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ep.20
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桂木さんの目が怪しく光る。
「着替えなら、ここにあるからさ。」
「いや、桂木さん、出て行ってくれませんか?」
「うーん、どうかな?見たいし。でも、男らしく貴和子の気持ちを汲んであげたいし。」
「後者で。そういう配慮のある人の方が好きですよ。」
こうなりゃもうヤケッパチだ。
好きの大放出作戦開始。
「やっぱり女性の着替えを見る人よりは、黙って出ていく人の方が私は好きですよ。堂々としているより、ちょっと恥ずかしがって、僕はあっちに行ってるから、ゆっくり着替えておいで、なんて言われると、めちゃくちゃキュンキュンして好きが増えると思います。」
したり顔で言っちゃったけど、自分でも驚くくらい、スイスイ出て来た言葉は、実は某俳優さんのドラマのワンシーンだったりする。
「本当に好きなんだね。あの人のこと。」
そしてまたそれは、この男、桂木嘉人にも知れている内容だったりする。
「僕が君の好きなフレーズや、状況を知らないとでも思う?何だってプロポーズしたと記憶してる?」
「何だってって……ど、どれが代表する部分なのか……。」
正直わからない。
お酒にのまれてしまい、頭がぼんやりしている現況もだが、今までの桂木さんの態度はどれもプロポーズ並のセリフだったといえる。
「まさか、わからないの?」
眉間にしわを寄せて、困った顔をしているその表情は、(お父さん似だな)と思った。全く今はそんなこと気にする場面ではないんだけど。
「ーーわかった。出ていくから。そしてすぐに送るよ。親はもういないんだ。今朝は早くからゴルフに行くって張り切ってたからね。」
怒ってしまった。
桂木さん、怒るとなかなか修正きかないんだよね。普段優しい分、怒ったらひ酷くしつこいと、職場でも聞いたことがある。
でも、でもね、今、私だって怒っていいんじゃないかって、ふと気付いたんだ。
「お願いします。」
だから少しぶっきら棒に、そう返事して、私はベッドから立ち上がった。
ドアを開けて、潔く出て行った桂木さんを見て、素早く着替えた。
長い丈で踏みそうになったが、スムーズにできた。
部屋から出た私の姿を確認し、桂木さんはしかめっ面のまま外に出た。私が着替えている間に、彼もどこかで着替えていたようだ。
桂木さんは、車に乗ると、急発進しそうな勢いでエンジンをかけた。だが、スタートは緩やかで、ひとまず安心した。
無言の中、私の住むマンションの前で車は停車し、ドアロックが外された。
(いくらなんでも怒り過ぎじゃない?絶対に折れないわよ、私は。)
フンっとそっぽ向いてやりたかったが、そこは抑えて、
「どうもお世話様でした。お気をつけて。」
と、言いながらドアを閉めた。
全く、大人じゃない。
今度こそ急発進で出た桂木カーは、来た道とは違う方向へ入って行った。
(なんで?)
と思ったが、対して気にし過ぎずにマンションの集合玄関に入った。
カバンから鍵を取り出し、開錠する。
すると、バンっと後ろから伸びた腕でドアを開かれ、私は押しやられた。
そしてそのままその腕は、私を丸ごと包み込み、腕の主は耳元で囁いた。
「ごめんね。」と。
「着替えなら、ここにあるからさ。」
「いや、桂木さん、出て行ってくれませんか?」
「うーん、どうかな?見たいし。でも、男らしく貴和子の気持ちを汲んであげたいし。」
「後者で。そういう配慮のある人の方が好きですよ。」
こうなりゃもうヤケッパチだ。
好きの大放出作戦開始。
「やっぱり女性の着替えを見る人よりは、黙って出ていく人の方が私は好きですよ。堂々としているより、ちょっと恥ずかしがって、僕はあっちに行ってるから、ゆっくり着替えておいで、なんて言われると、めちゃくちゃキュンキュンして好きが増えると思います。」
したり顔で言っちゃったけど、自分でも驚くくらい、スイスイ出て来た言葉は、実は某俳優さんのドラマのワンシーンだったりする。
「本当に好きなんだね。あの人のこと。」
そしてまたそれは、この男、桂木嘉人にも知れている内容だったりする。
「僕が君の好きなフレーズや、状況を知らないとでも思う?何だってプロポーズしたと記憶してる?」
「何だってって……ど、どれが代表する部分なのか……。」
正直わからない。
お酒にのまれてしまい、頭がぼんやりしている現況もだが、今までの桂木さんの態度はどれもプロポーズ並のセリフだったといえる。
「まさか、わからないの?」
眉間にしわを寄せて、困った顔をしているその表情は、(お父さん似だな)と思った。全く今はそんなこと気にする場面ではないんだけど。
「ーーわかった。出ていくから。そしてすぐに送るよ。親はもういないんだ。今朝は早くからゴルフに行くって張り切ってたからね。」
怒ってしまった。
桂木さん、怒るとなかなか修正きかないんだよね。普段優しい分、怒ったらひ酷くしつこいと、職場でも聞いたことがある。
でも、でもね、今、私だって怒っていいんじゃないかって、ふと気付いたんだ。
「お願いします。」
だから少しぶっきら棒に、そう返事して、私はベッドから立ち上がった。
ドアを開けて、潔く出て行った桂木さんを見て、素早く着替えた。
長い丈で踏みそうになったが、スムーズにできた。
部屋から出た私の姿を確認し、桂木さんはしかめっ面のまま外に出た。私が着替えている間に、彼もどこかで着替えていたようだ。
桂木さんは、車に乗ると、急発進しそうな勢いでエンジンをかけた。だが、スタートは緩やかで、ひとまず安心した。
無言の中、私の住むマンションの前で車は停車し、ドアロックが外された。
(いくらなんでも怒り過ぎじゃない?絶対に折れないわよ、私は。)
フンっとそっぽ向いてやりたかったが、そこは抑えて、
「どうもお世話様でした。お気をつけて。」
と、言いながらドアを閉めた。
全く、大人じゃない。
今度こそ急発進で出た桂木カーは、来た道とは違う方向へ入って行った。
(なんで?)
と思ったが、対して気にし過ぎずにマンションの集合玄関に入った。
カバンから鍵を取り出し、開錠する。
すると、バンっと後ろから伸びた腕でドアを開かれ、私は押しやられた。
そしてそのままその腕は、私を丸ごと包み込み、腕の主は耳元で囁いた。
「ごめんね。」と。
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