31 / 83
Side:圭司1
しおりを挟む
出会いは高校時代。
「あんた、理沙のこと好きでしょ」
中学からの友人で、高校でも比較的仲良くしていた萌絵からある時そんな言葉を投げかけられた。
理沙は同じ部活の友人、裕太の元カノ。
部活仲間のみんなで遊んだりする程度の仲で、個人的に親しいわけじゃない。真面目で性格がいい子だとは思っているが、そんな風に思ったことなどないし、思わせぶりなこともしていない。
だから萌絵がそんなことを言ってくる理由が分からなかった。
「なんでそう思った? 別に俺、理沙と二人で遊んだこともないんだけど」
「そう、その程度の付き合いしかないのに、裕太が理沙を振った時にすごく意見してくれたじゃん。裕太を殴る勢いで怒ってくれたから、てっきり理沙のこと好きだったのかと思ったんだけど、違った?」
「違うって。単に裕太の身勝手さにムカついただけだって。変なこと言うなよ、誤解されたら理沙にも迷惑がかかるってことくらいわかるだろ?」
そう指摘すると、そっかごめんと萌絵はすぐ引き下がった。
中学から付き合いのある萌絵とは気の置けない友達で、お互い恋愛感情を抱かないと感じる相手だから気軽に話ができる。
だからこの話も軽口の一種だとわかっていたが、この時の萌絵の言葉がずっと気になって、なんとなく理沙と話す時に気を遣うようになってしまった。
百田理沙。
美人だけれどあまり女を感じさせないタイプで、男女ともに友人が多いけど初対面の人に対してはシャイ。赤信号では車が来ていなくても待つ生真面目な性格。自分が知っているのはその程度だ。
特に好みのタイプというわけではない。
……ただ、絹糸みたいにサラサラの長い髪は目が行ってしまうかもしれない。
入学当初、席が近くてよく話すようになったが、理沙は圭司の周りに人が集まってくると、するっと輪から抜けていってしまう。
騒がしいのが嫌なのかと思っていたが、どうやら圭司目当ての女子から牽制されていたらしいと知った。
面倒ごとを避けたいから適度に距離を置くようにしたのだろう。その気持ちを汲んで、圭司はできるだけ理沙には踏み込まないようにしていた。
そして気づけば理沙は圭司の部活仲間である裕太と付き合い始めた。
裕太はちょっとミーハーなところがあるが、何事にも一生懸命で、入学してずっと理沙にアタックしていたらしい。
結構仲のいい友達だと思っていたのに、全部事後報告だったことには少々傷ついたが、お似合いの二人だと思ったから部活のメンバー皆で祝福した。
裕太のほうが惚れていて理沙が口説き落とされたかたちだが、付き合い始めてからの裕太は、ちょっと偉そうな俺様彼氏みたいな態度を取ることがあってちょっと驚いた。
理沙のほうが成績もいいし、彼氏としては彼女より上に立ちたいみたいな気持ちがあったのだろうが、そんなんじゃいつか愛想を尽かされるぞと周囲は注意していた。
理沙自身はあまり気にしていないようで、裕太の偉そうな態度に対してもおおらかに接していたため、二人の付き合いは穏やかに続いているように見えた。
「あんた、理沙のこと好きでしょ」
中学からの友人で、高校でも比較的仲良くしていた萌絵からある時そんな言葉を投げかけられた。
理沙は同じ部活の友人、裕太の元カノ。
部活仲間のみんなで遊んだりする程度の仲で、個人的に親しいわけじゃない。真面目で性格がいい子だとは思っているが、そんな風に思ったことなどないし、思わせぶりなこともしていない。
だから萌絵がそんなことを言ってくる理由が分からなかった。
「なんでそう思った? 別に俺、理沙と二人で遊んだこともないんだけど」
「そう、その程度の付き合いしかないのに、裕太が理沙を振った時にすごく意見してくれたじゃん。裕太を殴る勢いで怒ってくれたから、てっきり理沙のこと好きだったのかと思ったんだけど、違った?」
「違うって。単に裕太の身勝手さにムカついただけだって。変なこと言うなよ、誤解されたら理沙にも迷惑がかかるってことくらいわかるだろ?」
そう指摘すると、そっかごめんと萌絵はすぐ引き下がった。
中学から付き合いのある萌絵とは気の置けない友達で、お互い恋愛感情を抱かないと感じる相手だから気軽に話ができる。
だからこの話も軽口の一種だとわかっていたが、この時の萌絵の言葉がずっと気になって、なんとなく理沙と話す時に気を遣うようになってしまった。
百田理沙。
美人だけれどあまり女を感じさせないタイプで、男女ともに友人が多いけど初対面の人に対してはシャイ。赤信号では車が来ていなくても待つ生真面目な性格。自分が知っているのはその程度だ。
特に好みのタイプというわけではない。
……ただ、絹糸みたいにサラサラの長い髪は目が行ってしまうかもしれない。
入学当初、席が近くてよく話すようになったが、理沙は圭司の周りに人が集まってくると、するっと輪から抜けていってしまう。
騒がしいのが嫌なのかと思っていたが、どうやら圭司目当ての女子から牽制されていたらしいと知った。
面倒ごとを避けたいから適度に距離を置くようにしたのだろう。その気持ちを汲んで、圭司はできるだけ理沙には踏み込まないようにしていた。
そして気づけば理沙は圭司の部活仲間である裕太と付き合い始めた。
裕太はちょっとミーハーなところがあるが、何事にも一生懸命で、入学してずっと理沙にアタックしていたらしい。
結構仲のいい友達だと思っていたのに、全部事後報告だったことには少々傷ついたが、お似合いの二人だと思ったから部活のメンバー皆で祝福した。
裕太のほうが惚れていて理沙が口説き落とされたかたちだが、付き合い始めてからの裕太は、ちょっと偉そうな俺様彼氏みたいな態度を取ることがあってちょっと驚いた。
理沙のほうが成績もいいし、彼氏としては彼女より上に立ちたいみたいな気持ちがあったのだろうが、そんなんじゃいつか愛想を尽かされるぞと周囲は注意していた。
理沙自身はあまり気にしていないようで、裕太の偉そうな態度に対してもおおらかに接していたため、二人の付き合いは穏やかに続いているように見えた。
56
あなたにおすすめの小説
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
君がたとえあいつの秘書でも離さない
花里 美佐
恋愛
クリスマスイブのホテルで偶然出会い、趣味が合ったことから強く惹かれあった古川遥(27)と堂本匠(31)。
のちに再会すると、実はライバル会社の御曹司と秘書という関係だった。
逆風を覚悟の上、惹かれ合うふたりは隠れて交際を開始する。
それは戻れない茨の道に踏み出したも同然だった。
遥に想いを寄せていた彼女の上司は、仕事も巻き込み匠を追い詰めていく。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる