異世界転生したら不死になりました ~死なないだけが取り柄じゃない! 俺たちが魔王を倒すまでの血と汗と涙の物語~

夢野 奏太

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【第22話】マリアーノ=ドンジョロ②

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シエラ姫は御年14歳。なにしろご両親亡き後に唯一残された王位継承者だから、王を始め全国民から花よ蝶よと育てられたせいで、天上天下唯我独尊なクソガキンチョに成長してしまった。ああ、こりゃ俺もう不敬が止まらねーわ。


「......シエラよ、この城はもう終わりじゃ。そなたは逃げよ。逃げて生きるのぢゃ」


ベルシャナ王は子供に言い聞かせるように語ると、俺を手招きして言った。


「その方、シエラと共に落ち延び、何としてもこの国を再興させてくれ。このワシの最後の頼みじゃ」


「この命に換えてましても」
これが代々この国に仕えてきた者の血か。全くもって無意識に言葉が口から溢れ出した自分自身に、俺は驚きを感じていた。


脱出行は困難を極めた。敵を防ぎ、仲間の死体を越えどうにか城外に出た時には、隊員の数は20人を下回っていた。もちろん、最も困難だったのはシエラ姫のご機嫌取りであったことは言うまでもない。


「ゲイジ! ゲイジ! 食い止めろ!」
「任せてくれ、隊長~」


何度目かの死線を潜り抜けて森の中へ身を潜めようとしたその時、シャナ城内から激しく炎が吹き上がるのが見えた。残念ながら我らが王城は陥落してしまったらしい。


みんな棒立ちでその光景を呆然と眺める中、シエラ姫は一人半狂乱の体で叫んでいた。


「おじいさま! おじいさま! ちくしょう、ベメルグ帝国! 復讐してやる! 絶対復讐してやる!」


そう言いながら城へ走り出そうとするもんだから、俺も慌てて叫んだ。


「あっ、あっ! ゲイジ、ゲイジ食い止めろ~!」


やれやれ、全く油断も隙もないお姫様だ。
ゲイジに抱き抱えられながら、ジタバタと暴れ続けるシエラ姫を横目で眺めつつ、再び落城したシャナ城を仰ぎ見ると、城壁に一人の兵士(?)の姿が。


まるでウサギみたいなシルエットをしたソイツもまた、驚くほど澄み渡った蒼天を背に此方を見ていた。その瞳は異様に紅く、そして冷たかった。俺は背筋にゾクッとした震えを感じ、目をそらすかのように慌てて身を翻した。


「東へ!」


生き残った16名に命を下すと、すぐに森へと逃げ込んだ。


俺たちはやがて湖の畔に洞窟を見つけて、そこを根城に反撃の機会を伺うことにした。人数は後から合流した敗残のベルシャナ兵を加えて24名。とても御家再興なんて考えられたものではないが、それでもその機会を信じて生き延びなきゃならない。


潜伏生活が半年を過ぎた頃、俺は全員に宣言するように言った。


「シャナ城奪還もベルシャナ王国の再興も一旦お預けだ。兎に角俺たちは生き延びなきゃならねえし、シエラ姫を守らなきゃならん。もうなりふり構ってる場合じゃねえ」


「どうするんです、隊長?」
ボーニャが尋ねる。


「俺は盗賊になる。お前たちは好きにしろ。離脱したい奴はしてもいいし、残りたい奴は残れ」


兵士としての誇りだけでは食って行けん。それは突きつけられた現実を受け入れた瞬間でもあった。


「隊長、水臭いですよ。俺たちはこれまでずっと一緒にやって来たんじゃないですか」
ボーニャが言う。


「そうですよ、隊長。隊長が手を汚すってんなら俺たちもそうします」


「ありがとうよ、グロック」
俺が心から人に対して感謝の言葉を口にしたのは、もしかしたらこれが初めてだったかも知れない。


「いっそ名前をつけましょうよ。俺たちの団結力を示す、新しいチームの名前を」


「シンプルに『ファナジール盗賊団』なんてどうだろう?」
誰かが言った。


「いや、ちょっと待ってくれ。俺はもう貴族じゃない。ベルシャナ王国再建の日まで、一旦その家名は捨てる。これからは、そうだな......」
俺は少し考えてから言った。


「ドンジョロと名乗る事にする」
キリッ。


「ああ~、昔エルカディアを股に掛けたっていう伝説の女盗賊の名前だー」
「お、ゲイジにしては物知りじゃねえか!」


「じゃあ、これから俺たちは『ドンジョロ盗賊団』ですね、隊長!」
ボーニャがはしゃいだような声を出した。


「隊長ももうよせ」
俺も釣られて笑う。
「これからは好きに呼んでくれ」


「親分!」
「お頭!」
「ずっとついていくよ、アニキ~」


ゲイジの間の抜けた声に、一同大笑いした。


バン!


そこへ、手作りのガタついたドアを荒々しく開けて、シエラ姫が現れた。
「アンタたち、楽しそうね」


その姿は、贅沢三昧の暮らしをしてきたかつての彼女とは比べ物にならない程にみすぼらしい。


「私も仲間に入れてよ」
そう言って少しだけ大人になったシエラ姫は、これまでに見せたことのないような笑顔を浮かべた。


そしてそれは、辛く厳しい潜伏生活を続けてきた俺たちにとって、最高の歓喜の瞬間となった。


国の再建は現実的ではないかも知れない。それでも、できることなら少しでも長くコイツらと一緒に居たい。誰一人欠けることなく―――
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