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離婚の理由
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「依子、離婚しよう。もうわかったから。これ以上は無理だ。」
諭はそう言うと、茫然としている私の手を取った。
今日、何度目だろう。
「依子が言ったんだ。条件をのめないなら離婚するって。そして俺も承諾した。だから、そこは否定しない。」
離婚しない条件。
それは、月10万の生活費。そして、その使い道に一切口出ししないこと。
その条件をのめないってことは……
「……そ、それって、もしかして、諭……!?」
気づいてしまった。
自分が出した条件の落とし穴。
諭は、私を諦めないのだ。
「手続きをしよう。今すぐだ。明日朝一で役所に出しておくよ。だから、書いてきてくれ。ここで待つから。」
決意したら早いのか、諭は早速離婚届の段取りをとりはじめた。
わけのわからない高原さんは、オロオロしていたが若干嬉しそうだ。
この辺り、エリート社員ならもう少し勘ぐってもいいと思う。
「い、いいのか?依子ちゃんと、本気で離婚してくれるのか?」
「してくれるのかって?……フッ、俺は嘘つかねえよ。もう、な……。」
諭は本気なのだ。
どうしたらいいのだろう。
部屋に離婚届のストックは勿論ある。
願っていた上物の言葉だけど、その『離婚しよう』は、離婚届用紙と同じくらい薄っぺらい。
「依子ちゃん、書いてこよう。僕も行くよ。一人じゃ辛いだろ?いくらなんでも。」
今はこの高原さんの優しさが邪魔だ。
ほんとに私は酷い女だ。
「……ごめんね、高原さん。今日は1人になりたくて……。せっかくのディナーも無茶苦茶にしちゃったし、ほんとにごめんなさい。だから、今日は、おやすみなさい……」
高原さんを避けるようにして、私はエントランスに入り、エレベーターにのった。
そして、部屋に戻った。
ドアを閉めた途端、足に力が入らなくなって、パタンとその場に座り込んでしまった。
ーー動けない。
早くしなければ、諭が待っている。
よりによって、高原さんも同じ場所にいる。
何かが起きてしまうかもしれない。
それなのに、立ち上がれない。
「あ……あ……」
時間がかかり過ぎると、高原さんが来てしまう。いつの間にか作られていた合鍵。それを知った時、嬉しさも何もなかった。
バッグの中身を全部出して、携帯を見つけた。そして、諭宛にメールを打つ。
『用紙を探すのに時間がかかるので、明日、きちんと書いてそっちに持って行くから。今日は帰って。』って。
なるべく平静を装って、脈打つ胸にとらわれないように。
震える指先に支配されないように。
そして、高原さんにもメールを送った。『ごめんなさい。今日は来ないで。』って。
念押しした。絶対に来て欲しくなかったから。
暫くして、諭から返信がきた。
『わかった』と、一言だけ。
高原さんからも、同様の返事がきた。
その後、ようやく私は立ち上がり、この部屋に引っ越してきてからまだ開けたことのないダンボールを開封し、中から大きい茶封筒を取り出した。
『離婚届』
数枚のうちの1枚を取り、なるべく間を開けないようにペンを走らせた。
心が横道にそれないように、一文字一文字丁寧に書いた。
捺印も済ませ、法的能力は高まった。
丁寧に乾かし、新しい茶封筒に入れた。
明日になれば、長年の願いが叶う。
それなのに、虚しさだけが押し寄せる。
「フッ」
笑ってしまった。
最初に離婚を言い出した時、離婚届を突きつけた時、いつも破られてしまう用紙。
そのどれもが滑稽に思えてしまう。
まさかこんなカタチで離婚が成立しようとは。
諭はそう言うと、茫然としている私の手を取った。
今日、何度目だろう。
「依子が言ったんだ。条件をのめないなら離婚するって。そして俺も承諾した。だから、そこは否定しない。」
離婚しない条件。
それは、月10万の生活費。そして、その使い道に一切口出ししないこと。
その条件をのめないってことは……
「……そ、それって、もしかして、諭……!?」
気づいてしまった。
自分が出した条件の落とし穴。
諭は、私を諦めないのだ。
「手続きをしよう。今すぐだ。明日朝一で役所に出しておくよ。だから、書いてきてくれ。ここで待つから。」
決意したら早いのか、諭は早速離婚届の段取りをとりはじめた。
わけのわからない高原さんは、オロオロしていたが若干嬉しそうだ。
この辺り、エリート社員ならもう少し勘ぐってもいいと思う。
「い、いいのか?依子ちゃんと、本気で離婚してくれるのか?」
「してくれるのかって?……フッ、俺は嘘つかねえよ。もう、な……。」
諭は本気なのだ。
どうしたらいいのだろう。
部屋に離婚届のストックは勿論ある。
願っていた上物の言葉だけど、その『離婚しよう』は、離婚届用紙と同じくらい薄っぺらい。
「依子ちゃん、書いてこよう。僕も行くよ。一人じゃ辛いだろ?いくらなんでも。」
今はこの高原さんの優しさが邪魔だ。
ほんとに私は酷い女だ。
「……ごめんね、高原さん。今日は1人になりたくて……。せっかくのディナーも無茶苦茶にしちゃったし、ほんとにごめんなさい。だから、今日は、おやすみなさい……」
高原さんを避けるようにして、私はエントランスに入り、エレベーターにのった。
そして、部屋に戻った。
ドアを閉めた途端、足に力が入らなくなって、パタンとその場に座り込んでしまった。
ーー動けない。
早くしなければ、諭が待っている。
よりによって、高原さんも同じ場所にいる。
何かが起きてしまうかもしれない。
それなのに、立ち上がれない。
「あ……あ……」
時間がかかり過ぎると、高原さんが来てしまう。いつの間にか作られていた合鍵。それを知った時、嬉しさも何もなかった。
バッグの中身を全部出して、携帯を見つけた。そして、諭宛にメールを打つ。
『用紙を探すのに時間がかかるので、明日、きちんと書いてそっちに持って行くから。今日は帰って。』って。
なるべく平静を装って、脈打つ胸にとらわれないように。
震える指先に支配されないように。
そして、高原さんにもメールを送った。『ごめんなさい。今日は来ないで。』って。
念押しした。絶対に来て欲しくなかったから。
暫くして、諭から返信がきた。
『わかった』と、一言だけ。
高原さんからも、同様の返事がきた。
その後、ようやく私は立ち上がり、この部屋に引っ越してきてからまだ開けたことのないダンボールを開封し、中から大きい茶封筒を取り出した。
『離婚届』
数枚のうちの1枚を取り、なるべく間を開けないようにペンを走らせた。
心が横道にそれないように、一文字一文字丁寧に書いた。
捺印も済ませ、法的能力は高まった。
丁寧に乾かし、新しい茶封筒に入れた。
明日になれば、長年の願いが叶う。
それなのに、虚しさだけが押し寄せる。
「フッ」
笑ってしまった。
最初に離婚を言い出した時、離婚届を突きつけた時、いつも破られてしまう用紙。
そのどれもが滑稽に思えてしまう。
まさかこんなカタチで離婚が成立しようとは。
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