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覇権争い
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そもそも何故母の元に呼ばれたのか分からないままあっという間に面会が終わったし、どうしてこの屋敷に住まわせるという話になるのか全く意味が分からない。そんな意味不明の状態のまま諾々と従うなど本当に無理である。
どう断るかと頭を悩ませていると、大広間に戻ってきたところで兄が他の兄姉たちにこう宣言した。
「母上はアメリアをチューベローズ家に戻すおつもりらしい」
その一言で兄姉たちは一気に殺気立って、口々に怒りと質問をぶつけてくる。
「なんでそんな! お母さまはこんな出来損ない、気にも留めてなかったじゃない!」
「こんな只人以下の子と姉妹に戻るのなんてイヤよ」
「何かの間違いではないの? これを家に戻す意味が分からないわ!」
トゥーリ、テレサ、ペチュニアがヒステリックに叫んだが、モノリスが手を振ってそれを制した。
「母上の決定したことだ。丁重に扱えとも仰っているのだから、そのような暴言も許されないぞ」
三姉妹はその言葉でぐっと押し黙り大人しくなった。
「……ならば、これから継承者候補にアメリアも名を連ねることになるのかな」
次兄のジレがポツリと呟くと、全員の顔が一気に険しくなる。
メディオラの不調がいよいよ深刻になってきているため、母が自分の後継者を指名するつもりなのではという話が囁かれていた。
チューベローズ家の当主の座を兄姉たちは誰もが狙っている。
その筆頭はもちろん長兄のモノリスではあるが、それは本人が主張しているだけで、母本人は子どもたちに対して特に差をつけている様子は無い。だからこそ、兄姉たちは誰もが自分にも可能性があると思っていて、ここ最近は兄姉間で牽制しあっている状態だった。
そんな時に、母がアメリアを家に戻せと言ったことで、除名されたはずの出来損ないが党首に指名される可能性が急浮上してきて誰もが内心焦りを隠せなかった。
口には出さないが、アメリアが当主となればチューベローズ家の前権力を握り、兄姉たちはその下につくことになる。
この出来損ないに命令されるなど許せるはずがない。この場にいる誰もがそう思い、どのようにしてこれを排除しようかと頭を巡らせ、室内は不穏な沈黙に包まれた。
「あ、あのっ! 私は、もう家を出された身なので! 一族に戻りたいとは望んでいません……ので」
たまらず アメリアが叫ぶと長兄のモノリスが苦々しく顔をしかめる。
「何度も言うがお前の意見が聞いていない。ひとまず客間の一室をお前に使わせてやるが、数日程度滞在するだけでいいだろう。一族の復帰はあり得ないから安心しろ」
この言葉に兄姉たちが揃って頷く。
誰も口にはしないが、母の引退は目前だと考えている。いや、あの様子を見る限り、母はもう長くないのかもしれない。
そうなると母が今多少血迷った発言をしたとしても、話だけ合わせておいて、今後は兄姉の間で決めればいい。
アメリアも数日滞在させて母の興味がまた失せたところで帰せばよいと、兄姉たちは心の中で考えていて、全員が目配せして考えが同じであると確認しあっていた。
「あ……ハイ。あ、あのでも、滞在するにしても、一旦家に帰って準備したい……んですけど」
沈黙を破ってアメリアが声を上げると、兄は面倒くさそうにしていたが、家を留守にするならある程度片づけして準備したい。仕事先にも知らせないといけない。私にも今後の生活があるのだからと暗にチューベローズ家に寄生する気はないですよという意味も込めて主張すると、しぶしぶであるが許可してくれた。
どう断るかと頭を悩ませていると、大広間に戻ってきたところで兄が他の兄姉たちにこう宣言した。
「母上はアメリアをチューベローズ家に戻すおつもりらしい」
その一言で兄姉たちは一気に殺気立って、口々に怒りと質問をぶつけてくる。
「なんでそんな! お母さまはこんな出来損ない、気にも留めてなかったじゃない!」
「こんな只人以下の子と姉妹に戻るのなんてイヤよ」
「何かの間違いではないの? これを家に戻す意味が分からないわ!」
トゥーリ、テレサ、ペチュニアがヒステリックに叫んだが、モノリスが手を振ってそれを制した。
「母上の決定したことだ。丁重に扱えとも仰っているのだから、そのような暴言も許されないぞ」
三姉妹はその言葉でぐっと押し黙り大人しくなった。
「……ならば、これから継承者候補にアメリアも名を連ねることになるのかな」
次兄のジレがポツリと呟くと、全員の顔が一気に険しくなる。
メディオラの不調がいよいよ深刻になってきているため、母が自分の後継者を指名するつもりなのではという話が囁かれていた。
チューベローズ家の当主の座を兄姉たちは誰もが狙っている。
その筆頭はもちろん長兄のモノリスではあるが、それは本人が主張しているだけで、母本人は子どもたちに対して特に差をつけている様子は無い。だからこそ、兄姉たちは誰もが自分にも可能性があると思っていて、ここ最近は兄姉間で牽制しあっている状態だった。
そんな時に、母がアメリアを家に戻せと言ったことで、除名されたはずの出来損ないが党首に指名される可能性が急浮上してきて誰もが内心焦りを隠せなかった。
口には出さないが、アメリアが当主となればチューベローズ家の前権力を握り、兄姉たちはその下につくことになる。
この出来損ないに命令されるなど許せるはずがない。この場にいる誰もがそう思い、どのようにしてこれを排除しようかと頭を巡らせ、室内は不穏な沈黙に包まれた。
「あ、あのっ! 私は、もう家を出された身なので! 一族に戻りたいとは望んでいません……ので」
たまらず アメリアが叫ぶと長兄のモノリスが苦々しく顔をしかめる。
「何度も言うがお前の意見が聞いていない。ひとまず客間の一室をお前に使わせてやるが、数日程度滞在するだけでいいだろう。一族の復帰はあり得ないから安心しろ」
この言葉に兄姉たちが揃って頷く。
誰も口にはしないが、母の引退は目前だと考えている。いや、あの様子を見る限り、母はもう長くないのかもしれない。
そうなると母が今多少血迷った発言をしたとしても、話だけ合わせておいて、今後は兄姉の間で決めればいい。
アメリアも数日滞在させて母の興味がまた失せたところで帰せばよいと、兄姉たちは心の中で考えていて、全員が目配せして考えが同じであると確認しあっていた。
「あ……ハイ。あ、あのでも、滞在するにしても、一旦家に帰って準備したい……んですけど」
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