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対面座位で確かめる愛
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勉強。
学生なら避けては通れない事柄。
大抵の学生は煙たがっているそれに、今の僕は悩まされていた。
来年には本格的に受験を考えなくてはいけない時期になる。その前に知識を蓄えて、その戦争に備えなければいけないのだが、僕は生憎それほど頭が良いわけではなかった。
落ち零れというほどでもないが、優等生とも言えない。そんな学力。
それ故夏休みの宿題もまだ終わっていなかった。異性との性交渉に興じている場合では無いのだ。将来のことをそろそろ考えなくてはいけない。
だから僕は机に齧りついていた。国語。数学。英語。物理。
夏季休暇中にやるように命じられていた課題を朝起きてから必死に解いている。夏休み前半は少しさぼりすぎていたなと後悔しながら、問題の羅列に向き合っていた。
課題は半分程度は終わっている。しかし偏差値は高めの進学校故、量も多いし難易度も高かった。
「くそっ……難しいな……」
教科書と問題を交互に見て頭を捻る。書いては消しを繰り返し、シャーペンの芯も消しゴムもどんどん磨り減っていく。
時刻は十三時。朝起きてからもう五時間は机の前にいる。
頭が痛い。自分の無力さを否応にも実感させられる。
冷房を入れているというのに何だか体が熱く感じる。少し気が張り詰めているのが自分でも分かった。
少し頭を冷やそうかな。
そう考え、寝転がって休憩しようと思った時だった。
ポケットの中に仕舞っていたスマホのバイブが起動する。反射的に手を突っ込んで、その端末を取り出し画面を見た。
牧本瑠璃葉。ラインの通知だった。
通知をタップして、ラインの画面を呼び出す。
可愛らしいスタンプを添えて、こんなメッセージが送られてきていた。
『こんにちは! 今日も暑いですね。今、どんな調子ですか?』
性交渉のお願いだろうか。ムラムラしなくもないが、今はそんなことをしている場合では無い。
こんな文を打って、それを彼女に送信した。
『勉強が忙しくて尻に火が付いています。ちょっと今日は会えないかも』
これで良し。
スマホをスリープモードにすると、それを再びポケットに仕舞う。
だがその直後に通知が鳴った。早いな。
無視しようかとも思ったが、やっぱりそれは可哀想なので画面を見る。
『もしよければ、私と一緒に勉強しませんか? 一つ下の学年なら教えられるかもしれませんし、私自身も過去に習ったことを復習したいので』
牧本さんと勉強。結構良い提案だなと僕は思った。
彼女の方が僕より十は偏差値が高い。頭があまりよくない僕があれこれ悩むより、知識のある人間に手を貸してもらったほうが捗るかもしれない。
そう考えた僕は、早速返信した。
『お願いします。牧本さんに手伝ってもらえるなら、こんなに心強いことはありません。どこで勉強しますか?』
送信してから一分程度で返事は返って来た。画面の文字を見る。
『県立図書館に来れますか? あそこの二階は学習室になっていて、自由に勉強や読書ができるんです』
県立図書館なら自宅からそう遠くない。自転車で十分もあれば着く。
「行けますよ」というメッセージを送ると、そこで会いましょうと返事が返って来た。
また彼女に会える。ワクワクしてきた。
よしっ、と気合を入れると、机の上に広げていた教科書やノート、提出されていた課題を僕は鞄に仕舞い始めた。
***
よく照りつける日差しの中、僕は自転車を漕いで目的地に向かった。
夏の太陽は相変わらず肌を炙ってきたが、我慢して前に進む。
図書館へは予想していたのと同じ程度の時間で着いた。
駐輪所に自転車を置き、施設の玄関口に向かう。
牧本さんは既に到着していた。遠めからでもシルエットだけで分かるほど、彼女は引き締まった身体つきをしていた。
「お待たせしました。すみません。待ちましたか?」
「ううん。私もさっき来たばっかりです」
牧本さんは手を軽く振ってそう答える。
彼女はさほど日焼けを気にしない人なのか、意外と露出の多い服装をしていた。
腰を艶かしく際だたせるスパッツのすぐ下には程よい褐色の太股が見え、それが妙に色っぽい。
「暑いですし、中に入りましょう。きっと空調も効いてるし」
「ええ。そうですね。荻野さん、お昼は食べてきました? ここ、飲食禁止なんで」
「家で軽く食べてきましたよ。……カップラーメンですけど」
そんな会話をしつつ、図書館の中に入る。中はひんやりとしていて気持ちよく、生き返る心地がした。
中は『図書館』と聞けば万人が想像する通りの、極一般的な内装だった。
一生掛かっても読みきれないであろう本の数々がずらりと書架に並べられていて、僕は少し圧倒される。
司書の方々が受付をしているカウンターの横を通り過ぎ、階段を上がるとそこが学習室だった。
静かな空間だった。並べてある席は何人かの人が既に利用していて、辞書を手元に何かを書き取っていたり、分厚い本を読んでいる人らがいる。
「あそこの端っこの席を使いましょうか」
牧本さんが小声で僕に言った。指差した方には丁度開いている机があって、僕ら二人が勉強道具を広げて利用できそうだった。
いいですねと返答し、僕たちはその席へと移動する。
***
「……終わったぁ~」
周囲の迷惑にならない程度の声音で僕は歓喜の声を上げる。
夏休みの課題全てが終わった。受験勉強はしなくてはいけないが、半分は自由になれたことに、僕の心は浮き足立っていた。
時計を見ると、勉強を開始してから五時間が経過していた。随分集中していたものだ。
「おめでとうございます。私も良い復習になりました。荻野さん、凄く頭良いじゃないですか」
牧本さんはクスリと笑いながら、控えめな音量の声でそう言う。
「牧本さんの教え方が上手かったからですよ。教える側は教える内容の三倍の知識が必要って聞いたことがありますけど、僕なんか比べ物にならないくらい頭良いんですね」
お世辞ではなかった。彼女の教示は非常に的確で、難しい内容もかなり噛み砕いて教えてくれた。
僕の脳みそが、乾燥したスポンジのような猛烈さで知識を吸収したような気がする。
彼女は国語や数学、英語や物理に至るまで潤沢な教養を持っていて、その博識さは僕の勉強に極めて役に立った。
そんな該博な彼女が羨ましくなる。きっと学校でも良い成績を取っているのだろうな。
「私よりも成績の良い人はいっぱい居ますよ。荻野さん、凄く飲み込みが早いから、私なんてすぐ追い抜いちゃうかも」
まさか。と僕は心の中で頭を振る。
一時間程度教えを受けただけで、使っているノートの中身を見ただけで彼女の博雅を痛感させられた。
勝てる気がしない。きっと大学も、僕の志望しようとしている場所より遥かにレベルの高い場所を狙っているのだろう。
「さて、と。そろそろ引き上げますか?」
牧本さんは机に広げた自分のノートを畳みながらそう言う。
頭を長時間激しく使って疲れ気味だったため、僕はその提案に賛同する。
勉強道具を鞄に仕舞い終えると、僕らは長時間利用した学習室を後にした。
***
自動ドアを通り抜けて図書館の外に出てくると、外は夕焼けで橙色に染まっていた。
夏だから陽は長い。昼間の灼熱はある程度は鳴りを潜めて、他の季節の時に想起する概念的な魅力のある夏を演出していた。
「お疲れ様でした荻野さん。また機会があったら、一緒に勉強しましょう」
「ええ。今日はありがとうございました」
僕はお互いに軽く頭を下げる。学年的には先輩後輩の関係だが、互いに敬語をメインにして話している通り、対等の関係のつもりで接していた。
他校の者同士で先輩後輩という力関係があるのかは分からないが。
「……今日ゴム、持ってきてないですよね?」
牧本さんは親指と人差し指で輪っかを作り、僕の目の前で揺らしてみせた。
ピストンの暗喩だ。
この子は隠れビッチなのだろうか。意外と性に対して奔放だなと思う。他の男に援助交際でも持ちかけているのだろうか。
「あっ。一応言うけど、援助交際なんてやってませんよ? こんなことするの、荻野さんにだけなんで」
心を読まれたのだろうか。エスパーか? と僕は思った。
ゴムは実はと言うと持っていた。何かあった時のために、財布の中に入れていたのだ。
でも何で僕に対して性交渉を持ちかけてくるのだろうか。何か裏があるのか。
「何で僕とヤりたいんです? 美人局と言うわけじゃなさそうだし」
へへへと照れた顔を牧本さんは見せ、こう答えた。
「最初は鍵を拾ってくれた荻野さんに恩返しのつもりも兼ねてやったんですけど、何というか、その……荻野さんのお、おちんちんが忘れられなくて……」
「一線を越えて肉体関係まで持ってしまった相手の性器の呼び方に、何で今更言葉を詰まらせるんですか」
「言葉にするのは何だかちょっと恥ずかしいし……」
僕のペニスを気に入ったのか。
やっぱりビッチなのだろうか。
「あっ、誤解しないでくださいね! 性的なこと以外にも、荻野さんと一緒にいると何だか安心できるんです。弟……というよりかは、双子の姉弟になったみたいで……私、一人っ子なんですけど」
「僕も一人っ子ですね」
安心できる。というのは僕も同じ意見だった。
彼女の引き締まり、恵まれた豊かな肉感も確かに魅力的だったが、一緒にいると馬が合うような感覚がするのだ。
彼女とは恋人という関係ではまだない。友人と呼ぶには少々度をすぎた肉体関係を結んでしまっている。
「セフレ」と呼ぶのが最も適切な気もするが、肉体だけではなく、どこか精神の面でも相性がいいような気がする。
「まあ、凄く気が合うということで! それで、どうします? すぐ近くに公園ありますけど、お互いスッキリしませんか?」
「……いいですよ。ゴム、ありますし」
やった。そう牧本さんはそう嬉しげに呟くと、こっちですよと僕の手を引く。
その健康的な色をした手に誘われて、僕は彼女の行く方へと歩みだした。
***
その公園には誰もいなかった。日差しが柔らぐ時刻とはいえ、やはり暑いことには変わりがないからだろう。
放置された遊具が寂しげに地面に影を落としている。
僕らは公衆トイレの男子トイレの個室に入ると、内側から鍵を掛けた。便器の種類は洋式だった。
「牧本さんは今日はどんな体位にします? この前と同じバックがいいですか?」
「うーん、そうですね……」
彼女は少し俯いて、考える仕草をする。
考えはすぐに纏まったようだった。
「折角ですし、対面座位ってのしませんか? ほら、洋式で座れますし」
「対面座位か……」
お互いに密着できるその体位。深々と性器を埋められるやり方。その様子を想像して、僕の興奮の度合いが更に高まる。
他に案もないし、それでいこう。
「いいですよ。……服、脱ぎますか」
僕らは以前と同じように下半身を露出させ始める。
服がかさ張るので、全身を脱ぐのは止めておいた。
「やっぱり荻野さんのちんちん、大きいですね……この前これが全部私の中に入っちゃったんだ……」
改めて確認するように彼女は言う。僕の性器は怒張して、今にも裂けそうなくらいだった。
一度セックスをしているとはいえ、やはり高校生の肉欲はそんな「慣れ」で治まる物ではない。
牧本さんの秘穴からはねっとりとした愛液が漏れ出ていた。薄く濁ったそんな淫蜜が、陸上部生活で肉付きのいい太股を伝って流れる。
「すっかり出来上がってるじゃないですか。愛撫、いらないんじゃないですか?」
「でも、この前弄ってくれた奴、気持ちよかったなぁ……今回もやってくれますか?」
「いいですよ。まず先にコンドーム付けますから」
ゴムを肉々しい自分の棒にはめ込んでから、僕は牧本さんの性器の前にしゃがむ。
この前と同じようにクリトリスを指で刺激しようと思ったが、少し思いついたことがあった。
「この中に指、突っ込んでもいいですか?」
「え? ……い、いいですよ」
僕の突然の提案に少し困惑しつつ、彼女は許諾してくれる。
では失礼してと、僕は彼女の淫靡な割れ目を親指と人差し指でで開いてみた。
くぱっと軽い音を立てて、彼女の内側が暴かれる。
薄桃色の柔らかそうな肉。蜜に濡れててらてらと光ったそれ。
猛烈な色気と嫌らしさを放射して、酷く取り返しのつかないことをしているような気分にさせられる。
「さ、流石に恥ずかしいですね……」
牧本さんの上ずった声が聞こえる。顔を見上げて確認はしていないが、きっとその頬は紅潮しているのだろう。
「指、入れますね」
人差し指を肉壺に沈めていく。侵入してきた僕の指という異物に反発して、膣が強く締め付ける。
くいくいと内側で指先を動かすと、彼女の身体が刺激に反応して震えた。
「んっ♡何か変な感じ」
愛液が一層強く漏れ出た気がする。気持ちいいですかと聞いてみると「ちんちんとは違う感触だけど、気持ちいいですよ」との感想が返って来た。
僕はもう少し攻めたことをしてみたくなった。
途中まで入れた指を引き抜くと、指で内面を暴いた状態のまま、僕は牧本さんの性器に顔を更に近づける。
少し抵抗はあるが、意を決してそれを実行した。
「えっ……何してるんです……?」
牧本さんは驚いたような調子でそう言った。何をしたのかというと、彼女の膣肉を舐めてみたのだ。
「ちょっとやってみたくなって……」
やりすぎたかなと少し後悔する。彼女の体液の味が舌の表面で蟠っている。
塩辛かった。
「いや、荻野さんなら構わないですけど……。ちょっと驚きました」
「僕も性欲旺盛なんですよ」
そうは言ってみたものの、許可も取らずに少し攻めたことをしすぎたなと反省する。
「……あの……お願いしてもいいですか?」
「なんですか?」
一瞬彼女は躊躇いの間を見せたが、勇気を出したのかその言葉を口にする。
「それならあそこにキス、してくれませんか……?」
なんですって。
「荻野さんに私の身体、もっと愛してもらいたいし……駄目、ですか?」
「やらせてください」
即答だった。さっき反省したのは何だったんだよと、心の中で自分を嘲笑う。
口を尖らせ、牧本さんの秘裂に軽い接吻をした。
私の中にもしていただけますかと頼まれたので、指でその谷を開いてそのようにする。
再びあの濃密な塩気が、僕の口内を包み込んだ。
「……そろそろ本番しましょうか?」
僕がそう訊ねると、牧本さんはこくりと頷いた。お互い身体が強く熱を帯びている。
正直僕自身も気持ちよくなりたかった。
僕はトイレの便座の蓋を閉めると、その上に座る。
自分のペニスは恥ずかしくなるほど強く起立していて、上から来るものを貫きそうだった。
「じゃあ、挿れますね……」
牧本さんはそう言うと、僕の欲望の塊の上に腰をゆっくりと落としていく。
性器と性器がゴム越しに触れ合い、気を抜くともう射精しそうだった。
血管が浮き出た自分の分身が、彼女の中に沈み込んでいく。牧本さんの膣内は熱かった。
やがて根元までペニスが彼女の中に挿入される。狭い膣が、力強く僕のことを締め付けていた。
と、牧本さんが僕の胴体に両手を回した。体重と彼女の腕力でがっしりとホールドする形になって、簡単には逃れられそうにない。
彼女の一対の乳房が僕の胸板に押し付けられ、柔らかく潰れる。
お互いの顔がくっ付きそうなくらい近い。彼女と僕の呼吸が混ざり合う。
牧本さんはニヤニヤと、悪戯っ子のような笑いを顔に貼り付けていた。
「どうです? 興奮しますか?」
「そっちがその気なら、僕も離しませんよ」」
僕の側も彼女の胴に手を回す。しっかりと固定され、愛を確かめ合う形になる。
「私が動きますね……?」
そう言うと、彼女は腰を上下に動かし始めた。
摩擦で僕たちの肉が擦れあい、それが波のような快楽を断続的に生み出す。
「あっ♡あん♡そこ、そこ駄目っ」
僕のペニスの雁の部分が、彼女の弱い部位を刺激しているようだった。
膣に交接具がしっかりとはまり込んでいる。ぴったりと凹凸がかみ合っているような感覚がして、身体の相性がいいとはこういうことを言うんだなと思った。
そんなことを考えていた時、唐突に彼女に唇を奪われた。
突然のことに反応できなかった。彼女の舌が僕の口内に侵入してきて、唾液と唾液が混ざり合う。
「んっ♡くちゅ♡んまっ♡」
牧本さんの舌が僕の舌に絡みつく。濃密な接吻をお望みなようだった。
さっき僕は彼女の性器を舐めたんだけどいいのかなと思いつつ、ナメクジの交尾のように彼女の舌の根を舐め回す。
心なしか、彼女の腕の締め付けが更に強まった気がした。絶対に離したくない。そんな意志を持った力だった。
彼女は猫が甘えてくるように身体を擦りつけ、生々しいほどに愛を交わす。
情欲を激しく刺激してくる艶かしい動き。男の精を搾り取ろうとする、積極的な動作。
いつまでそうしていただろうか。
先に口付けを解いたのは牧本さんの方だった。
「ぷはぁ♡苦しい苦しいっ」
「牧本さんの方からキスしてきたんじゃないか」
「ごめんなさい。一度やってみたくて」
そう答えると、再び彼女は腰を動かし始めた。
ぐちゅぐちゅと嫌らしい音を立て、快楽が増していく。
お互いの熱が交じり合う。僕らは初めから一つだったのではないかと錯覚するほど、身体と身体は馴染んでいた。
「荻野さんのちんちんっ、凄いっ♡ お腹の中押し上げられてるみたいですっ♡」
彼女の目はとろんとしていた。すっかり火が付いてしまっているらしい。
ずんずんと激しく突き入れられて、牧本さんも快楽を感じているようだった。
彼女の身体は細身で、やや筋肉質で、しかしふわりと柔らかくて、抱き心地が非常に良い。
僕の硬い陰茎が膣を押し広げると、肉壁はそれを戻そうとして強くくっきりと形が刻み込まれる。
この女の子の中を僕の形に変えてあげたい。そう思いながら、彼女の艶かしいピストンの刺激を味わった。
結合部からは蜜が溢れ、僕らの太股を静かに濡らす。
二人して肉欲に溺れ、いつまでも永遠にこうしていたいとさえ願った。
けれど、そんな淫靡な時間も終わりを迎えそうだった。
射精が近い。
「ご、ごめん。そろそろでそう……」
「あんっ♡んぁっ♡良いですよっ。この前みたいに一番奥に出しちゃってくださいっ♡」
絶頂を促すように、牧本さんの腰使いが更に強まる。秘肉を必要以上にかき回し、僕の性器をもみくちゃにする。
「うっ、出るっ……」
「あ、ああっ♡ああああぁ♡」
頭の中に火花が散るような感覚の刹那、男子高校生の煮えたぎるような濃厚な精液が、同年代の女子高生の中にぶちまけられる。
初めてのセックスの時と同じく、自分でも驚くほどの子種がほとばしった。
ゴムが破れてしまうのではないかと思うほど勢いよく体液が放たれて、それを彼女は全て受け止めてくれる。
それと同時に彼女も絶頂に達したようで、身体に抱きつく腕の力を更に強めてきた。
「ひゃん♡いやぁっ♡んぁっ!」
最初の激流のような波が去った後も、尿道に残った精液を断続的に吐き出した。
避妊具を付けていなければ、妊娠確定だろうなというような量と濃密さだ。
「凄いっ♡お腹の中、荻野さんの赤ちゃんの素で温かいです……っ♡」
ボキャブラリーが豊富だな。
ようやく射精を終えた僕は、ぐったりとしながらトイレにもたれ掛っていた。もう少しだけ、彼女と繋がっていたい。
一つになっていたい。気だるさが急に襲い掛かってきて、ゼリー状の感覚に包まれる。
全てが夢だったかのようだった。
現実感を喪失して、肌を極限まで密着させている女の子以外、何も見えない。
いつまでそうしていただろう。五分程度なのかもしれない。一時間かもしれない。
もしかしたら、ほんの数秒だけなのかもしれない。
牧本さんは腰を持ち上げ、僕らの結合を解いた。
引き抜き終えると、若く濃い精液が溜まったゴムの先端が自重でぷるんとペニスから垂れ下がる。
「はあ、はあ。今日のセックスも凄かったですね……」
「……ええ」
世界がようやく活気を取り戻しつつある僕は、そう答える。生返事にも程があるな。
牧本さんは息を切らしていた。陸上部の彼女といえど、流石に疲労困憊の様子は隠せない。
お世辞にも体力にはあまり自信があるとは言えない僕は更に疲れていた。
水を飲みたい。
傍にある自分の鞄を開けると、ミネラルウォーターの入ったペットボトルの容器を取り出し口にあおる。
生き返る心地だった。
「私も飲みたいです」と牧本さんが言ったので渡すと、ぐびぐびと結構豪快な部類に入る飲みっぷりで喉に水を流し込んでいた。
「ぷはぁ。ありがとうございます。ご馳走様でした」
間接キッスになってしまったことに気がついたが、獣のように激しいセックスや直接的な接吻をしておいて何を今更と密かに笑う。
使用したゴムを、床に置いてある小さなゴミ箱の中に捨てた。
トイレットペーパーで性器を拭き、便器に捨てて水で流す。それから服を着て、僕らの身支度は完了した。
ドアの鍵を開け、二人で個室の外に出る。トイレにも公園にも僕ら以外の利用者はやはり誰もいなくて、世界から取り残されたかのように錯覚した。
トイレに入った時よりも、陽は更に傾いていた。木々の下は既に闇が吹き溜まっている。
図書館の駐輪所まで僕らは歩いてきた。自分の自転車の鍵を解除し、サドルに尻を乗せる。
「それじゃ、荻野さん。今日は色々お疲れ様でしたっ」
「ええ……また、会いましょう」
僕は自転車を動かそうとした。これから二人で駐輪所の出口まで走らせ、そこから別々の道で帰るつもりだった。
「あのっ、荻野さん!」
牧本さんに呼び止められ、僕は反射的にそちらを向く。
振り向いた瞬間、彼女のこんがりと陽に焼けた両手が僕の頭の両側面を挟み込み、ぐっと彼女の側に引きよせた。
牧本さんの顔が僕の顔に異常に接近するのを知覚した瞬間、唇に熱く柔らかい感触を味わった。
キスをされたのだ。
「んっ……ん」
唐突なことに僕は反応できなかった。頭の中が混乱の坩堝に叩き落されたかのようで、状況が上手く把握できない。
口付けを解いたのは彼女の側だった。
「お別れのキス。今日はありがとうございましたっ」
そう言うと、牧本さんは素早く自分の自転車に乗り、そそくさと走って行ってしまった。
僕は腰が抜けて、自転車ごと地面に倒れそうになる。
周囲に誰もいなくて助かった。あんな場面を他人に見られたら、流石に恥ずかしい。誰かがいる状況では彼女も流石にやっていなかっただろうが。
あっけに取られ、彼女が消えた方向をいつまでも見ているのだった。
学生なら避けては通れない事柄。
大抵の学生は煙たがっているそれに、今の僕は悩まされていた。
来年には本格的に受験を考えなくてはいけない時期になる。その前に知識を蓄えて、その戦争に備えなければいけないのだが、僕は生憎それほど頭が良いわけではなかった。
落ち零れというほどでもないが、優等生とも言えない。そんな学力。
それ故夏休みの宿題もまだ終わっていなかった。異性との性交渉に興じている場合では無いのだ。将来のことをそろそろ考えなくてはいけない。
だから僕は机に齧りついていた。国語。数学。英語。物理。
夏季休暇中にやるように命じられていた課題を朝起きてから必死に解いている。夏休み前半は少しさぼりすぎていたなと後悔しながら、問題の羅列に向き合っていた。
課題は半分程度は終わっている。しかし偏差値は高めの進学校故、量も多いし難易度も高かった。
「くそっ……難しいな……」
教科書と問題を交互に見て頭を捻る。書いては消しを繰り返し、シャーペンの芯も消しゴムもどんどん磨り減っていく。
時刻は十三時。朝起きてからもう五時間は机の前にいる。
頭が痛い。自分の無力さを否応にも実感させられる。
冷房を入れているというのに何だか体が熱く感じる。少し気が張り詰めているのが自分でも分かった。
少し頭を冷やそうかな。
そう考え、寝転がって休憩しようと思った時だった。
ポケットの中に仕舞っていたスマホのバイブが起動する。反射的に手を突っ込んで、その端末を取り出し画面を見た。
牧本瑠璃葉。ラインの通知だった。
通知をタップして、ラインの画面を呼び出す。
可愛らしいスタンプを添えて、こんなメッセージが送られてきていた。
『こんにちは! 今日も暑いですね。今、どんな調子ですか?』
性交渉のお願いだろうか。ムラムラしなくもないが、今はそんなことをしている場合では無い。
こんな文を打って、それを彼女に送信した。
『勉強が忙しくて尻に火が付いています。ちょっと今日は会えないかも』
これで良し。
スマホをスリープモードにすると、それを再びポケットに仕舞う。
だがその直後に通知が鳴った。早いな。
無視しようかとも思ったが、やっぱりそれは可哀想なので画面を見る。
『もしよければ、私と一緒に勉強しませんか? 一つ下の学年なら教えられるかもしれませんし、私自身も過去に習ったことを復習したいので』
牧本さんと勉強。結構良い提案だなと僕は思った。
彼女の方が僕より十は偏差値が高い。頭があまりよくない僕があれこれ悩むより、知識のある人間に手を貸してもらったほうが捗るかもしれない。
そう考えた僕は、早速返信した。
『お願いします。牧本さんに手伝ってもらえるなら、こんなに心強いことはありません。どこで勉強しますか?』
送信してから一分程度で返事は返って来た。画面の文字を見る。
『県立図書館に来れますか? あそこの二階は学習室になっていて、自由に勉強や読書ができるんです』
県立図書館なら自宅からそう遠くない。自転車で十分もあれば着く。
「行けますよ」というメッセージを送ると、そこで会いましょうと返事が返って来た。
また彼女に会える。ワクワクしてきた。
よしっ、と気合を入れると、机の上に広げていた教科書やノート、提出されていた課題を僕は鞄に仕舞い始めた。
***
よく照りつける日差しの中、僕は自転車を漕いで目的地に向かった。
夏の太陽は相変わらず肌を炙ってきたが、我慢して前に進む。
図書館へは予想していたのと同じ程度の時間で着いた。
駐輪所に自転車を置き、施設の玄関口に向かう。
牧本さんは既に到着していた。遠めからでもシルエットだけで分かるほど、彼女は引き締まった身体つきをしていた。
「お待たせしました。すみません。待ちましたか?」
「ううん。私もさっき来たばっかりです」
牧本さんは手を軽く振ってそう答える。
彼女はさほど日焼けを気にしない人なのか、意外と露出の多い服装をしていた。
腰を艶かしく際だたせるスパッツのすぐ下には程よい褐色の太股が見え、それが妙に色っぽい。
「暑いですし、中に入りましょう。きっと空調も効いてるし」
「ええ。そうですね。荻野さん、お昼は食べてきました? ここ、飲食禁止なんで」
「家で軽く食べてきましたよ。……カップラーメンですけど」
そんな会話をしつつ、図書館の中に入る。中はひんやりとしていて気持ちよく、生き返る心地がした。
中は『図書館』と聞けば万人が想像する通りの、極一般的な内装だった。
一生掛かっても読みきれないであろう本の数々がずらりと書架に並べられていて、僕は少し圧倒される。
司書の方々が受付をしているカウンターの横を通り過ぎ、階段を上がるとそこが学習室だった。
静かな空間だった。並べてある席は何人かの人が既に利用していて、辞書を手元に何かを書き取っていたり、分厚い本を読んでいる人らがいる。
「あそこの端っこの席を使いましょうか」
牧本さんが小声で僕に言った。指差した方には丁度開いている机があって、僕ら二人が勉強道具を広げて利用できそうだった。
いいですねと返答し、僕たちはその席へと移動する。
***
「……終わったぁ~」
周囲の迷惑にならない程度の声音で僕は歓喜の声を上げる。
夏休みの課題全てが終わった。受験勉強はしなくてはいけないが、半分は自由になれたことに、僕の心は浮き足立っていた。
時計を見ると、勉強を開始してから五時間が経過していた。随分集中していたものだ。
「おめでとうございます。私も良い復習になりました。荻野さん、凄く頭良いじゃないですか」
牧本さんはクスリと笑いながら、控えめな音量の声でそう言う。
「牧本さんの教え方が上手かったからですよ。教える側は教える内容の三倍の知識が必要って聞いたことがありますけど、僕なんか比べ物にならないくらい頭良いんですね」
お世辞ではなかった。彼女の教示は非常に的確で、難しい内容もかなり噛み砕いて教えてくれた。
僕の脳みそが、乾燥したスポンジのような猛烈さで知識を吸収したような気がする。
彼女は国語や数学、英語や物理に至るまで潤沢な教養を持っていて、その博識さは僕の勉強に極めて役に立った。
そんな該博な彼女が羨ましくなる。きっと学校でも良い成績を取っているのだろうな。
「私よりも成績の良い人はいっぱい居ますよ。荻野さん、凄く飲み込みが早いから、私なんてすぐ追い抜いちゃうかも」
まさか。と僕は心の中で頭を振る。
一時間程度教えを受けただけで、使っているノートの中身を見ただけで彼女の博雅を痛感させられた。
勝てる気がしない。きっと大学も、僕の志望しようとしている場所より遥かにレベルの高い場所を狙っているのだろう。
「さて、と。そろそろ引き上げますか?」
牧本さんは机に広げた自分のノートを畳みながらそう言う。
頭を長時間激しく使って疲れ気味だったため、僕はその提案に賛同する。
勉強道具を鞄に仕舞い終えると、僕らは長時間利用した学習室を後にした。
***
自動ドアを通り抜けて図書館の外に出てくると、外は夕焼けで橙色に染まっていた。
夏だから陽は長い。昼間の灼熱はある程度は鳴りを潜めて、他の季節の時に想起する概念的な魅力のある夏を演出していた。
「お疲れ様でした荻野さん。また機会があったら、一緒に勉強しましょう」
「ええ。今日はありがとうございました」
僕はお互いに軽く頭を下げる。学年的には先輩後輩の関係だが、互いに敬語をメインにして話している通り、対等の関係のつもりで接していた。
他校の者同士で先輩後輩という力関係があるのかは分からないが。
「……今日ゴム、持ってきてないですよね?」
牧本さんは親指と人差し指で輪っかを作り、僕の目の前で揺らしてみせた。
ピストンの暗喩だ。
この子は隠れビッチなのだろうか。意外と性に対して奔放だなと思う。他の男に援助交際でも持ちかけているのだろうか。
「あっ。一応言うけど、援助交際なんてやってませんよ? こんなことするの、荻野さんにだけなんで」
心を読まれたのだろうか。エスパーか? と僕は思った。
ゴムは実はと言うと持っていた。何かあった時のために、財布の中に入れていたのだ。
でも何で僕に対して性交渉を持ちかけてくるのだろうか。何か裏があるのか。
「何で僕とヤりたいんです? 美人局と言うわけじゃなさそうだし」
へへへと照れた顔を牧本さんは見せ、こう答えた。
「最初は鍵を拾ってくれた荻野さんに恩返しのつもりも兼ねてやったんですけど、何というか、その……荻野さんのお、おちんちんが忘れられなくて……」
「一線を越えて肉体関係まで持ってしまった相手の性器の呼び方に、何で今更言葉を詰まらせるんですか」
「言葉にするのは何だかちょっと恥ずかしいし……」
僕のペニスを気に入ったのか。
やっぱりビッチなのだろうか。
「あっ、誤解しないでくださいね! 性的なこと以外にも、荻野さんと一緒にいると何だか安心できるんです。弟……というよりかは、双子の姉弟になったみたいで……私、一人っ子なんですけど」
「僕も一人っ子ですね」
安心できる。というのは僕も同じ意見だった。
彼女の引き締まり、恵まれた豊かな肉感も確かに魅力的だったが、一緒にいると馬が合うような感覚がするのだ。
彼女とは恋人という関係ではまだない。友人と呼ぶには少々度をすぎた肉体関係を結んでしまっている。
「セフレ」と呼ぶのが最も適切な気もするが、肉体だけではなく、どこか精神の面でも相性がいいような気がする。
「まあ、凄く気が合うということで! それで、どうします? すぐ近くに公園ありますけど、お互いスッキリしませんか?」
「……いいですよ。ゴム、ありますし」
やった。そう牧本さんはそう嬉しげに呟くと、こっちですよと僕の手を引く。
その健康的な色をした手に誘われて、僕は彼女の行く方へと歩みだした。
***
その公園には誰もいなかった。日差しが柔らぐ時刻とはいえ、やはり暑いことには変わりがないからだろう。
放置された遊具が寂しげに地面に影を落としている。
僕らは公衆トイレの男子トイレの個室に入ると、内側から鍵を掛けた。便器の種類は洋式だった。
「牧本さんは今日はどんな体位にします? この前と同じバックがいいですか?」
「うーん、そうですね……」
彼女は少し俯いて、考える仕草をする。
考えはすぐに纏まったようだった。
「折角ですし、対面座位ってのしませんか? ほら、洋式で座れますし」
「対面座位か……」
お互いに密着できるその体位。深々と性器を埋められるやり方。その様子を想像して、僕の興奮の度合いが更に高まる。
他に案もないし、それでいこう。
「いいですよ。……服、脱ぎますか」
僕らは以前と同じように下半身を露出させ始める。
服がかさ張るので、全身を脱ぐのは止めておいた。
「やっぱり荻野さんのちんちん、大きいですね……この前これが全部私の中に入っちゃったんだ……」
改めて確認するように彼女は言う。僕の性器は怒張して、今にも裂けそうなくらいだった。
一度セックスをしているとはいえ、やはり高校生の肉欲はそんな「慣れ」で治まる物ではない。
牧本さんの秘穴からはねっとりとした愛液が漏れ出ていた。薄く濁ったそんな淫蜜が、陸上部生活で肉付きのいい太股を伝って流れる。
「すっかり出来上がってるじゃないですか。愛撫、いらないんじゃないですか?」
「でも、この前弄ってくれた奴、気持ちよかったなぁ……今回もやってくれますか?」
「いいですよ。まず先にコンドーム付けますから」
ゴムを肉々しい自分の棒にはめ込んでから、僕は牧本さんの性器の前にしゃがむ。
この前と同じようにクリトリスを指で刺激しようと思ったが、少し思いついたことがあった。
「この中に指、突っ込んでもいいですか?」
「え? ……い、いいですよ」
僕の突然の提案に少し困惑しつつ、彼女は許諾してくれる。
では失礼してと、僕は彼女の淫靡な割れ目を親指と人差し指でで開いてみた。
くぱっと軽い音を立てて、彼女の内側が暴かれる。
薄桃色の柔らかそうな肉。蜜に濡れててらてらと光ったそれ。
猛烈な色気と嫌らしさを放射して、酷く取り返しのつかないことをしているような気分にさせられる。
「さ、流石に恥ずかしいですね……」
牧本さんの上ずった声が聞こえる。顔を見上げて確認はしていないが、きっとその頬は紅潮しているのだろう。
「指、入れますね」
人差し指を肉壺に沈めていく。侵入してきた僕の指という異物に反発して、膣が強く締め付ける。
くいくいと内側で指先を動かすと、彼女の身体が刺激に反応して震えた。
「んっ♡何か変な感じ」
愛液が一層強く漏れ出た気がする。気持ちいいですかと聞いてみると「ちんちんとは違う感触だけど、気持ちいいですよ」との感想が返って来た。
僕はもう少し攻めたことをしてみたくなった。
途中まで入れた指を引き抜くと、指で内面を暴いた状態のまま、僕は牧本さんの性器に顔を更に近づける。
少し抵抗はあるが、意を決してそれを実行した。
「えっ……何してるんです……?」
牧本さんは驚いたような調子でそう言った。何をしたのかというと、彼女の膣肉を舐めてみたのだ。
「ちょっとやってみたくなって……」
やりすぎたかなと少し後悔する。彼女の体液の味が舌の表面で蟠っている。
塩辛かった。
「いや、荻野さんなら構わないですけど……。ちょっと驚きました」
「僕も性欲旺盛なんですよ」
そうは言ってみたものの、許可も取らずに少し攻めたことをしすぎたなと反省する。
「……あの……お願いしてもいいですか?」
「なんですか?」
一瞬彼女は躊躇いの間を見せたが、勇気を出したのかその言葉を口にする。
「それならあそこにキス、してくれませんか……?」
なんですって。
「荻野さんに私の身体、もっと愛してもらいたいし……駄目、ですか?」
「やらせてください」
即答だった。さっき反省したのは何だったんだよと、心の中で自分を嘲笑う。
口を尖らせ、牧本さんの秘裂に軽い接吻をした。
私の中にもしていただけますかと頼まれたので、指でその谷を開いてそのようにする。
再びあの濃密な塩気が、僕の口内を包み込んだ。
「……そろそろ本番しましょうか?」
僕がそう訊ねると、牧本さんはこくりと頷いた。お互い身体が強く熱を帯びている。
正直僕自身も気持ちよくなりたかった。
僕はトイレの便座の蓋を閉めると、その上に座る。
自分のペニスは恥ずかしくなるほど強く起立していて、上から来るものを貫きそうだった。
「じゃあ、挿れますね……」
牧本さんはそう言うと、僕の欲望の塊の上に腰をゆっくりと落としていく。
性器と性器がゴム越しに触れ合い、気を抜くともう射精しそうだった。
血管が浮き出た自分の分身が、彼女の中に沈み込んでいく。牧本さんの膣内は熱かった。
やがて根元までペニスが彼女の中に挿入される。狭い膣が、力強く僕のことを締め付けていた。
と、牧本さんが僕の胴体に両手を回した。体重と彼女の腕力でがっしりとホールドする形になって、簡単には逃れられそうにない。
彼女の一対の乳房が僕の胸板に押し付けられ、柔らかく潰れる。
お互いの顔がくっ付きそうなくらい近い。彼女と僕の呼吸が混ざり合う。
牧本さんはニヤニヤと、悪戯っ子のような笑いを顔に貼り付けていた。
「どうです? 興奮しますか?」
「そっちがその気なら、僕も離しませんよ」」
僕の側も彼女の胴に手を回す。しっかりと固定され、愛を確かめ合う形になる。
「私が動きますね……?」
そう言うと、彼女は腰を上下に動かし始めた。
摩擦で僕たちの肉が擦れあい、それが波のような快楽を断続的に生み出す。
「あっ♡あん♡そこ、そこ駄目っ」
僕のペニスの雁の部分が、彼女の弱い部位を刺激しているようだった。
膣に交接具がしっかりとはまり込んでいる。ぴったりと凹凸がかみ合っているような感覚がして、身体の相性がいいとはこういうことを言うんだなと思った。
そんなことを考えていた時、唐突に彼女に唇を奪われた。
突然のことに反応できなかった。彼女の舌が僕の口内に侵入してきて、唾液と唾液が混ざり合う。
「んっ♡くちゅ♡んまっ♡」
牧本さんの舌が僕の舌に絡みつく。濃密な接吻をお望みなようだった。
さっき僕は彼女の性器を舐めたんだけどいいのかなと思いつつ、ナメクジの交尾のように彼女の舌の根を舐め回す。
心なしか、彼女の腕の締め付けが更に強まった気がした。絶対に離したくない。そんな意志を持った力だった。
彼女は猫が甘えてくるように身体を擦りつけ、生々しいほどに愛を交わす。
情欲を激しく刺激してくる艶かしい動き。男の精を搾り取ろうとする、積極的な動作。
いつまでそうしていただろうか。
先に口付けを解いたのは牧本さんの方だった。
「ぷはぁ♡苦しい苦しいっ」
「牧本さんの方からキスしてきたんじゃないか」
「ごめんなさい。一度やってみたくて」
そう答えると、再び彼女は腰を動かし始めた。
ぐちゅぐちゅと嫌らしい音を立て、快楽が増していく。
お互いの熱が交じり合う。僕らは初めから一つだったのではないかと錯覚するほど、身体と身体は馴染んでいた。
「荻野さんのちんちんっ、凄いっ♡ お腹の中押し上げられてるみたいですっ♡」
彼女の目はとろんとしていた。すっかり火が付いてしまっているらしい。
ずんずんと激しく突き入れられて、牧本さんも快楽を感じているようだった。
彼女の身体は細身で、やや筋肉質で、しかしふわりと柔らかくて、抱き心地が非常に良い。
僕の硬い陰茎が膣を押し広げると、肉壁はそれを戻そうとして強くくっきりと形が刻み込まれる。
この女の子の中を僕の形に変えてあげたい。そう思いながら、彼女の艶かしいピストンの刺激を味わった。
結合部からは蜜が溢れ、僕らの太股を静かに濡らす。
二人して肉欲に溺れ、いつまでも永遠にこうしていたいとさえ願った。
けれど、そんな淫靡な時間も終わりを迎えそうだった。
射精が近い。
「ご、ごめん。そろそろでそう……」
「あんっ♡んぁっ♡良いですよっ。この前みたいに一番奥に出しちゃってくださいっ♡」
絶頂を促すように、牧本さんの腰使いが更に強まる。秘肉を必要以上にかき回し、僕の性器をもみくちゃにする。
「うっ、出るっ……」
「あ、ああっ♡ああああぁ♡」
頭の中に火花が散るような感覚の刹那、男子高校生の煮えたぎるような濃厚な精液が、同年代の女子高生の中にぶちまけられる。
初めてのセックスの時と同じく、自分でも驚くほどの子種がほとばしった。
ゴムが破れてしまうのではないかと思うほど勢いよく体液が放たれて、それを彼女は全て受け止めてくれる。
それと同時に彼女も絶頂に達したようで、身体に抱きつく腕の力を更に強めてきた。
「ひゃん♡いやぁっ♡んぁっ!」
最初の激流のような波が去った後も、尿道に残った精液を断続的に吐き出した。
避妊具を付けていなければ、妊娠確定だろうなというような量と濃密さだ。
「凄いっ♡お腹の中、荻野さんの赤ちゃんの素で温かいです……っ♡」
ボキャブラリーが豊富だな。
ようやく射精を終えた僕は、ぐったりとしながらトイレにもたれ掛っていた。もう少しだけ、彼女と繋がっていたい。
一つになっていたい。気だるさが急に襲い掛かってきて、ゼリー状の感覚に包まれる。
全てが夢だったかのようだった。
現実感を喪失して、肌を極限まで密着させている女の子以外、何も見えない。
いつまでそうしていただろう。五分程度なのかもしれない。一時間かもしれない。
もしかしたら、ほんの数秒だけなのかもしれない。
牧本さんは腰を持ち上げ、僕らの結合を解いた。
引き抜き終えると、若く濃い精液が溜まったゴムの先端が自重でぷるんとペニスから垂れ下がる。
「はあ、はあ。今日のセックスも凄かったですね……」
「……ええ」
世界がようやく活気を取り戻しつつある僕は、そう答える。生返事にも程があるな。
牧本さんは息を切らしていた。陸上部の彼女といえど、流石に疲労困憊の様子は隠せない。
お世辞にも体力にはあまり自信があるとは言えない僕は更に疲れていた。
水を飲みたい。
傍にある自分の鞄を開けると、ミネラルウォーターの入ったペットボトルの容器を取り出し口にあおる。
生き返る心地だった。
「私も飲みたいです」と牧本さんが言ったので渡すと、ぐびぐびと結構豪快な部類に入る飲みっぷりで喉に水を流し込んでいた。
「ぷはぁ。ありがとうございます。ご馳走様でした」
間接キッスになってしまったことに気がついたが、獣のように激しいセックスや直接的な接吻をしておいて何を今更と密かに笑う。
使用したゴムを、床に置いてある小さなゴミ箱の中に捨てた。
トイレットペーパーで性器を拭き、便器に捨てて水で流す。それから服を着て、僕らの身支度は完了した。
ドアの鍵を開け、二人で個室の外に出る。トイレにも公園にも僕ら以外の利用者はやはり誰もいなくて、世界から取り残されたかのように錯覚した。
トイレに入った時よりも、陽は更に傾いていた。木々の下は既に闇が吹き溜まっている。
図書館の駐輪所まで僕らは歩いてきた。自分の自転車の鍵を解除し、サドルに尻を乗せる。
「それじゃ、荻野さん。今日は色々お疲れ様でしたっ」
「ええ……また、会いましょう」
僕は自転車を動かそうとした。これから二人で駐輪所の出口まで走らせ、そこから別々の道で帰るつもりだった。
「あのっ、荻野さん!」
牧本さんに呼び止められ、僕は反射的にそちらを向く。
振り向いた瞬間、彼女のこんがりと陽に焼けた両手が僕の頭の両側面を挟み込み、ぐっと彼女の側に引きよせた。
牧本さんの顔が僕の顔に異常に接近するのを知覚した瞬間、唇に熱く柔らかい感触を味わった。
キスをされたのだ。
「んっ……ん」
唐突なことに僕は反応できなかった。頭の中が混乱の坩堝に叩き落されたかのようで、状況が上手く把握できない。
口付けを解いたのは彼女の側だった。
「お別れのキス。今日はありがとうございましたっ」
そう言うと、牧本さんは素早く自分の自転車に乗り、そそくさと走って行ってしまった。
僕は腰が抜けて、自転車ごと地面に倒れそうになる。
周囲に誰もいなくて助かった。あんな場面を他人に見られたら、流石に恥ずかしい。誰かがいる状況では彼女も流石にやっていなかっただろうが。
あっけに取られ、彼女が消えた方向をいつまでも見ているのだった。
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