという場面で途切れている。
英子いわく、私は既に始めの乾杯後から酔い始め、呂律が回っていなかったから彼を男か女か判別つけられなかったんだろうとのことだった。というのも、彼はロン毛であっても男だとわかる顔立ちで、気づいていないのは私だけだったらしい。
そして、あろうことか、翌朝目覚めると、私は見知らぬベッドの上、オールヌードで彼の腕に抱かれていたのだ。初めてだったのに記憶にないし、下半身も辛いしで、涙が溢れてしまい、怖くなってしまったのだ。そして、彼を起こさないようにそっとホテルを抜け出したのだ。
だが、時は経ち、今、この目の前にいる男性が、私の初めての相手だと告白した。しかも、男性側も初めてだったというではないか。
「泣くかもしれないよ」と言われた理由はそういうこと。
「やっと見つけた」の意味は、初めて出会ったというのではなく、初めての相手をやっと見つけ出したということ。
「貴和子ちゃん、目が覚めたらいなかったから、僕、下手くそだったのかなってかなり凹んでたんだ。でも、僕としては君をどうにか探し出して、交際を申し込みたかったんだけど、なんせ短期バイトだし、個人情報は教えてもらえないしで参ったよ。」
「交際を?……わ、私とお付き合いしたかったってこと?」
「うん、もちろん。」
「そんな、じゃ、この先もあったってこと?」
「ん?先?もちろん。あのバイトで君を初めて見て、僕は君から目が離せなくなった。……ひと目ぼれだよ。それなのに、貴和子ちゃんは、名前すら偽ってたみたいだし。」
「名前?」
「安子ですって僕には言ってたよ。」
は、恥ずかしい……!安子って、安田貴和子を略したみたいな?まさか、その後の他の男性との通りすがりの情事の時も、“安子”を名乗っていたのだろうか?全く赤面ものだ。まぁ、本名を知らない人からしたら、そんなツッコミ入れたりしないだろうけども。
結果、桂木さんにとって、私は“安子”として姿を現し、しかも初体験という貴重な行為まで共にしたのに、行方をくらませた謎の愛しい女性として君臨していたらしい。
「で、その時に、あの女優さん絡みで、このドラマを見たいって言ってたのを聞いたんだ。」
そうか、そうだったのか……なんて素直に納得したいけど、あまりにも衝撃的な事実に開いた口が塞がらない。
苦笑しながら「まさか、こっちが目当てだったなんてね。」とDVDのパッケージを見ている桂木さん。
もはや彼がこの部屋にいる理由など、どうでもよくなるくらいだ。
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