ダーティーホワイトエルブズ ~魔物退治してた現代転移の苦労人エルフ、“主人公”への復讐を決意する~

きさまる

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第三章 現代編

第37話 ─ ハイウェイ・トゥ・ザ・デンジャーゾーン ─その1…ある男の独白

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「エヴァン、前方に二台、後方に一台。お前の退魔銃えものを貸せ。運転は任せた」

「ほらよ。落っことしたらランチを一年奢るぐらいじゃ済まないぜ」

 俺は隣のサングラスをかけたエヴァンから退魔銃を受け取ると、弾数のチェックと動作不良が無いかの簡単な点検を行う。
 そして自分の銃と合わせて両手に拳銃を持つと、オープンカーの右の助手席に仁王立ちになって、前方に銃口を向けた。
 そして後部座席に向けて叫ぶ。

「アイラ!」

「……後ろは任せて!」

 そう言って彼女は、後部座席で立ち上がって後ろを向くと、座席の背もたれに片足をかける。戦闘用僧衣の裾がはためいている。
 そしておもむろに、俺が軍の放出品から手に入れたロケットランチャーM72を肩に担いで、後ろのいかつい自動車に狙いを付けた。

 アイラのその姿をバックミラーで確認したエヴァンが、ヒュウと口笛を鳴らす。

「アイラちゃんカッコいい! 惚れ直しちゃうね!」

「……気が散る。黙って運転に集中して」

 俺もエヴァンにひと睨みすると、前方の車に向けて銃を発砲。アイラもほぼ同時にロケットランチャーを発射。

……ああ、必死に晩飯を抜いて金貯めて買った、軍の放出品のロケットランチャー……。
 あれ使い捨てタイプなんだよな……今度は弾を込めなおせるタイプを買おう(泣)

「ヘイヘイ、涙で手元が狂ったらダメだぜリーダー!」

「うるせえ!」

 初速の遅いロケット弾が、あらぬ方向に飛んでいったように見えたが、後ろの自動車がまるで弾に吸い寄せられるように移動した。
 そのまま弾に当たって、厳つい自動車は爆発四散。

 俺が前方の車に向けて何発か撃った弾も、バックガラスを粉砕した後、乗っていたならず者共全員の頭を撃ち抜いた。
 コントロールを失った自動車がこちらに近づいてきたが、エヴァンが器用に避ける。車はあっという間に後ろに飛んでいった。
 高速道路のどこかにぶつかったのか、爆発音がもう一つ。

「相変わらず二人ともスゲえ腕前だな、まるで魔法だ。やっぱり弓が得意なエルフだからか? 飛び道具の扱いが上手いのは」

「弓とか関係ねえよ。相手をよく見て動きを先読みしたら、誰でも出来る。簡単な事だ」

「そうね」

「いやちょっと待って!? そんなチョップスティックでハエをつまめたら誰でも出来るぞ、みたいな無茶理論!?」

 そう言ってる間にも、前方のもう一台の車から乗員が身を乗り出して銃を撃ってくるが、エヴァンは危なげなく避けていく。
 俺は身を乗り出した奴らの頭を一発ずつ撃ち抜いた。

「抜かせ。こいつらの弾に一発も当たらずに車を運転してるお前が言う事か」

 空になった弾倉を足元に落として、次の弾倉を二丁共にセット。

「俺のは死にものぐるいで磨いた危機察知感覚のおかげだよ! お前ら変態二人と一緒にすんな!」

「変態だなんて酷いエヴァンさん……」

 左手で目を覆って、よよよと泣き崩れるアイラ。
 涙出てねーから演技なのバレバレだよ。

 まあ良い事だけどな、最初の引っ込み思案なのに比べたら。

「い、いや俺ッチはそういうつもりで言ったんじゃなくて……」

 騙される馬鹿発見。惚れた弱味だな。
……いや待てよ、これがフェットだったらどうだ?

“私の事を変態だなんて酷いわ! シクシク……”

 うむ、速攻で騙される自信がある!
 むしろ積極的に騙されにいく!!
 よしエヴァン、俺はお前を赦そう。

 ただし、俯いたアイラが一瞬ペロっと舌を出したの、俺は見逃さなかったぞ。


……と、前方の車が僅かに減速してこちらの左手に付ける。
 その瞬間、俺は左に向き直って銃を連射。
 開けかけていた向こうの車のパワーウィンドウが砕け散って、助手席の男と運転手を仕留めた。

「うるっせええ! 目の前で撃つな! 畜生、耳がキーンってなってるぜ」

 しかし俺は特に反応せずに助手席に再び座る。
 どうせ耳鳴り程度で運転に支障が出る男ではない。

「いよっしゃあああ! ようやく追い付いたぜえ! ……しかし今回は後始末の連中に大目玉食らうな、これは!」

「普段は俺達の現場では楽させてやってるんだ、タマには恩を返してもらうさ」

 多分まだ耳鳴りがしているエヴァンには聞こえてないだろうが、構わず俺はそう返した。


*****


「君達の実力を見込んで“仕事”を与える」

 そう言ったのは、俺がこの世界に来たばかりの時に面接した優男、ベイゼル・ヘイデン。

 あれから一年か二年ほど過ぎただろうか。
 俺達のチームは“騎士団”内でかなり上位の実力を身に付けられたようだった。
 他のチームの実力を知る機会が少ないから、推測もかなり入っているが。

 ベイゼルの俺への面接はむしろ突発的な仕事らしく、普段はこうやって各チームに“仕事”を割り振ったり裏方の事務をしたりといった役をしている。

 考えてみたらそうだよな。そんなにしょっちゅう異世界からの来訪者がいたら、大混乱だ。


*****


「ふぇっクショーン!」

「くしゅん!」

「ズズッ、フェットチーネさん風邪ですか?」

「いえ大丈夫ですクラムさん。何か急に鼻がムズムズして……」


*****


 ベイゼルが“仕事”の内容を話し始める。

「EUの某所に自称独立国がある。そこに巣食う、我々への敵対組織を殲滅して貰いたい。君達に行って貰うからには、悪魔を使う連中だ」

 そう俺達に“仕事”を告げるベイゼル。
 その内容に質問するアイラ。

「自称独立国……ISみたいなものですか? でもそんなの聞いたことが無いですが」

「小さい上に、国際社会にアピール出来る資源も無い地域だからな。埋没しているのさ。しかし、そんな非合法な“国”だからこそ、不穏な裏の連中が流れ込んでくる」

「俺達三人で組織を殲滅って、無茶じゃないッスかぁ?」

 よし、よくぞ言ったエヴァン。こんなのバックアップ万全でもキッツイぞ。

「すでにいくつかのチームが周辺国と協力して、組織をかなり削っている。君達には主に頭を潰して欲しいのだ」

「そこまで削れてるんなら、最後まで任せましょうよぉ~。面倒くさぁ~」

「ボスの護衛の悪魔憑き共が強力なんだ」

「それならば仕方ない、といった所ですね」

「ええ~。やる気出さないでよ、アイラちゃ~ん」

 お前そういう所だぞ、アイラにモーションかけてもイマイチ反応薄いのは。
 俺は最後に、ベイゼルに自分の疑問──半分くらいは確認だ──をぶつけた。

「悪魔使いの敵対組織……。例の連中の可能性は高くないのか? 潰して良かったのか?」

「“我々への”敵対組織だ。潰せ」
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