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処刑
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エルリィスは数多くの死の局面を夢で見てきた。それは孤児院の子供達だったり、街の誰かだったり、そして何度も見てきたオルディン・・・・・・。エルリィスは今日、自分自身が死ぬ日になろうとは夢にすら思わなかった。いや、夢ですら見ていなかった。
エルリィスは馬車の檻に入れられ、外の様子を見ていた。エルリィスはオルディンにお払い箱にされ、処刑されるにあたり呪具を外されていた。相変わらず手足の枷はついていたが、長年の呪縛から解かれたのは嬉しく思った。だが、こんな形で開放されたと言う事に心の底からは喜べなかった。
「準備は出来たか?」
「はい、広場にて恙無く」
広場の正面には処刑場が用意されていた。人々の見世物にする為に、舞台でも出来そうな広さと高さのある処刑台だった。処刑台の中央には頭を乗せる台が用意され、傍らには大柄な男が巨大な斧を持ち、素振りをしたり、丸太で切れ味を確かめたりしていた。大男が一太刀で大きな丸太を輪切りにする度に、街人から歓声の声が上がった。
「巫女を連れて来い」
オルディンがそう言うとすぐに兵の一人が檻からエルリィスを出し、オルディンの前に連れて来た。
「気分はどうだ? 夢見の巫女よ」
エルリィスはオルディンの問いに押し黙った。気分なんて良い筈はなく、オルディンの醜い顔に唾を吐いてやりたい気分だった。
「今日はお前の為に晴れの舞台を用意してやった。今までの礼に、盛大な処刑にしてやろう」
オルディンは沈黙を守り、そっぽを向いたエルリィスの顎を掴み無理矢理正面を向かせた。
「小生意気な娘だ。あの小僧が助けに来るとでも思っているのか?」
エルリィスは図星を突かれ瞳を大きく開いた。アルフがどう助けてくれるのかを知らなければ明確に約束などもしていなかった。だが、エルリィスはアルフが助けに来てくれるのではないかと淡い期待を抱いていたのは事実だった。
「なら残念だったな。奴は来ない」
「どう・・・・・・して?」
エルリィスが小さい声でそう問うとオルディンは大きな声で笑いだした。
「何故か? 冥土の土産に教えてやる。と、言いたいところだが、お前に教える訳にはいかない。何年お前を使っていたと思う? お前の手の内なぞ知り尽くしておるわ」
オルディンにそう言われ、エルリィスは考えた。アルフがここに来ないとして、それはきっとオルディンが何か仕掛けたに違いないと思った。出来る事ならなるべく情報を聞き出したいところだが、用心深いオルディンの事だ、簡単に口を割るとは思えなかった。エルリィスに出来るのは、ただ辺りを眺め、死を覚悟する事だけだった。
「さあ、楽しい刑執行の時間だ。準備しろ」
「い、嫌ぁっ、やめてっ、離してっ!」
兵にオルディンが命じるとエルリィスは抵抗するも鎖を無理矢理に引かれ、処刑台の前に立たされた。エルリィスはなんとか枷が外れないかと身じろぎしたが、ただ、手が痛くなるだけだと分かった。
「これより、この者の罪状を述べる」
エルリィスの横に執行人の一人が立ち、羊皮紙に書かれた堅苦しい文を読み上げていった。その罪状が読まれる間、エルリィスが下を向いていると頭部に激しい痛みを感じた。
「ううっ・・・・・・」
額から一筋の血が流れ、白い服に赤い染みを作った。足元に転がる握り拳大の石を見てエルリィスは顔を上げると、街の人々から絶え間なく石が投げつけられている事に気がついた。
「この国の裏切り者!」
「反逆者め!!」
石は全てが命中する訳ではなかったが、容赦なく腹、頭、手足に当たり、石が当たる度にエルリィスは悲鳴を上げた。街の人々を見れば小さな子供から杖をついた年寄りまでエルリィスに罵詈雑言を浴びせながら的当てでも楽しむかの様に狙っていた。エルリィスは知らない人々からの蔑む視線、嘲笑の声が自分に向けられている事、そして、何よりも目前に死が迫っている事に恐怖した。
罪状の読み上げが終わるとオルディンは椅子から立ち上がった。
「さあ、そろそろ時間だ。夢見の巫女よ、最期に何か言いたい事はあるか?」
エルリィスは考えた。ここでただ果てるのならばと、最期の悪足掻きを試みた。
「今まで、ずっと陛下の死を見てきました。幾度も陛下の命を救ってきたのは私です。私無しでこれからどうするおつもりですか?」
エルリィスは至って冷静に、そして挑発的な口調で言った。すると、オルディンは笑いだした。
「ククククク・・・・・・、儂がなんの対策も無しにお前を手放すと思うか? お前が死ぬ事によって、これからは儂自身が未来を見るのだ!」
「そんな・・・・・・」
「ハッハッハッハッ! おっと、喋り過ぎたようだ。だが、お前が死ぬ未来は今更変わりはしない。さあ、もう十分だろう。そろそろ死ね」
オルディンが手で合図をすると執行人が嫌がるエルリィスを力ずくで処刑台にうつ伏せにさせた。
「い、嫌ぁっ!!」
広場にエルリィスの叫び声が響いた。エルリィスはずっと冷静さを保っていたつもりだった。心のどこかでまだ助かる希望があるのではないかとも思っていた。だが、いよいよの時になり、もう助からないと悟った時、目から涙が溢れた。
エルリィスは、心の底からまだ死にたくないと思った。
「やれ」
オルディンがそう言って上げた手を下げて合図をすると、執行人は大斧を真っ直ぐに振り下ろした。
「いやあああぁああぁあーーーー」
広場に街の人々の歓声と、悲鳴と、エルリィスの断末魔の叫びが響き渡り、そして血の雨が降った。
エルリィスは馬車の檻に入れられ、外の様子を見ていた。エルリィスはオルディンにお払い箱にされ、処刑されるにあたり呪具を外されていた。相変わらず手足の枷はついていたが、長年の呪縛から解かれたのは嬉しく思った。だが、こんな形で開放されたと言う事に心の底からは喜べなかった。
「準備は出来たか?」
「はい、広場にて恙無く」
広場の正面には処刑場が用意されていた。人々の見世物にする為に、舞台でも出来そうな広さと高さのある処刑台だった。処刑台の中央には頭を乗せる台が用意され、傍らには大柄な男が巨大な斧を持ち、素振りをしたり、丸太で切れ味を確かめたりしていた。大男が一太刀で大きな丸太を輪切りにする度に、街人から歓声の声が上がった。
「巫女を連れて来い」
オルディンがそう言うとすぐに兵の一人が檻からエルリィスを出し、オルディンの前に連れて来た。
「気分はどうだ? 夢見の巫女よ」
エルリィスはオルディンの問いに押し黙った。気分なんて良い筈はなく、オルディンの醜い顔に唾を吐いてやりたい気分だった。
「今日はお前の為に晴れの舞台を用意してやった。今までの礼に、盛大な処刑にしてやろう」
オルディンは沈黙を守り、そっぽを向いたエルリィスの顎を掴み無理矢理正面を向かせた。
「小生意気な娘だ。あの小僧が助けに来るとでも思っているのか?」
エルリィスは図星を突かれ瞳を大きく開いた。アルフがどう助けてくれるのかを知らなければ明確に約束などもしていなかった。だが、エルリィスはアルフが助けに来てくれるのではないかと淡い期待を抱いていたのは事実だった。
「なら残念だったな。奴は来ない」
「どう・・・・・・して?」
エルリィスが小さい声でそう問うとオルディンは大きな声で笑いだした。
「何故か? 冥土の土産に教えてやる。と、言いたいところだが、お前に教える訳にはいかない。何年お前を使っていたと思う? お前の手の内なぞ知り尽くしておるわ」
オルディンにそう言われ、エルリィスは考えた。アルフがここに来ないとして、それはきっとオルディンが何か仕掛けたに違いないと思った。出来る事ならなるべく情報を聞き出したいところだが、用心深いオルディンの事だ、簡単に口を割るとは思えなかった。エルリィスに出来るのは、ただ辺りを眺め、死を覚悟する事だけだった。
「さあ、楽しい刑執行の時間だ。準備しろ」
「い、嫌ぁっ、やめてっ、離してっ!」
兵にオルディンが命じるとエルリィスは抵抗するも鎖を無理矢理に引かれ、処刑台の前に立たされた。エルリィスはなんとか枷が外れないかと身じろぎしたが、ただ、手が痛くなるだけだと分かった。
「これより、この者の罪状を述べる」
エルリィスの横に執行人の一人が立ち、羊皮紙に書かれた堅苦しい文を読み上げていった。その罪状が読まれる間、エルリィスが下を向いていると頭部に激しい痛みを感じた。
「ううっ・・・・・・」
額から一筋の血が流れ、白い服に赤い染みを作った。足元に転がる握り拳大の石を見てエルリィスは顔を上げると、街の人々から絶え間なく石が投げつけられている事に気がついた。
「この国の裏切り者!」
「反逆者め!!」
石は全てが命中する訳ではなかったが、容赦なく腹、頭、手足に当たり、石が当たる度にエルリィスは悲鳴を上げた。街の人々を見れば小さな子供から杖をついた年寄りまでエルリィスに罵詈雑言を浴びせながら的当てでも楽しむかの様に狙っていた。エルリィスは知らない人々からの蔑む視線、嘲笑の声が自分に向けられている事、そして、何よりも目前に死が迫っている事に恐怖した。
罪状の読み上げが終わるとオルディンは椅子から立ち上がった。
「さあ、そろそろ時間だ。夢見の巫女よ、最期に何か言いたい事はあるか?」
エルリィスは考えた。ここでただ果てるのならばと、最期の悪足掻きを試みた。
「今まで、ずっと陛下の死を見てきました。幾度も陛下の命を救ってきたのは私です。私無しでこれからどうするおつもりですか?」
エルリィスは至って冷静に、そして挑発的な口調で言った。すると、オルディンは笑いだした。
「ククククク・・・・・・、儂がなんの対策も無しにお前を手放すと思うか? お前が死ぬ事によって、これからは儂自身が未来を見るのだ!」
「そんな・・・・・・」
「ハッハッハッハッ! おっと、喋り過ぎたようだ。だが、お前が死ぬ未来は今更変わりはしない。さあ、もう十分だろう。そろそろ死ね」
オルディンが手で合図をすると執行人が嫌がるエルリィスを力ずくで処刑台にうつ伏せにさせた。
「い、嫌ぁっ!!」
広場にエルリィスの叫び声が響いた。エルリィスはずっと冷静さを保っていたつもりだった。心のどこかでまだ助かる希望があるのではないかとも思っていた。だが、いよいよの時になり、もう助からないと悟った時、目から涙が溢れた。
エルリィスは、心の底からまだ死にたくないと思った。
「やれ」
オルディンがそう言って上げた手を下げて合図をすると、執行人は大斧を真っ直ぐに振り下ろした。
「いやあああぁああぁあーーーー」
広場に街の人々の歓声と、悲鳴と、エルリィスの断末魔の叫びが響き渡り、そして血の雨が降った。
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