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策謀
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兵達はアルフの体から刺されていた剣を抜き去った。
戦場に一時、静けさが訪れた。兵達は動きを止め、風も止み、鳥すらさえずる事を忘れ、まるで時が止まったかの様な静かさだった。その静寂を真っ先に破った男が居た。
「ククククク・・・・・・、ハハハハハハッ!」
笑い声とともに兵達が道を開けて行く。大量の血を流し、ピクリとも動かなくなったアルフの前に現れたのはオルディンだった。
オルディンは怪我をしている様子も、着衣に汚れも無かった。
「死んだか、やっと死におったか!」
オルディンは自らの剣を鞘から引き抜くと執拗にアルフを刺した。怒りと力を込めてか背中を何度も、何度も刺し続けた。
「このジムナートの死に損ないめ、首を斬り落としてくれる。そして城下町に骨となり朽ち果てるまで晒してやる。光栄に思うが良い」
オルディンはアルフの面を見ようと地に横たわる体を蹴り転がすと、周囲の兵達がざわめいた。
「さ、サイス将軍!」
血塗れの男はアルフではなく、アルフが最後に戦っていた将だった。
「小僧め! どこに逃げおった!」
オルディンはアルフに無数の剣が刺さる瞬間、サイス将軍は身代わりにされたとすぐに気が付いた。そして、サイス将軍の兜を被り兵に紛れた事も察しがついた。オルディンは辺りを見るも全員が全員同じ様な鎧と兜を身に着けもはや見分けがつかなかった。
「おのれ・・・・・・、おのれ、おのれっっ!! 殺してやる! この場に居る兵ごと殺してやる!」
オルディンは剣を振り回し見境なく兵を斬りつけた。
「ぎぃゃあぁあああっ」
オルディンの近くに居た兵は胴や四肢を斬られ、次々に倒れていった。オルディンは血飛沫を浴び、目は血走り、形相はまさに鬼神の様だった。そしてそれを見た兵は散り散りに逃げ出した。
「陛下! おやめ下さいっ、兵も国の財の一つ! 無駄にするべきでは・・・・・・」
勇気を出して止めに入った兵はその先の言葉を紡ぐ事が出来なかった。何故ならオルディンがその兵の首を刎ね飛ばしたからだった。
「ハァ、ハァハァ・・・・・・クソがクソがクソがっ!!」
オルディンは剣を地に突き立て息巻いた。兵はあっという間に大部分が逃げていた後だった。足元には無数の屍が転がり、血の海が出来ていた。
「小僧ーーっ!! この儂を玩弄するとはいい度胸だっ!! だがそれもここまでだ! お前の狙いは読めたぞ。お前の思い通りにさせるものか。必ずやこの借りは返してやる!!」
オルディンはどこに居るかも分からないアルフに聞こえるよう、虚空に向かって声を張り上げた。その声は澄み切った空に突然落ちた雷鳴の如く大きく、それはすでに遠く離れたアルフの耳にも届いていた。
「若様! 無事に戻られて何よりです!」
アルフは平原から遠く離れた森でルドと落ち合った。ルドはアルフに飛びつこうとしたが、アルフはそれをヒラリとかわし、ルドは勢い余って木に激突した。
「あいたたた、もう、相変わらず若様はつれないですねぇ」
「お前は相変わらず若様と呼ぶなと何度言わせれば気が済むんだ?」
「まあ、良いではないですか。それにしても見事な脱出でした」
「全部計画通りだ」
アルフは兵に囲まれた時、空中に飛んだ兜が落ちてくる頃合を見計らい、外套を大きく翻し、兜を被りサイス将軍と入れ替わった。外套の下には元から兵の鎧を着込んでいて、途中で兵から武器を奪ったのも全ては、兵に変装する為だった。後は兵達に紛れ、混乱に乗じて逃げるだけだった。
「でもあのオルディンとやらは我々の狙いが分かってしまったみたいですが、大丈夫なのですか?」
アルフは兵の剣を放り投げ、鎧と兜を脱ぎ捨てるとルドはアルフがいつも着ている黒い外套を渡した。アルフはそれを身に纏いながら鼻で笑った。
「それも含めて狙い通りだ」
「え?」
二人はなるべく人目のつきにくい森の奥深い道を選んで歩き出した。
「思い出してみろ。オルディンは何故死ななかった?」
「不死身だから・・・・・・とか?」
ルドは茶目っ気たっぷりに人差し指を立てて言った。
「そんなボケは要らない。最後に見たやつの姿はどうだった?」
「オルディンの姿ですか」
ルドはふと目を閉じてオルディンの姿を思い起こした。そして何か思い出したのか目を見開いた。
「そうか・・・・・・、矢に撃たれたのに怪我の形跡が無かった。衣服も落馬した時の衣服の汚れも無かった!」
「そうだ。俺が撃ったのは影武者だ。奴の事だ、いつも命の危機に会う度に影武者を用意しているはずだ。そして、俺は今回、それを見越して毒矢を使わなかった」
「うーん、そこが良く分からないんですよね・・・・・・。影武者だと分かっているからってその影武者を助ける為に普通の矢にする程アルフ様はお人好しではないでしょう?」
ルドが本気で悩んでいる姿を見てアルフはニヤリと笑って言った。
「ああ、今回俺はわざと奴に二つの餌を与えた。一つ、矢を放った位置、二つ、毒矢と普通の矢だ」
「っ! それは! そんな事をしたら!」
何かに気が付いたルドは慌てた様子でそう言ったが、アルフは変わらず冷笑を浮かべるだけだった。
「ああ、それでいい・・・・・・、それが俺の狙いだ」
その日の夕刻、エルリィスは兵によって牢から連れ出された。呼びたしたのはオルディンに決まっているとエルリィスは分かっていたが、こんな時間に呼び出された事は今までに無く、ただ事ではないと感じていた。
いつもの部屋に通されるとエルリィスはすぐにオルディンの気配に気圧された。姿など見えずともピリピリとした緊迫した空気に顔がこわばり、背筋が凍りついた。
オルディンは立ち上がり、鞘に収まった剣を杖の様に地に突き立てた。エルリィスはその音にビクリとした。
「夢見の巫女よ。何をそんなに怯える事がある?」
「いえ・・・・・・」
「それとも、何かやましい事でもあるのかね?」
「いえ、何もありません!」
エルリィスには何故呼ばれたのか十分心当たりがあった。だが、それを表に出さぬ様にする事で精一杯だった。
「そうか? こんな時間にまで呼び出してすまんなあ、巫女よ。今日もお主は儂の命を救った。褒めて遣わす」
「勿体なきお言葉・・・・・・」
オルディンがそんな風に言うのは初めての事だった。今までそれが当然だと言う風にされて、ぞんざいに扱われてきた。どうせ何か裏があるだろうとエルリィスは思った。
「早速だが、夢見の巫女よ、儂はお前に裁きを下さねばならん様だ」
「!!」
「罪状は謀反の罪だ。心当たりがあるだろう?」
エルリィスはそれを聞いて体の震えが止まらなくなった。いつもなら力を入れれば何とかなるのだが、今回はそうもいかない。この男は、全てを知っている。
「まず、お前は矢が南西から放たれると確かに言ったな? だが、実際は北東からだった」
オルディンはゆっくりとエルリィスに歩み寄った。その足取りはエルリィスの耳にしっかりと届き、一層の恐怖心を与えた。
「そして、毒矢が使われると言っておったが、儂の影武者は毒で死ぬ事もなく、ピンピンしておる。まあ、大怪我はしておるがな」
そう言ってオルディンは笑った。
「これが何を意味するか分かるか?」
オルディンはエルリィスの小さい顎を掴み、上を向けさせた。
「い、いえ!」
「嘘をつけ! 偽の情報で違う方角から狙うのは良い考えだったな! 上手く行けば儂を殺せたろうからな。だが、お前の事だ、儂がいつも影武者を使うのは知っていたはずだ。だからお前は仲間に、現れたのが影武者なら毒矢を使うなとでも指示したのだろう?」
エルリィスは一体何があったのかも分からず、いつもなら良く回る頭も鈍くなり、酷く混乱していた。
「私は何も存じ上げません」
「この上まだシラを切るか!!」
オルディンはそう言ってエルリィスの頬を殴った。
「お前には見えぬだろうが、ここに弓と矢がある。平原に捨てられていた物だ。この矢には毒が塗られておった。毒矢で影武者だろうと殺す事は出来たはずだ。それをしなかったのはお前がそう言う風に指示したとしか思えん。甘いっ、甘いっ、甘いっ! お前は昔から一人でも助かれば良い等とそんな甘い事ばかり考えているのは知っておる」
エルリィスは今自分が置かれている状況を整理した。エルリィスはアルフの言われた通りにオルディンに偽の予言を伝えた。予定では暗殺は失敗させ何事も無く終わらせるはずだった。だが、オルディンの言う矢が放たれた方角が違っていた事、毒矢が使われなかった事はエルリィスには知らされていなかった。エルリィスはアルフに騙されたのかもしれないとそんな考えが脳裏を過ぎった。アルフには自分の目的があると言っていた。その為に自分は利用されただけ。会って間もない自分を助ける義理も無いだろう。
だが、エルリィスは最後にアルフが耳元で言っていた言葉を思い出した。
『何があろうと、最後まで俺を信じろ』
エルリィスはその言葉に賭ける事にした。そうと決まったならエルリィスの取るべき行動は一つだった。
「そうです。全て、陛下の仰る通りです。今日、兵に扮した者が今朝、私に接触してきました。良い機会だと思った私はその者に策を伝えました」
それは勿論エルリィスの嘘だった。
「ほう、ようやく白状しおったか。言え! 奴は今どこに居る!」
「存じ上げません。あの者とは今日初めて会ったのです」
そう言うとオルディンは再びエルリィスを殴った。そして、オルディンは剣を鞘から抜きエルリィスに向けた。エルリィスはその音を聞き、全身に冷や汗が流れた。剣の切っ先はエルリィスの喉元にピタリと当てられ、少しでも動けば串刺しになってしまうのが分かった。
「奴を庇い立てするつもりか? 相変わらず甘い考えだ。まあ良い、この場でお前に判決を下そう」
オルディンの口から言葉が発せられた。それはエルリィスも覚悟の上だった。
「夢見の巫女よ、そなたを死刑に処す」
戦場に一時、静けさが訪れた。兵達は動きを止め、風も止み、鳥すらさえずる事を忘れ、まるで時が止まったかの様な静かさだった。その静寂を真っ先に破った男が居た。
「ククククク・・・・・・、ハハハハハハッ!」
笑い声とともに兵達が道を開けて行く。大量の血を流し、ピクリとも動かなくなったアルフの前に現れたのはオルディンだった。
オルディンは怪我をしている様子も、着衣に汚れも無かった。
「死んだか、やっと死におったか!」
オルディンは自らの剣を鞘から引き抜くと執拗にアルフを刺した。怒りと力を込めてか背中を何度も、何度も刺し続けた。
「このジムナートの死に損ないめ、首を斬り落としてくれる。そして城下町に骨となり朽ち果てるまで晒してやる。光栄に思うが良い」
オルディンはアルフの面を見ようと地に横たわる体を蹴り転がすと、周囲の兵達がざわめいた。
「さ、サイス将軍!」
血塗れの男はアルフではなく、アルフが最後に戦っていた将だった。
「小僧め! どこに逃げおった!」
オルディンはアルフに無数の剣が刺さる瞬間、サイス将軍は身代わりにされたとすぐに気が付いた。そして、サイス将軍の兜を被り兵に紛れた事も察しがついた。オルディンは辺りを見るも全員が全員同じ様な鎧と兜を身に着けもはや見分けがつかなかった。
「おのれ・・・・・・、おのれ、おのれっっ!! 殺してやる! この場に居る兵ごと殺してやる!」
オルディンは剣を振り回し見境なく兵を斬りつけた。
「ぎぃゃあぁあああっ」
オルディンの近くに居た兵は胴や四肢を斬られ、次々に倒れていった。オルディンは血飛沫を浴び、目は血走り、形相はまさに鬼神の様だった。そしてそれを見た兵は散り散りに逃げ出した。
「陛下! おやめ下さいっ、兵も国の財の一つ! 無駄にするべきでは・・・・・・」
勇気を出して止めに入った兵はその先の言葉を紡ぐ事が出来なかった。何故ならオルディンがその兵の首を刎ね飛ばしたからだった。
「ハァ、ハァハァ・・・・・・クソがクソがクソがっ!!」
オルディンは剣を地に突き立て息巻いた。兵はあっという間に大部分が逃げていた後だった。足元には無数の屍が転がり、血の海が出来ていた。
「小僧ーーっ!! この儂を玩弄するとはいい度胸だっ!! だがそれもここまでだ! お前の狙いは読めたぞ。お前の思い通りにさせるものか。必ずやこの借りは返してやる!!」
オルディンはどこに居るかも分からないアルフに聞こえるよう、虚空に向かって声を張り上げた。その声は澄み切った空に突然落ちた雷鳴の如く大きく、それはすでに遠く離れたアルフの耳にも届いていた。
「若様! 無事に戻られて何よりです!」
アルフは平原から遠く離れた森でルドと落ち合った。ルドはアルフに飛びつこうとしたが、アルフはそれをヒラリとかわし、ルドは勢い余って木に激突した。
「あいたたた、もう、相変わらず若様はつれないですねぇ」
「お前は相変わらず若様と呼ぶなと何度言わせれば気が済むんだ?」
「まあ、良いではないですか。それにしても見事な脱出でした」
「全部計画通りだ」
アルフは兵に囲まれた時、空中に飛んだ兜が落ちてくる頃合を見計らい、外套を大きく翻し、兜を被りサイス将軍と入れ替わった。外套の下には元から兵の鎧を着込んでいて、途中で兵から武器を奪ったのも全ては、兵に変装する為だった。後は兵達に紛れ、混乱に乗じて逃げるだけだった。
「でもあのオルディンとやらは我々の狙いが分かってしまったみたいですが、大丈夫なのですか?」
アルフは兵の剣を放り投げ、鎧と兜を脱ぎ捨てるとルドはアルフがいつも着ている黒い外套を渡した。アルフはそれを身に纏いながら鼻で笑った。
「それも含めて狙い通りだ」
「え?」
二人はなるべく人目のつきにくい森の奥深い道を選んで歩き出した。
「思い出してみろ。オルディンは何故死ななかった?」
「不死身だから・・・・・・とか?」
ルドは茶目っ気たっぷりに人差し指を立てて言った。
「そんなボケは要らない。最後に見たやつの姿はどうだった?」
「オルディンの姿ですか」
ルドはふと目を閉じてオルディンの姿を思い起こした。そして何か思い出したのか目を見開いた。
「そうか・・・・・・、矢に撃たれたのに怪我の形跡が無かった。衣服も落馬した時の衣服の汚れも無かった!」
「そうだ。俺が撃ったのは影武者だ。奴の事だ、いつも命の危機に会う度に影武者を用意しているはずだ。そして、俺は今回、それを見越して毒矢を使わなかった」
「うーん、そこが良く分からないんですよね・・・・・・。影武者だと分かっているからってその影武者を助ける為に普通の矢にする程アルフ様はお人好しではないでしょう?」
ルドが本気で悩んでいる姿を見てアルフはニヤリと笑って言った。
「ああ、今回俺はわざと奴に二つの餌を与えた。一つ、矢を放った位置、二つ、毒矢と普通の矢だ」
「っ! それは! そんな事をしたら!」
何かに気が付いたルドは慌てた様子でそう言ったが、アルフは変わらず冷笑を浮かべるだけだった。
「ああ、それでいい・・・・・・、それが俺の狙いだ」
その日の夕刻、エルリィスは兵によって牢から連れ出された。呼びたしたのはオルディンに決まっているとエルリィスは分かっていたが、こんな時間に呼び出された事は今までに無く、ただ事ではないと感じていた。
いつもの部屋に通されるとエルリィスはすぐにオルディンの気配に気圧された。姿など見えずともピリピリとした緊迫した空気に顔がこわばり、背筋が凍りついた。
オルディンは立ち上がり、鞘に収まった剣を杖の様に地に突き立てた。エルリィスはその音にビクリとした。
「夢見の巫女よ。何をそんなに怯える事がある?」
「いえ・・・・・・」
「それとも、何かやましい事でもあるのかね?」
「いえ、何もありません!」
エルリィスには何故呼ばれたのか十分心当たりがあった。だが、それを表に出さぬ様にする事で精一杯だった。
「そうか? こんな時間にまで呼び出してすまんなあ、巫女よ。今日もお主は儂の命を救った。褒めて遣わす」
「勿体なきお言葉・・・・・・」
オルディンがそんな風に言うのは初めての事だった。今までそれが当然だと言う風にされて、ぞんざいに扱われてきた。どうせ何か裏があるだろうとエルリィスは思った。
「早速だが、夢見の巫女よ、儂はお前に裁きを下さねばならん様だ」
「!!」
「罪状は謀反の罪だ。心当たりがあるだろう?」
エルリィスはそれを聞いて体の震えが止まらなくなった。いつもなら力を入れれば何とかなるのだが、今回はそうもいかない。この男は、全てを知っている。
「まず、お前は矢が南西から放たれると確かに言ったな? だが、実際は北東からだった」
オルディンはゆっくりとエルリィスに歩み寄った。その足取りはエルリィスの耳にしっかりと届き、一層の恐怖心を与えた。
「そして、毒矢が使われると言っておったが、儂の影武者は毒で死ぬ事もなく、ピンピンしておる。まあ、大怪我はしておるがな」
そう言ってオルディンは笑った。
「これが何を意味するか分かるか?」
オルディンはエルリィスの小さい顎を掴み、上を向けさせた。
「い、いえ!」
「嘘をつけ! 偽の情報で違う方角から狙うのは良い考えだったな! 上手く行けば儂を殺せたろうからな。だが、お前の事だ、儂がいつも影武者を使うのは知っていたはずだ。だからお前は仲間に、現れたのが影武者なら毒矢を使うなとでも指示したのだろう?」
エルリィスは一体何があったのかも分からず、いつもなら良く回る頭も鈍くなり、酷く混乱していた。
「私は何も存じ上げません」
「この上まだシラを切るか!!」
オルディンはそう言ってエルリィスの頬を殴った。
「お前には見えぬだろうが、ここに弓と矢がある。平原に捨てられていた物だ。この矢には毒が塗られておった。毒矢で影武者だろうと殺す事は出来たはずだ。それをしなかったのはお前がそう言う風に指示したとしか思えん。甘いっ、甘いっ、甘いっ! お前は昔から一人でも助かれば良い等とそんな甘い事ばかり考えているのは知っておる」
エルリィスは今自分が置かれている状況を整理した。エルリィスはアルフの言われた通りにオルディンに偽の予言を伝えた。予定では暗殺は失敗させ何事も無く終わらせるはずだった。だが、オルディンの言う矢が放たれた方角が違っていた事、毒矢が使われなかった事はエルリィスには知らされていなかった。エルリィスはアルフに騙されたのかもしれないとそんな考えが脳裏を過ぎった。アルフには自分の目的があると言っていた。その為に自分は利用されただけ。会って間もない自分を助ける義理も無いだろう。
だが、エルリィスは最後にアルフが耳元で言っていた言葉を思い出した。
『何があろうと、最後まで俺を信じろ』
エルリィスはその言葉に賭ける事にした。そうと決まったならエルリィスの取るべき行動は一つだった。
「そうです。全て、陛下の仰る通りです。今日、兵に扮した者が今朝、私に接触してきました。良い機会だと思った私はその者に策を伝えました」
それは勿論エルリィスの嘘だった。
「ほう、ようやく白状しおったか。言え! 奴は今どこに居る!」
「存じ上げません。あの者とは今日初めて会ったのです」
そう言うとオルディンは再びエルリィスを殴った。そして、オルディンは剣を鞘から抜きエルリィスに向けた。エルリィスはその音を聞き、全身に冷や汗が流れた。剣の切っ先はエルリィスの喉元にピタリと当てられ、少しでも動けば串刺しになってしまうのが分かった。
「奴を庇い立てするつもりか? 相変わらず甘い考えだ。まあ良い、この場でお前に判決を下そう」
オルディンの口から言葉が発せられた。それはエルリィスも覚悟の上だった。
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