私と離婚してください。

koyumi

文字の大きさ
86 / 89
第2章

だから…

しおりを挟む
 彼女の自信ありげな言葉に、俺は頷いた。 
 でも、だから?だから何だってんだ?

 俺の返事に彼女は二の句を継げず、沈黙がこの場を支配した。

 居ても立っても居られず、この場から立ち去ろうと荷物に手を伸ばした。まるで、俺自身のバツ理由を話せと言わんばかりの雰囲気になり始めていたことに気づいたから。
 それだけは避けたい。
 話したくない。
 結局まだ、依子との関係を完全に過去のものに捉えられないんだ。頭ではわかっていても、依子の幸せを願っていても、俺と手を繋ぐことは二度とない。
 しかも、ついさっき実物を見てしまい、思い出すに新しくてやりきれない。
 男は昔の女に未練がましいとはよく言ったもの。

 依子に会いたいと願ってしまう。


「三条さん……帰りましょう。」


 ここはラブホテルだ。女性を一人置いて帰ることなど出来ない。
 このままフェードアウトしたいくらいやり場のない空気だったが、俺は彼女に一緒に出ることを促した。
 すぐに言葉の流れに沿って、彼女は自分の鞄を手に取り、立ち上がった。目の端にとらえていただけだから、どんな表情でいたのかはわからない。
 だから、彼女が発した言葉と行動を避けられなかった。


「やっぱり抱いてほしい。」


 不意打ちだった。
 二度目の彼女からの攻撃に、俺は持っていたカバンを落とした。
 鼻をかすめる女の匂いは、あろうことか燻んだ俺の心を癒した。一度は断って、彼女の自尊心をズタズタにしたのにも関わらず、俺の腕はしっかりと彼女の腰と後頭部を掴み、ぴったりと合わさった身体を離れないように強く引き寄せていた。
 

 いけないと思いつつ、これ以上この場にいると全てを見透かされそうで嫌だった。
 それなのに、体は無意識に行動を起こした。彼女と過ごす時間を長引かせ始めた。
 
 依子に会いたい気持ちが実るわけはない。
 じっと耐えて、一人腕を抱えるほど器用じゃない。


 気づいたら、三条さんを押し倒していた。

 彼女の唇に食らいつき、手はすぐに豊満な胸を掴んだ。
 固くなった先端を摘んでははじき、せっかく整えた着衣を乱した。サテン生地の下着の上部から手を滑り込ませ、柔らかな肌を直接触り、突起を強めに引っ張る。
「……あっ……いや……ぁんん……」
 聞こえる声も、触った感触も、全てが依子と違うことはわかっている。
 体に染み込ませてやりたい。自分はもう依子を抱けやしないし、他の女でも満たされるんだと。
 一層の事、溺れてしまいたい。
 下着をつけたままぐにゃぐにゃと乳房をまさぐられ、きつさを感じたのか、彼女は自分でホックを外した。
 瞬間、きゅっと中央ではちきれんばかりに谷間を作っていた部分が緩み、柔らかさを増した。片方は手の平と指で掴んだり擦ったりして、片方はむしゃぶりついて舌で転がしたり甘噛みした。
 彼女の嬌声は益々激しくなり、摺り合わす太ももの間に足を入れ、乳房をまさぐっていた手で女の秘部に触れた。
 すでにぐっしょりと濡れているソコを、執拗なまでに責め立て、指を挿し入れる。そこは意外にキツく、彼女は離婚してから行為に及んでいないことがわかる。
「ん、あああああ……も……だ、めぇ」
 軽く達したことがわかり、俺は昂りを嫌という程主張している部分に避妊具をつけ、彼女の蜜口に当てがった。

「ぅふ…………あ、あ、ああああああ!」

 久しぶりであろう彼女の中に、始めこそ躊躇ったが半分は勢いをつけて押し込んだ。
「きっ、つ」
 締め付ける快感に、すぐに持っていかれそうになった。
 俺だって久しぶりなんだ。
 最後に依子とヤッてからは誰ともしていない。
 いずみは妊婦だったし、産んだからといってすぐには出来ない。それに、性の対象として見ることはできなかった。


 もう、どうにでもなればいい。

 途中、そんなことを思いながら、依子を思い浮かべないように挿入しながらも三条さんの唇の内側を舌で舐めまわした。彼女の味を覚えるように、何度も、執拗に。

「すきっ……ぁ、ん、すき」


 行為の合間に何度も好きと言われ、俺の男のサガが盛り上がりすぎたのかもしれない。結局、部屋に用意されたゴムが足りなくなり、最後は無しでやってしまった。

 枷が外れた俺は、死んだように眠った。



(第2章完)

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...