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一、いただきます
8.とけて、おちる
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掘建て小屋の中で、私と千歳はしばらくの間何も言わずにずっと抱き合っていた。
しかし、私が三度目のくしゃみをしたあたりで千歳が「宿、探しに行こうか」と言って立ち上がる。それに小さく頷いて、私たちは小雨になった空の下に出ることにした。
繁華街を少し歩いたところで、今日は意外にもすんなりと宿を見つけることができた。
街の外れにあった小さな旅館の女将さんは、すっかり濡れ鼠になった私たちを快く受け入れてくれて、風邪をひかないようにと生姜湯までご馳走になった。
その温かさに千歳と二人で笑顔になって、当たり前のように用意された一つの部屋に何の抵抗もなく入っていく。まるで何年も昔から千歳と共にあるような、そんな感覚に陥っていた。
眠る時間になってもその感覚は続いていて、私はいつものように体を舐る千歳を大人しく受け入れた。そして千歳はいつもより控えめな様子で私を舐めてから、ちょっと険しい顔をして問いかけてくる。
「……いいの? 早くやめてって言わないと、舐めるだけじゃ終わらないよ」
荒く息をつく私を見下ろして、千歳もまた同じように息を荒くしながら囁く。その吐息にすら何の嫌悪感も湧かなくて、私は千歳の赤い瞳をまっすぐ見返して答えた。
「いい。……終わらなくて、いい」
それだけ言うと、千歳は小さく息を呑んだ。かと思えばすぐさま唇を塞がれて、それから先ほど舐められたことですっかり濡れた膣内に初めて千歳の指が挿入される。
「んっ、ぅんっ……!」
「……痛い?」
「ううん……っ、なんか、よくわかんない……」
「そう。とりあえず、一回果てておこうか」
切羽詰まったようにそう言うと、中に入れられた指が急に何かを探るように動かされる。そして一際目立って反応した箇所を見つけると、今度はそこだけを重点的に刺激され、私はいくらの時間もかからずに達してしまった。
「あっ、んんっ! ぅあっ、あ、あああっ!」
びくびくと跳ねる体を、千歳がまじろぎもせずに見下ろしている。見られていることに気付いてさらに身体が熱くなったけれど、どうすることもできずに私は千歳の腕をぎゅっと掴んだ。
「わた、し……い、いっちゃった……?」
「ふふっ、本当だねぇ。おいしいのがたくさん溢れてきたよ」
「え……あっ、あんんっ」
達した直後でびくびくと震えている秘所に、千歳が再び口をつける。そして入り口から溢れ出てくる蜜を丁寧に舐めとってから、薄く目を開けて横たわる私を見下ろした。
「……もう、寝ようか」
「えっ!? な……なんで? し、しないの……?」
「そんなにしたいの?」
「うっ……そういうわけじゃない、けど……」
舐めるだけで終わらないと言っていたくせに、千歳は難しい顔をしながら何やら考え込んでいる。私とそういうことをしたくないわけではなさそうだけど、躊躇いのある表情だ。
「千歳は……したく、ないの?」
「そうじゃない。けど、なんか……畏れ多い、というか。いいのかな、って」
「な、何を今さら……」
「だって、さすがに罪悪感あるよ。何しろ、ひかりが相手なんだから」
罪悪感、なんて。千歳にもそんな感情があったのかと、少しおかしくなる。
でも、出会ったばかりでいきなり体を舐めまわされた時と今では状況がまったく違うのだ。千歳はどうだか知らないけれど、少なくとも私は、体を繋げることになっても構わないと思えるくらい彼のことを信用している。それどころか、早く千歳の温もりに溺れたくてたまらなくなっていた。千歳なら、ぽっかりと空いた私の心を優しく埋めてくれると確信して。
「じゃあ、もうやめる?」
挑発するように、私は千歳に向かって問いかけた。彼はそんな私をじっと見つめ返して、腹を決めたようにぼそりと呟く。
「……ううん。やめない」
そう短く答えたあと、千歳は自身の浴衣の袷を寛げてから、すでに露わになっている私の太腿に腰を押し付けた。
「っ、あ……」
「……いい? これ、ひかりの御陰に埋めるからね」
これ、と言いながら、千歳が硬く立ち上がったものをさらに押し付ける。素肌に感じるその熱さと硬さに思わずたじろぐと、彼は私の手を取って自身に触れさせた。
「ひっ……! こ、これ、あの、入れるやつ……?」
「そうだよ?」
「え、あっ……! み、みんな、こんなもんなの……?」
正直言って、予想していたものよりだいぶ大きい。それにただの真っ直ぐな棒だと思っていたけれど、何だか括れていたり反っていたりするし、何もかもが想像とは違っていたのだ。
「あ、あの、神様だから、ここも人間とは違うの?」
「ううん、同じだよ」
「え……っ、ほんとに? 大きすぎない?」
「まあ、珍宝って言うくらいだし。多少は大きくないと、届かないし」
「……今の、笑うところ?」
「ううん、笑わなくていい」
真面目な顔でそう言ってから、千歳は熱り立った陰茎をぐりぐりと私の陰部に擦り付けてくる。すっかり濡れきっているせいで、千歳が少し腰を動かすだけでくちゅくちゅといやらしい音が部屋に響いた。
「んっ、あ……っ、や、あ、あついっ」
「は……っ、だって、早くひかりを犯したいんだよ。我慢、してるけど」
「え……な、なんで」
私はとうに覚悟を決めたというのに、千歳にはまだ躊躇いがあるようだった。形の良い唇をきつく引き結んで、堪えるように眉間に皺を寄せている。
けれど、私の陰部に擦り付けられるものは硬さを失うことなく、むしろ益々はち切れんばかりに膨れ上がっている。経験はなくとも、千歳が必死に我慢していることがそれだけで分かった。
「……ひかりが、後悔しないかな、って。僕なんかに、処女を奪われて……後で泣かれたら、困る」
その言葉を聞いて、強張っていた体の力がふっと抜けるような気がした。私に泣かれるのが怖くてこんなにも我慢しているのかと思ったら、どうしようもなく千歳が愛おしくなったのだ。
それと同時に、千歳がどれほど私を大切に想ってくれているのかが分かって、その喜びで胸が苦しくなる。だから私は、彼の白い頬に手を添えて言った。
「千歳が、いいっ……だから、我慢しなくていいから、いれて、ちとせっ」
セックスがしたいとか、気持ちよくなりたいとか、そういった欲からではなく、私はただただ千歳の想いを受け入れたかった。こんなに苦しそうな顔をしてまで我慢している彼の優しさに浸りたくて、私は必死に先をねだる。
そんな私を見て、千歳は険しい表情のままふっと口元だけで笑う。そして私の体を抱き寄せたかと思うと、耳元で甘く囁いた。
「……いいの? これ、ひかりの中に全部押し込むんだよ? この狭いところに無理やり入れて、奥までずぶずぶって」
耳に吹き込まれた千歳の声が腰まで響いて、びくっと体がしなる。同時に彼の先端が僅かに体内に入ってくる感覚がして、私の体は再び強張った。
「入れるだけじゃ、終わらないよ? 何回も出して、入れて、ひかりの気持ちいいところ抉って、かき回して」
あ、と思わず声が漏れる。千歳のものはまだ入りきっていないのに、体の奥底からじんわりと熱が広がっていくような気がした。まるで、彼を待ちわびているかのように。
「それで、僕が拡げたところに、たくさん出すから。ひかりの甘い蜜と違う、薄汚い雄の精液だよ。この中から、溢れるくらい」
それを聞いた途端、これから行おうとしていることが急に怖くなって私は千歳の下でばたついた。
彼を受け入れたくて必死だったけれど、よくよく考えたら無理だ。いくら好きな相手だからって、こんなものが体内に入るわけがない。仮に入ったとしても、私の体は裂けてしまうんじゃないだろうか。
「や、やっぱ、やめ」
「やめないよ。もう遅い」
慌てて千歳の体を押し返そうと伸ばした手は、そのまま絡め取られてしまった。そして、それまで窺うように入り口を小突いていた千歳自身が、ぐっと体内に挿入される。
「あっああっ! ひっ──……!」
勢いよく侵入してきたそれに、私は思わず叫んだ。しかしすぐに千歳によって唇を塞がれて、その声は彼の口内に飲み込まれる。同時に舌もくちゅくちゅと絡め取られて、全身を千歳に飲み込まれたかのような気がした。
「っ、く……ふふっ、あったかい」
「やっ、あっ! ま、まって、ゆっくりっ……」
「十分ゆっくりだよ。……もうちょっと、入れるからね」
「えっ、まって……っ、あっ! ひぅっ、うああっ……!」
いつもより余裕のない千歳の声がいやに色っぽくて、それだけで体が熱くなる。この状況から逃げ出さずに耐えていることだけでも褒めてほしいのに、千歳は問答無用でその一物をさらに奥まで押し込んだ。ぬぷ、と思わず耳を塞ぎたくなるような淫靡な音がした。
「はっ……ここ、一番奥じゃないよね? もっと、入るかな」
千歳の体に縋りついて必死に彼を受け入れている私に、当の本人は何とも無慈悲にそんなことを言ってのけた。
もっと入るかな、って。入るわけがない。もう私の中の行き止まりまで辿り着いたはずなのに、この男は何を馬鹿なことを言っているのだろう。
「やぁ、だめ、はいらなっ……」
「嘘はいけないよ? ほら、まだまだ入りきってない」
「ぅあっ、あっ! や、も、だめっ、もうだめっ」
ほら、と私に見せつけるように千歳が腰を動かす。恐る恐る股の間に目線を移すと、私の中に入りきらずに余っている千歳の陰茎の根元が見えた。
「ひっ……! やっ、でも、は、入ってるじゃんっ」
「半分くらいしか入ってない。言ったよね、全部押し込むって。それに、さっきひかりが入れてって言ったんだよ」
「で、でも、物理的に無理なものはむり……っ、んんぅっ!」
何とかして説得を試みようとしたけれど、千歳はお構いなしで再び腰を押し付けた。お腹の底を突き上げられるような動きは気持ちがよくて思わず喘いでしまったけれど、本当にこれ以上は無理だ。きっと私の体は、彼を全て受け入れられるように出来ていない。
「お、おねがいっ、もうだめ! もう入らないの、おねがい、ちとせ、もういれないでぇっ」
「やだ。ここまで我慢したんだよ? 僕の好きなように、食べさせてよ」
ぐっ、ぐっ、と千歳のものが私の体の奥を責め立てる。彼の目をじっと見つめてもう無理だと訴えるけれど、千歳は額に汗をかきながら短く息を吐くだけだ。その間も、私の膣内にはどんどん彼自身が深く埋まっていく。
「ひううっ! だめ、ほんとにはいらないの、はいっちゃだめなのっ……! ちとせ、おねがいっ、おねがいだからっ」
「……っ、きみに、おねがいって言われると、弱いんだけど。でも、僕だってお願いしてるんだよ? ひかりの奥の奥まで、僕が犯したい」
口元だけで笑ったかと思うと、千歳は少しだけ自身を引き抜いて、勢いをつけて私の体内を穿った。その衝撃に仰け反ったけれど、すぐにまた抱き寄せられて千歳の腕の中にすっぽり埋まってしまう。
気持ちいい。けど、駄目だ。これ以上、入ってはいけないところまで暴かれてしまったら、もう元には戻れなくなる。そんな恐怖から、私は千歳の腕に縋り付いた。
「も、ほんとにだめなのっ……! わたし、は、はじめてなのにっ、こんなの、おかしくなっちゃう……っ」
「っ……おかしくなっても、いいんだよ?」
「ひっ、ううっ……お、おねがい、こんどっ、今度は、奥まではいっていいからっ、今日はもう、ここまでにしてぇ……っ」
なかなか納得してくれない千歳に、私は苦し紛れにそんなことを言った。私の必死さが伝わったのか、渋々ながら彼もようやく頷いてくれる。
「もう……分かったよ。しょうがないから、今日はここまでにしてあげる。でも、途中でやめないからね。あとは、僕の好きにさせて」
みっともなくぼろぼろと泣きながら何度も頷くと、千歳はふっと笑ってから濡れた唇にキスをしてくれる。それに安心して力を抜くと、奥まで入り込んだ千歳のものがずるずると抜き出される感覚がした。そして、間髪入れずに再び私の中を強く穿つ。
「ぅあああっ! あっ、あ!」
「ひかり、可愛い……っ、僕のために、そんなにみっともない泣き顔を見せてくれるんだ?」
「いやぁ、あっ! やぁ、やだ、顔、みないでっ……」
「どうして? 言ったよね、あとは僕の好きにする、って……!」
ぎゅっと私の体を抱きすくめて、千歳が一心不乱に腰を動かす。最初は違和感しかなかったのに、彼のものが出入りするたびにいつしか快感を覚えるようになっていた。
でも、そんな激しい動きで私を責め立ててはいても、千歳は決して最奥まで入り込もうとはしなかった。中途半端なところまでしか挿入していないし、きっと彼にとってこの行為は物足りないのだろう。
それでも千歳は快感で蕩けた私の顔をじっと見つめて、愛おしそうにキスを落としてくれる。こんな風に優しく包み込んでもらえることがたまらなく幸せで、それを千歳に伝えたくて、私は何度もその名を呼んだ。
「ち、とせ、あっ、ちとせ、ちとせぇっ」
「っ、ふふっ、なぁに? そんなに頑張って呼ばなくても、ちゃんとここにいるよ……っ」
「あっ、んんっ! ほんと、にっ……? ちとせ、ずっと、いてくれる? わたしと、ずっと、いっしょにっ……」
「っ……、うん。今までだって、ずっとそばにいたんだよ。これからも、僕は、ひかりだけを見てる」
千歳のその言葉が嬉しくて、私は息も絶え絶えのくせに笑みを見せた。私は千歳のように美しくないし、きっと綺麗に笑えていなかっただろうけど、彼はそんな私を見て一瞬泣きそうな顔になる。
こんな顔もするのか、と思った直後、千歳の動きが一層激しくなる。その瞬間、感じたことのないほどの快感に襲われて、全身が魚のように跳ねた。
「ひかりっ……! ひかりの、全てがほしい。誰にもやらない、全部、僕のものに……っ」
びくびくと跳ねる私の体をかき抱いて、千歳が必死に言い募る。どうしてこんなにも切ない表情をするのかと心配になるくらい、千歳は切羽詰まった顔をしていた。
もう全部、千歳のものなのに。千歳の隣以外、もう行く場所などないのに。
彼を安心させたくて、その白い肌に赤い爪痕が残るくらい私も必死に抱きついた。
そのうち、千歳が短く喘いで私の中に精を吐き出す。その感覚も曖昧なまま、私は温かくて優しい夢の中へ落ちて行った。
しかし、私が三度目のくしゃみをしたあたりで千歳が「宿、探しに行こうか」と言って立ち上がる。それに小さく頷いて、私たちは小雨になった空の下に出ることにした。
繁華街を少し歩いたところで、今日は意外にもすんなりと宿を見つけることができた。
街の外れにあった小さな旅館の女将さんは、すっかり濡れ鼠になった私たちを快く受け入れてくれて、風邪をひかないようにと生姜湯までご馳走になった。
その温かさに千歳と二人で笑顔になって、当たり前のように用意された一つの部屋に何の抵抗もなく入っていく。まるで何年も昔から千歳と共にあるような、そんな感覚に陥っていた。
眠る時間になってもその感覚は続いていて、私はいつものように体を舐る千歳を大人しく受け入れた。そして千歳はいつもより控えめな様子で私を舐めてから、ちょっと険しい顔をして問いかけてくる。
「……いいの? 早くやめてって言わないと、舐めるだけじゃ終わらないよ」
荒く息をつく私を見下ろして、千歳もまた同じように息を荒くしながら囁く。その吐息にすら何の嫌悪感も湧かなくて、私は千歳の赤い瞳をまっすぐ見返して答えた。
「いい。……終わらなくて、いい」
それだけ言うと、千歳は小さく息を呑んだ。かと思えばすぐさま唇を塞がれて、それから先ほど舐められたことですっかり濡れた膣内に初めて千歳の指が挿入される。
「んっ、ぅんっ……!」
「……痛い?」
「ううん……っ、なんか、よくわかんない……」
「そう。とりあえず、一回果てておこうか」
切羽詰まったようにそう言うと、中に入れられた指が急に何かを探るように動かされる。そして一際目立って反応した箇所を見つけると、今度はそこだけを重点的に刺激され、私はいくらの時間もかからずに達してしまった。
「あっ、んんっ! ぅあっ、あ、あああっ!」
びくびくと跳ねる体を、千歳がまじろぎもせずに見下ろしている。見られていることに気付いてさらに身体が熱くなったけれど、どうすることもできずに私は千歳の腕をぎゅっと掴んだ。
「わた、し……い、いっちゃった……?」
「ふふっ、本当だねぇ。おいしいのがたくさん溢れてきたよ」
「え……あっ、あんんっ」
達した直後でびくびくと震えている秘所に、千歳が再び口をつける。そして入り口から溢れ出てくる蜜を丁寧に舐めとってから、薄く目を開けて横たわる私を見下ろした。
「……もう、寝ようか」
「えっ!? な……なんで? し、しないの……?」
「そんなにしたいの?」
「うっ……そういうわけじゃない、けど……」
舐めるだけで終わらないと言っていたくせに、千歳は難しい顔をしながら何やら考え込んでいる。私とそういうことをしたくないわけではなさそうだけど、躊躇いのある表情だ。
「千歳は……したく、ないの?」
「そうじゃない。けど、なんか……畏れ多い、というか。いいのかな、って」
「な、何を今さら……」
「だって、さすがに罪悪感あるよ。何しろ、ひかりが相手なんだから」
罪悪感、なんて。千歳にもそんな感情があったのかと、少しおかしくなる。
でも、出会ったばかりでいきなり体を舐めまわされた時と今では状況がまったく違うのだ。千歳はどうだか知らないけれど、少なくとも私は、体を繋げることになっても構わないと思えるくらい彼のことを信用している。それどころか、早く千歳の温もりに溺れたくてたまらなくなっていた。千歳なら、ぽっかりと空いた私の心を優しく埋めてくれると確信して。
「じゃあ、もうやめる?」
挑発するように、私は千歳に向かって問いかけた。彼はそんな私をじっと見つめ返して、腹を決めたようにぼそりと呟く。
「……ううん。やめない」
そう短く答えたあと、千歳は自身の浴衣の袷を寛げてから、すでに露わになっている私の太腿に腰を押し付けた。
「っ、あ……」
「……いい? これ、ひかりの御陰に埋めるからね」
これ、と言いながら、千歳が硬く立ち上がったものをさらに押し付ける。素肌に感じるその熱さと硬さに思わずたじろぐと、彼は私の手を取って自身に触れさせた。
「ひっ……! こ、これ、あの、入れるやつ……?」
「そうだよ?」
「え、あっ……! み、みんな、こんなもんなの……?」
正直言って、予想していたものよりだいぶ大きい。それにただの真っ直ぐな棒だと思っていたけれど、何だか括れていたり反っていたりするし、何もかもが想像とは違っていたのだ。
「あ、あの、神様だから、ここも人間とは違うの?」
「ううん、同じだよ」
「え……っ、ほんとに? 大きすぎない?」
「まあ、珍宝って言うくらいだし。多少は大きくないと、届かないし」
「……今の、笑うところ?」
「ううん、笑わなくていい」
真面目な顔でそう言ってから、千歳は熱り立った陰茎をぐりぐりと私の陰部に擦り付けてくる。すっかり濡れきっているせいで、千歳が少し腰を動かすだけでくちゅくちゅといやらしい音が部屋に響いた。
「んっ、あ……っ、や、あ、あついっ」
「は……っ、だって、早くひかりを犯したいんだよ。我慢、してるけど」
「え……な、なんで」
私はとうに覚悟を決めたというのに、千歳にはまだ躊躇いがあるようだった。形の良い唇をきつく引き結んで、堪えるように眉間に皺を寄せている。
けれど、私の陰部に擦り付けられるものは硬さを失うことなく、むしろ益々はち切れんばかりに膨れ上がっている。経験はなくとも、千歳が必死に我慢していることがそれだけで分かった。
「……ひかりが、後悔しないかな、って。僕なんかに、処女を奪われて……後で泣かれたら、困る」
その言葉を聞いて、強張っていた体の力がふっと抜けるような気がした。私に泣かれるのが怖くてこんなにも我慢しているのかと思ったら、どうしようもなく千歳が愛おしくなったのだ。
それと同時に、千歳がどれほど私を大切に想ってくれているのかが分かって、その喜びで胸が苦しくなる。だから私は、彼の白い頬に手を添えて言った。
「千歳が、いいっ……だから、我慢しなくていいから、いれて、ちとせっ」
セックスがしたいとか、気持ちよくなりたいとか、そういった欲からではなく、私はただただ千歳の想いを受け入れたかった。こんなに苦しそうな顔をしてまで我慢している彼の優しさに浸りたくて、私は必死に先をねだる。
そんな私を見て、千歳は険しい表情のままふっと口元だけで笑う。そして私の体を抱き寄せたかと思うと、耳元で甘く囁いた。
「……いいの? これ、ひかりの中に全部押し込むんだよ? この狭いところに無理やり入れて、奥までずぶずぶって」
耳に吹き込まれた千歳の声が腰まで響いて、びくっと体がしなる。同時に彼の先端が僅かに体内に入ってくる感覚がして、私の体は再び強張った。
「入れるだけじゃ、終わらないよ? 何回も出して、入れて、ひかりの気持ちいいところ抉って、かき回して」
あ、と思わず声が漏れる。千歳のものはまだ入りきっていないのに、体の奥底からじんわりと熱が広がっていくような気がした。まるで、彼を待ちわびているかのように。
「それで、僕が拡げたところに、たくさん出すから。ひかりの甘い蜜と違う、薄汚い雄の精液だよ。この中から、溢れるくらい」
それを聞いた途端、これから行おうとしていることが急に怖くなって私は千歳の下でばたついた。
彼を受け入れたくて必死だったけれど、よくよく考えたら無理だ。いくら好きな相手だからって、こんなものが体内に入るわけがない。仮に入ったとしても、私の体は裂けてしまうんじゃないだろうか。
「や、やっぱ、やめ」
「やめないよ。もう遅い」
慌てて千歳の体を押し返そうと伸ばした手は、そのまま絡め取られてしまった。そして、それまで窺うように入り口を小突いていた千歳自身が、ぐっと体内に挿入される。
「あっああっ! ひっ──……!」
勢いよく侵入してきたそれに、私は思わず叫んだ。しかしすぐに千歳によって唇を塞がれて、その声は彼の口内に飲み込まれる。同時に舌もくちゅくちゅと絡め取られて、全身を千歳に飲み込まれたかのような気がした。
「っ、く……ふふっ、あったかい」
「やっ、あっ! ま、まって、ゆっくりっ……」
「十分ゆっくりだよ。……もうちょっと、入れるからね」
「えっ、まって……っ、あっ! ひぅっ、うああっ……!」
いつもより余裕のない千歳の声がいやに色っぽくて、それだけで体が熱くなる。この状況から逃げ出さずに耐えていることだけでも褒めてほしいのに、千歳は問答無用でその一物をさらに奥まで押し込んだ。ぬぷ、と思わず耳を塞ぎたくなるような淫靡な音がした。
「はっ……ここ、一番奥じゃないよね? もっと、入るかな」
千歳の体に縋りついて必死に彼を受け入れている私に、当の本人は何とも無慈悲にそんなことを言ってのけた。
もっと入るかな、って。入るわけがない。もう私の中の行き止まりまで辿り着いたはずなのに、この男は何を馬鹿なことを言っているのだろう。
「やぁ、だめ、はいらなっ……」
「嘘はいけないよ? ほら、まだまだ入りきってない」
「ぅあっ、あっ! や、も、だめっ、もうだめっ」
ほら、と私に見せつけるように千歳が腰を動かす。恐る恐る股の間に目線を移すと、私の中に入りきらずに余っている千歳の陰茎の根元が見えた。
「ひっ……! やっ、でも、は、入ってるじゃんっ」
「半分くらいしか入ってない。言ったよね、全部押し込むって。それに、さっきひかりが入れてって言ったんだよ」
「で、でも、物理的に無理なものはむり……っ、んんぅっ!」
何とかして説得を試みようとしたけれど、千歳はお構いなしで再び腰を押し付けた。お腹の底を突き上げられるような動きは気持ちがよくて思わず喘いでしまったけれど、本当にこれ以上は無理だ。きっと私の体は、彼を全て受け入れられるように出来ていない。
「お、おねがいっ、もうだめ! もう入らないの、おねがい、ちとせ、もういれないでぇっ」
「やだ。ここまで我慢したんだよ? 僕の好きなように、食べさせてよ」
ぐっ、ぐっ、と千歳のものが私の体の奥を責め立てる。彼の目をじっと見つめてもう無理だと訴えるけれど、千歳は額に汗をかきながら短く息を吐くだけだ。その間も、私の膣内にはどんどん彼自身が深く埋まっていく。
「ひううっ! だめ、ほんとにはいらないの、はいっちゃだめなのっ……! ちとせ、おねがいっ、おねがいだからっ」
「……っ、きみに、おねがいって言われると、弱いんだけど。でも、僕だってお願いしてるんだよ? ひかりの奥の奥まで、僕が犯したい」
口元だけで笑ったかと思うと、千歳は少しだけ自身を引き抜いて、勢いをつけて私の体内を穿った。その衝撃に仰け反ったけれど、すぐにまた抱き寄せられて千歳の腕の中にすっぽり埋まってしまう。
気持ちいい。けど、駄目だ。これ以上、入ってはいけないところまで暴かれてしまったら、もう元には戻れなくなる。そんな恐怖から、私は千歳の腕に縋り付いた。
「も、ほんとにだめなのっ……! わたし、は、はじめてなのにっ、こんなの、おかしくなっちゃう……っ」
「っ……おかしくなっても、いいんだよ?」
「ひっ、ううっ……お、おねがい、こんどっ、今度は、奥まではいっていいからっ、今日はもう、ここまでにしてぇ……っ」
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「もう……分かったよ。しょうがないから、今日はここまでにしてあげる。でも、途中でやめないからね。あとは、僕の好きにさせて」
みっともなくぼろぼろと泣きながら何度も頷くと、千歳はふっと笑ってから濡れた唇にキスをしてくれる。それに安心して力を抜くと、奥まで入り込んだ千歳のものがずるずると抜き出される感覚がした。そして、間髪入れずに再び私の中を強く穿つ。
「ぅあああっ! あっ、あ!」
「ひかり、可愛い……っ、僕のために、そんなにみっともない泣き顔を見せてくれるんだ?」
「いやぁ、あっ! やぁ、やだ、顔、みないでっ……」
「どうして? 言ったよね、あとは僕の好きにする、って……!」
ぎゅっと私の体を抱きすくめて、千歳が一心不乱に腰を動かす。最初は違和感しかなかったのに、彼のものが出入りするたびにいつしか快感を覚えるようになっていた。
でも、そんな激しい動きで私を責め立ててはいても、千歳は決して最奥まで入り込もうとはしなかった。中途半端なところまでしか挿入していないし、きっと彼にとってこの行為は物足りないのだろう。
それでも千歳は快感で蕩けた私の顔をじっと見つめて、愛おしそうにキスを落としてくれる。こんな風に優しく包み込んでもらえることがたまらなく幸せで、それを千歳に伝えたくて、私は何度もその名を呼んだ。
「ち、とせ、あっ、ちとせ、ちとせぇっ」
「っ、ふふっ、なぁに? そんなに頑張って呼ばなくても、ちゃんとここにいるよ……っ」
「あっ、んんっ! ほんと、にっ……? ちとせ、ずっと、いてくれる? わたしと、ずっと、いっしょにっ……」
「っ……、うん。今までだって、ずっとそばにいたんだよ。これからも、僕は、ひかりだけを見てる」
千歳のその言葉が嬉しくて、私は息も絶え絶えのくせに笑みを見せた。私は千歳のように美しくないし、きっと綺麗に笑えていなかっただろうけど、彼はそんな私を見て一瞬泣きそうな顔になる。
こんな顔もするのか、と思った直後、千歳の動きが一層激しくなる。その瞬間、感じたことのないほどの快感に襲われて、全身が魚のように跳ねた。
「ひかりっ……! ひかりの、全てがほしい。誰にもやらない、全部、僕のものに……っ」
びくびくと跳ねる私の体をかき抱いて、千歳が必死に言い募る。どうしてこんなにも切ない表情をするのかと心配になるくらい、千歳は切羽詰まった顔をしていた。
もう全部、千歳のものなのに。千歳の隣以外、もう行く場所などないのに。
彼を安心させたくて、その白い肌に赤い爪痕が残るくらい私も必死に抱きついた。
そのうち、千歳が短く喘いで私の中に精を吐き出す。その感覚も曖昧なまま、私は温かくて優しい夢の中へ落ちて行った。
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でも。
でも訊けない。
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