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嵐の前触れ
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「こちらが先週の写真です」
「サンキュー」
五十嵐 愛華は写真部の生徒から毎週の様にある人物達の写真を受け取っていた。
それは陽太と冬真を絶妙な角度から撮ったもので、決して目線がカメラに向くことのない、所謂隠し撮りした写真だった。
「あーーーーー、陽太君かっこかわいいーーー!」
それは丁度陽太がほのかを部活案内をしていて、グランドで転がってきたボールを蹴り返した時の写真だった。
「ああーーーーーん、こっちの冬真君もクールカッコイイーーー!」
そして、それは同じく部活案内している時に将棋部でほのかが連戦連敗している時に、隣で冬真が部長と対局し王手を指している写真だった。
愛華は入学当初から三寒四温、つまり陽太と冬真の熱心なファンだった。
ただ残念な事にクラスは違う為、こうして隠し撮り写真を買い漁る事で、二人に近づく事を我慢すると決めていた。
三寒四温のファンの間では抜け駆けは禁止という暗黙のルールがあるからだった。
「こっちのツーショットも素敵だしぃーーー、これも・・・・・・、これも・・・・・・、こ、これも・・・・・・・・・・・・、こ、れ、も???」
愛華は写真を眺めている内に、とある事に気がついた。
「ね、ねえ・・・・・・、全部の写真に写っているこのちんまい女子は何なの?」
綺麗に塗られた爪の先で愛華は写真の女をコツコツと小突いた。
愛華の言う女子生徒は陽太や冬真の隣り、または隅に必ず写っていたのだった。
写真部の女子生徒は手帳を取り出し、メガネのズレを直した。
「一年二組、月島 ほのか、転校してきたばかり尚且つ耳が聞こえない為三寒四温の二人がお世話係りをしていると情報が入っております」
「お世話係りぃ? 何よそれ・・・・・・」
愛華は内から溢れてくる感情、嫉妬心と怒りから手をブルブルと戦慄かせた。
自分ではとても手が届かない存在で、ただいつも見ているしか出来ないというのに、この女はいとも簡単に、当然の様に二人のそばに居る。
本来なら自分がその場所に居たいと願ってきたポジションだった。
「ムカつくわ・・・・・・、ファンクラブの皆に相談して・・・・・・」
呼び出しでもして焼きを入れなければ等と昭和臭い事を考えていると、愛華は一つの策を思い付いた。
「いや、待って・・・・・・、これは逆に利用すればいいんじゃん! ねえ、あんた! あたしならあの二人に近づけさえすればあとはどうとでもなると思わない?」
「ええ? はあ、まあ・・・・・・」
急にそんな質問を投げかけられた写真部員は当たり障りのない返事をした。
愛華は確かに女子力が高く、化粧もしていれば、肩までの茶髪も毛先をカールし、スカートは短く、スタイルも良い。
少し派手な所はあったが校内でも美人と言われる部類だった。
「あたしが本気を出したら落とせない男なんか居ないんだから」
愛華は闘志に燃えつつ握りこぶしを作り教室を出た。
向かう先は決まっている。
愛華は早速実行に移すことにした。
和やかな雰囲気の昼休み、その空気は勢い良く扉を開け放つ音と共に消え去った。
「ねえ! 月島さんって居る?」
昼ご飯を食べ終えて教室に戻ってきていたほのか達はすでに次の授業の準備をするべく席に着いていた。
当然、ほのかは扉がいきなり開かれた音も、教室中がざわついた事も、名前を呼ばれた事も気が付かなかった。
「月島さん、なんか呼んでる人いるけど、知り合い?」
陽太はほのかの肩を叩きそう伝え、ほのかにも誰だか分かるようにその人物を指さした。
今まで陽太はほのかとほぼ行動を共にしていて、あの女子との接点があっただろうかと考えたが思い当たらなかった。
ほのかはちらりと陽太の指の先に居る生徒を見たが、誰なのかも分からず、陽太の方に向き直るとふるふると首を横に振った。
愛華は教室の中央に写真で見たほのかを見つけるとほのかの机めがけて足早に近づいた。
「ねえ、あなたが月島さんでしょー」
ほのかはいきなりの事で愛華の口元も早く何を言っているのかが分からず狼狽した。
「ちょっとー、何とか言ってよー」
「何? 月島さんに何か用?」
隣に居た陽太が見兼ねてフォローした。
「陽太君! 間近で見られるとかマジ幸せなんだけど~」
愛華はすぐさま陽太に飛びつきたくなったが、ぐっと堪えた。
「っと、じゃなくて、陽太君達もやってるお世話係りっての? あたしにもやらせて欲しいんだけど?」
そう言って愛華はにこりと笑った。
「サンキュー」
五十嵐 愛華は写真部の生徒から毎週の様にある人物達の写真を受け取っていた。
それは陽太と冬真を絶妙な角度から撮ったもので、決して目線がカメラに向くことのない、所謂隠し撮りした写真だった。
「あーーーーー、陽太君かっこかわいいーーー!」
それは丁度陽太がほのかを部活案内をしていて、グランドで転がってきたボールを蹴り返した時の写真だった。
「ああーーーーーん、こっちの冬真君もクールカッコイイーーー!」
そして、それは同じく部活案内している時に将棋部でほのかが連戦連敗している時に、隣で冬真が部長と対局し王手を指している写真だった。
愛華は入学当初から三寒四温、つまり陽太と冬真の熱心なファンだった。
ただ残念な事にクラスは違う為、こうして隠し撮り写真を買い漁る事で、二人に近づく事を我慢すると決めていた。
三寒四温のファンの間では抜け駆けは禁止という暗黙のルールがあるからだった。
「こっちのツーショットも素敵だしぃーーー、これも・・・・・・、これも・・・・・・、こ、これも・・・・・・・・・・・・、こ、れ、も???」
愛華は写真を眺めている内に、とある事に気がついた。
「ね、ねえ・・・・・・、全部の写真に写っているこのちんまい女子は何なの?」
綺麗に塗られた爪の先で愛華は写真の女をコツコツと小突いた。
愛華の言う女子生徒は陽太や冬真の隣り、または隅に必ず写っていたのだった。
写真部の女子生徒は手帳を取り出し、メガネのズレを直した。
「一年二組、月島 ほのか、転校してきたばかり尚且つ耳が聞こえない為三寒四温の二人がお世話係りをしていると情報が入っております」
「お世話係りぃ? 何よそれ・・・・・・」
愛華は内から溢れてくる感情、嫉妬心と怒りから手をブルブルと戦慄かせた。
自分ではとても手が届かない存在で、ただいつも見ているしか出来ないというのに、この女はいとも簡単に、当然の様に二人のそばに居る。
本来なら自分がその場所に居たいと願ってきたポジションだった。
「ムカつくわ・・・・・・、ファンクラブの皆に相談して・・・・・・」
呼び出しでもして焼きを入れなければ等と昭和臭い事を考えていると、愛華は一つの策を思い付いた。
「いや、待って・・・・・・、これは逆に利用すればいいんじゃん! ねえ、あんた! あたしならあの二人に近づけさえすればあとはどうとでもなると思わない?」
「ええ? はあ、まあ・・・・・・」
急にそんな質問を投げかけられた写真部員は当たり障りのない返事をした。
愛華は確かに女子力が高く、化粧もしていれば、肩までの茶髪も毛先をカールし、スカートは短く、スタイルも良い。
少し派手な所はあったが校内でも美人と言われる部類だった。
「あたしが本気を出したら落とせない男なんか居ないんだから」
愛華は闘志に燃えつつ握りこぶしを作り教室を出た。
向かう先は決まっている。
愛華は早速実行に移すことにした。
和やかな雰囲気の昼休み、その空気は勢い良く扉を開け放つ音と共に消え去った。
「ねえ! 月島さんって居る?」
昼ご飯を食べ終えて教室に戻ってきていたほのか達はすでに次の授業の準備をするべく席に着いていた。
当然、ほのかは扉がいきなり開かれた音も、教室中がざわついた事も、名前を呼ばれた事も気が付かなかった。
「月島さん、なんか呼んでる人いるけど、知り合い?」
陽太はほのかの肩を叩きそう伝え、ほのかにも誰だか分かるようにその人物を指さした。
今まで陽太はほのかとほぼ行動を共にしていて、あの女子との接点があっただろうかと考えたが思い当たらなかった。
ほのかはちらりと陽太の指の先に居る生徒を見たが、誰なのかも分からず、陽太の方に向き直るとふるふると首を横に振った。
愛華は教室の中央に写真で見たほのかを見つけるとほのかの机めがけて足早に近づいた。
「ねえ、あなたが月島さんでしょー」
ほのかはいきなりの事で愛華の口元も早く何を言っているのかが分からず狼狽した。
「ちょっとー、何とか言ってよー」
「何? 月島さんに何か用?」
隣に居た陽太が見兼ねてフォローした。
「陽太君! 間近で見られるとかマジ幸せなんだけど~」
愛華はすぐさま陽太に飛びつきたくなったが、ぐっと堪えた。
「っと、じゃなくて、陽太君達もやってるお世話係りっての? あたしにもやらせて欲しいんだけど?」
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