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8,プール
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プール。
人々が水に涼み、遊び、体を動かすその施設。
僕と白石さんは電車に乗って、郊外にある巨大なレジャー施設に来ていた。
入り口で受付を済ませ、僕らは更衣室に行くために一旦別れて行動した。
やがて僕は着替え終わると、更衣室から出て白石さんを待つ。
男の僕よりも、白石さんの方が準備に時間が掛かる。
女子更衣室の近くでぼんやりと立っていると、しばらくして白石さんが中から出てきた。
彼女の姿に、一瞬僕は眩暈のようなものを覚える。
先日購入した、少し大人びたシンプルなビキニ。白石さんのシャープな体型によくマッチしていて、どこかスマートな格好良さすら感じられる。
トップスの首と背中の二点で止めるデザインは、適度な色気はあるけれど過激さは控えめで、それが白石さんの雰囲気に適合していた。
色素の薄い肌に、ビキニの黒のコントラストがよく映えて美しい。
彼女の釣鐘型の、やや上に突き出した輪郭の胸が水着の中で膨らんでいて、そのシルエットが彼女のすらっとした肉体にメリハリを与えていた。
彼女の全裸は見たけれど、水着を着たそれはまた別の魅力を肉体に伴わせていて、目の保養になるかのようだった。
綺麗だ。
「お待たせ。ごめんね。ちょっと手間取っちゃって」
「いや、そんなに待ってないから大丈夫」
「私の水着、どうかな。変なところとか無い?」
「全く無い。凄くよく似合ってる」
「ありがと。倉部くんも、中々似合ってる」
僕らはそんなやり取りの後、早速泳ぎに行くことにした。
***
空は夏色に晴れ渡っていた。
いい天気。絶好のプール日和の午後だった。
水を湛えた広々とした屋外プールはそんな空模様と同じ鮮やかさを持っていて、夏の日差しを浴びてポロポロと崩れるように輝いている。
巨大なウォータースライダーがプールに向かって伸びていて、きゃあきゃあ言いながら子供が滑っていくのが見えた。
夏休みだからだろう。利用客はそこら中にいて、子供を始めとした人の声で喧騒としていた。
なんだか群れるペンギンみたい。
その利用客らを見張っている体格のいい監視員らは白い監視台の上に座っていて、どこか退屈そうにしていた。
人が多いし、白石さんとはぐれない様に気をつけないとな。
「倉部くん。水に入る前に、ちゃんと準備運動しなきゃ駄目だからね」
「ああ、はい。しようか」
小学生の頃、体育のプールの授業で「準備運動しないと心臓が麻痺しちゃうぞ」と教師に脅されたのを思い出しながら、僕らは屈伸やら背伸びをして体を動かす。
体操している白石さんを横目で見ていると、彼女の身体は本当にスラリとしているなという感想を持った。
痩せ型の体型で、身体の輪郭が滑らかなカーブを描いていて、颯爽たる美脚が目を引いた。
腕も細長くて、脂肪の少ない腹部は腹筋が薄らと浮き上がっている。
尻は小さく、陰影が控えめだったけど、筋肉が体表に出ているためか窪みの線が伸びていて、それが妙に色っぽい。
スマートな身体。グラマラス的な肉感的な魅力とは正反対のボディだったけど、その中性的な身体は僕の好みだった。
体操が終わると、僕らはプールへと入っていく。
足先、踵、腿、膝。冷水に潜らせていくと、冷たさが火照った身体を塗り替えていくような感覚がして気もちよかった。
きりっとした冷たさが、心を清涼にさせる。
白石さんもそれは同じようで、「気持ちいいね」と僕に言う。
頭まで潜ってから顔を出すと、夏の茹だる熱気から僕らは解放されたかのようだった。
「ふぅ……生き返る……」
「倉部くんおじいさんみたいな反応だね」
「まあ、プールではしゃぐ歳でも性格でも無いからね」
「君なら大丈夫だと思うけど、あんまり節度を弁えない行動取らないでね? 学校の名前に傷が付くような行動は慎むこと。この情報社会ではどんな些細な醜聞でブランドが崩壊するか分からないんだから、モラルある行動を……」
白石さんはそこで喋るのを止める。
平手で叩かれたように頬が赤くなって、首を項垂れる。
何で彼女がそんな反応をしたのかは、何となく分かった。
止めておけばいいのに、僕は理由を指摘する。
「……あんな裏垢作ってた人が言えたことじゃないですよね」
「……うん。……もう、消したから……」
僕だけが彼女の発言力の低下を認識できているんだなぁと思いつつ、彼女のことを慰めてあげるのだった。
***
それから僕らは二時間ほど泳いでいた。
プールを一周してみたり、鬼ごっこをしてみたり、ウィータースライダーを滑ったり。
ウォータースライダーは白石さんは初めは遠慮していたけれど、いざ滑ってみたらとても気に入ったらしく、何度も階段を登って滑り下りてを繰り返していた。
「何度も滑るもんだから水着の尻の部分が磨耗するんじゃないかと思いました」
僕の軽口に白石さんは軽く睨んでくる。
今は日陰で休憩中。
湿度は避けられないけれど、午後でも照りつける日差しの黄熱からは身を守ることが出来る。
「しかし結構泳いだな……筋肉痛にならないか不安だ」
「倉部くん、文科系って体つきしてるしね。まあ私も運動ってそんなに得意じゃないけど」
お互い本当に普通という感じの泳力だった。学校の水泳の時間でとりあえず恥ずかしくない程度の泳ぎは出来るけど、そんなに速度も速くない。
白石さんは学力は高いけど、運動は並程度の成績だ。僕とさほど変わらない。
「あー……飲み物無くなっちゃった……」
自分の赤色の水筒の中を覗きながら、白石さんが「やっちゃったな……」というような表情をしながら言う。
「無理ないですよ。予想より暑くなったし、飲む分量見誤っても仕方ないです」
「買って来ようかな……でも、お金はロッカーに預けてあるからちょっと面倒なのよね……」
確かにここから更衣室まではちょっと時間が掛かる。
僕はここで待ってるから、買いに行ってもいいですよと言おうと思った時、ある考えが頭を過ぎる。
いや、ここは白石さんからの株を上げるチャンスなんじゃないか? 僕が代わりに飲み物を買いに行けば……。
「……僕が買いに行きますよ。白石さんも疲れてるだろうし、男の僕が行きます」
「えっ。大丈夫だよ。自分で買えるし、そこまで疲れてはいないし」
「僕も丁度飲み物補充したいなと思っていたし、自分の分も買うなら丁度いいと思う。だから僕が行ってきます」
「……じゃあ、お願い。後でお金は払うから」
「よし。行ってきます。白石さんは何が飲みたいです?」
「……麦茶かな。無かったらスポーツドリンク」
「分かった。行って来ます」
僕は立ち上がり、更衣室がある建物の方へと歩き出す。
……この時僕は、もっとよく考えるべきだったと思う。
こういうプール施設で女性を一人にするべきでは無いことを、僕は学ぶこととなった。
***
男子更衣室で自分の財布を回収すると、手ごろな自販機で飲み物を買う。
白石さんの分の麦茶。自分の分のリンゴジュース。
両手に500mlのペットボトルを持ち、白石さんの場所まで歩いていく。
あんまり待たせてはいけないなと考えつつ、彼女のいる日陰の場所に少々急ぎ足で向かった。
何かがおかしいことに気が付いたのは、白石さんのいる日陰の近くまで来た時だった。
白石さんはいた。僕が一旦別れたのと同じ場所にいて、同じようにその場所に座っていた。
もう一人いた。
彼女が座る前に立っていて、何やら楽しげに話をしている。
大学生だろうか。明るい髪をしていて、いかにも遊び慣れていそうなオーラを出して、僕が苦手とするタイプの人間だった。
誰だろう。白石さんの知り合い? いや、ああいうチャラいタイプの男は、白石さんは一番目の敵にする。となるとやはり……。
もう少し近づいてみると、会話が耳に入る。
辺りは喧騒としていたけど、結構大き目の声で二人は会話しているので、聞き取ることは出来た。
「ねぇ。君一人だよね? 俺と一緒に遊ばないの?」
「さっきから言ってますよね? 友達を待ってるんです」
「いいじゃん別に。君みたいな可愛い子、放っておけないし」
「困ります。申し訳ありませんが、お断りします」
白石さんの目は険があって、凛々しくて、真っ直ぐ男を見据えている。
でも、その足は微かに震えていた。
「君たぶん高校生だよね? いいスタイルしてるなぁ」
「私はこれ以上貴方と関わりたくないんです。もう一度言いますけど、人を待っているんです」
ナンパだ。
どう考えても助けに行くべきだ。
でも、気が引ける。正直、ああいう人と関わりたいとは思えない。
でも、何とかしないと……。
「色白だし美人だし可愛いよねぇ。化粧無しでそれはヤバくね? 自分の可愛さ、ぶっちゃけ自覚あるでしょ?」
「いい加減にしないと、人呼びますよ?」
「怖いなぁ。でもそういう所も可愛いよ。一緒にゆっくり泳がない? ほら、立って」
「っ……! 触らないでくださいっ」
「大丈夫だって。カップルがいちゃついてるようにしか見えないから」
……行くしかない。
勇気を振り絞り、僕は白石さんの所へと近づく。手に持つペットボトルが、やけに冷たく感じられた。
「すみません。その子は僕の連れなんです」
男と白石さんが、僕の方を見る。
「倉部くんっ」と白石さんは声を出す。彼女の顔が、少し明るくなったのが分かった。
「誰だお前」とでも言いたそうな顔を男は一瞬したけど、すぐ何か察したようで口を開く。
「ああ~。君がこの女の子の待ってる人か。ごめんね。この子可愛くてさぁ」
「嫌がってるじゃないですか。ナンパなら他所でやってください」
嫌がっている。という言葉に、僕は不思議と自己嫌悪のようなものを覚えた。
「悪い悪い。君この子の彼氏? いい子連れてるじゃん。最近いつヤった?」
「……貴方には関係ないことです」
「高校生なら猿みたいにやっちゃうよねぇ。俺も元カノとヤりまくったよ。君たちもそうなんでしょ」
「……白石さん、行こう」
僕はそう言って、無理やり会話を切り上げようとする。白石さんは立ち上がって僕の方に駆け寄って来て「行きましょう」と言ってきた。
僕は胸と左腕で二本のペットボトルを挟み込んで右手を空けると、彼女の手を取って、駆け足でその場を去る。
完全に脈無しだと判断したのだろう。男は僕らを追いかけては来なかった。
***
更衣室のある建物へと逃れた僕らは、一難去ったことにとりあえず安堵した。
「ありがとう。君が来てくれて助かった」
白石さんはそう言って微笑む。
本当に感謝しているのが口調から分かった。
「……ごめん。もっとよく考えて行動するべきだった。女の子を一人にするべきじゃなかった」
飲み物を買いに行くと彼女が言った時、一緒に付いて行くのを選ぶべきだった。
彼女一人を残し、離れるべきでは無かった。
「ううん……。私が気が付くべきだった。もっと考えるべきだったのは、私の方。風紀委員なら、ああ言う最悪な人もいることを想定するべきだったよね」
「……もう一つ、謝りたいことがあるんです」
「謝りたいこと?」
何のことかよく分からない様子で、白石さんは僕を見る。
「……僕も、白石さんの嫌がることをしてましたよね。自分で言ってて嫌悪感を覚えたんです。人の弱みを握ってセックスに持ち込むなんて、それこそ女子が嫌がることなんじゃないかって意識が頭に浮かんで……」
「……」
「僕もあのナンパ男とそう変わらない。女性を性的に利用しようとする打算と欲望で動いたって点では」
僕も一時の性欲に突き動かされて、彼女に無理強いをしてしまった。
白石さんと僕は今は良好な関係だ。だけど、その慣れ始めは人には言えない代物で、彼女が遺恨を感じていてもおかしくない。
そのことが気がかりだった。
僕も最悪な人間だ。
「違うよ」
ピシっと白石さんが言い放つ。
思わず顔を上げると、白石さんは真剣な眼差しで僕のことを見つめていた。
「倉部くんは、確かに私の弱みを握った。そしてそれを突きつけてきた。でもね、君が「ヤりたい」って言ってきた時の状況、覚えてるかな」
「状況……?」
どんな感じだったっけ。今は記憶の四隅が変色しかけて、朧な像しか浮かばない。
「あの時はね。私の方から提案したの。『どんな言うことでも聞きますから』って」
「……そうだったっけ」
いや、確かにそうだった。
確かに僕は彼女にダイレクトメールでアプローチをかけた。
でもその時は性的なこととかは考えていなくて、純粋にあのアカウントが、白石さんのものなのかを知りたいという好奇心からだった。
邪な考えが浮かんだのは、何でも言うことを聞くという提案をされた時だった。
「……でも、人は選ぶことが出来る。もっと穏便で健全なことを頼むことは出来たはずなんだ。課題を代わりにやって欲しいとか、そういうのを……」
「……たぶんそれじゃ、私は納得してなかったと思う」
「納得って、どういう……」
「本当にこの程度で黙っていてくれるのだろうかって、要求を訂正させていたと思う。というかそもそも、私は罰を求めていたのかも」
「罰……」
「確かに私、初めてはロマンチックなものが良かった。けど君にあのアカウントを見つけられて、セックスさせて欲しいって頼まれた時ね、確かに自分の身体でも差し出さなければいけないと思った。風紀委員があんなことしていたら、相応の罰が必要だと思った」
「……」
「でも君は優しくて、私を労わってくれて……私には罰には思えなかった。気が付いたら私は君の入っているお風呂に立ち入っていた。『お前は淫乱だ』って蔑んで欲しかった。そうすることで、私は自分の罪を自覚出来ると思った。でもそこでも君は恋人という関係を結ぶことを提案してきた」
確かに彼女が風呂に入って来た時、驚く気持ちはあった。
けれど自制心が、彼女に対してのそれ以上の手出しを食いとめた。
「一緒に裸でお風呂に入ってる時、私を押し倒すことも出来たかもしれない。避妊なんて考えず、私のことをめちゃくちゃにして、欲望の悪意の種を注ぎ込むことも出来たかもしれない。でも、君はそれをしなかった。その時、君が良い人なんだなってことが分かった」
「だいぶデリカシーの無いことは言いましたけどね……」
「本気では言ってないことは何となく分かった。言う前にそもそも行動に移すことも出来たはずだけど、しなかったしね。話を戻すけど……それでね。君の様子を見てみたいと思った」
「僕の様子……」
「前にも言ったけど、『君が初めての人』だから。脅しているのに優しく私の初めてを奪ってくれて、甘えても良いかなと思えるようになった人だから。ツイッターでも彼氏が欲しいって言ってたよね。君なら大丈夫かなって思えたの。……正直、君にならもっと抱かれてもいいのかなってちょっと思った。肉体の相性も良かったし。でも風紀委員としての立場を考えると、『セフレ』より彼氏の方が言い訳が利く。セックスだけの関係ってのは、誰かにバレた時にもうごまかしが利かなくなる。だから私はセフレは嫌だって言った。……他人の目を気にする、臆病者だったから」
「白石さんは臆病じゃないです。いつも堂々としていて、皆の導となろうとしていて……」
「私はね。真面目なだけで強くない」
白石さんが儚げに言う。その後続けてこう言った。
「厳しくすることで自分の弱さを覆い隠そうとしているだけだから」と。
「人に強く言うために成績伸ばして、人から恨まれれば人並みに傷ついて、それでストレス発散のためにエッチな裏垢作って……弱いですよ。私は」
「……弱くても良いじゃないか。白石さんが弱いなら、僕はもっと弱い。勉強もそんなに出来ないし、セックスの要求を通したし……」
「……じゃあ弱いのはお互い様ってことで良いと思う。倉部くんも私も、自制が効かなかった。お互い罪人ということで」
お互い罪人、か。
「何か、いいね。ちょっと格好良い。白石さんと秘密を共有しているみたいで」
「みたい、じゃなくて実際共有してるでしょ。……周りには言わないでよね。倉部くん以外にあのアカウントのこと知られる覚悟は出来てないし」
「僕も同じだ」
「何か湿っぽくなっちゃったけど、倉部くんは気に病むことは無いってことを言いたかった。私も同じく責任を抱えているんだから。倉部くんが気負う必要は無い」
「……なんだか心が軽くなった気がする。……ありがとう」
「彼氏を労わってあげるのは、彼女の務めだから。それにね」
白石さんは僕の手を握る。僕の指に自分の指を愛おしそうに絡ませながら、その一言を喋った。
「助けてくれた時の倉部くん。凄く格好良かったよ」
冷たい輪郭の頬を綻ばせながら、彼女はそう告げてくれた。
人々が水に涼み、遊び、体を動かすその施設。
僕と白石さんは電車に乗って、郊外にある巨大なレジャー施設に来ていた。
入り口で受付を済ませ、僕らは更衣室に行くために一旦別れて行動した。
やがて僕は着替え終わると、更衣室から出て白石さんを待つ。
男の僕よりも、白石さんの方が準備に時間が掛かる。
女子更衣室の近くでぼんやりと立っていると、しばらくして白石さんが中から出てきた。
彼女の姿に、一瞬僕は眩暈のようなものを覚える。
先日購入した、少し大人びたシンプルなビキニ。白石さんのシャープな体型によくマッチしていて、どこかスマートな格好良さすら感じられる。
トップスの首と背中の二点で止めるデザインは、適度な色気はあるけれど過激さは控えめで、それが白石さんの雰囲気に適合していた。
色素の薄い肌に、ビキニの黒のコントラストがよく映えて美しい。
彼女の釣鐘型の、やや上に突き出した輪郭の胸が水着の中で膨らんでいて、そのシルエットが彼女のすらっとした肉体にメリハリを与えていた。
彼女の全裸は見たけれど、水着を着たそれはまた別の魅力を肉体に伴わせていて、目の保養になるかのようだった。
綺麗だ。
「お待たせ。ごめんね。ちょっと手間取っちゃって」
「いや、そんなに待ってないから大丈夫」
「私の水着、どうかな。変なところとか無い?」
「全く無い。凄くよく似合ってる」
「ありがと。倉部くんも、中々似合ってる」
僕らはそんなやり取りの後、早速泳ぎに行くことにした。
***
空は夏色に晴れ渡っていた。
いい天気。絶好のプール日和の午後だった。
水を湛えた広々とした屋外プールはそんな空模様と同じ鮮やかさを持っていて、夏の日差しを浴びてポロポロと崩れるように輝いている。
巨大なウォータースライダーがプールに向かって伸びていて、きゃあきゃあ言いながら子供が滑っていくのが見えた。
夏休みだからだろう。利用客はそこら中にいて、子供を始めとした人の声で喧騒としていた。
なんだか群れるペンギンみたい。
その利用客らを見張っている体格のいい監視員らは白い監視台の上に座っていて、どこか退屈そうにしていた。
人が多いし、白石さんとはぐれない様に気をつけないとな。
「倉部くん。水に入る前に、ちゃんと準備運動しなきゃ駄目だからね」
「ああ、はい。しようか」
小学生の頃、体育のプールの授業で「準備運動しないと心臓が麻痺しちゃうぞ」と教師に脅されたのを思い出しながら、僕らは屈伸やら背伸びをして体を動かす。
体操している白石さんを横目で見ていると、彼女の身体は本当にスラリとしているなという感想を持った。
痩せ型の体型で、身体の輪郭が滑らかなカーブを描いていて、颯爽たる美脚が目を引いた。
腕も細長くて、脂肪の少ない腹部は腹筋が薄らと浮き上がっている。
尻は小さく、陰影が控えめだったけど、筋肉が体表に出ているためか窪みの線が伸びていて、それが妙に色っぽい。
スマートな身体。グラマラス的な肉感的な魅力とは正反対のボディだったけど、その中性的な身体は僕の好みだった。
体操が終わると、僕らはプールへと入っていく。
足先、踵、腿、膝。冷水に潜らせていくと、冷たさが火照った身体を塗り替えていくような感覚がして気もちよかった。
きりっとした冷たさが、心を清涼にさせる。
白石さんもそれは同じようで、「気持ちいいね」と僕に言う。
頭まで潜ってから顔を出すと、夏の茹だる熱気から僕らは解放されたかのようだった。
「ふぅ……生き返る……」
「倉部くんおじいさんみたいな反応だね」
「まあ、プールではしゃぐ歳でも性格でも無いからね」
「君なら大丈夫だと思うけど、あんまり節度を弁えない行動取らないでね? 学校の名前に傷が付くような行動は慎むこと。この情報社会ではどんな些細な醜聞でブランドが崩壊するか分からないんだから、モラルある行動を……」
白石さんはそこで喋るのを止める。
平手で叩かれたように頬が赤くなって、首を項垂れる。
何で彼女がそんな反応をしたのかは、何となく分かった。
止めておけばいいのに、僕は理由を指摘する。
「……あんな裏垢作ってた人が言えたことじゃないですよね」
「……うん。……もう、消したから……」
僕だけが彼女の発言力の低下を認識できているんだなぁと思いつつ、彼女のことを慰めてあげるのだった。
***
それから僕らは二時間ほど泳いでいた。
プールを一周してみたり、鬼ごっこをしてみたり、ウィータースライダーを滑ったり。
ウォータースライダーは白石さんは初めは遠慮していたけれど、いざ滑ってみたらとても気に入ったらしく、何度も階段を登って滑り下りてを繰り返していた。
「何度も滑るもんだから水着の尻の部分が磨耗するんじゃないかと思いました」
僕の軽口に白石さんは軽く睨んでくる。
今は日陰で休憩中。
湿度は避けられないけれど、午後でも照りつける日差しの黄熱からは身を守ることが出来る。
「しかし結構泳いだな……筋肉痛にならないか不安だ」
「倉部くん、文科系って体つきしてるしね。まあ私も運動ってそんなに得意じゃないけど」
お互い本当に普通という感じの泳力だった。学校の水泳の時間でとりあえず恥ずかしくない程度の泳ぎは出来るけど、そんなに速度も速くない。
白石さんは学力は高いけど、運動は並程度の成績だ。僕とさほど変わらない。
「あー……飲み物無くなっちゃった……」
自分の赤色の水筒の中を覗きながら、白石さんが「やっちゃったな……」というような表情をしながら言う。
「無理ないですよ。予想より暑くなったし、飲む分量見誤っても仕方ないです」
「買って来ようかな……でも、お金はロッカーに預けてあるからちょっと面倒なのよね……」
確かにここから更衣室まではちょっと時間が掛かる。
僕はここで待ってるから、買いに行ってもいいですよと言おうと思った時、ある考えが頭を過ぎる。
いや、ここは白石さんからの株を上げるチャンスなんじゃないか? 僕が代わりに飲み物を買いに行けば……。
「……僕が買いに行きますよ。白石さんも疲れてるだろうし、男の僕が行きます」
「えっ。大丈夫だよ。自分で買えるし、そこまで疲れてはいないし」
「僕も丁度飲み物補充したいなと思っていたし、自分の分も買うなら丁度いいと思う。だから僕が行ってきます」
「……じゃあ、お願い。後でお金は払うから」
「よし。行ってきます。白石さんは何が飲みたいです?」
「……麦茶かな。無かったらスポーツドリンク」
「分かった。行って来ます」
僕は立ち上がり、更衣室がある建物の方へと歩き出す。
……この時僕は、もっとよく考えるべきだったと思う。
こういうプール施設で女性を一人にするべきでは無いことを、僕は学ぶこととなった。
***
男子更衣室で自分の財布を回収すると、手ごろな自販機で飲み物を買う。
白石さんの分の麦茶。自分の分のリンゴジュース。
両手に500mlのペットボトルを持ち、白石さんの場所まで歩いていく。
あんまり待たせてはいけないなと考えつつ、彼女のいる日陰の場所に少々急ぎ足で向かった。
何かがおかしいことに気が付いたのは、白石さんのいる日陰の近くまで来た時だった。
白石さんはいた。僕が一旦別れたのと同じ場所にいて、同じようにその場所に座っていた。
もう一人いた。
彼女が座る前に立っていて、何やら楽しげに話をしている。
大学生だろうか。明るい髪をしていて、いかにも遊び慣れていそうなオーラを出して、僕が苦手とするタイプの人間だった。
誰だろう。白石さんの知り合い? いや、ああいうチャラいタイプの男は、白石さんは一番目の敵にする。となるとやはり……。
もう少し近づいてみると、会話が耳に入る。
辺りは喧騒としていたけど、結構大き目の声で二人は会話しているので、聞き取ることは出来た。
「ねぇ。君一人だよね? 俺と一緒に遊ばないの?」
「さっきから言ってますよね? 友達を待ってるんです」
「いいじゃん別に。君みたいな可愛い子、放っておけないし」
「困ります。申し訳ありませんが、お断りします」
白石さんの目は険があって、凛々しくて、真っ直ぐ男を見据えている。
でも、その足は微かに震えていた。
「君たぶん高校生だよね? いいスタイルしてるなぁ」
「私はこれ以上貴方と関わりたくないんです。もう一度言いますけど、人を待っているんです」
ナンパだ。
どう考えても助けに行くべきだ。
でも、気が引ける。正直、ああいう人と関わりたいとは思えない。
でも、何とかしないと……。
「色白だし美人だし可愛いよねぇ。化粧無しでそれはヤバくね? 自分の可愛さ、ぶっちゃけ自覚あるでしょ?」
「いい加減にしないと、人呼びますよ?」
「怖いなぁ。でもそういう所も可愛いよ。一緒にゆっくり泳がない? ほら、立って」
「っ……! 触らないでくださいっ」
「大丈夫だって。カップルがいちゃついてるようにしか見えないから」
……行くしかない。
勇気を振り絞り、僕は白石さんの所へと近づく。手に持つペットボトルが、やけに冷たく感じられた。
「すみません。その子は僕の連れなんです」
男と白石さんが、僕の方を見る。
「倉部くんっ」と白石さんは声を出す。彼女の顔が、少し明るくなったのが分かった。
「誰だお前」とでも言いたそうな顔を男は一瞬したけど、すぐ何か察したようで口を開く。
「ああ~。君がこの女の子の待ってる人か。ごめんね。この子可愛くてさぁ」
「嫌がってるじゃないですか。ナンパなら他所でやってください」
嫌がっている。という言葉に、僕は不思議と自己嫌悪のようなものを覚えた。
「悪い悪い。君この子の彼氏? いい子連れてるじゃん。最近いつヤった?」
「……貴方には関係ないことです」
「高校生なら猿みたいにやっちゃうよねぇ。俺も元カノとヤりまくったよ。君たちもそうなんでしょ」
「……白石さん、行こう」
僕はそう言って、無理やり会話を切り上げようとする。白石さんは立ち上がって僕の方に駆け寄って来て「行きましょう」と言ってきた。
僕は胸と左腕で二本のペットボトルを挟み込んで右手を空けると、彼女の手を取って、駆け足でその場を去る。
完全に脈無しだと判断したのだろう。男は僕らを追いかけては来なかった。
***
更衣室のある建物へと逃れた僕らは、一難去ったことにとりあえず安堵した。
「ありがとう。君が来てくれて助かった」
白石さんはそう言って微笑む。
本当に感謝しているのが口調から分かった。
「……ごめん。もっとよく考えて行動するべきだった。女の子を一人にするべきじゃなかった」
飲み物を買いに行くと彼女が言った時、一緒に付いて行くのを選ぶべきだった。
彼女一人を残し、離れるべきでは無かった。
「ううん……。私が気が付くべきだった。もっと考えるべきだったのは、私の方。風紀委員なら、ああ言う最悪な人もいることを想定するべきだったよね」
「……もう一つ、謝りたいことがあるんです」
「謝りたいこと?」
何のことかよく分からない様子で、白石さんは僕を見る。
「……僕も、白石さんの嫌がることをしてましたよね。自分で言ってて嫌悪感を覚えたんです。人の弱みを握ってセックスに持ち込むなんて、それこそ女子が嫌がることなんじゃないかって意識が頭に浮かんで……」
「……」
「僕もあのナンパ男とそう変わらない。女性を性的に利用しようとする打算と欲望で動いたって点では」
僕も一時の性欲に突き動かされて、彼女に無理強いをしてしまった。
白石さんと僕は今は良好な関係だ。だけど、その慣れ始めは人には言えない代物で、彼女が遺恨を感じていてもおかしくない。
そのことが気がかりだった。
僕も最悪な人間だ。
「違うよ」
ピシっと白石さんが言い放つ。
思わず顔を上げると、白石さんは真剣な眼差しで僕のことを見つめていた。
「倉部くんは、確かに私の弱みを握った。そしてそれを突きつけてきた。でもね、君が「ヤりたい」って言ってきた時の状況、覚えてるかな」
「状況……?」
どんな感じだったっけ。今は記憶の四隅が変色しかけて、朧な像しか浮かばない。
「あの時はね。私の方から提案したの。『どんな言うことでも聞きますから』って」
「……そうだったっけ」
いや、確かにそうだった。
確かに僕は彼女にダイレクトメールでアプローチをかけた。
でもその時は性的なこととかは考えていなくて、純粋にあのアカウントが、白石さんのものなのかを知りたいという好奇心からだった。
邪な考えが浮かんだのは、何でも言うことを聞くという提案をされた時だった。
「……でも、人は選ぶことが出来る。もっと穏便で健全なことを頼むことは出来たはずなんだ。課題を代わりにやって欲しいとか、そういうのを……」
「……たぶんそれじゃ、私は納得してなかったと思う」
「納得って、どういう……」
「本当にこの程度で黙っていてくれるのだろうかって、要求を訂正させていたと思う。というかそもそも、私は罰を求めていたのかも」
「罰……」
「確かに私、初めてはロマンチックなものが良かった。けど君にあのアカウントを見つけられて、セックスさせて欲しいって頼まれた時ね、確かに自分の身体でも差し出さなければいけないと思った。風紀委員があんなことしていたら、相応の罰が必要だと思った」
「……」
「でも君は優しくて、私を労わってくれて……私には罰には思えなかった。気が付いたら私は君の入っているお風呂に立ち入っていた。『お前は淫乱だ』って蔑んで欲しかった。そうすることで、私は自分の罪を自覚出来ると思った。でもそこでも君は恋人という関係を結ぶことを提案してきた」
確かに彼女が風呂に入って来た時、驚く気持ちはあった。
けれど自制心が、彼女に対してのそれ以上の手出しを食いとめた。
「一緒に裸でお風呂に入ってる時、私を押し倒すことも出来たかもしれない。避妊なんて考えず、私のことをめちゃくちゃにして、欲望の悪意の種を注ぎ込むことも出来たかもしれない。でも、君はそれをしなかった。その時、君が良い人なんだなってことが分かった」
「だいぶデリカシーの無いことは言いましたけどね……」
「本気では言ってないことは何となく分かった。言う前にそもそも行動に移すことも出来たはずだけど、しなかったしね。話を戻すけど……それでね。君の様子を見てみたいと思った」
「僕の様子……」
「前にも言ったけど、『君が初めての人』だから。脅しているのに優しく私の初めてを奪ってくれて、甘えても良いかなと思えるようになった人だから。ツイッターでも彼氏が欲しいって言ってたよね。君なら大丈夫かなって思えたの。……正直、君にならもっと抱かれてもいいのかなってちょっと思った。肉体の相性も良かったし。でも風紀委員としての立場を考えると、『セフレ』より彼氏の方が言い訳が利く。セックスだけの関係ってのは、誰かにバレた時にもうごまかしが利かなくなる。だから私はセフレは嫌だって言った。……他人の目を気にする、臆病者だったから」
「白石さんは臆病じゃないです。いつも堂々としていて、皆の導となろうとしていて……」
「私はね。真面目なだけで強くない」
白石さんが儚げに言う。その後続けてこう言った。
「厳しくすることで自分の弱さを覆い隠そうとしているだけだから」と。
「人に強く言うために成績伸ばして、人から恨まれれば人並みに傷ついて、それでストレス発散のためにエッチな裏垢作って……弱いですよ。私は」
「……弱くても良いじゃないか。白石さんが弱いなら、僕はもっと弱い。勉強もそんなに出来ないし、セックスの要求を通したし……」
「……じゃあ弱いのはお互い様ってことで良いと思う。倉部くんも私も、自制が効かなかった。お互い罪人ということで」
お互い罪人、か。
「何か、いいね。ちょっと格好良い。白石さんと秘密を共有しているみたいで」
「みたい、じゃなくて実際共有してるでしょ。……周りには言わないでよね。倉部くん以外にあのアカウントのこと知られる覚悟は出来てないし」
「僕も同じだ」
「何か湿っぽくなっちゃったけど、倉部くんは気に病むことは無いってことを言いたかった。私も同じく責任を抱えているんだから。倉部くんが気負う必要は無い」
「……なんだか心が軽くなった気がする。……ありがとう」
「彼氏を労わってあげるのは、彼女の務めだから。それにね」
白石さんは僕の手を握る。僕の指に自分の指を愛おしそうに絡ませながら、その一言を喋った。
「助けてくれた時の倉部くん。凄く格好良かったよ」
冷たい輪郭の頬を綻ばせながら、彼女はそう告げてくれた。
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