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34.初夜、しとく?(6)
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「まあ、いいけど? 晶が調べてきたこと、実践してみてよ」
顎を上げながら見下ろすように言うと、晶はぐぐっと唇を噛んだ。言葉には出さないが、「可愛くないやつめ」といつものように思っているに違いない。でも、晶にそう思われたところで痛くも痒くもない。むしろ「可愛い」なんて甘いセリフを囁かれた方が鳥肌が立つ。
「ほっ、本当にするからな!? あとで『やっぱり嫌だった』とか言うなよ」
「言わないよーだ。そんなことよりほら、最初は何から始めるの?」
にやける顔を隠そうともせず、晶を挑発するように言う。彼は険しい顔でそんな私を睨みつけていたが、覚悟を決めたようにごくりと息を吞んで、勢いよく私の体を抱き寄せた。
「わぁっ! あ、晶? ん、んぅっ……!」
そして次の瞬間には、私と晶の唇はぴったり重なっていた。しかも、先ほどのような触れるだけのキスではなく、舌を入れての濃厚なキスだ。
私の口内に難なく舌を侵入させた彼は、その勢いのまま激しく唇を貪る。いつの間にか舌を絡め取られると思わず体がびくっと跳ねて、縋るように晶の肩に手を置いた。
ぴちゃぴちゃと水音がするくらい激しいキスではあるが、歯が当たることはなく不快でもない。晶の熱い舌で上顎をべろりと舐め上げられると、腰のあたりがぞくぞくと震えた。時折漏れる吐息すら官能的に思えて、だんだんと私の呼吸は荒くなっていく。
「はぁっ、ん……! ま、まって、晶っ、ちょっとストップ……っ」
「ん……なんだ。これはだめか」
ばしばしと肩を叩くと、晶はようやく唇を離してくれた。はあはあと息を乱している私に対して、彼はいつも通りの不服そうな顔でこちらを見つめているだけだ。
「あ、あの……キス、誰かと練習した?」
「はあ!? するわけないだろ、おまえ以外の女に触れないのに!」
「でっ、でも、前と違ってめちゃめちゃ手馴れてなかった!? あ、あんなキスしたくせに、息も乱れてないし!」
「それは……キスするときの息継ぎのタイミング、と検索して調べた通りにやった」
少しだけ気まずそうに答える晶だが、やり方を調べた程度でここまで変わるものかと目を剥いてしまった。でも、彼が私以外の女性に触れられないということはわかっているから、練習はしていないという発言は確かなのだろう。
思い返せば、晶は昔からかなりの負けず嫌いだった。
小学校一年生のときには、鉄棒の逆上がりのテストで私の方が先に合格印をもらったというだけで勝手に闘志を燃やし、次の週になると晶はクラスで一人だけ連続逆上がりまでマスターしていたのだ。先週まで逆上がりもままならなかった晶がみんなの前でぐるんぐるんと華麗に回ってみせるのだから、私も驚きのあまり唖然としたことをよく覚えている。
ちなみに、あとで晶のお母さんに聞いたところ、「美雨に負けるなんてありえない!」と放課後や土日に必死で練習を重ねていたらしい。しかも、手のあちこちにマメができるほど熱心に特訓したのだと言う。その話を聞いた私は、なんて負けず嫌いなやつだろうと子どもながらに呆れたものだ。
話が逸れたが、とにかく晶は負けず嫌いで、自分のプライドを守るためならどんな努力も惜しまない男なのだ。きっと前にキスをしたとき、動物のように唇をぺろっと舐めることしかできなかったのが相当悔しかったのだろう。
それに、晶はなんでも一通りはこなせる器用貧乏なところもあるから、一度コツを掴めば大抵のことはできてしまうのだ。晶に翻弄されてしまったことは悔しいが、彼の努力は認めてあげよう。
「美雨。今のキス、あんまりよくなかったか?」
「えっ? あ、いや……まあ、前よりはマシなんじゃない? 六十点くらいかな」
あえて低めの点数をつけると、晶は神妙な顔つきで「そうか」と頷いた。
正直なところ、私だって彼に指導ができるほどキスの経験があるわけではない。でも、ここで「私もよくわからない」なんて本当のことを口にしてしまえば優位に立てなくなる。前回の晶とのセックスが楽しかったのは私が完全に主導権を握っていたからであって、彼のいいようにされてしまっては面白くないのだ。
「キスはもういいから。次に進んで」
「わ、わかった……じゃあ、えっと、脱がせてもいいか?」
「うん、いいよ」
こういうことになると妙に慎重な聞き方をする晶が面白くて、一つずつ丁寧にパジャマのボタンを外していく彼の手元を見ながらこっそり笑う。ここまできたら「脱がせていいか」なんて聞かずにそっと服を剥いでいったほうがスマートだとは思うが、まだ経験の浅い彼にそこまで要求するのは酷だろう。もう少し経験を積んでから教えてあげることにする。
そんなことを考えているうちに、すべてのボタンを外し終えた晶は私の腕からゆっくりとパジャマを引き抜いた。そして背を支えながらそっとベッドに横たえると、それとほぼ同時にブラジャーを外す。露わになった素肌を前にして彼は一瞬息を呑んだが、自分を奮い立たせるように表情を険しくさせた。
「そんな怖い顔しなくていいのに……」
「こ、怖い顔なんてしてない。集中してるんだ」
「あんまり気を張りすぎないほうがいいんじゃない? 緊張しすぎると勃たなくなるとか言うし」
「うっ……わ、わかってるよ! 美雨は余計なことを言わなくていいから、痛かったり間違ってたりしたときだけ言ってくれ!!」
「理不尽だなぁ」
ぶつぶつと文句を言う私に構わず、晶は自分の着ていたパジャマをさっと脱いで床に放った。ボクサーパンツ一枚になった彼の大事なところに目をやると、そこはすでに布越しでもわかるほど勃ち上がっている。反応するのが早すぎないか、と思わず口に出したくなるが、それも余計だと怒られそうなのでぐっと口を噤んだ。
顎を上げながら見下ろすように言うと、晶はぐぐっと唇を噛んだ。言葉には出さないが、「可愛くないやつめ」といつものように思っているに違いない。でも、晶にそう思われたところで痛くも痒くもない。むしろ「可愛い」なんて甘いセリフを囁かれた方が鳥肌が立つ。
「ほっ、本当にするからな!? あとで『やっぱり嫌だった』とか言うなよ」
「言わないよーだ。そんなことよりほら、最初は何から始めるの?」
にやける顔を隠そうともせず、晶を挑発するように言う。彼は険しい顔でそんな私を睨みつけていたが、覚悟を決めたようにごくりと息を吞んで、勢いよく私の体を抱き寄せた。
「わぁっ! あ、晶? ん、んぅっ……!」
そして次の瞬間には、私と晶の唇はぴったり重なっていた。しかも、先ほどのような触れるだけのキスではなく、舌を入れての濃厚なキスだ。
私の口内に難なく舌を侵入させた彼は、その勢いのまま激しく唇を貪る。いつの間にか舌を絡め取られると思わず体がびくっと跳ねて、縋るように晶の肩に手を置いた。
ぴちゃぴちゃと水音がするくらい激しいキスではあるが、歯が当たることはなく不快でもない。晶の熱い舌で上顎をべろりと舐め上げられると、腰のあたりがぞくぞくと震えた。時折漏れる吐息すら官能的に思えて、だんだんと私の呼吸は荒くなっていく。
「はぁっ、ん……! ま、まって、晶っ、ちょっとストップ……っ」
「ん……なんだ。これはだめか」
ばしばしと肩を叩くと、晶はようやく唇を離してくれた。はあはあと息を乱している私に対して、彼はいつも通りの不服そうな顔でこちらを見つめているだけだ。
「あ、あの……キス、誰かと練習した?」
「はあ!? するわけないだろ、おまえ以外の女に触れないのに!」
「でっ、でも、前と違ってめちゃめちゃ手馴れてなかった!? あ、あんなキスしたくせに、息も乱れてないし!」
「それは……キスするときの息継ぎのタイミング、と検索して調べた通りにやった」
少しだけ気まずそうに答える晶だが、やり方を調べた程度でここまで変わるものかと目を剥いてしまった。でも、彼が私以外の女性に触れられないということはわかっているから、練習はしていないという発言は確かなのだろう。
思い返せば、晶は昔からかなりの負けず嫌いだった。
小学校一年生のときには、鉄棒の逆上がりのテストで私の方が先に合格印をもらったというだけで勝手に闘志を燃やし、次の週になると晶はクラスで一人だけ連続逆上がりまでマスターしていたのだ。先週まで逆上がりもままならなかった晶がみんなの前でぐるんぐるんと華麗に回ってみせるのだから、私も驚きのあまり唖然としたことをよく覚えている。
ちなみに、あとで晶のお母さんに聞いたところ、「美雨に負けるなんてありえない!」と放課後や土日に必死で練習を重ねていたらしい。しかも、手のあちこちにマメができるほど熱心に特訓したのだと言う。その話を聞いた私は、なんて負けず嫌いなやつだろうと子どもながらに呆れたものだ。
話が逸れたが、とにかく晶は負けず嫌いで、自分のプライドを守るためならどんな努力も惜しまない男なのだ。きっと前にキスをしたとき、動物のように唇をぺろっと舐めることしかできなかったのが相当悔しかったのだろう。
それに、晶はなんでも一通りはこなせる器用貧乏なところもあるから、一度コツを掴めば大抵のことはできてしまうのだ。晶に翻弄されてしまったことは悔しいが、彼の努力は認めてあげよう。
「美雨。今のキス、あんまりよくなかったか?」
「えっ? あ、いや……まあ、前よりはマシなんじゃない? 六十点くらいかな」
あえて低めの点数をつけると、晶は神妙な顔つきで「そうか」と頷いた。
正直なところ、私だって彼に指導ができるほどキスの経験があるわけではない。でも、ここで「私もよくわからない」なんて本当のことを口にしてしまえば優位に立てなくなる。前回の晶とのセックスが楽しかったのは私が完全に主導権を握っていたからであって、彼のいいようにされてしまっては面白くないのだ。
「キスはもういいから。次に進んで」
「わ、わかった……じゃあ、えっと、脱がせてもいいか?」
「うん、いいよ」
こういうことになると妙に慎重な聞き方をする晶が面白くて、一つずつ丁寧にパジャマのボタンを外していく彼の手元を見ながらこっそり笑う。ここまできたら「脱がせていいか」なんて聞かずにそっと服を剥いでいったほうがスマートだとは思うが、まだ経験の浅い彼にそこまで要求するのは酷だろう。もう少し経験を積んでから教えてあげることにする。
そんなことを考えているうちに、すべてのボタンを外し終えた晶は私の腕からゆっくりとパジャマを引き抜いた。そして背を支えながらそっとベッドに横たえると、それとほぼ同時にブラジャーを外す。露わになった素肌を前にして彼は一瞬息を呑んだが、自分を奮い立たせるように表情を険しくさせた。
「そんな怖い顔しなくていいのに……」
「こ、怖い顔なんてしてない。集中してるんだ」
「あんまり気を張りすぎないほうがいいんじゃない? 緊張しすぎると勃たなくなるとか言うし」
「うっ……わ、わかってるよ! 美雨は余計なことを言わなくていいから、痛かったり間違ってたりしたときだけ言ってくれ!!」
「理不尽だなぁ」
ぶつぶつと文句を言う私に構わず、晶は自分の着ていたパジャマをさっと脱いで床に放った。ボクサーパンツ一枚になった彼の大事なところに目をやると、そこはすでに布越しでもわかるほど勃ち上がっている。反応するのが早すぎないか、と思わず口に出したくなるが、それも余計だと怒られそうなのでぐっと口を噤んだ。
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