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回想:どこまでも追いかける
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「ねえ、裕太がめちゃくちゃ理沙の悪口を言いまわっているんだけど……」
同じバレー部の友達が、裕太のしていることを報告してくれた。
「え、なにそれ。どういう悪口?」
「言いにくいんだけど……理沙に嫌がらせされているって」
なんと裕太は、麗奈と元カレが別れたのは理沙が嫌がらせをしたせいだと学校で触れ回っているらしい。
その内容というのが、身に覚えがないどころか何か漫画の読みすぎだろと突っ込みたくなるようなそれはそれはひどいものだった。
それが本当ならストーカーとして警察に相談しろと言いたくなるような話を聞かされ、教えてくれた子も気まずそうにしている。
裕太は理沙がひどい嫌がらせをしたせいで麗奈が精神的に追い詰められたから別れざるを得なかったと主張しているようだが、嫌がらせどころか関わりを絶とうとしていたこちらとしては嘘をつくにもほどがあると言いたい。
まったくの濡れ衣だと教えてくれた友人に否定したが、そもそも全然裕太の言うことを信用していないから大丈夫だと慰めてくれた。
いきなり彼女の友達に乗り換えた裕太の不誠実さに皆呆れて怒っていたし、振られた後の理沙が一切関わろうとしていなかったのも皆知っている。
不誠実なうえに元カノの悪口を触れ回るような男のいうことなど誰も耳を貸さず、彼の評判は地に落ちた。
周囲はドン引きし、裕太は友人たちからも距離を置かれる結果となっただけで終わった。
気まずくなったのか、彼は部活も辞めてクラスでも浮いた存在になった姿をみて、もう怒る気力もでてこない。
自分の悪い噂が広まらなかったから、学校生活がつらくなるようなことはなかったけれど、理沙の初めての恋愛はとても苦い思い出となってずっと心に残り続けた。
その後、親に迷惑かけないでよと言われてから麗奈とは時々連絡を返すだけの付き合いを続けていた。
時々駅で待ち伏せみたいなこともされたが、友達と一緒の時は声をかけてこないし、ひとりの時でも忙しいと言って振り切るとそれ以上しつこくはしてこない。親からは思い出したように麗奈ことを話題に出されるが、勉強と部活で忙しいと言えば(実際進学校で部活もハードだったため非常に忙しい)母親も文句を言いづらいのか無理に付き合いを続けろとは言わなくなった。
そうやって麗奈とは微妙な距離を保ちつつ、それでも縁は切れずにずっとつながっているような関係が数年続いていた。
その縁がまた無駄につながり始めたのは、高校を卒業して大学に進学してからのこと……。
「あっ! 理沙ちゃーん! 会えてよかった!」
「はっ? えっ? れ、麗奈?」
大学の入学式が終わって帰るところで、麗奈に声をかけられて目玉が飛び出そうなほど驚いた。口がきけないでいる理沙に向かって、麗奈は勝手に腕を組んできてしゃべり続ける。
「理沙ちゃんと同じ大学に来たくて頑張ったの! すごいでしょ! 褒めて褒めて!」
理沙とは別学部ではあるものの、同じ大学に入学したのだと聞かされ、本人の口からこれからよろしくね! 告げられてめまいがした。
同じバレー部の友達が、裕太のしていることを報告してくれた。
「え、なにそれ。どういう悪口?」
「言いにくいんだけど……理沙に嫌がらせされているって」
なんと裕太は、麗奈と元カレが別れたのは理沙が嫌がらせをしたせいだと学校で触れ回っているらしい。
その内容というのが、身に覚えがないどころか何か漫画の読みすぎだろと突っ込みたくなるようなそれはそれはひどいものだった。
それが本当ならストーカーとして警察に相談しろと言いたくなるような話を聞かされ、教えてくれた子も気まずそうにしている。
裕太は理沙がひどい嫌がらせをしたせいで麗奈が精神的に追い詰められたから別れざるを得なかったと主張しているようだが、嫌がらせどころか関わりを絶とうとしていたこちらとしては嘘をつくにもほどがあると言いたい。
まったくの濡れ衣だと教えてくれた友人に否定したが、そもそも全然裕太の言うことを信用していないから大丈夫だと慰めてくれた。
いきなり彼女の友達に乗り換えた裕太の不誠実さに皆呆れて怒っていたし、振られた後の理沙が一切関わろうとしていなかったのも皆知っている。
不誠実なうえに元カノの悪口を触れ回るような男のいうことなど誰も耳を貸さず、彼の評判は地に落ちた。
周囲はドン引きし、裕太は友人たちからも距離を置かれる結果となっただけで終わった。
気まずくなったのか、彼は部活も辞めてクラスでも浮いた存在になった姿をみて、もう怒る気力もでてこない。
自分の悪い噂が広まらなかったから、学校生活がつらくなるようなことはなかったけれど、理沙の初めての恋愛はとても苦い思い出となってずっと心に残り続けた。
その後、親に迷惑かけないでよと言われてから麗奈とは時々連絡を返すだけの付き合いを続けていた。
時々駅で待ち伏せみたいなこともされたが、友達と一緒の時は声をかけてこないし、ひとりの時でも忙しいと言って振り切るとそれ以上しつこくはしてこない。親からは思い出したように麗奈ことを話題に出されるが、勉強と部活で忙しいと言えば(実際進学校で部活もハードだったため非常に忙しい)母親も文句を言いづらいのか無理に付き合いを続けろとは言わなくなった。
そうやって麗奈とは微妙な距離を保ちつつ、それでも縁は切れずにずっとつながっているような関係が数年続いていた。
その縁がまた無駄につながり始めたのは、高校を卒業して大学に進学してからのこと……。
「あっ! 理沙ちゃーん! 会えてよかった!」
「はっ? えっ? れ、麗奈?」
大学の入学式が終わって帰るところで、麗奈に声をかけられて目玉が飛び出そうなほど驚いた。口がきけないでいる理沙に向かって、麗奈は勝手に腕を組んできてしゃべり続ける。
「理沙ちゃんと同じ大学に来たくて頑張ったの! すごいでしょ! 褒めて褒めて!」
理沙とは別学部ではあるものの、同じ大学に入学したのだと聞かされ、本人の口からこれからよろしくね! 告げられてめまいがした。
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