【R18】仕方ないから、結婚してやる~ツンデレ御曹司と、傷の舐め合い契約婚~

染野

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71.夫婦のはじまり(2)

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 晶が向かった先は、このあたりでもひときわ立派なシティホテルだった。
 ドアマンがいるような荘厳な雰囲気の扉から足を踏み入れると、晶はフロントにいたお偉いさんらしき男性と親しげに会話を交わしていた。こんな遠く離れた場所にも知り合いがいることに驚いたが、自分よりずっと年上の人とも卒なく接している晶を見てひそかに感心する。
 そして鍵を受け取ると、晶は何食わぬ顔をしてホテルの中に進んでいく。その後ろを金魚の糞よろしく付いていくだけの私は、エレベーターの中で晶と二人きりになった瞬間にぼそりと本音を漏らした。

「晶って……普通のホテルには泊まれないの?」

 前に一泊旅行をしたときに泊まったホテルも豪華だったが、このホテルもそれに負けないくらい高級な雰囲気を醸し出している。立地を考えれば、前のリゾートホテルよりも値が張るかもしれない。
 高級ホテルに泊まれることが嬉しくないわけではないが、庶民の私からしてみると少々落ち着かないというのもまた事実だ。

「なんだ、普通のホテルって。ここじゃ不満か」
「そういうわけじゃなくて! ごく普通の、私みたいな庶民が泊まるようなビジネスホテルでいいのにって話! 伝手があるって言っても、何もこんな豪華なところじゃなくたって……」
「俺だって一人で出張するときはビジネスホテルに泊まってる。でも、おまえと二人で泊まるんだから別にいいだろ」

 しれっとした態度でそんなことを言う晶に、二の句が継げなくなる。つまり、二人だけの特別な日だからこういう場所を選んだという意味だろう。
 そう思うとなんだか急に気恥ずかしくなって、私は「あ、そう」とそっけない返事をすることしかできなかった。

「そもそも、空きがあるだけ感謝しないとな。おまえが無茶をするからこんなことになってるんだぞ」
「た……確かに、迷走したなって自分でも思うけど! でも私だって、晶のためになんとかしようと思ったんだもん」

 また晶のお小言が始まる予感がして、私は思わずそう言い返した。すると彼はちょっと驚いたように目を瞠り、何か言いたげな視線を送ってくる。
 そうこうしているうちにエレベーターが止まったので、廊下に出た私たちは今日泊まる部屋へ向かって歩く。そして部屋の前まで辿り着くと、晶は受け取ったキーをかざして扉を開けた。

「はー、やっと着いた! ねえ晶、私お腹すいたから近くのコンビニに……」

 そう言いかけた私を、突然晶が力強く抱きしめた。
 それとほぼ同時に、ガチャリと部屋のドアが閉まる。え、と思わず声を漏らしたその瞬間、晶の唇が私のそれを塞いだ。

「んぅっ……!? あ、晶っ……?」

 突然のキスに驚いて口を開けば、すぐさまその隙間から舌が差し込まれる。晶の熱い舌がぬるりと私の口内を舐め上げるその感覚に、おのずと頬が熱くなった。
 ぴちゃ、くちゅ、と互いの舌が絡まる音が聴こえてくる。それが恥ずかしくて思わず身をよじったが、腕を晶に掴まれてしまえばほとんど身動きができない。その間にも激しい口づけが止むことはなく、だんだんと体の力が抜けていく。

「あ、あき、らっ……ちょっ、ちょっと待っ……!」
「無理だ。……もう、待てない」

 切羽詰まったその声と、獣のようにぎらついた晶の瞳に思わずごくりと喉が鳴る。
 待って、ともう一度口にしようとしたけれど、それより先に再び唇を塞がれた。とっさに唇をぎゅっと閉じたが、それをこじ開けるかのように晶の舌が侵入してくる。歯列をなぞり、上顎をべろりと舐め上げるその舌に翻弄され、私はいつの間にかしがみつくように晶の腕を握りしめていた。

「ん、ふぁっ……ま、待ってよっ、一回落ち着いて……っ」
「落ち着けるわけないだろ。ずっと俺を待たせた挙句、こんなところまで逃げてきて……今日は、俺が満足するまで付き合ってもらうからな」

 どこか恨みがましく言うと、晶は私の唇を優しく喰んだ。そっと下唇を喰まれると自然と隙間が空いて、そこからまた舌が入り込んでくる。晶の舌は私のそれをくすぐるかのように動いたかと思うと、舌全体を重ね合わせるかのように擦り付けてきた。ざらざらとしたその感触に肌が粟立ち、膝まで震えてくる。不快なわけではないのになぜだか涙が込み上げてきて、私は晶の胸をばんばんと思い切り叩いて止めた。
 そこで彼はやっと唇を離してくれたが、代わりに不満げな表情でぎろりと私を見下ろす。

「なんだよ」
「なっ……なんだよ、じゃないよ! な、なんか、そのっ……ど、どうしたの?」
「はあ? それはこっちの台詞だろ」
「だって、なんかっ……ま、前にしたときと違うから……まさか、今度こそ他の人と練習してたり……?」

 恐る恐る尋ねると、晶は一瞬目を瞠ってからすぐにくすくすと笑い声を漏らした。そして鼻先が触れ合いそうなほど間近に顔を寄せると、ぼそりと低い声で尋ね返してくる。

「俺が、他の女にこんなことすると思うか?」
「っ……! お、思わ、ない……」
「わかってるならいい。馬鹿なこと考えなくていいから、集中しろ」

 それだけ言うと、彼はまた私の唇をキスで塞いだ。そっと柔らかな唇が触れたかと思えば、熱い舌がまるで別の生き物のように口内を這いまわる。自分からそうしたつもりではないのにいつの間にか互いの舌を絡ませ合うようになっていて、それだけで頭の中がふわふわしてきた。
 キスひとつですっかり蕩けてしまった私は、そっと胸に触れてくる彼の手を拒めない。服の上から優しく膨らみを撫でられると全身が震えて、鼻にかかった吐息が漏れ出た。
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