略奪は 奪い取るまでが 楽しいの

エイ

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回想:あっという間に終わった初彼との思い出

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 入学して部活にも入って、たくさん友達ができて、なにもかも順調だった。
 文武両道を謳うこの学校は、皆勉強と部活で忙しく充実していて、他人に意地悪をするような暇な人はいないのかクラスの雰囲気もよく、皆仲良しで楽しい学生生活を送っていた。
 そして二年生になってすぐ、理沙は男友達から告白される。

 男子バレー部に所属する、大沼裕太。

 理沙は女子バレー部に入っていたから、隣のコートを使う男子バレー部の人たちとは関わることが多くて、一年生の時一緒のクラスだった裕太とはすぐに仲良くなった。
 二年でクラスが分かれてしまい、部活で時々挨拶を交わすしか関わりがなくなってしまったと思ったら、彼に呼び出されて告白をされたのだ。
 離れてしまってようやく理沙のことが好きだったんだと気がついて、思い切って気持ちを伝えてみたと顔を真っ赤にしながら言われた時、つられて理沙も湯気が出そうなほど赤面したのを覚えている。
 その時はまだ恋愛感情まで至ってなかったが、好きと言ってくれた気持ちが嬉しくて彼の告白を受け入れた。

 人生初の彼氏。

 二人で話す時間が増えて一緒に過ごすうち、理沙も彼のことが大好きになっていった。周囲の友人たちも二人のことを「可愛いカップル」だと応援してくれて付き合いは順調そのものだった。

 だが、付き合って三カ月目にその幸せな日々が壊されてしまう。


 部活がなかった日、理沙と彼氏は駅前の繁華街で放課後デートを楽しんでいた。
 ファストフードで軽く食べてから、カラオケかゲームセンターのどっちに行くかと話しながら歩いていた時、街中で麗奈にばったりと出会ってしまったのだ。

「わあ! 理沙ちゃん久しぶり! こんなとこで会えるなんて嬉しい~」
「れ、麗奈……」

 高校が分かれて疎遠になったと思っていた麗奈。彼女の学校とは最寄り駅が離れていたため、遭遇するとは思ってもいなかった。
 可愛いと評判の制服を着た麗奈は、中学の頃よりあか抜けて周囲の人がチラチラを見るほど可愛らしかった。
 隣にいた彼氏があからさまに彼女に見とれている。

「隣にいるのは彼氏サン……かなっ? 初めましてー」

 理沙としては彼氏を紹介したくなかったのだが、無視するわけにもいかずしぶしぶ返事をする。

「そうだけど……麗奈はこんなとこでなにしてるの?」
「理沙の中学ん時の友達? 凄い偶然じゃん」

 彼氏の裕太は理沙の不機嫌さに気付くことなく麗奈に話しかけている。勝手に時間あるならお茶でもしようと言い出して、近くのカフェに行くことになってしまった。

「理沙にこんな可愛い幼馴染がいたなんてなー。びっくりだよ」
「私も親友の理沙ちゃんにこんなカッコいい彼氏がいたなんて知らなかったですよお。うらやましいなあ、私なんてモテないから……」
「えっ麗奈ちゃん彼氏いないの? こんなに可愛いのになんで周りの男はほっておくのかな。高嶺の花すぎるのかな」
「そんなことないですよ。私、男の人ってちょっと怖くて距離置いちゃうんです。でも理沙ちゃんの彼氏さんは優しくて話しやすいです」
「……」

 二人では普段入らないようなちょっと高めのカフェに裕太が行こうと言った時点で、嫌な予感はしていた。
 彼氏さんから理沙ちゃんのお話が聞きたい~と言って、麗奈はすかさず裕太の隣に座ってしまった。
 どっちがカップルか分からない距離感で二人が盛り上がって話をしている。
 向かい側の席で見ていた理沙は、しばらく我慢して耐えていたが彼女そっちのけで麗奈にデレデレして理沙に話しかけもしない彼氏にうんざりして、三十分経ったあたりで限界を迎えて一人で席を立った。

「……私、そろそろ帰る」
「えーせっかく会えたのに理沙ちゃん帰っちゃうの?」

 理沙が帰ると言えば裕太も席を立ってくれるんじゃないかと期待した。
 だが、どうしたんだよーと言う声だけが投げかけられただけで、腰を上げる様子もなく、理沙が店を出て行っても追いかけてこなかった。
 それから裕太からは連絡もなく、それにも腹が立ってあっちが謝ってくるまでは許さない! と憤っていたら、なんとその三日後にあっさりと振られた。

「お前ちょっと自己中すぎ。性格悪い女って俺無理だわ」

 曰く、あの時の態度が悪すぎて軽蔑しただとか、身勝手な性格についていけないなどの理由を並べ立てて、これでもかと罵倒された理沙は声も出ないほど傷ついた。

 いきなりの態度急変に混乱して何も言い返せないまま、初めての彼氏とは終わりを迎えた。
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