略奪は 奪い取るまでが 楽しいの

エイ

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Side:圭司1

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 出会いは高校時代。



「あんた、理沙のこと好きでしょ」

 中学からの友人で、高校でも比較的仲良くしていた萌絵からある時そんな言葉を投げかけられた。
 理沙は同じ部活の友人、裕太の元カノ。
 部活仲間のみんなで遊んだりする程度の仲で、個人的に親しいわけじゃない。真面目で性格がいい子だとは思っているが、そんな風に思ったことなどないし、思わせぶりなこともしていない。
 だから萌絵がそんなことを言ってくる理由が分からなかった。

「なんでそう思った? 別に俺、理沙と二人で遊んだこともないんだけど」
「そう、その程度の付き合いしかないのに、裕太が理沙を振った時にすごく意見してくれたじゃん。裕太を殴る勢いで怒ってくれたから、てっきり理沙のこと好きだったのかと思ったんだけど、違った?」
「違うって。単に裕太の身勝手さにムカついただけだって。変なこと言うなよ、誤解されたら理沙にも迷惑がかかるってことくらいわかるだろ?」
 
 そう指摘すると、そっかごめんと萌絵はすぐ引き下がった。
 中学から付き合いのある萌絵とは気の置けない友達で、お互い恋愛感情を抱かないと感じる相手だから気軽に話ができる。
 だからこの話も軽口の一種だとわかっていたが、この時の萌絵の言葉がずっと気になって、なんとなく理沙と話す時に気を遣うようになってしまった。

 百田理沙。

 美人だけれどあまり女を感じさせないタイプで、男女ともに友人が多いけど初対面の人に対してはシャイ。赤信号では車が来ていなくても待つ生真面目な性格。自分が知っているのはその程度だ。
 特に好みのタイプというわけではない。
 ……ただ、絹糸みたいにサラサラの長い髪は目が行ってしまうかもしれない。
 入学当初、席が近くてよく話すようになったが、理沙は圭司の周りに人が集まってくると、するっと輪から抜けていってしまう。

 騒がしいのが嫌なのかと思っていたが、どうやら圭司目当ての女子から牽制されていたらしいと知った。
 面倒ごとを避けたいから適度に距離を置くようにしたのだろう。その気持ちを汲んで、圭司はできるだけ理沙には踏み込まないようにしていた。

 そして気づけば理沙は圭司の部活仲間である裕太と付き合い始めた。

 裕太はちょっとミーハーなところがあるが、何事にも一生懸命で、入学してずっと理沙にアタックしていたらしい。
 結構仲のいい友達だと思っていたのに、全部事後報告だったことには少々傷ついたが、お似合いの二人だと思ったから部活のメンバー皆で祝福した。

 裕太のほうが惚れていて理沙が口説き落とされたかたちだが、付き合い始めてからの裕太は、ちょっと偉そうな俺様彼氏みたいな態度を取ることがあってちょっと驚いた。
 理沙のほうが成績もいいし、彼氏としては彼女より上に立ちたいみたいな気持ちがあったのだろうが、そんなんじゃいつか愛想を尽かされるぞと周囲は注意していた。

 理沙自身はあまり気にしていないようで、裕太の偉そうな態度に対してもおおらかに接していたため、二人の付き合いは穏やかに続いているように見えた。
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