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第四章 通りすがりのダーティーエルフ編
第88話 “追憶の戦い”その1…偽りのダークヒーロー編
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第82話の続きになります。
この対決が書きたいからこその82話での前振りでした。
*****
ミトラは思い出す。
あの時の腹立たしい記憶を。
せっかく手に入れた組織を追われた忌々しい思い出。
ザコが下らない知恵を絞ってきやがった、あの思い出。
*****
ミトラがその時に訪れたのは、とある寂れた工業地域。少なくとも事前に、シャーロットから聞いていたのはそういう説明だった。
だが訪問先の企業は、そうではなかった。
ミトラがエルフとして異世界に転生する前の話だ。ミトラが日本人として生きていた頃にも既に有名だった、大手検索サイトの本社を中心とした情報産業の会社ビル。
他にもナノテクや次世代電池関連等といった、最先端の会社。
正直、「生前」には聞き流して興味も無かった、ニュースを賑わせていた会社。まさか、そこに訪れる事になるとは。
だが興味が無いのは今でも同じ事。ミトラの興味の先は、結局は金と権力。
訪れた先の会社は業界では中堅の、そして世間ではまだ無名の会社。規模はそれなり。
だが連中の態度がいけなかった。
中堅とはいっても、それなりの勢いで成長していたらしい彼等の態度。それは、シャーロットへの……ミトラへの侮蔑。
怪しい新興宗教風情が調子に乗って何様だ、と。そう彼等は見下してせせら笑った。
そして彼等は、ミトラ達よりも先に手を組んでいた用心棒のギャングを見せつけた。ギャング共もミトラ達を馬鹿にして、見下して笑っていた。
だから殺してやった。奴等に身の程を教えるために。
どちらが調子に乗った身の程知らずだったのか。
ミトラが炎の“精霊”を出した瞬間、彼等は呆気に取られて固まる。その一瞬の隙に用心棒ギャングを全員同時に火柱に変えてやった。
蒼ざめる会社役員。ミトラが唇を歪めて凶悪な笑顔で睨みつけると、全員命乞い。
ザマを見やがれ。
あとはシャーロットに任せて、ミトラは地下駐車場へ降りた。スーズが運転する自動車が止まっている地下へ。
地下駐車場の雰囲気がおかしかった。
かなり抑えられてはいるが、殺気がピリピリと漂っている。そんな殺気を感じ取った自分に、さすがは俺だと自画自賛するミトラ。
だが、彼の兄やその相棒のエヴァンなら……いや、この場に居ている者なら皆、もっと早い段階で気付いているだろう事は知る由もない。
そう思っていると、案の定それなりに広い地下駐車場のあちこちから、何処からともなく湧いて出てきた武装した連中。
こちらに武器を向けながら、「動くな!」の声を引き連れて。
彼等は、ミトラが上から降りてきた階段出口を中心に、半円形に取り囲む。
──面倒だな、“精霊”で焼くか。
そうミトラが考えた時、満を持して彼等の中から前に出て登場する男。ラテン系の顔立ちに、黒い長髪を荒く後ろに流して後頭部で括っている。
コイツは確か、よく兄のそばにくっついていたヤツではなかったか? 名前は確か、エヴァだったかエヴァンゲリ夫だったか。
ミトラはその男に馬鹿に仕切った声で言い放つ。
「よお、確かお前は、兄貴のケツを追いかけてた腰巾着ヤローじゃねえか。何しにココヘ来たんだよ」
だが相手はミトラに何も答えず、黙って両手にサックを付けるとファイティングポーズを取った。
ミトラはそれを見てため息をつくと、中空を眺める。
するとミトラの脳裏に謎の声が響いた。
【スキルポイントの振り直しが出来ます。振り直しますか?】
ミトラは即座に脳内で反応。
──YES。“主人公属性”に全振りしていたポイントのうち、10ポイントを“ボクシングマスター”に移す。
たちまちミトラの脳裏に、どう身体を動かして戦えば良いかボクシングの技術が理解出来るようになる。
これこそが異世界において、ミトラが天才と皆から呼ばれ賞賛された理由。
まるでゲームのように、技術を《スキル》としてポイントの割り振りで簡単に取得出来る、ミトラがエルフに転生した際に身に付けた能力。
ただし、その分“主人公属性”の強運力は弱くなるが。
ポイントの総量は分からないが10ポイント程度なら、今までも影響が無かったから大丈夫だろう。
そうしてミトラもボクシングのファイティングポーズをとって、彼が腰巾着と例えたエヴァン・ウィリアムスと相対した。
軽く身体を上下させながら、隙を伺う両者。
──確かボクシングの試合では、強者の周りを弱者がウロウロと回って隙を伺うんだったかな。
ミトラは昔読んだボクシング漫画の、うろ覚えの知識を頭に思い浮かべる。
身体を上下させながらも、ミトラはその場から動かず相手を睨みつけた。
果たして、相手は左右に動き始めてこちらの様子を伺い始める。
──兄貴の後ろを付いて歩くようなヤローだ。どうせ大した実力なんてある訳ねえ。
そう考えていると、向こうはおもむろにこちらの顔面に向けてパンチを繰り出す。繰り出されるは右のストレート。
ミトラはそのパンチを、スリッピング・アウェーでギリギリを見切って躱す。そのまま相手の懐に入り込んでボディーブローを放つ。
向こうはミトラのパンチを左の肘でガードした。
裸拳で放ったにも関わらず、ミトラの握り拳は一切傷んでいない。
そしてお返しとばかりに、今度はミトラが腰巾着男に左のパンチを放つ。お手本のような綺麗なワンツー。
腰巾着は左ジャブを肩でガードし、ストレートはミトラと同じくスリッピング・アウェーで躱す。腰巾着は、そのまま右のアッパーでカウンターを狙ってきた。
ミトラはそのアッパーを、余裕の表情でスウェーバックして避ける。ミトラのプロ級のボクシング技術に、驚きと戸惑いの表情を浮かべる腰巾着。
そのままミトラは腰巾着にラッシュを仕掛ける。クリーンヒットこそ無いが、相手は防戦一方だ。
調子に乗ったミトラは、闘いながら次々とポイントを“主人公属性”から他のスキルに割り振っていき、様々な格闘術の技で腰巾着を攻撃する。
酔拳マスター、少林寺拳法マスター、骨法マスター、空手マスター……。だが“主人公属性”に割り振っているポイントがかなり減ってきている事に、ミトラは気付いていない。
ミトラは自分の強さに酔いしれながら、内心ほくそ笑む。
──やはりこの程度の雑魚など、“精霊”を使わずとも余裕で勝てるな。
そう考えて、ミトラがこの雑魚のトドメをどうしようか思い巡らせ始めた時。
腰巾着が何かに気付いたように、突然後ろに大きく飛び退った。片側の耳を手で押さえながら。
ミトラの不意を突いた行動だったので、追いかけて更に攻撃することが出来なかった。
腰巾着は耳から手を離すと、ゆっくりと懐から何かが書かれた紙を取り出した。
手を離した耳にインカムが付けられている事に気が付くミトラ。
ただならぬ雰囲気に、追撃は不味いと判断して様子を見守る。そういえば戦いに夢中で気が付かなかったが、周囲に響いていた読経のような声が止んでいた。
「父なる神は偉大なり。モエ・エシャンドン、メルロー・グルナッシュ、ロートシルト・ポタージュ! 神の名の元に我が呼び掛けに応え、出でよ現世に!!」
「何ッ!?」
ミトラが命じていないのに、“精霊”が全員勝手に……いや、この腰巾着の男の呼び掛けに応じて現れた。
予想外の事態に思考が止まるミトラ。
ハプニングへの弱さは、兄が以前から見抜いていたミトラの弱点の一つ。だが、ミトラ本人は気が付いていない弱点。
何故なら、耳の痛い不快な忠告は全て無視してきたからだ。周囲の人も──特に周りに侍っている女は、一切そんな忠告はしなかったからだ。
何故なら、その忠告するという行為は身の危険を伴うから。
実際に、今までミトラを思って忠告を行った女はいたが、彼女達は皆その後ミトラのサンドバッグの対象になった。
大抵は、そのDVサンドバッグ対象になった女は、自殺まで追い込まれた。
運が悪ければ、例の快楽殺人者のパーティーの供物になった。
そんな環境では、忠告する女など居よう筈もない。
そうしてミトラの思考が止まっている間に、腰巾着男は続けて叫んでいた。
「モエ・エシャンドン、メルロー・グルナッシュ、ロートシルト・ポタージュ! 父なる神の愛は無限なり! 悔い改めるならば、苦しみに満ちたその状況から解放される! さあ安らぎに顔を向けよ! 手を伸ばせ! あるべき理に戻るんだ!!」
ミトラを驚愕させる事態が更に起こった。
三人の“精霊”が両手を天にかざすような仕草をしたと思ったら、溶けるように消えていったからだ。
三人の“精霊”が消えていくのを呆けたように眺めていたミトラ。
だが、はっと気が付くと慌てて消えた“精霊”に呼びかける。
「お、おいモエ? メルロー! ロートシルト!! おい、返事をしろ!!」
だがしかし、“精霊”は誰一人として応えなかった。
“精霊”がミトラの命令を拒んでいるのではない。そもそも“精霊”の存在が感じられなかった。
「無駄だ。もう浄化されちまったからな。彼女達はもうお前の呪縛から解放された」
腰巾着は、地面に唾を吐き捨てると、ミトラに続けて言った。
「さあ来いよ。また俺ッチと第二ラウンド開始といこうじゃねェか」
ミトラは焦る。不味い、と。
不味い。
不味い。不味い。不味い。不味い。不味い。不味い。不味い。
この対決が書きたいからこその82話での前振りでした。
*****
ミトラは思い出す。
あの時の腹立たしい記憶を。
せっかく手に入れた組織を追われた忌々しい思い出。
ザコが下らない知恵を絞ってきやがった、あの思い出。
*****
ミトラがその時に訪れたのは、とある寂れた工業地域。少なくとも事前に、シャーロットから聞いていたのはそういう説明だった。
だが訪問先の企業は、そうではなかった。
ミトラがエルフとして異世界に転生する前の話だ。ミトラが日本人として生きていた頃にも既に有名だった、大手検索サイトの本社を中心とした情報産業の会社ビル。
他にもナノテクや次世代電池関連等といった、最先端の会社。
正直、「生前」には聞き流して興味も無かった、ニュースを賑わせていた会社。まさか、そこに訪れる事になるとは。
だが興味が無いのは今でも同じ事。ミトラの興味の先は、結局は金と権力。
訪れた先の会社は業界では中堅の、そして世間ではまだ無名の会社。規模はそれなり。
だが連中の態度がいけなかった。
中堅とはいっても、それなりの勢いで成長していたらしい彼等の態度。それは、シャーロットへの……ミトラへの侮蔑。
怪しい新興宗教風情が調子に乗って何様だ、と。そう彼等は見下してせせら笑った。
そして彼等は、ミトラ達よりも先に手を組んでいた用心棒のギャングを見せつけた。ギャング共もミトラ達を馬鹿にして、見下して笑っていた。
だから殺してやった。奴等に身の程を教えるために。
どちらが調子に乗った身の程知らずだったのか。
ミトラが炎の“精霊”を出した瞬間、彼等は呆気に取られて固まる。その一瞬の隙に用心棒ギャングを全員同時に火柱に変えてやった。
蒼ざめる会社役員。ミトラが唇を歪めて凶悪な笑顔で睨みつけると、全員命乞い。
ザマを見やがれ。
あとはシャーロットに任せて、ミトラは地下駐車場へ降りた。スーズが運転する自動車が止まっている地下へ。
地下駐車場の雰囲気がおかしかった。
かなり抑えられてはいるが、殺気がピリピリと漂っている。そんな殺気を感じ取った自分に、さすがは俺だと自画自賛するミトラ。
だが、彼の兄やその相棒のエヴァンなら……いや、この場に居ている者なら皆、もっと早い段階で気付いているだろう事は知る由もない。
そう思っていると、案の定それなりに広い地下駐車場のあちこちから、何処からともなく湧いて出てきた武装した連中。
こちらに武器を向けながら、「動くな!」の声を引き連れて。
彼等は、ミトラが上から降りてきた階段出口を中心に、半円形に取り囲む。
──面倒だな、“精霊”で焼くか。
そうミトラが考えた時、満を持して彼等の中から前に出て登場する男。ラテン系の顔立ちに、黒い長髪を荒く後ろに流して後頭部で括っている。
コイツは確か、よく兄のそばにくっついていたヤツではなかったか? 名前は確か、エヴァだったかエヴァンゲリ夫だったか。
ミトラはその男に馬鹿に仕切った声で言い放つ。
「よお、確かお前は、兄貴のケツを追いかけてた腰巾着ヤローじゃねえか。何しにココヘ来たんだよ」
だが相手はミトラに何も答えず、黙って両手にサックを付けるとファイティングポーズを取った。
ミトラはそれを見てため息をつくと、中空を眺める。
するとミトラの脳裏に謎の声が響いた。
【スキルポイントの振り直しが出来ます。振り直しますか?】
ミトラは即座に脳内で反応。
──YES。“主人公属性”に全振りしていたポイントのうち、10ポイントを“ボクシングマスター”に移す。
たちまちミトラの脳裏に、どう身体を動かして戦えば良いかボクシングの技術が理解出来るようになる。
これこそが異世界において、ミトラが天才と皆から呼ばれ賞賛された理由。
まるでゲームのように、技術を《スキル》としてポイントの割り振りで簡単に取得出来る、ミトラがエルフに転生した際に身に付けた能力。
ただし、その分“主人公属性”の強運力は弱くなるが。
ポイントの総量は分からないが10ポイント程度なら、今までも影響が無かったから大丈夫だろう。
そうしてミトラもボクシングのファイティングポーズをとって、彼が腰巾着と例えたエヴァン・ウィリアムスと相対した。
軽く身体を上下させながら、隙を伺う両者。
──確かボクシングの試合では、強者の周りを弱者がウロウロと回って隙を伺うんだったかな。
ミトラは昔読んだボクシング漫画の、うろ覚えの知識を頭に思い浮かべる。
身体を上下させながらも、ミトラはその場から動かず相手を睨みつけた。
果たして、相手は左右に動き始めてこちらの様子を伺い始める。
──兄貴の後ろを付いて歩くようなヤローだ。どうせ大した実力なんてある訳ねえ。
そう考えていると、向こうはおもむろにこちらの顔面に向けてパンチを繰り出す。繰り出されるは右のストレート。
ミトラはそのパンチを、スリッピング・アウェーでギリギリを見切って躱す。そのまま相手の懐に入り込んでボディーブローを放つ。
向こうはミトラのパンチを左の肘でガードした。
裸拳で放ったにも関わらず、ミトラの握り拳は一切傷んでいない。
そしてお返しとばかりに、今度はミトラが腰巾着男に左のパンチを放つ。お手本のような綺麗なワンツー。
腰巾着は左ジャブを肩でガードし、ストレートはミトラと同じくスリッピング・アウェーで躱す。腰巾着は、そのまま右のアッパーでカウンターを狙ってきた。
ミトラはそのアッパーを、余裕の表情でスウェーバックして避ける。ミトラのプロ級のボクシング技術に、驚きと戸惑いの表情を浮かべる腰巾着。
そのままミトラは腰巾着にラッシュを仕掛ける。クリーンヒットこそ無いが、相手は防戦一方だ。
調子に乗ったミトラは、闘いながら次々とポイントを“主人公属性”から他のスキルに割り振っていき、様々な格闘術の技で腰巾着を攻撃する。
酔拳マスター、少林寺拳法マスター、骨法マスター、空手マスター……。だが“主人公属性”に割り振っているポイントがかなり減ってきている事に、ミトラは気付いていない。
ミトラは自分の強さに酔いしれながら、内心ほくそ笑む。
──やはりこの程度の雑魚など、“精霊”を使わずとも余裕で勝てるな。
そう考えて、ミトラがこの雑魚のトドメをどうしようか思い巡らせ始めた時。
腰巾着が何かに気付いたように、突然後ろに大きく飛び退った。片側の耳を手で押さえながら。
ミトラの不意を突いた行動だったので、追いかけて更に攻撃することが出来なかった。
腰巾着は耳から手を離すと、ゆっくりと懐から何かが書かれた紙を取り出した。
手を離した耳にインカムが付けられている事に気が付くミトラ。
ただならぬ雰囲気に、追撃は不味いと判断して様子を見守る。そういえば戦いに夢中で気が付かなかったが、周囲に響いていた読経のような声が止んでいた。
「父なる神は偉大なり。モエ・エシャンドン、メルロー・グルナッシュ、ロートシルト・ポタージュ! 神の名の元に我が呼び掛けに応え、出でよ現世に!!」
「何ッ!?」
ミトラが命じていないのに、“精霊”が全員勝手に……いや、この腰巾着の男の呼び掛けに応じて現れた。
予想外の事態に思考が止まるミトラ。
ハプニングへの弱さは、兄が以前から見抜いていたミトラの弱点の一つ。だが、ミトラ本人は気が付いていない弱点。
何故なら、耳の痛い不快な忠告は全て無視してきたからだ。周囲の人も──特に周りに侍っている女は、一切そんな忠告はしなかったからだ。
何故なら、その忠告するという行為は身の危険を伴うから。
実際に、今までミトラを思って忠告を行った女はいたが、彼女達は皆その後ミトラのサンドバッグの対象になった。
大抵は、そのDVサンドバッグ対象になった女は、自殺まで追い込まれた。
運が悪ければ、例の快楽殺人者のパーティーの供物になった。
そんな環境では、忠告する女など居よう筈もない。
そうしてミトラの思考が止まっている間に、腰巾着男は続けて叫んでいた。
「モエ・エシャンドン、メルロー・グルナッシュ、ロートシルト・ポタージュ! 父なる神の愛は無限なり! 悔い改めるならば、苦しみに満ちたその状況から解放される! さあ安らぎに顔を向けよ! 手を伸ばせ! あるべき理に戻るんだ!!」
ミトラを驚愕させる事態が更に起こった。
三人の“精霊”が両手を天にかざすような仕草をしたと思ったら、溶けるように消えていったからだ。
三人の“精霊”が消えていくのを呆けたように眺めていたミトラ。
だが、はっと気が付くと慌てて消えた“精霊”に呼びかける。
「お、おいモエ? メルロー! ロートシルト!! おい、返事をしろ!!」
だがしかし、“精霊”は誰一人として応えなかった。
“精霊”がミトラの命令を拒んでいるのではない。そもそも“精霊”の存在が感じられなかった。
「無駄だ。もう浄化されちまったからな。彼女達はもうお前の呪縛から解放された」
腰巾着は、地面に唾を吐き捨てると、ミトラに続けて言った。
「さあ来いよ。また俺ッチと第二ラウンド開始といこうじゃねェか」
ミトラは焦る。不味い、と。
不味い。
不味い。不味い。不味い。不味い。不味い。不味い。不味い。
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