109 / 128
第四章 通りすがりのダーティーエルフ編
第108話 “脱出”…偽りのダークヒーロー編
しおりを挟む
ミトラは足につけたプロテクターの防御に任せて、その貝殻の破片の上を突っ切ろうとする。
だがすぐにコリーヴレッカンが、岩塊を目の前に大量に落としてきた。
その度に目の前の岩を砕く手間がかかる。
兄へなかなか近づけず、苛立ちが積もる。
せめて『鎧』が纏えればと思うが後の祭りだ。
──あの牛のバケモンだけじゃなかったのか。本当に小賢しい雑魚だぜ。
空中を悠々と浮かぶ厳ついマッコウクジラを見ながら、ミトラは苛立つ。
ふと気がつき、先ほど岩屋を吹き飛ばした技を繰り出してみることにした。
「気」を溜めて放出するする事で、離れた相手を攻撃できる技。
むしろなぜ今まで気が付かなかったのだろうか?
構えて「気」を溜める。脳裏に例の「声」が響く。
【気功砲弾:キャスト時間三秒】
溜めが半分もいかないうちに、クジラに雷を落とされた。
落雷の気配を感じて回避したので、当たりはしなかったが……。
【気功砲弾のキャストが解除されました】
──くそっ使えねえ!!
マッコウクジラは上空を相変わらず悠々と漂いながら、ミトラを睥睨し続けている。
このクジラが出てきてから遠距離でチクチクと攻撃され、全く近寄れない。鬱陶しい。
再びクジラから殺気を感じる。
落雷が落ちる。今度は連続だ。
まるでカーテンのように兄との間に雷の壁を作ると、すぐさまミトラの居る場所に雷を落とす。
一発。二発。三発。少しずつ後退せざるをえないミトラ。
四発。五発。六発。兄との距離が離れる歯がゆさに苛立ちながらも、下がらないといけない。
七発。八発。九発。十発。どんどん船尾に追い込まれる。
その時、船尾が再び爆発して船体が大きく右に傾いた。
兄達から見ると左に。
子供が、コートを切り裂いて作ったロープを手にしたままグラリとよろめく。
兄が咄嗟に子供を左腕で捕まえる。子供の身体はしっかりと確保できたが、船体の傾きが更に大きくなり兄は子供ごと滑り落ちる。
兄は紅乙女を呼び出し、傾いた甲板に突き刺した。滑落が止まる。しかしこのままでは身動きができない。
だが子供はその体勢で器用にロープを兄の背中を通し、自分の身体と兄の身体を括り付けて固定した。
叩きつける雨が容赦なく兄と子供の身体から熱を奪っていく。
紅乙女が励ましの言葉を兄にかける。
「もう少しです。踏ん張ってください御主人様!」
「ああ分かってる、ありがとう!!」
ミトラは近接戦総合マスターのスキルの恩恵で、傾いた甲板をものともせずに立っていた。
その右手には、人間の背丈ほどもある巨大な魚。マグロだろうか。
その胴体を手刀で貫き右手を真っ赤に染めている。
船体が傾いた時、まるでミトラにその身を捧げるかのように海面から跳ね飛んできたのだ。
“不味い。やはり下等な生き物の魂では、腹の足しにはならんな”
──だが一瞬だけなら、あの『鎧』が纏えるようになった! ようやくアイツ等に近づける目が出てきたぜ!!
ミトラは足のプロテクターの爪先を鉤爪状に変形させる。
それを甲板に食い込ませながら斜めに傾いだ甲板の上を走り出した。
その時、コリーヴレッカンが空を振り仰ぐと、雲がまるでモーゼが海を割ったごとくに左右に割れていき、雨と風が止まる。
そしてはるか遠くから、オプスレイ型の飛行体が飛んできた。
*****
飛行体は船首のほうまで来るとプロペラを上に向けて静止した。
胴体の横腹から扉が開いたかと思うと、ワイヤーロープが降ろされる。
ミトラはそれを見ながら、船首へ向かって傾いた甲板を駆ける。
──あれでこの船から脱出するつもりだったのか! 逃がすかよ!!
雲が晴れてから落雷も来なくなった。
さっきの魚といい、チャンスだとミトラは考えた。
だから意識が逸れていた。
口を大きく広げてその奥に電気を溜め込み、雷撃のブレスを吐かんとしているコリーヴレッカンの存在から。
“『鎧』を纏え!”
その言葉に反射的に『鎧』をミトラが纏ったのと、コリーヴレッカンが口から雷撃ブレスを吐いたのは同時だった。
青白い放電に包まれるミトラを見てコリーヴレッカンは仕留めたと思った。
だが黒焦げになった人型が動き始めたのを見て、驚愕に目を見張る。
コリーヴレッカンは兄に告げた。
「主殿。ようやく本当の意味で、かの者の脅威が理解でき申した。私の命に代えても、かの者を抹殺しておきまする」
「分かった。お前に任せる」
傾いだ甲板に貼り付けになった兄のそばに、ロープがやって来る。
兄は、戦う前に自分の腰に装着していた取り付け金具の付いたベルトへ、子供に頼んでワイヤーロープを固定して貰う。
そして兄は、コート製のロープで固定をした子供の身体を、その上から左手でしっかりと抱きしめる。
その瞬間、兄は一瞬だけ戸惑い硬直した。
だが子供が腕に縋り付いてきたので、思い直して力を入れ直す。
飛行体に引き上げてもらう合図を送る前に、兄はコリーヴレッカンに叫んだ。
「コリーヴレッカン!」
「はい」
「命に代えてもなんて言うな! 必ず……必ずだ! 生きて俺の元へ戻れ!! これは最優先命令だ!!」
「……謹んで、御拝命つかまつりました。主殿」
「待っているからな!!」
兄は上に引き上げられていくと、飛行体の内部に飲み込まれていった。
*****
兄が飛行体に回収され、無事に飛び去るとコリーヴレッカンはミトラに向き直る。
そして、気弱な者ならショック死しかねないほどの殺意を撒き散らしながら宣言した。
「これで漸く全力を出せる。死ね」
コリーヴレッカンは背中から岩塊を大量に射出。口から貝殻の破片のブレスをミトラへ吐きつける。
岩塊と破片ブレスは、ほぼ同時に着弾。
ミトラを襲う。
【気功衝撃波:キャスト完了しています】
攻撃を読んでいた魔剣の指示で《スキル》を準備していたミトラは、溜めていた気を解放。
大量のバラマキ弾を衝撃で弾き飛ばした。
だがコリーヴレッカンはすぐに鼻先を岩で覆うと、タンカーへ高速でダイブして甲板を破壊。
そのまま水中へ潜っていった。
さすがにミトラも甲板に足の爪を食い込ませ、手も甲板に突き立てて振り落とされないようにするのが精一杯。
そしてすぐに下から突き上がる衝撃。
甲板を突き破りながらコリーヴレッカンが下から飛び出してきた。
そのまま空中に静止したかと思えば、すぐに岩塊射出と破片ブレス。
ミトラは激しく揺れる足場に苦労しながらも、近接戦総合マスターの能力の恩恵で何とか走ることが出来る。
辛うじてブレスの攻撃範囲から逃れる事が出来た。
すぐさまコリーヴレッカンの突撃ダイブ。
先程とほぼ同じ場所に突っ込む。
ミトラは一瞬、見当違いの場所に突っ込んだと思ったが、すぐに間違いを悟る。
タンカーは今のダイブで二つに折れた。
コリーヴレッカンが突っ込んだ箇所を中心に、V字型に沈む船。
──くそっ、単純な攻撃の繰り返しなのに、手が出せねえ!
そう歯噛みするミトラのすぐ傍の甲板を砕いて、クジラの巨体が現れる。
コリーヴレッカンの巨体が下から突き上げ、上空に飛び上がる際の爆発的衝撃に巻き込まれ、破片と共に弾き飛ばされるミトラ。
その時、ミトラの脳内にまた例の「声」が響いた。
【《スキル》八艘跳びが使用できます】
その「声」が聞こえた後は、まるで当たり前のように身体が使い方を知っていた。
ミトラは巻き上がった破片を足場にして、次々と破片の間を跳ねていき、クジラを追いかける。
最後に空中の破片の足場を思い切り踏みつけて跳躍すると、クジラよりも上空に飛び上がった。
コリーヴレッカンは上空のミトラの存在に気が付いていたようだ。
すぐにミトラへ向かって、口を開けながら首を持ち上げる。
口内には既に、溜め込んだ電気の塊。
ミトラは空中で魔剣を元の形に戻すと、大きく振りかぶる。身体ごと弓なりに反らしながら。
そしてその状態から、全身のバネを使って魔剣を振り下ろした。
凄まじい衝撃波がコリーヴレッカンへ襲いかかる。
だがそれとほぼ同時にコリーヴレッカンも、ミトラへ向かって雷のブレスを吐き出していた。
タンカーが沈んだ。
しかしこの船は、退役船を非合法・秘密裏に運用していたものだった為、その事が明るみに出る事は無かった。
*****
オプスレイ型の飛行体に引き上げられた兄は、ドサリと床に仰向けに倒れ込んだ。
左手首からの出血と雨による体温低下で、顔が蒼白だ。
乗組員がナイフで、子供と兄を結んでいたロープを切断する。
解放されたエルフの子供は、慌てて起き上がり兄の顔を心配そうに覗き込む。
薄汚れていた顔が雨に洗われ、痩せこけているが整った顔を見せている。
兄は子供に顔を向けて薄く微笑んだ。
そして右手の示指で自分を指差して、兄は子供に言う。
「マロニー」
続けて子供に向かって指差す。
物問いたげな表情を作って。
子供はしばらくその指を眺めていたが、兄の意図に気が付きおずおずと答える。
「……ブラン」
そう言うと子供は……いや、ブランと名乗ったエルフの少女は、兄の右手に縋り付いて泣き出した。
コリーヴレッカンは戻らなかった。
だがすぐにコリーヴレッカンが、岩塊を目の前に大量に落としてきた。
その度に目の前の岩を砕く手間がかかる。
兄へなかなか近づけず、苛立ちが積もる。
せめて『鎧』が纏えればと思うが後の祭りだ。
──あの牛のバケモンだけじゃなかったのか。本当に小賢しい雑魚だぜ。
空中を悠々と浮かぶ厳ついマッコウクジラを見ながら、ミトラは苛立つ。
ふと気がつき、先ほど岩屋を吹き飛ばした技を繰り出してみることにした。
「気」を溜めて放出するする事で、離れた相手を攻撃できる技。
むしろなぜ今まで気が付かなかったのだろうか?
構えて「気」を溜める。脳裏に例の「声」が響く。
【気功砲弾:キャスト時間三秒】
溜めが半分もいかないうちに、クジラに雷を落とされた。
落雷の気配を感じて回避したので、当たりはしなかったが……。
【気功砲弾のキャストが解除されました】
──くそっ使えねえ!!
マッコウクジラは上空を相変わらず悠々と漂いながら、ミトラを睥睨し続けている。
このクジラが出てきてから遠距離でチクチクと攻撃され、全く近寄れない。鬱陶しい。
再びクジラから殺気を感じる。
落雷が落ちる。今度は連続だ。
まるでカーテンのように兄との間に雷の壁を作ると、すぐさまミトラの居る場所に雷を落とす。
一発。二発。三発。少しずつ後退せざるをえないミトラ。
四発。五発。六発。兄との距離が離れる歯がゆさに苛立ちながらも、下がらないといけない。
七発。八発。九発。十発。どんどん船尾に追い込まれる。
その時、船尾が再び爆発して船体が大きく右に傾いた。
兄達から見ると左に。
子供が、コートを切り裂いて作ったロープを手にしたままグラリとよろめく。
兄が咄嗟に子供を左腕で捕まえる。子供の身体はしっかりと確保できたが、船体の傾きが更に大きくなり兄は子供ごと滑り落ちる。
兄は紅乙女を呼び出し、傾いた甲板に突き刺した。滑落が止まる。しかしこのままでは身動きができない。
だが子供はその体勢で器用にロープを兄の背中を通し、自分の身体と兄の身体を括り付けて固定した。
叩きつける雨が容赦なく兄と子供の身体から熱を奪っていく。
紅乙女が励ましの言葉を兄にかける。
「もう少しです。踏ん張ってください御主人様!」
「ああ分かってる、ありがとう!!」
ミトラは近接戦総合マスターのスキルの恩恵で、傾いた甲板をものともせずに立っていた。
その右手には、人間の背丈ほどもある巨大な魚。マグロだろうか。
その胴体を手刀で貫き右手を真っ赤に染めている。
船体が傾いた時、まるでミトラにその身を捧げるかのように海面から跳ね飛んできたのだ。
“不味い。やはり下等な生き物の魂では、腹の足しにはならんな”
──だが一瞬だけなら、あの『鎧』が纏えるようになった! ようやくアイツ等に近づける目が出てきたぜ!!
ミトラは足のプロテクターの爪先を鉤爪状に変形させる。
それを甲板に食い込ませながら斜めに傾いだ甲板の上を走り出した。
その時、コリーヴレッカンが空を振り仰ぐと、雲がまるでモーゼが海を割ったごとくに左右に割れていき、雨と風が止まる。
そしてはるか遠くから、オプスレイ型の飛行体が飛んできた。
*****
飛行体は船首のほうまで来るとプロペラを上に向けて静止した。
胴体の横腹から扉が開いたかと思うと、ワイヤーロープが降ろされる。
ミトラはそれを見ながら、船首へ向かって傾いた甲板を駆ける。
──あれでこの船から脱出するつもりだったのか! 逃がすかよ!!
雲が晴れてから落雷も来なくなった。
さっきの魚といい、チャンスだとミトラは考えた。
だから意識が逸れていた。
口を大きく広げてその奥に電気を溜め込み、雷撃のブレスを吐かんとしているコリーヴレッカンの存在から。
“『鎧』を纏え!”
その言葉に反射的に『鎧』をミトラが纏ったのと、コリーヴレッカンが口から雷撃ブレスを吐いたのは同時だった。
青白い放電に包まれるミトラを見てコリーヴレッカンは仕留めたと思った。
だが黒焦げになった人型が動き始めたのを見て、驚愕に目を見張る。
コリーヴレッカンは兄に告げた。
「主殿。ようやく本当の意味で、かの者の脅威が理解でき申した。私の命に代えても、かの者を抹殺しておきまする」
「分かった。お前に任せる」
傾いだ甲板に貼り付けになった兄のそばに、ロープがやって来る。
兄は、戦う前に自分の腰に装着していた取り付け金具の付いたベルトへ、子供に頼んでワイヤーロープを固定して貰う。
そして兄は、コート製のロープで固定をした子供の身体を、その上から左手でしっかりと抱きしめる。
その瞬間、兄は一瞬だけ戸惑い硬直した。
だが子供が腕に縋り付いてきたので、思い直して力を入れ直す。
飛行体に引き上げてもらう合図を送る前に、兄はコリーヴレッカンに叫んだ。
「コリーヴレッカン!」
「はい」
「命に代えてもなんて言うな! 必ず……必ずだ! 生きて俺の元へ戻れ!! これは最優先命令だ!!」
「……謹んで、御拝命つかまつりました。主殿」
「待っているからな!!」
兄は上に引き上げられていくと、飛行体の内部に飲み込まれていった。
*****
兄が飛行体に回収され、無事に飛び去るとコリーヴレッカンはミトラに向き直る。
そして、気弱な者ならショック死しかねないほどの殺意を撒き散らしながら宣言した。
「これで漸く全力を出せる。死ね」
コリーヴレッカンは背中から岩塊を大量に射出。口から貝殻の破片のブレスをミトラへ吐きつける。
岩塊と破片ブレスは、ほぼ同時に着弾。
ミトラを襲う。
【気功衝撃波:キャスト完了しています】
攻撃を読んでいた魔剣の指示で《スキル》を準備していたミトラは、溜めていた気を解放。
大量のバラマキ弾を衝撃で弾き飛ばした。
だがコリーヴレッカンはすぐに鼻先を岩で覆うと、タンカーへ高速でダイブして甲板を破壊。
そのまま水中へ潜っていった。
さすがにミトラも甲板に足の爪を食い込ませ、手も甲板に突き立てて振り落とされないようにするのが精一杯。
そしてすぐに下から突き上がる衝撃。
甲板を突き破りながらコリーヴレッカンが下から飛び出してきた。
そのまま空中に静止したかと思えば、すぐに岩塊射出と破片ブレス。
ミトラは激しく揺れる足場に苦労しながらも、近接戦総合マスターの能力の恩恵で何とか走ることが出来る。
辛うじてブレスの攻撃範囲から逃れる事が出来た。
すぐさまコリーヴレッカンの突撃ダイブ。
先程とほぼ同じ場所に突っ込む。
ミトラは一瞬、見当違いの場所に突っ込んだと思ったが、すぐに間違いを悟る。
タンカーは今のダイブで二つに折れた。
コリーヴレッカンが突っ込んだ箇所を中心に、V字型に沈む船。
──くそっ、単純な攻撃の繰り返しなのに、手が出せねえ!
そう歯噛みするミトラのすぐ傍の甲板を砕いて、クジラの巨体が現れる。
コリーヴレッカンの巨体が下から突き上げ、上空に飛び上がる際の爆発的衝撃に巻き込まれ、破片と共に弾き飛ばされるミトラ。
その時、ミトラの脳内にまた例の「声」が響いた。
【《スキル》八艘跳びが使用できます】
その「声」が聞こえた後は、まるで当たり前のように身体が使い方を知っていた。
ミトラは巻き上がった破片を足場にして、次々と破片の間を跳ねていき、クジラを追いかける。
最後に空中の破片の足場を思い切り踏みつけて跳躍すると、クジラよりも上空に飛び上がった。
コリーヴレッカンは上空のミトラの存在に気が付いていたようだ。
すぐにミトラへ向かって、口を開けながら首を持ち上げる。
口内には既に、溜め込んだ電気の塊。
ミトラは空中で魔剣を元の形に戻すと、大きく振りかぶる。身体ごと弓なりに反らしながら。
そしてその状態から、全身のバネを使って魔剣を振り下ろした。
凄まじい衝撃波がコリーヴレッカンへ襲いかかる。
だがそれとほぼ同時にコリーヴレッカンも、ミトラへ向かって雷のブレスを吐き出していた。
タンカーが沈んだ。
しかしこの船は、退役船を非合法・秘密裏に運用していたものだった為、その事が明るみに出る事は無かった。
*****
オプスレイ型の飛行体に引き上げられた兄は、ドサリと床に仰向けに倒れ込んだ。
左手首からの出血と雨による体温低下で、顔が蒼白だ。
乗組員がナイフで、子供と兄を結んでいたロープを切断する。
解放されたエルフの子供は、慌てて起き上がり兄の顔を心配そうに覗き込む。
薄汚れていた顔が雨に洗われ、痩せこけているが整った顔を見せている。
兄は子供に顔を向けて薄く微笑んだ。
そして右手の示指で自分を指差して、兄は子供に言う。
「マロニー」
続けて子供に向かって指差す。
物問いたげな表情を作って。
子供はしばらくその指を眺めていたが、兄の意図に気が付きおずおずと答える。
「……ブラン」
そう言うと子供は……いや、ブランと名乗ったエルフの少女は、兄の右手に縋り付いて泣き出した。
コリーヴレッカンは戻らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる