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第四章 通りすがりのダーティーエルフ編
第90話 “月下の邂逅”…偽りのダークヒーロー編
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アイラの右手から噴き出した炎は、エヴァンの足を消し炭に変えた。
エヴァンの体重を支える足が崩れ去り、エヴァンは地面に倒れ込む。
上体を起こしたエヴァンは、信じられないといった眼でアイラを見る。
しかし、驚愕の表情を浮かべていたのはアイラも同じだった。
「え……? なんで!? 私の身体が勝手に……!!」
ミトラはその言葉に得意気に返す。
先ほどまでの情けない姿が嘘のようだ。
「だからスペアだって言っただろ。オメーの身体はもうとっくに死んでるんだよ」
「ど……どういう……」
「さあな。オメーを“精霊”に変えようとしても、当時は何でか出来なかった。でも命令さえしたら、どうやら俺の思い通りに動くみてえだったからな。面白れえからそのまま残しといたんだよ」
シャーロットが恐ろしい予想をアイラに告げる。
「お腹の子供の生命力で、生きながらえていたんじゃない?」
「お腹の……子供…………?」
ひどく現実味の無い言葉のように感じているかのようなアイラの表情。
その顔を見て、楽しくて仕方が無いといった態度でシャーロットは続ける。
「あら、その顔はやっぱり気付いてなかったのね。身体がそんなだと分からないのかしら」
なんという悪魔の微笑みか。あの美しい顔のシャーロットがこのような悪辣な表情を作れるとは。
悪魔の微笑みを浮かべたまま、シャーロットはアイラへ追い打ちをかける。
「たぶん、最初の時に妊娠したのね」
「アイラちゃん!!」
二人に甚振られるアイラを見ていられず、思わず声をかけるエヴァン。
しかし、名前以外に何を話したら良いか分からない。
「うるせえな。黙ってろよ、雑魚が」
そう言って、さっきのお返しとばかりにエヴァンの頭を踏みつけるミトラ。
エヴァンはそれでもアイラの名前を呼び続ける。
「アイラ……ちゃん。アイ……ラ…………ちゃん……!」
彼等を取り囲む周囲の人間も、あまりの事態に誰一人動かない。動けない。
そしてミトラの口からも悪魔のごとき提案が飛び出した。
「そうだ完全に“精霊”に変える前に、オメーの意識があるうちに、オメーの手でコイツを焼き殺させてやろう。我ながらナイスアイディアだぜ」
「い……嫌……」
「あははは! 確かに良いわね、それ! その時のアイラの表情が見ものだわ!!」
「アイラちゃん……!」
そんなエヴァンとアイラの様子を小気味良さげに眺めながら、ミトラはアイラに命令を下した。
ああ、他人の生殺与奪を握るのは、なんという快楽なのか。
「アイラ、この男を焼き殺せ。なるべく時間をかけて苦しませながらな」
ミトラがそう言った途端に、再びアイラの右手が持ち上がる。
アイラは悲鳴のような声をあげて、エヴァンに叫ぶ。
「だ……駄目、身体が勝手に……! 嫌……エヴァンさん逃げて! 逃げてえええ!!」
「ははははは! 何を無駄な事を言ってんだ。この男がこの足でどうやって逃げるってんだよ!?」
「ああ、良いわ貴女のその顔。ゾクゾクしちゃう……!」
そしてついにアイラの右手から放たれる炎。
それは、エヴァンの身体に向かうとあっという間に彼を火ダルマに変えた。
ミトラの足に頭を押さえられながらも、もがくエヴァン。
「嫌ああああああああ! エヴァンさん! エヴァンさあああん!!」
エヴァン・ウィリアムスは、炎に焼かれながらも確かに見た。
アイラ・モルトの身体が、人の形を保ったまま足元から炎に置き換わっていくのを。
その“置き換わり”は痛みを伴うのだろうか。アイラの叫び声は苦痛に満ちたものに変わっていく。
泣き叫ぶアイラの身体が完全に炎に置き換わった時、彼女の……アイラの声が消えた。
「よっしゃアイラ。そんじゃ正式に“精霊”化したオメーに第一号の命令だ。この場に居る全ての人間を焼き殺せ。ああ、ついでにスマホとか通信機器も潰しとけよ」
炎に置き換わったアイラに向かって、ミトラはそう命令した。
その瞬間、炎で象られた人型から、無数の炎が四方八方に飛び出していった。
*****
「ははははは、こりゃスゲエ! あの三人分の力よりも更に強えじゃねえか! 主人公のパワーアップイベントってやつだな、これは!!」
周囲は、シャーロットとミトラ以外は全て炎に焼かれた人間と機械。
ミトラはその様子を満足気に、腰に手を当てて眺めていた。
そんな時に足元から聞こえた、苦痛に満ちたうめき声。
ミトラはそいつの頭をグリグリと踏み付けた後、余裕に満ちた声で足元に語りかけた。
「さっき言ったみてーに、オメーは特別時間をかけて焼け死ぬ。この能力はな、何であれ俺が望むものを俺が止めろと命じるまで燃やし続けるんだ。それか完全に燃え尽きるまでな」
そのミトラにシャーロットが話す。
「ねえミトラ。そろそろ無駄話は終わらせて、行きましょう? 追い掛け回されるのも面倒だわ」
「ああ、悪いシャーロット。……じゃあな、クソザコ! 最後までオメーの苦しむ姿を見れねえのは残念だが、俺達はもう行くぜ、あばよ!!」
その言葉を最後に、ミトラとシャーロットは悠然と外へと向かう。もちろん、途中で“主人公属性”にポイントを戻すのをミトラは忘れなかった。
その途中でミトラは見つけた。
地下駐車場の片隅に転がっている豹人間のスーズの姿を。
彼女に撃ち殺されただろう数体の死体に囲まれた、銃に撃たれた跡が無数にある彼女の死体を。
「チッ、役に立たない女だ」
そう言って彼女の死体に唾を吐き捨てると、ミトラは先を急いだ。
だから、ミトラはこの後のエヴァンの事は知らない。知る由もない。
*****
エヴァンは彼等が去ったあと、必死に懐からスマホを取り出した。
彼がリーダーと呼んで慕う男へ少しでも情報を送るために。
だが、スマホは燃え上がっており、液晶画面も溶け落ちて操作が出来なかった。
あの男は言っていた。何であれ自分が望むものを自分が止めろと命じるまで燃やし続ける、と。
──なにか……何か無いのか、リーダーに情報を残す方法が!
その時、スマホと一緒にミトラの“精霊”の名前を書いた紙が出てきていたのに気が付く。
紙など、真っ先に炎に焼かれて消えそうなのに、焦げひとつ無い。
エヴァンはそれを見てハッと気が付き、己の服を見た。服もまた、焦げひとつ無い。
もう一度、あの男の言葉を思い出した。
──この能力はな、何であれ俺が望むものを俺が止めろと命じるまで燃やし続けるんだ。
……そうか! つまり、奴が望んでいなかったモノは燃えないのだ!!
そうと分かれば! ……確か、胸の内ポケットに何か筆記具を入れていたはず……!
エヴァン・ウィリアムスは、最後の力を振り絞ってその紙にあらん限りの情報を書き記し始めた。
主に、“精霊”を浄化する方法を。
……そして最後に、彼のアイラへの想いの丈もまた。
*****
ミトラは、追憶から戻った。
タンカーの上で、吹きすさぶ海風に煽られながら立ち尽くす。
そして誰に聞かせるともなく独り言ちた。
「はははは! 最後のあの時の、アイラとあの男の顔はケッサクだったぜ!!」
そう言ってから、ミトラはゆっくりと後ろへ振り向く。
そして続けて嘲りながら言い放った。
「なぁそう思うだろ、兄貴。オメーはどう思う!?」
振り返ったミトラの視線の先には、ミトラと同じく海風に煽られその安物のトレンチコートをはためかせて立っている男。
月光に照らされ、左手には退魔の力の気配を撒き散らす「ニホントウ」を持つ男。
魔力を持たぬ無能なミトラの兄が、いつの間にかそこに、物も言わずに立っていた──。
*****
せっかくの二人の再会ですが、次回から主人公の独白に戻って、もう少し対決は先に引っ張ります。
エヴァンの体重を支える足が崩れ去り、エヴァンは地面に倒れ込む。
上体を起こしたエヴァンは、信じられないといった眼でアイラを見る。
しかし、驚愕の表情を浮かべていたのはアイラも同じだった。
「え……? なんで!? 私の身体が勝手に……!!」
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先ほどまでの情けない姿が嘘のようだ。
「だからスペアだって言っただろ。オメーの身体はもうとっくに死んでるんだよ」
「ど……どういう……」
「さあな。オメーを“精霊”に変えようとしても、当時は何でか出来なかった。でも命令さえしたら、どうやら俺の思い通りに動くみてえだったからな。面白れえからそのまま残しといたんだよ」
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「お腹の子供の生命力で、生きながらえていたんじゃない?」
「お腹の……子供…………?」
ひどく現実味の無い言葉のように感じているかのようなアイラの表情。
その顔を見て、楽しくて仕方が無いといった態度でシャーロットは続ける。
「あら、その顔はやっぱり気付いてなかったのね。身体がそんなだと分からないのかしら」
なんという悪魔の微笑みか。あの美しい顔のシャーロットがこのような悪辣な表情を作れるとは。
悪魔の微笑みを浮かべたまま、シャーロットはアイラへ追い打ちをかける。
「たぶん、最初の時に妊娠したのね」
「アイラちゃん!!」
二人に甚振られるアイラを見ていられず、思わず声をかけるエヴァン。
しかし、名前以外に何を話したら良いか分からない。
「うるせえな。黙ってろよ、雑魚が」
そう言って、さっきのお返しとばかりにエヴァンの頭を踏みつけるミトラ。
エヴァンはそれでもアイラの名前を呼び続ける。
「アイラ……ちゃん。アイ……ラ…………ちゃん……!」
彼等を取り囲む周囲の人間も、あまりの事態に誰一人動かない。動けない。
そしてミトラの口からも悪魔のごとき提案が飛び出した。
「そうだ完全に“精霊”に変える前に、オメーの意識があるうちに、オメーの手でコイツを焼き殺させてやろう。我ながらナイスアイディアだぜ」
「い……嫌……」
「あははは! 確かに良いわね、それ! その時のアイラの表情が見ものだわ!!」
「アイラちゃん……!」
そんなエヴァンとアイラの様子を小気味良さげに眺めながら、ミトラはアイラに命令を下した。
ああ、他人の生殺与奪を握るのは、なんという快楽なのか。
「アイラ、この男を焼き殺せ。なるべく時間をかけて苦しませながらな」
ミトラがそう言った途端に、再びアイラの右手が持ち上がる。
アイラは悲鳴のような声をあげて、エヴァンに叫ぶ。
「だ……駄目、身体が勝手に……! 嫌……エヴァンさん逃げて! 逃げてえええ!!」
「ははははは! 何を無駄な事を言ってんだ。この男がこの足でどうやって逃げるってんだよ!?」
「ああ、良いわ貴女のその顔。ゾクゾクしちゃう……!」
そしてついにアイラの右手から放たれる炎。
それは、エヴァンの身体に向かうとあっという間に彼を火ダルマに変えた。
ミトラの足に頭を押さえられながらも、もがくエヴァン。
「嫌ああああああああ! エヴァンさん! エヴァンさあああん!!」
エヴァン・ウィリアムスは、炎に焼かれながらも確かに見た。
アイラ・モルトの身体が、人の形を保ったまま足元から炎に置き換わっていくのを。
その“置き換わり”は痛みを伴うのだろうか。アイラの叫び声は苦痛に満ちたものに変わっていく。
泣き叫ぶアイラの身体が完全に炎に置き換わった時、彼女の……アイラの声が消えた。
「よっしゃアイラ。そんじゃ正式に“精霊”化したオメーに第一号の命令だ。この場に居る全ての人間を焼き殺せ。ああ、ついでにスマホとか通信機器も潰しとけよ」
炎に置き換わったアイラに向かって、ミトラはそう命令した。
その瞬間、炎で象られた人型から、無数の炎が四方八方に飛び出していった。
*****
「ははははは、こりゃスゲエ! あの三人分の力よりも更に強えじゃねえか! 主人公のパワーアップイベントってやつだな、これは!!」
周囲は、シャーロットとミトラ以外は全て炎に焼かれた人間と機械。
ミトラはその様子を満足気に、腰に手を当てて眺めていた。
そんな時に足元から聞こえた、苦痛に満ちたうめき声。
ミトラはそいつの頭をグリグリと踏み付けた後、余裕に満ちた声で足元に語りかけた。
「さっき言ったみてーに、オメーは特別時間をかけて焼け死ぬ。この能力はな、何であれ俺が望むものを俺が止めろと命じるまで燃やし続けるんだ。それか完全に燃え尽きるまでな」
そのミトラにシャーロットが話す。
「ねえミトラ。そろそろ無駄話は終わらせて、行きましょう? 追い掛け回されるのも面倒だわ」
「ああ、悪いシャーロット。……じゃあな、クソザコ! 最後までオメーの苦しむ姿を見れねえのは残念だが、俺達はもう行くぜ、あばよ!!」
その言葉を最後に、ミトラとシャーロットは悠然と外へと向かう。もちろん、途中で“主人公属性”にポイントを戻すのをミトラは忘れなかった。
その途中でミトラは見つけた。
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「チッ、役に立たない女だ」
そう言って彼女の死体に唾を吐き捨てると、ミトラは先を急いだ。
だから、ミトラはこの後のエヴァンの事は知らない。知る由もない。
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エヴァンは彼等が去ったあと、必死に懐からスマホを取り出した。
彼がリーダーと呼んで慕う男へ少しでも情報を送るために。
だが、スマホは燃え上がっており、液晶画面も溶け落ちて操作が出来なかった。
あの男は言っていた。何であれ自分が望むものを自分が止めろと命じるまで燃やし続ける、と。
──なにか……何か無いのか、リーダーに情報を残す方法が!
その時、スマホと一緒にミトラの“精霊”の名前を書いた紙が出てきていたのに気が付く。
紙など、真っ先に炎に焼かれて消えそうなのに、焦げひとつ無い。
エヴァンはそれを見てハッと気が付き、己の服を見た。服もまた、焦げひとつ無い。
もう一度、あの男の言葉を思い出した。
──この能力はな、何であれ俺が望むものを俺が止めろと命じるまで燃やし続けるんだ。
……そうか! つまり、奴が望んでいなかったモノは燃えないのだ!!
そうと分かれば! ……確か、胸の内ポケットに何か筆記具を入れていたはず……!
エヴァン・ウィリアムスは、最後の力を振り絞ってその紙にあらん限りの情報を書き記し始めた。
主に、“精霊”を浄化する方法を。
……そして最後に、彼のアイラへの想いの丈もまた。
*****
ミトラは、追憶から戻った。
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そして誰に聞かせるともなく独り言ちた。
「はははは! 最後のあの時の、アイラとあの男の顔はケッサクだったぜ!!」
そう言ってから、ミトラはゆっくりと後ろへ振り向く。
そして続けて嘲りながら言い放った。
「なぁそう思うだろ、兄貴。オメーはどう思う!?」
振り返ったミトラの視線の先には、ミトラと同じく海風に煽られその安物のトレンチコートをはためかせて立っている男。
月光に照らされ、左手には退魔の力の気配を撒き散らす「ニホントウ」を持つ男。
魔力を持たぬ無能なミトラの兄が、いつの間にかそこに、物も言わずに立っていた──。
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これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
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