14 / 40
ゲーム
しおりを挟む色違いで上下二組ずつ購入し、ついでに靴も買いたいとお願いして、同じくモール内にあるシューズショップでスニーカーを買った。
調子に乗って買い物に連れまわしたから、いい加減怒り出すんじゃないかと思っていたが、意外なことに望は相談に乗ってくれてずっと買い物につきあってくれた。
夫の紘一は菜緒の買い物に付き合ってくれたことは一度もなかったし、実家の父も女の買い物になんて男がついて行くものではないと言う人だったから、望が当然のように一緒に来てくれることが意外で驚いた。
買ったもので手一杯になってしまい、車に戻って後部座席に荷物を詰め込んだ。
望は本当に荷物持ちにだけ来てくれたようで、買い物が終わるとそのまま菜緒の家へ送ってくれた。
家の前に車を横づけして、荷物を運び込むまでしてくれたから、このまま帰らせるのは失礼かと思い、家にあがってと声をかけた。
「送ってくれてありがとう。あの、コーヒーでも淹れるから」
「アホか。こんな居心地の悪い家で茶なんか飲めねえわ」
そう言い捨てると望はさっさと帰ってしまった。
居心地の悪い家と言われて、苦笑いするしかない。
ゲーム初挑戦の菜緒は、まず説明書を読むところから始める。
ゲームの操作方法どころか、電源の入れ方すら覚束ないので、使い方を読まないと何もできない。
設定をして、操作方法を覚えてようやく念願だったゲームをやることができた。
まず始めるのは、ゾンビをやっつけるシューティングゲームだ。
今は当時のものとはソフトもハードも最新のものになっているらしいが、まあやることは同じだからいいだろと、言われるがまま購入した。
本家で一族が集まった時、子どもたちが携帯ゲーム機を持ってきていることが多かったので、持っている子が遊んでいるのを後ろから見ていた。
ゲームで楽しそうに遊んでいる様子と、『バンバン銃をぶっ放してゾンビを殺すとすっごいすっきりする』と話しているのを聞いて、自分もやってみたいと思っていたが、ゾンビゲームどころかゲームそのものが禁止の菜緒には無理な話だった。
大人になるとますますゲームなんて縁遠いものになって、ゲームをやってみたかった気持ちすらも忘れていた。
「あっ、あっ! いやーこないでー! あー……死んだ」
説明書で操作方法を見ても実際やってみると難しく、何度やってみても序盤でゾンビに食べられてしまう。それでも何度も何度もトライしているうちに、だんだんゾンビに弾をあてられるようになってきた。
「あーもう! こいつなかなか死なない。どうしたらいいのー! あっやられた!」
ゲームが進むにつれ強いゾンビが現れて、そいつがなかなか死なない。
菜緒は初めてやるゲームに熱中し、気付けばご飯も食べるのもトイレに行くのも忘れて何時間もやり続けていた。
その時、ガチャっとドアが開く音がして、夫の紘一が菜緒の部屋に入ってきた。
「……お前、なにやってるんだよ」
夫は部屋に散らかるゲームの箱や菜緒の持つゲーム機を見て訝し気な顔をしていた。
「あ、おかえりなさい。えっと、何か用?」
「用って……リビングにいないから、何してるのかと……お前、今朝も起きてこなかっただろ。なんだそれは。買ったのか?」
「うん、そう……ちょ、ちょっと今手が離せない……あー! やっちゃった……」
「手が離せないって……遊んでるだけだろ。なんなんだ、この間のあてつけか? そういう子どもっぽいところが俺は……」
「急ぎの用事じゃないなら後にして! 今忙しいの!」
「……」
まさに今やるかやられるかの瀬戸際だったため、夫の問いかけに応える余裕がなかった。ひと段落ついてようやくドアのほうに目線を向けたが、すでに夫はいなくなっていた。
***
33
あなたにおすすめの小説
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる