初恋の泥沼

エイ

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逃亡※

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「……ひいっ! いやっ! なんでそんなとこっ! あああっ」
「びちょびちょじゃないか。胸をいじられただけで、そんなに気持ちよかったのか?」

 べろべろと陰部を舐めまわされる。羞恥と恐怖でジタバタと暴れるが、ひっくり返った姿勢で両足をまとめて押さえられて身動きがとれない。
 ぴちゃぴちゃと汚い水音が耳に響いて、頭がおかしくなりそうだった。
 指で膣を広げられて、舌でナカをほじくられる。
 息も絶え絶えに止めてと叫ぶが、拘束はますます強まるばかり。獣のような荒い息を吐きながら紘一は陰部に顔を押し付けてくる。
 やがて舌が陰核を探り当てると、指でつかんで無理やりむき出しにしてから舌先で舐めまわし始めた。

「やあっ、ひあっ、あっ、いやあっ!」
「ん、じゅる。震えている。イキそうか? いいぞ、イけ、イけ!」

 自分でも触らないような部分をいじくりまわされ、恥ずかしさで頭がおかしくなりそうだった。菜緒がぶるぶると震えていることに気づいた紘一は、にやっと笑ってむき出しにした陰核に歯を立てて、あろうことかきつく噛みついてきた。

「いぎっ……!」

 あまりの痛さに体が硬直し、一瞬意識が飛んだ。
 これで完全に抵抗する気力を失った。抵抗すればどんな目に遭わされるのかと考えるだけで恐ろしく、震えながら夫の顔色を窺う。

「ごめ、ごめんなさ……もう、お願い。許して……」

 それをどう勘違いしたのか、紘一は嬉しそうに笑い押さえていた菜緒の足から手を放した。震える菜緒の耳に顔を寄せ、髪をかき上げながら紘一はキスをしてきた。

「イったか? そんなにすぐイくなんて感じやすいんだな。二年も夫婦をやっていたのに知らなかったよ。お前がこんなに可愛いなんて……」
「……は?」

 何を言われているのか理解する前に、紘一は己のズボンを下げガチガチに勃ちあがった陰茎を出し、床でうずくまる菜緒の眼前に突きつけてきた。

「俺のも舐めてくれ」

 赤黒く血管が浮いたグロテスクなそれを頬に擦り付けられ、べちょっとした液が顔について吐き気がこみ上げる。

「ん? やり方がわからないか? そうだよな、今まで俺たちはこんなことしたことないもんな。口で咥えて舐めればいいんだ。ホラ……いい子だからアーンして」

 無理だ。こんなものを舐めるくらいなら死んだほうがましだ。
 陰茎の先からプクリと液体が漏れるのを見た瞬間、嫌悪が恐怖を上回った。
 歓喜に満ちた顔をしている夫に怒りが湧き上がり、目の前のソレをちからいっぱい殴りつけた。

「――ぎゃああっ!」

 急所を殴られた紘一は、叫び声をあげたあと気絶して床に倒れ込んだ。

 そしてそのままぴくぴくと痙攣したあと、ぐったりと動かなくなってしまった。

「はっ、はっ……あ、どうしよ、こ、殺しちゃった……?」

 もしかして死んでしまったのかと心配になったが、口元に手を当てると呼吸はしていたのでひとまずホッとする。
 救急車を呼ぶべきか悩んだが、夫が意識を取り戻したら報復されるかもしれない。激高した夫がどんな暴力を振るってくるかを想像すると、放置して逃げだす選択肢しか頭に浮かばなかった。



 目についた服と下着を適当に引っ掴んで、大きいカバンに突っ込んでいく。
 今着ているシャツが破れていることに気づいたが、いつ夫が目を覚ますか気が気でなく、着替える時間が惜しくてひとまず手近にあったウィンドブレーカーを羽織った。
 必要なものを考えることもできずに、カバンをつかんで家を飛び出す。混乱してとにかくここから逃げたいという気持ちで、無意味に走り続けた。

 立ち止まったら捕まる気がして、ひたすらに走った。
 後ろから手が伸びて菜緒を捕まえる幻覚が見えるようで、恥も外聞もなく全速力で住宅街を駆け抜ける。


 どれだけ走ったのか、いつの間にか見覚えのない場所まで来ていることに気がつく。
 ハッとして周囲を見渡した時に、足がもつれて転んでしまった。

「あっ! 痛っ」

 地面に膝をぶつけ、靴が片方脱げて転がって行ってしまう。
 近くを歩いていたサラリーマンらしき男性が靴を拾って持ってきてくれたが、菜緒の姿を見てぎょっと目を丸くした。
 目が合いハッとして自分を見下ろすと、髪はボサボサ、服は乱れていて明らかに様子がおかしい見た目をしている。

「だ、大丈夫、ですか?」
「すみませんすみません、大丈夫です……ありがとうございます」

 靴を受け取り、その場から走って逃げた。しばらく走っていると、小さな公園が目についたのでそこに入って水道で顔を洗い、口を何度も濯いでぼさぼさの髪も濡れた手で整えた。

 ベンチに座って深呼吸を繰り返すと、ようやく頭が冷えて冷静になってきた。
 持ってきたカバンを開ける。
 ぐちゃぐちゃの服と下着が数枚入っているだけ。なぜこんなものを持ってきたのだろう。
 すぐ逃げなきゃいけないと切羽詰まっていたくせに、こんな無くてもいいようなものを詰めて持ってきた己の馬鹿さ加減に笑ってしまう。

 それでも財布が入った普段使いのショルダーバックをも持ってきていたから助かった。これがなければ無一文で路頭に迷うところだった。
 スマホもあったが、こちらは電話がなるのが怖くて急いで電源を落とした。
 運のいいことにバックの中に菜緒名義の通帳が入っていた。カードで利用履歴が残らないように私用の買い物はこの貯金から出すようにしていたから、普段持ち歩くこのショルダーバックに入れっぱなしになっていたのだ。
 残高を確認すると、六十万ちょっと入っている。
 これを使ってどこかビジネスホテルに泊まるか……と一瞬考えたが、すぐにそれは無理だと思いなおす。
 家に帰れなくなった今、これは菜緒の全財産だ。決して少ない金額ではないが、この先家を借りて職を得るまでの資金としては非常に心もとない。

 それにこの預金は、菜緒の婚前貯金もふくまれているものの、夫から渡された生活費の残りもここにいれてある。全部が菜緒のお金というわけではない。
 離婚協議になった時、これを共有財産と判断されたらお金を使い込んだと言われ有責にされる可能性もあるから、自由に使えるお金は僅かしかない。
 はあ、とため息をついて頭を抱える。
 家には帰りたくない。
 だが離婚協議を進めるには夫と話し合わねばならない。代理人を立てればいいのだろうが、弁護士を雇えるほどのお金はない。働くにしてもまずは住所がなければまともな仕事にはありつけない。そして無職では家を借りるのも難しい。

「どうしたらいいの……」
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