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Summer Summer Memories
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翠は昼休みに手に貢ぎ物である『オ・レのカフェ・オ・レ 俺のスペシャル!!』を片手に窓際に佇む親友の横に立った。
彼は髪を赤く染め上げ、無造作に伸びた髪は後ろにかきあげていて、耳には複数のピアス、首元にはチェーンのネックレス、肌は夏の間にこんがりと小麦色に焼け、体格も良い為、良く裏社会の人間や不良に間違われる容姿だった。
独特のファッションセンスと生まれつきのその鋭い目付きさえなければ、何もしていないのに警察にしょっちゅう職質される事も無かっただろう。
そんな正反対な二人が一緒に居る事は周りから珍しがられていたが、彼、天草 夏輝は小学生時代からの幼馴染だった。
「どうしたんですか? こんな昼間から黄昏ちゃって。黄昏時にはまだ早いですよ?」
「ああ? ああ・・・・・・」
「はい、これ、今週の分の謝礼です」
翠は書道部に人数合わせで幽霊部員として入部して貰っている礼として毎週『オ・レのカフェ・オ・レ 俺のスペシャル!!』を奢る事になっていた。
傍から見れば優等生が不良にパシリにされていると思われる様な光景だった。
「ああ・・・・・・」
夏輝の好物であるこの珍妙な牛が描かれた飲み物を渡せばきっと喜ぶと思っていたが、夏輝は変わらず上の空で気のない返事をした。
「やれやれ・・・・・・」
元気の無い夏輝の姿を見て翠は呆れ顔をした。
夏輝がこうなったのは翠の知る限り、夏休みが終わってからだった。
始業式に久し振りに学校で会った時にはもうすでにこうなっていた。
赤獅子だとか、名前をもじって夏鬼とまで呼ばれた男がまるで牙を抜かれたかの様に腑抜けてしまった。
どうしてこうなってしまったのか翠は考えた。
きっと夏休みの間に何かがあったのは明らかだった。
「ねえ、夏輝、そう言えば夏休みはどうでしたか?」
「夏・・・・・・休み・・・・・・・・・・・・はあ・・・・・・」
夏輝は夏休みという言葉に反応して頬を赤くさせたが、すぐに落ち込んだ顔になりため息をついた。
翠は夏輝の一瞬一瞬で忙しく変わる表情を見逃さなかった。
「ふむ・・・・・・これはもしや・・・・・・。夏輝、まさかとは思うけど恋・・・・・・とかしてます?」
「なっ! こっ、こここここ恋・・・・・・な、何言ってんだ、そんな訳ないだろっ!」
「そんな鶏みたいになっておいて、あなたこそ何を言っているんです?」
「別に、そんなんじゃねぇ・・・・・・。そんなんじゃ・・・・・・それにあいつにはもう会う事も無いかもしれない」
夏輝はそう遠い目をしながら寂しそうな顔で言い、翠から貰ったかカフェ・オ・レを飲んだ。
「それで、どんな子なんですか? あなたをそんな風にさせたのは」
「うっ、それは・・・・・・そんなの言えるか!」
「減るもんじゃなし、いいじゃないですか。夏輝がそんな風になるのも初めて見るし、気になるじゃないですか。ひょっとして初恋・・・・・・?」
邪推する翠の言葉に過剰に反応し、夏輝は口からカフェ・オ・レを吹き出した。
「は、ははははは初っ、ちげーし、そんなんじゃねえって言ってんだろ!」
「はいはい、じゃあ百歩譲ってその症状が恋の病でないとして、夏休みの間に出会った人について聞いた所で何も恥ずかしい事は無いのではないですか?」
そう言われて、思考が単純な夏輝は言われてみればと気が付いた。
腐れ縁の翠にとって夏輝を手のひらでコロコロと転がすのは簡単な事だった。
「それも・・・・・・そうだな。聞いてくれるか! 夏休みに会ったあいつの話を・・・・・・」
夏輝は翠の両肩を力強く掴んでそう言った。
彼は髪を赤く染め上げ、無造作に伸びた髪は後ろにかきあげていて、耳には複数のピアス、首元にはチェーンのネックレス、肌は夏の間にこんがりと小麦色に焼け、体格も良い為、良く裏社会の人間や不良に間違われる容姿だった。
独特のファッションセンスと生まれつきのその鋭い目付きさえなければ、何もしていないのに警察にしょっちゅう職質される事も無かっただろう。
そんな正反対な二人が一緒に居る事は周りから珍しがられていたが、彼、天草 夏輝は小学生時代からの幼馴染だった。
「どうしたんですか? こんな昼間から黄昏ちゃって。黄昏時にはまだ早いですよ?」
「ああ? ああ・・・・・・」
「はい、これ、今週の分の謝礼です」
翠は書道部に人数合わせで幽霊部員として入部して貰っている礼として毎週『オ・レのカフェ・オ・レ 俺のスペシャル!!』を奢る事になっていた。
傍から見れば優等生が不良にパシリにされていると思われる様な光景だった。
「ああ・・・・・・」
夏輝の好物であるこの珍妙な牛が描かれた飲み物を渡せばきっと喜ぶと思っていたが、夏輝は変わらず上の空で気のない返事をした。
「やれやれ・・・・・・」
元気の無い夏輝の姿を見て翠は呆れ顔をした。
夏輝がこうなったのは翠の知る限り、夏休みが終わってからだった。
始業式に久し振りに学校で会った時にはもうすでにこうなっていた。
赤獅子だとか、名前をもじって夏鬼とまで呼ばれた男がまるで牙を抜かれたかの様に腑抜けてしまった。
どうしてこうなってしまったのか翠は考えた。
きっと夏休みの間に何かがあったのは明らかだった。
「ねえ、夏輝、そう言えば夏休みはどうでしたか?」
「夏・・・・・・休み・・・・・・・・・・・・はあ・・・・・・」
夏輝は夏休みという言葉に反応して頬を赤くさせたが、すぐに落ち込んだ顔になりため息をついた。
翠は夏輝の一瞬一瞬で忙しく変わる表情を見逃さなかった。
「ふむ・・・・・・これはもしや・・・・・・。夏輝、まさかとは思うけど恋・・・・・・とかしてます?」
「なっ! こっ、こここここ恋・・・・・・な、何言ってんだ、そんな訳ないだろっ!」
「そんな鶏みたいになっておいて、あなたこそ何を言っているんです?」
「別に、そんなんじゃねぇ・・・・・・。そんなんじゃ・・・・・・それにあいつにはもう会う事も無いかもしれない」
夏輝はそう遠い目をしながら寂しそうな顔で言い、翠から貰ったかカフェ・オ・レを飲んだ。
「それで、どんな子なんですか? あなたをそんな風にさせたのは」
「うっ、それは・・・・・・そんなの言えるか!」
「減るもんじゃなし、いいじゃないですか。夏輝がそんな風になるのも初めて見るし、気になるじゃないですか。ひょっとして初恋・・・・・・?」
邪推する翠の言葉に過剰に反応し、夏輝は口からカフェ・オ・レを吹き出した。
「は、ははははは初っ、ちげーし、そんなんじゃねえって言ってんだろ!」
「はいはい、じゃあ百歩譲ってその症状が恋の病でないとして、夏休みの間に出会った人について聞いた所で何も恥ずかしい事は無いのではないですか?」
そう言われて、思考が単純な夏輝は言われてみればと気が付いた。
腐れ縁の翠にとって夏輝を手のひらでコロコロと転がすのは簡単な事だった。
「それも・・・・・・そうだな。聞いてくれるか! 夏休みに会ったあいつの話を・・・・・・」
夏輝は翠の両肩を力強く掴んでそう言った。
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